ハロー!プロジェクトには25歳定年説がある。どんなに人気があるメンバーでも、26歳を迎えることなくハロプロという組織から卒業させられてしまう。当時エルダークラブと呼ばれる古参メンバーが全員ハロプロから卒業した2009年3月31日より後は、ずっとそうである。一人の例外もない。高橋愛でさえ、道重さゆみでさえ、矢島舞美でさえ、嗣永桃子でさえ、和田彩花でさえ、26歳になる前に卒業した。具体的にどういう契約になっているのか私たちには知るよしもないし、明文化もされていないけれど、現実として一人の例外もなく26歳前に卒業しているのだから、25歳での定年は「ある」のだろう。「25歳定年説」を否定したいのならば誰か一人でも26歳以上のメンバーを残留させればいいだけである。証明は簡単だ。それをやらないのだから、25歳での定年は「ある」という仮説は今のところ「真」 である。私は25歳定年制を支持しないし、否定もしない。ただ、もし25歳での定年が契約として盛り込まれているのならば、それをしっかり明言して世間の洗礼と評価をきちんと受けるべきだと思っている。「声変わりまたはギムナジウム卒業の14歳で退団する」と最初から明言されているウィーン少年合唱団のように。もちろん事務所の責任者の名前で公言するんだよ。他人に代弁させるんじゃないよ。児玉雨子という天才を捕まえて『25歳永遠説』などとというあきれるほど陳腐なタイトルの歌詞を注文するのはもう二度とやめてくれよ。
25歳定年説はハロプロのおたくたちにとって共通認識になっている。だから私たちは勝手にメンバーのことを「25歳まで応援できる」と思い込んでしまう。25歳になる前に辞めると「道半ばだ」だの「早すぎる」だの「もうあきらめるの」だの、見当違いな意見も出てきてしまう。「25歳で辞めるのはもったいない、もっといてほしい」と言われることも、「25歳まであとn年もあるのか!長いわ!」と言われることもある。もちろん、どれも私たちおたくの勝手な意見である。
工藤遙はモーニング娘。に残っていれば25歳まで、あと7年は安定した地位が保証されていた。武道館、またはそれ以上の大きい会場で年2回以上のライブができる。全国をホールツアーで回れる。充実した活動と安定した高給が保証されている。TVの歌番組にも出られる。工藤は人気メンバーだから、センターまたはそれに近い位置が将来的にも確約されている。娘。のリーダーにもハロプロのリーダーにもなれただろう。どれもこれも、なかなか得ることができないポジションである。他の人気グループに入ってもそれだけの地位に登り詰めることは難しい。それなのに、工藤はその約束された地位を惜しげもなく捨てた。他でもないスーパー戦隊のために。それは大いなる賭けであった。
工藤はデビュー当時からずっと戦隊ものが好きだと公言していた。それはもう、私が彼女を初めて認識したハロプロエッグの頃から。「いつか戦隊に出演したい」という夢が彼女にはずっとあったのだろう。わかる。わかるよ。私だって今でもプリキュアになりたいしポワトリンになりたいし戦隊ヒロインになりたいし仮面ライダーになりたいよ。
しかし、その夢は多くのハロヲタにとってまったく理解できない心情であった。当たり前だ、大多数の大人にとってスーパー戦隊シリーズは単なる子供番組の一つに過ぎない。それほど高い価値を感じない人だって多い。心の底では「くだらない、子供だましだ」と馬鹿にしてる可能性さえある。なんでそんな(くだらない)もののために、世界で一番価値がある(とファンは思っている)モーニング娘。を捨てるのか?オタクにとってモーニング娘。は女神の集まりであり、信仰の対象であり、この世のすべてなのだ。工藤はどうしてそれを惜しげもなく捨てるのか。どうして自分の大切なグループ、大切な推しメンを捨てて、外に出ていってしまうのか。工藤にはモーニング娘。のリーダーになって欲しかった。なのにどうして工藤はこんなに早くいなくなってしまうのか。ひどい、薄情だ、おまえの選択は間違っている、私達は捨てられた。または私の推しメンは捨てられた。……たとえ口には出さなくても、そんな薄暗い感情を心に秘めているハロヲタはそこそこいたと、私は思う。
私がスーパー戦隊をそこそこ見ているからこそ感じる不安もあった。戦隊ヒロインはどんなに頑張っても脇役であり、決してメインにはならないこと。必ずしも活躍の場が与えられるわけではないこと。一年間撮影を続けられない役者も出るほど、きつい現場であること。年度ごとの当たり外れが激しく、大人が一年間連続視聴を続けるには厳しい内容の作品もあること。他のテレビドラマより販売促進要素が強く、玩具会社の都合に振り回され続けること。ニチアサ卒業女優にはさまざまな岐路をたどった人がいて、決して幸福な前例ばかりではないこと。ヒーローとしての仕事と収入が永遠に続くわけではないのに、ヒーローとしての「模範的行動」だけは半永久的に強要されること。特撮ファンの中には女性アイドルが特撮に出演することに好意的でない人もいること。工藤はずっと戦隊ものを見ていたのだから、そんな要素もすべて知っていたに違いない。それでも、彼女は戦隊ヒロインになるために約束された安寧を捨てて勝負に出たのだ。
私はその決意を応援したかった。25歳まで保証された社会的地位を捨てて勝負に出た18歳の女の子の心意気を買いたかった。だって私も、娘。と東映特撮どちらも好きだから。両方を好きかつ適齢期の子どもがいる私が、この決意を応援しないでどうする。ルパンレンジャー出演決定のニュースを見た瞬間に「ルパンイエローを応援するのは私の使命だ」と思った。前年のタマ☆タマ☆キュー☆キュー☆は残念ながら家族の誰も視聴継続できていなかったこともあり、私一人が録画をチマチマ消費すると覚悟していた。おもちゃだって、子どもが遊ばなくても自分のために買うつもりだった。
結果としてルパパトはとても面白く、玩具にまつわる凄惨なテコ入れにも負けず無事にドラマは締まり、最高の結末を迎え、ギャラクシー賞という権威ある(らしい)賞も取った。私よりも夫と息子たちが日曜日を楽しみにするようになった。録画消費どころか、外出先で一秒でも早くオンエアを見るために東映特撮ファンクラブにも入った。DX玩具もデータカードダスもGロッソもファイナルライブツアーの名古屋遠征までも、家族全員が前のめりになって私に付き合ってくれた。私は正直とても楽だったし(子連れで行けるハロプロ現場は限られるのだ)、幸せなオタク活動をすることができた。それもこれも工藤が戦隊に人生を賭けてくれたおかげである。ありがとう。
奇跡のような一年は終わった。「ニチアサ卒業女優に幸福な仕事ばかりが続くわけではない」と先ほど書いたように、卒業後の道は決して平坦ではない。みんないろんな方向へ行く。引退も多い。不祥事もある。最近は売れっ子になる役者さんが増えたけど、一昔前はまことしやかに「特撮出身の役者は売れない」と語られていた。「殿」こと松坂桃李くんが売れてくれて本当によかった。私はシンケンジャーも大好きだった。10年前にきちんとシンケンジャーとお別れしたから、いまや立派なデュエリスト、じゃなかった立派な俳優になった松坂桃李くんを見ることができているのだ。とてもつらかったけれど、10年前にきちんとシンケンジャーとお別れしたから、ルパパトという素晴らしい作品に会うこともできた。ルパンイエローになった工藤に会うこともできたのだ。だから私もいま、ルパパトという作品ときちんとお別れしなくてはならない。
10年前コミケでシンケンジャーの薄い本を出し、全国津々浦々のファイナルライブツアーの客席を埋め、「日本オタク大賞ガールズサイド」でシンケンジャーを大賞に押し上げた当時の若い女性達は、10年後のいま母親になって特撮に帰還し、ルパパトを支えている。ソースは私の周囲。いまGロッソにいる若いお嬢さんたちも、きっと10年後に子供を引き連れて特撮に帰ってくる。特撮作品のストーリーに夢中になった過去があれば、ヒーローに夢中になる夫や子供を馬鹿にしたりしない。好意的に見てもらえるし、なにより財布の紐が緩む。おもちゃを買ってもらえる。そうやって回遊魚のように10年かけて巡る客によって東映特撮は支えられている。タイムレンジャーがあるからシンケンジャーがあり、シンケンジャーがあるからルパパトがあるのだ。
私のルパパト最後の現場は5月8日の『ルパンレンジャーVSパトレンジャーVSキュウレンジャー』上映中イベント・ルパパトデー@109シネマズ木場 であった。ついに私は工藤のいない現場にまで行くほどルパパトという作品そのものが好きになった。本当のことを言うと、宇都宮プロデューサーをこの目で見たかったのだ。シンケンジャーとゴーカイジャーとルパパトという私の大好きな作品群を作ってくれた凄腕プロデューサーを、一目見たかった。サプライズで圭一郎の役者さんも来てくれて、なんだか得した気分。あとゴーバスターズ本人公演ぶりに見た陣さんがマジかっこよくて感嘆のため息を漏らしちゃった。マージマジかっこいいマージマジマジーロ。
会場は満席であった。同じ作品を好きになって同じ作品を買い支え、時にはチケットの争奪戦やグッズの通販競争をした皆さんを、私は戦友を見るような気持ちで眺めていた。工藤のいない会場を埋める、一年前にはみんなまったく違う場所にいて、なぜか今ここに集まって、この先はもう集まることがないだろうお客さん達を。
『10 years after』を実現するために、少なくともルパンイエローのことは私たちハロヲタが10年間支えていかなければならない。支えきれるのか正直私にはわからないが(ハロメンは自主性の強い子が多いので、私たちの手の届かない場所へ急に飛び立ってしまう瞬間が多々ある。あと糞事務所がわりと糞事務所)そうしないと他の役者さんとそのファンの皆さんに申し訳が立たない。男性俳優の皆さんのことは会場にいたたくさんのお姉さま方に任せる。Gロッソとファイナルライブツアーの客席を埋めていた皆さん――ぬいぐるみを小脇に抱えたお嬢さんと、鋭い眼光で舞台を見つめながらときどきメモをとる裁判の傍聴人のようなたたずまいの大人たち――お願いします。魁利くんと透真と圭一郎と咲也とノエルのことはまかせました。私たちはなんとか工藤を支えられるように頑張りますから、そちらはよろしくお願いいたします。みんなはどこから来たのかな?そしてどこへ行くのかな?何にしろ一年間どうもありがとう。楽しかったよ、元気でね。私はハロプロという名の閉鎖された村に帰るよ。10年後にまた、元気で会おう。(2019/6/30)
2019年初頭はルパパトの興業ばかり見ていた私の久しぶりのハロプロ現場は、2019年5月6日中野サンプラザJuice=Juice通常公演であった。10日間という長いゴールデンウィークの最終日だ。私はハロプロという大きな潮流の戻り鰹であり、またこの地に帰ってきた。
このツアーのラストに武道館で宮崎ゆかにゃ卒業公演が行われることもあり、新しい(と思われる)ファンは少なかった。会場は「歴戦の戦士」感が強い中年男性ばかりであった。ライトユーザーはおそらくみな、この後の武道館へ行くのだろう。
中野サンプラザの赤い絨毯が敷かれた2階ロビーはいつも我々を包み込んでくれる。変わらぬたたずまい。いつもの安心感。談笑するおたくの皆さん。男子トイレの長蛇の列とガラガラの女子トイレ。そう!そう、そう!この感じ!(突然のリュウソウケン) この感じだよ!!私が最もハロプロを愛していた13年前のハロプロと同じお客さんが、そこにはいた。私は時空が戻って歪んだようなめまいと、少しの安心感を覚えた。
そして公演を見終えた私は思った。「金澤朋子座長公演だ」と。少し目を離した隙に朋子のパフォーマンスが向上してた。センターポジションで歌う場面も多く、どっしりとした安定感があった。もちろんJuice=Juiceのセンターはかりんであり、卒業公演はゆかにゃが主役になるに決まってるんだけど、今日はなんだかひときわ「金澤朋子座長公演」に見えた。座長の風格だ。かなともにそんなものを感じたのは初めてだった。
彼女は病を抱えながら、歯列を整え、さらに歌が伸びた。目を見張った。だってかなともは初登場時から非常に歌がうまく、3年ほど前にはすでに歌が最高に上手い、いわば「安定した」状態だった。素人の私にはもうこれ以上の上がり目は想像できなかった。正直「もう伸び止まっている」と思っていた。彼女を見て感じる感情は「成長」ではなく「安定」だと。それでいいのだと。ところが彼女はさらに歌が上手くなっていた。凄みが出た。こんなに成長するとは思っていなかった。朋子は現在サブリーダーであり、おそらく次期リーダーになる(このときはまだ発表されてない)。立場が人を育てるということだろうか。
まぁ私は結局かなともが大好きだから、コンサート中もずっと彼女を見てしまう。『イジ抱き』サビ明けの「たんたんたん、カッ!」の部分で、毎回かなともが画面に抜かれるじゃないですか、三回が三回とも。スイッチャーさんもわかってるからね。三回が三回とも最高の顔してるんだよね。かなともの色気にあてられて、私、会場出てからずっと顔が赤かったもの。なんだか体がぽかぽかしてた。いやこれは会場がひどく暑かったのに水を忘れてしまったからか?熱中症かな?帰り道は「かなとも最高だわ!朋子が『私はローズクオーツ』って歌ってくれる限り私はあなたを見に行く!」と呟きながら、意味もなく一人で自宅までの長距離を歩いてしまった。街路樹のツツジは満開であった。
Juice=Juiceちゃんたち、いますごく良い。全員が自分の長所を出せている。弱点がない。2019年5月に私は確かにそう感じた。全員がいい、全員が好き。アイドルユニットがそういう状態になる瞬間って実はとても珍しいんだよ。今どきのアイドルはすぐに加入と卒業を繰り返して変化しちゃうから。この感覚は娘。14以来である。
何が良くて何が自分の心に響くのか、画面越しではわからない。現場に足を運んで自分の目で確かめないといけない。インターネットのみんなが信じている事象が正しいとは限らない。自分にとって大切なものは、その目で確かめに行かないといけない。実際に診察していない患者さんについてコメントをすると、判断を誤るのと同じだ。とにかく自分の目で直接見ずに、物事を語ってはいけない。「誰もみんな 信じている『真実』それだけが正しいとは限らないのさ その目で確かめろ!」って桜井侑斗も言っていたしね。あ、ねじ子の一番好きな仮面ライダーは仮面ライダーゾルダと仮面ライダーゼロノスです。シリーズとして一番好きなのは仮面ライダー龍騎と仮面ライダーオーズです。
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話がそれた。この日、私のすごい近くの席にとても美しい女性客が座っていた。関係者でもおかしくない席だったのでねじ子は彼女の顔をちらりと見た。関係者席にはハロプロメンバーやその家族が来ていることが多いからだ。おたくである私には「ハロメンまたはその家族ではない」ということだけはしっかりわかったので (なんでわかるんだよ)「いやー、最近の女ヲタさんはおしゃれな人が多いな!」とのんきに思っていた。帰宅後、実は有名な俳優さんであったことをネットニュースを見て知った。
“美しすぎるハロヲタ”新木優子、ハロプロ尽くしのGWを満喫! 3グループのライブ参戦で大興奮「もうたまらないんです!」
よく読んだらどんなハロメンよりもよほど有名な方のようだ。うーん、ハロプロドラマか特撮かテニスの王子様のミュージカルに出てくれないと、ねじ子には役者がわからぬ。
そしていったん認識すると、彼女の出ているCMやポスターやプロモーションがちまたにあふれていることに気が付く。私がCMを見ながら「わたしこの方のすげー近くで一緒にコンサート見た、まったく気付かなかったけど」とふと呟いたら、長男は笑いながら「魁利くんが49話で言ってたことは本当だったんだね!堂々としていれば『案外ばれないもんだって』」と言っていた。この世のすべてを特撮から学ぶ正しい姿である。
ハロプロの観客は結局ステージしか見ていないのだ。ステージに女神が続々降臨しているというのに、客席を見ている場合ではない。彼女は「ごくありふれた」ハロプロの女オタクとして現場にたたずんでいた。まわりの客も誰一人騒いでなかったし、誰も気に留めていなかった。私のように全く気がつかない鈍感な人ばかりでもないだろうに。ハロプロの歴戦のおたくたちは優しく礼儀正しい紳士淑女ばかりだと感じる瞬間であった。実は1月のサンシャイン池袋噴水広場での『微炭酸』リリイベの際も、見知らぬジューサーの紳士にふいに親切にしていただいて、私は平和と幸福を感じていたのだ。まさに「道行く人が親切だった うれしい出来事が増えました」である。歴戦のJuice=Juice familyはいい人達ばかりだと私は思っている。
『ひとそれ』以降、J=Jにもいよいよ女性新規客が増えてきた。それもまた今後が楽しみだ。わくわく。朋子リーダー、さゆきサブリーダー就任おめでとう。(2019/6/12)
1位 快盗戦隊ルパンレンジャーのテーマ
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2018年最もくり返し聴いた曲。再生回数ナンバーワン。『快盗戦隊ルパンレンジャーVS警察戦隊パトレンジャー』劇中歌としても、作業用BGMとしても、何度もくり返し聴いた。テンションがめっちゃ上がる最高のジャズサウンドだ。イントロのリズム隊が最高。ピアノソロも最高。ルパンレンジャーの変身バンク → 乱闘開始のBGMとして劇中でもくり返し使われている。
ルパンレンジャーの最高潮にかっこつけた名乗りのあと、そのまま戦闘に突入する流れが毎回とてもかっこいい。無駄にスタイリッシュ。必要以上にきざったらしくマントを翻して「世間を騒がす快盗」を気取っているけれども、実際の中身は犯罪被害者家族のナイーブな未成年男女と、恋人を失った大人の男(保護者役)っていうのもいい。ドローンを多用し、マントをたなびかせてひらひらと回避しながら銃を撃つ戦い方も無駄に美しい。あふれるほどスタイリッシュ。
ルパンレンジャーの必要以上にきざったらしくかっこつけたアクションはそれ単体だと成立が難しい。あまりにかっこつけていると、見ているこっちが照れてしまうのだ。対比する無骨なパトレンジャーがいたからこそ、成立できる最大限の「かっこつけ」なのだと思う。快盗側の敵を出し抜く回避型の戦闘と、警察側の無骨な猪突猛進型の戦闘の対比は非常に見応えがあった。ドローンを多用した映像も素晴らしく、見たことのない絵ヅラがたくさんあって楽しかった。
武道館でのライブ「超英雄祭」にてこの曲の生演奏が行われたと聞く。わーい!やったー!Blu-rayがとても楽しみだー!
2位 M・A・X power / 谷本貴義
『快盗戦隊ルパンレンジャーVS警察戦隊パトレンジャー』で歌詞がある曲だと『M・A・X power』が一番好き。もちろんTV主題歌も好きだし初美花ちゃんの歌も両方好きだし、『氷の世界』も魁利くんの思春期特有の不安定で乾いたボーカルが歌詞の世界観とマッチしていて大変よいです。でも一番聴いた、かつ一番元気が出る曲は『M・A・X power』。サビがすごく耳に残る。「エックス!エックス!エーックス!」ってカラオケで連呼するのも楽しい。快盗にも警察にもなれる、当然どちらからも今ひとつ信用されず、出生に謎を秘め、そのくせとびきり明るく多動な高尾ノエルというキャラクターの魅力がよく出た一曲だと思う。
ノエルはおもちゃの販売促進という「大人の事情」に振り回されて、最後まで行動原理がはっきりしない、かつ勝利条件が満たされない人になってしまった。気の毒に思う。少なくとも私の周囲の子どもはみんなノエルが大好きだ。ノエルは快盗とも警察ともどちらとも仲良しだし、いつも明るくニコニコしているし、「好きだよ」って声に出して言ってくれるし、衣装も金と銀でキラキラしているし、いつもクルクルまわってるし、運動神経抜群だし。子供が大好きな要素しかない。みんなと仲良くしたい、みんな大好き、みんなと上手くやりたい、育ての親も取り返したい、というシンプルで欲張りな気持ちをたくさんあわせもち、そのすべてを実現するために近視眼的に行動する。そのうちのいくつかは裏目に出る。実にわかりやすいし、実に「子供」っぽい。純粋な子供の欲求だ。ルパレンもパトレンもどちらも大好きな視聴者の子供に最も寄り添った、メイン視聴者そのままのキャラクターだったと私は感じている。
そもそも快盗で、かつ警察で、コレクションの知識が作中で一番あるエンジニアで、ずば抜けた身体能力をもち、強く、顔もよく、あげくの果てに「異世界人」ってさ。一人のキャラクターにいくらなんでも要素を盛りすぎだろ!メアリー・スー呼ばわりされても不思議じゃないほど記号が乗っている。しかもテコ入れによって、大きなお友達に一番人気だった圭一郎の強化装備を奪い取っていったのだから、これはむしろ「高尾ノエルはなぜ嫌われずにすんだのか」不思議なレベルである。でもね、私もノエル大好きなんだよねぇ!子ども達もノエル大好き! まったく憎めないんだよ!ノエルが責任ある26歳の大人しかも警察官だと思うと、その行動にさまざまな矛盾や無責任を感じてモヤモヤするんだけど。それでもノエルが劇中で落ち込んでいると、私も悲しい。スパイと疑われて落ち込んでいるノエルを見ると私まで落ち込む。その次のクリスマス回でのびのび明るく楽しく浮かれたノエルを見たら、なんだかほっとしたもん。「ノエルが楽しそうで何より」って思っちゃったもん。高尾ノエルは視聴者そのものだったんだな。神の視点で怪盗と警察両方の事情を把握していて、快盗も警察も大好きで、どちらにも仲良くしてほしいしみんな幸せになってほしい。視聴者の子どもの願望そのものの存在。あるいは妖精やコレクションやグッドストライカーみたいなものだったのかもしれない。
御託はさておき、物語において高尾ノエルは結局「異世界人」だった。唐突な設定で私は正直よく飲み込めず、最後までルパンコレクションまたはコレクションコンプリート特典を発動するときに必要な条件じゃないかと思っていたよ。
ということは、ノエルは異世界人ながらヒトと変わらぬ外見で、栄養法も人間と同じ、幼児形態があり、下手したら人間と交配可能で、驚異の運動能力をもつ(これはノエルだけ?)長寿の生命体ということになる。これは面白い。メカニズムを解明すれば人類の夢である「不老不死」につながる研究ができるぞ。金持ちや権力者ほど健康長寿を強く望むから、ノエルの身体の構造究明は巨万の富を生む可能性がある。人類の医学の発展に貴重な生体だ。私も医者として興味がある。いったいどんな構造なんだろう?ゲリ・ル・モンドの画像を一時停止してガン見したんだけど、よくわからなかった。
そう考えるとゴーシュ、あいつ医者のくせに何やってんだ。もっとちゃんと調べておけよ。ゲリルモンドみたいな解像度が低い画像で満足せずに、さっさとCTかMRIを撮っておけよ。せっかく拘束したんだからDNAも採っとけよ。術前管理の手順にばかりこだわってるから、お前は本質を見失ってボスにも見捨てられるんだよ。
ゴーシュに比べればドグラニオのほうがよほどいい仕事してる。皮膚を剥離した下に毛細血管組織がはりめぐらされていて赤褐色の血液が流れてるってわかったもん。有益な情報だ。さすがドグラニオ様、伊達に生き残って地下室監禁緊縛くっころ要員になってないな。
まあノエル自身の物語とルパン家の謎はまったく語られることなく終わってしまったので、今後の外伝や小説やVシネマで補完されると信じています。どんな媒体でも見ます。その時はぜひVSチェンジャーの没音声を拾ってくださいね。Wヒロインアイドル回もよろしくね!!!!
3位 U.S.A. / DA PUMP
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2018年ハロプロ楽曲大賞受賞曲。ハロプロじゃないけど。私たちハロヲタは2018年、DA PUMPにとてもいい夢を見させてもらった。
確かに私たちハロヲタは『U.S.A.』をいち早く発見した。豊洲のシングルリリースイベントになぜか大量のハロヲタが押しかけ、現場でハロプロ仕込みのコールをした。それを見つけたDA PUMPメンバーと古参ファンの皆さんはコールをあおり、もっともっとと盛り上げ、私たちをあたたかく受け入れてくれた。DA PUMPと古参ファンの皆さんの度量の深さにハロヲタは涙した。
私たちはもうずっと、全力でコールを入れられる曲を求めていた。「エル!オー!ブイ!イー!ラブリー◯◯!」ってほんとはずっと叫びたかった。全力でウリャオイしたかった、フワフワしたかった、PPPHしたかった。愛するメンバーの名前を大声でコールしたかった。ISSAさんたちは、大きな愛で私たちハロヲタの欲望を受け入れ、面白がってくれた。古参DA PUMPファンの皆さんも喜んでくれた。私たちは嬉しかった。だってクールハローとかいう糞計画をいつまでも捨てないハロプロは、私たちの願いをちっともかなえてくれないんだ。コールやヲタ芸を入れると最高に気持ちいい曲を、ちっとも出してくれないんだよ。
DA PUMPファンの意見を取り入れてハロヲタもいろいろ対応した。ハロプロでは「そのとき歌っている人」「パート割がある人」の名前を叫ぶルールがある。ISSAだけが歌を歌うDA PUMPでは、ISSAだけをコールすることになってしまう。「他のダンスメンの名も呼んでほしい」という古参ファンからの指摘により、ハロヲタはメンバー全員の名前を順番に叫ぶようになった。すると今度は、自分の名前がコールされたときにダンスメンバーもアピールしてくれるようになった。我々もメンバーの顔と名前を覚えた。BEYOOOOOOONDS全員の名前をねじ子はまだ覚えきれていないのに、DA PUMPの名前は覚えた。夏のハロコンにはDA PUMPがわざわざ来てくれて、満員の会場を盛り上げた。歌番組にもDA PUMPとモー娘。を一緒に呼んでもらえて、みんなで一緒にいいね!ダンスした。楽しかった。地上波歌番組の観覧には女性ファンばかり呼ばれるから、いつものハロヲタより高音で重低音が含まれないコールが新鮮だった。
そこから数ヶ月。地上波テレビをまったく見ない息子たちが、保育園や小学校で『U.S.A.』を覚えて帰ってきた。私はそのとき「え、USAってそこまで流行ってるの!?」と驚いた。年末の忘年会カラオケで仕事先の若い男子たちが『U.S.A.』を歌っている。「え、USAそこまで流行ってるの!?」と二度目の実感をした。必死でコールを入れないようにこらえたよ。「エル!オー!ブイ!イー!ラブリー◯◯くん!」という声が喉元まで出てきたのを必死でこらえたよ。自分を褒めてあげたい。8月のリリイベの時点では古参DA PUMPファンとハロヲタと新宿二丁目の皆さんしか知らなかった曲を、内輪だけで宝物のようにして楽しく盛り上がっていた曲を、いまや日本中の老若男女が知っている。踊っている。まさに夢のようだ。
しかしその夢はよっすぃの逮捕によりもろくも崩れ去った。我々ハロヲタは夢から醒めて取り残された。DA PAMP再ブレイクの夢の中にもうハロプロはいない。我々ハロヲタもいない。流行という大きな波を一緒に楽しむことはできなくなった。
それまで、私たちは本当に夢のような体験をさせてもらった。池袋のリリイベの映像を見ながら「私たちハロヲタはDA PUMPを再ブレイクさせることはできるのに、どうしてハロプロを再ブレイクさせることはできないのだろう?」などとしたり顔で奢ってみたりした。はーちんの卒業公演が彼女らしくとても清廉で美しかったこと、特撮戦隊にメインヒロインとして工藤が抜擢されて本当に大切に扱ってもらったこと、そのルパパトが歴代最高と言っても差し支えないドラマであったこと、夏のハロコンは久しぶりのOGがたくさん出場したこと、加護ちゃんが『I WISH』を歌ったというニュースを見て感動のあまりねじ子自宅でむせび泣く、など。2018年前半はハロプロにも明るい出来事が多く、私も久しぶりに楽しいオタク活動ができていた。ハロプロにも20周年らしい上昇気流が流れていた。流れていたのに。よっすぃの事件のせいで、それらはすべて無に帰した。
4位 ミッドナイト・ボルテージ / テンタクルズ Splatoon2
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ゲーム『スプラトゥーン2』の追加コンテンツ「オクト・エクスパンション」の中の一曲。「2」の上にさらに有料追加コンテンツ。ハードルが高いね!『スプラトゥーン1』の人気キャラだったシオカラーズが脇役になり、その代わりに出てきたメインMCがこのテンタクルズである。めんどくさいドルヲタである私は、シオカラーズが更迭されたことに心理的抵抗を覚えていた。運営や事務所に猛プッシュされる新アイドルグループに対して懐疑の目を向けるのは、ドルヲタとして当然だ。ドルヲタあるある。メンバーの一人は敵である「タコ」だしさ。
しかし、この『ミッドナイト・ボルテージ』がすごくいい曲だったから、ねじ子はくるりと手のひらを返した。瞬時に返した。これまたドルヲタあるある。テンタクルズ最高ぅぅぅ!イイダさんのボーカルが大人っぽくてすっごくいいねぇ!「なんでタコがMCなのよ!?」とか思っててごめんね!ヒメの可愛い声が軽快に乗ってくるミスマッチ感も最高だね!うるさい客を黙らせるには、いい曲を作って、曲で上から殴るしかないんだよね。結局それしかないんだよ。
5位 命の灯火 / 大乱闘スマッシュブラザーズSPECIAL
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嫌になるくらい繰り返し聴かされた曲。もう何回聴いたかわからない。たぶん今日の夜もスマブラしながら5回くらい聴くことになる。格闘ゲームで手を動かしながら、大声で高らかに歌いあげたくなってしまう不思議な魅力がこの曲にはある。もちろん歌いながら私の気分はカービィである。たった一人生き残って、強大な敵に侵略された大地を高台から見つめるカービィだ。それだけで私はなにも文句を言えなくなってしまう。最初聴いたときはそこまでいい曲だと思わなかったんだけどな……。やっぱりゲームの中で素晴らしい体験をすると、聴こえ方が変わってしまうのか……。スマブラは過去の名作ゲームの音楽を現代風にアレンジして、大量に収録し、シャッフル可能なライブラリを提供してくれる。これがまたいい。作業用BGMとして非常に便利だ。作業用BGMの再生マシンとしても8000円くらいの価値がある。ということはゲームは実質タダ。桜井さん最高だな。
6位 恋して♥ポプテピピック
※正しい映像は『ポプテピピック』アニメ第2話を見て下さい。
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女性ボーカルver.
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男性ボーカルver.
上坂すみれちゃんのオープニング曲『POP TEAM EPIC』の方が音楽的に出来がよいことを承知の上で、あえての『恋して♥ポプテピピック』。歌詞がたまらなく好き。「サブカルこねくり回しても 偽物だらけ」という歌詞が狂おしいほど好き。声優が15分おきに変わり、女子声優ペアで1回 → 男子声優ペアでもう1回歌う仕掛けも好き。毛糸人形アニメも好き。映像アイディア含めての「作り込み」が最高。
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現在の女性アイドルは声優業界にあるのだと思う。若手女性声優の皆さんは正しく女性アイドルである。小倉唯ちゃんや上坂すみれちゃんを見ていると、より強くそう思う。ももちの目指していたアイドルとしてのロールモデルはどう見ても田村ゆかりさんであったし、偶像としての「アイドル」を貫きたい!という野望を持った女の子は、ハロプロやAKBよりも女性声優を目指したほうがずっといいように思う。ハロヲタの私ですら、そう思う。そっちの方がきっとやりたいことができるでしょ。
7位 進化理論 / BOYS AND MEN
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ガンガンズダンダン!2017年の楽曲グランプリ でねじ子は「シンカリオンがせっかくアニメ化するのに、なんでボイメンがオープニング曲なのぉ!山ちゃんを下ろさないでぇ!」って叫んでいたのだけれど、いまやボイメンのOPにもすっかりノリノリである。ガンガンズダンダン!クライマックスの戦闘シーンでこの曲がかかると一気に気分が上がる。いい曲だ。
「新幹線変形ロボ シンカリオン」はアニメもおもちゃも非常によくできていた。Youtube公開や玩具系YoutuberとのコラボやAmazon Primeなど、時代に合わせたプロモーションもうまかった。シンカリオンのアニメは好評につき2019年も続く。巨大新作ロボットアニメとして1年以上続く単独TVアニメは平成唯一であり、昭和でもマジンガーZやゴッドマーズ以来とのこと。すごいね。
昨年の放送の間にものすごい勢いで新しいシンカリオンが増えていったのを見るに、アニメ放送は当初1年で終わる予定だったのだろう。玩具もこの1年で出し尽くした感がある。シンカリオントリニティーとか、とつぜん登場して物語も駆け足だったし。あと1年放送するつもりがあったら、もう少しあとに登場を引っ張れたのでは?霧島タカトラも五ツ橋兄弟ももっとじっくり描けたのでは?リアル新幹線はタカラトミーの都合で勝手に増やせないし、2019年以降のシリーズ構成はきっと大変だろうと予想する。いったい今後どうなるんだろう?地底世界と父親世代の話を続けるのかな?シリーズ構成の下山さんにはぜひ頑張って欲しい。
ちなみに同じ下山さんがやってる『仮面ライダージオウ』は(白倉さんが)時間軸をこねくりまわしすぎなうえにパワーバランスの整合性が毎回違うので、私はあまり楽しめていない。理解が難しいし、理解しよう!と思って頑張って考察しても結局は「大人の事情に突っ込むやつは馬に蹴られる」って明言されちゃうんだもん。つじつまを合わせるために頭を使う気力が沸かないんだよね。ごめんね。
2018年、ルパパトとビルドとハグプリとシンカリオンが面白くて私は本当に幸せだった。こんなに豊作でいいのだろうか。2018年の土日の早朝、私はずっと幸せな時間を過ごした。そんな一年も終わり、生きる糧を失って私は自分を見失いかけている。
結局私は、日曜の朝になれば最高の脚本と演出のもと、大好きな女の子が必ず見られる生活に慣れすぎていたのだ。ルパパトが終わりこれからどうやって日々の活力を得ればいいのか、私にはわからない。去年の2月まで私は何を食べていたんだ?毎日どうやって生きていたんだろう?まるで思い出せないよ。ルパパト(とビルドとハグプリ)のおかげで、1年間ずっとわくわくして過ごしてた。家族みんなで来週の展開を予想するのが楽しかった。今の希望はルパパトのファイナルライブツアーのチケットを、たった1公演もっていること。これを糧に生きるしかない。
8位 We will rock you / QUEEN
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今年は映画『ボヘミアン・ラプソディー』の大ヒットによりQUEENが再評価され、日本でもQUEENのリバイバル・ブームが起こりました。ちなみに私の中のQUEENブームは2005-2006年に勝手に旋風を巻き起こしまくっておりました。最初の同人誌『平成医療手技図譜 針モノ編』と『ねじ子のヒミツ手技 1st』の捨てカットを見ていただければわかるように、あの頃の私はQUEENに狂っておりました。フレディの最後のパートナー、ジム・ハットンによる書籍『フレディー・マーキュリーと私』を読んだこと、それを受けたドキュメンタリー『FREDDIE MERCURY Untold Story』を見たことが、当時の私のハートに火をつけたのです。CDアルバムもオリジナル・ソロ・アルバムもぜんぶ買いました。当時はYoutubeが発達していませんでしたから、MVやライブを見るためだけにDVDを買いあさりました。Paul Rodgersをボーカルに迎えた横浜アリーナ公演にも行きました。『手をとりあって』を日本語で合唱したときは、自分が古い物語の登場人物になれたような心持ちでした。「みんな、フレディの代わりに歌って!」と言いながら『Love Of My Life』を一人弾き語りするブライアンに涙しました。確かにあのとき、ブライアンの横にフレディが座っているのが見えました。フレディの魂は確かにあのとき、横浜アリーナにいた!絶対いた!ブライアンを「ダーリン」と呼ぶフレディが、あの優しく柔和な目でブライアンを見つめるフレディがいたもん!わたし見たもん!
しかし、映画『ボヘミアン・ラプソディー』の初報を聞いて「絶対見に行く~!」と思っていたこの私が、映画の内容を聞き日本でも大ヒットの報を受け、テレビでも特集されていくにつけ、だんだん陰鬱になってしまいました。そう、めんどくさいオタクである私は「映画を見たら絶対にフレディに関する解釈違いを起こす、そして憂鬱になってしまう」と、映画を見る前に気付いてしまったのです。
憂鬱がわかりきっているねじ子は、映画を見に行く気力が萎えてしまいました。あんなにQUEENが好きだったのに、ようやくブームになっているというのに、なかなか足が向きません。そんな私を見かねた大上先生が、わざわざ私を映画館まで連れ出してくれました。ありがとう大上先生。そして映画『ボヘミアン・ラプソディー』を見た私は、感動しながらもやはり解釈違いを起こしてしまったのです。
いや、前半は最高だったんだ。アートスクールの学生だったうだつの上がらないフレディ、その頃の彼女、ブライアン・メイとロジャー・テイラーのバンド”スマイル”との出会い、日本で先に火がついた人気、コンピュータがない時代の多重録音、公式のプロモーション・ビデオがまだ存在しない時代の「キラークイーン」公式映像が「Top of the Pops」(BBCの老舗音楽番組)出演時の口パク映像であること、「オペラ座の夜」での合唱とロジャーのひときわ高い声、長い曲をラジオでかけるための攻防、いつも違う女を連れているロジャー、着物や伊万里焼などフレディの日本趣味、フレディの快楽主義的な一面、愛猫家、すべてがそのままその通り。素晴らしい再現度。出っ歯で美声のフレディの役者さんの似せっぷりはもちろんのこと、ロジャーもブライアンもディーコンも、まじでそっくり。本人が出演しているのかと思ったもん。いい映像を見せてもらって本当に嬉しい。
でもね、後半の時系列のぐちゃぐちゃに私は耐えられんのよ。特にHIV感染を自覚する時期と、免疫不全症候群(AIDS)を発症する時期と、実際のコンサートの時系列が狂っていて、どうにも違和感を覚えてしまう。当時の私は医学生で、まだ未知で克服できていない病であったHIVとAIDSとその感染ルートについて勉強する必要があり、フレディの事例をその勉強にも役立てたから、感染と発症時期の時系列にひどく敏感なのだ。
物語のクライマックスに使われるコンサート・LIVE AIDは確かにQUEENの健在ぶりをアピールする輝かしいコンサートだった。もう終わった70年代の古いバンドと評されていたQUEENが息を吹き返す、歴史的なライブだった。だけど、あのときまだフレディはHIV感染を知らなかったはずだ。LIVE AIDは1985/07/13、フレディがHIVの感染結果を知ったのは1987年のはず。時系列がおかしい。あそこで彼の病気をもってバンドが一致団結する描写は、あまりふさわしくないと私は思う。病気なんかまったく関係なく、バラバラになりかけたバンドが一致団結した瞬間だからLIVE AIDは素晴らしいのだ。フレディの歌唱力とメンバーの高い演奏力と楽曲の持つ圧倒的な普遍性をもって、QUEENはLIVE AIDの観客の心を鷲掴みにした。完全なる実力主義であり、そこがいいと私は思っている。ちなみにフレディの病気を受けてバンドが一致団結するのは最後のアルバム『Innuendo』の1991年あたりである。もちろんその頃の、だんだん歌が歌えなくなり痩せ細って衰えていく、それでも病気を公表できないフレディをみんなで支えるエピソードもすごく好きだ。
そもそもさあ!フレディはいつだってバンドの緩衝材だったの!フレディはいつも、音楽的対立を繰り返すブライアンとロジャーの間を取り持っていたはずだよ!「フレディがバンドのメンバーと喧嘩しているの見たことない」ってコメントもあったはずだよ!一時期のQUEENの活動休止は、ブライアンとロジャーの衝突が主な要因だったはず!当時の私は雑誌でそう読んだ!QUEENが休止したために、仕方なくフレディはその間だけソロ活動をやってたはず!それなのに、あの映画だとまるでフレディが自分の我儘でソロをやりたがり、そのせいでバンドが凋落したみたいじゃないか!違う!フレディはそんな子じゃない!決して解散危機の引き金を引くメンバーではなかったはずだ!「おい、お前が何を知っているんだ?」って感じだけど、私の解釈では、フレディはそうじゃないの!!
そして、社会について。フレディのHIVカミングアウトは死のほんの数日前であったし、フレディが自身のセクシュアリティを世間に公表することは死に至るまでなかった。そういう時代だった。当時「QUEENが好き」と言うと、女性ファンはともかく、男性ファンはわりとマジで「え?おまえホモなの?」と周囲から言われたりもした。ゲイ文化に(比較的)寛容な日本でさえ、そうだった。当時のAIDSは原因不明の死に至る恐怖の病気であり、無知による偏見がまん延していた。HIVがようやく分離されたのが1983年であり、LIVE AIDの2年前である。先進国でHIVが広がり始めていたこの頃、AIDS発症者にゲイや麻薬の常習者が多かったことから、ゲイ・コミュニティへの偏見と差別が強く世界を覆っていた。この映画はその社会風景のど真ん中にありながら、それをあまり描写しない。もちろん、それはそれでいい。偏見や差別や未知の病気に対する恐怖などすべてなかったことにして、主人公の周辺に優しく理解ある世界を築き、主人公を大きな愛で包み込む手法はフィクションにおいて多用されている。それはそれで自由だ。でも実際は、ものすごい大きな偏見と恐怖が当時のHIVと免疫不全とゲイの世界には吹き荒れていた。フレディはまさにその中にいて、命を落としてしまったんだよね。演出上の時系列の歪みがその不自然さに輪をかけているように感じて、どうしても私はもどかしく思ってしまう。
まぁ当時の社会のLGBTに対する差別と偏見と、HIVに関する無知と、それにまつわるフレディの苦悩を描写していたらきっと「重すぎる」。大衆映画としてこんなふうにヒットしないんだろう。わかるよ。めんどくさいオタクの解釈違いだって、わかってるよ。役者さんたちの本人再現ぶり、文句なく素晴らしい楽曲郡、映像の再現度、コンサート会場にいるかのような臨場感、LIVE AIDが再び開催されたかのようなカメラワークは最高だった。それでいいんだ。ありがとうブライアンとロジャー。
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さて、オリコンランキングという言葉すら知らない人間が増えている昨今、「俺コンランキング」というタイトルを続けるのもきつくなってきました。テーゼ自体が衰えると、アンチテーゼの文脈も意味をなさなくなっていくのは当然ですね。今年からはもう「楽曲ランキング」という簡素なタイトルにこっそり戻しました。
2019年はいまのところ新しいプリキュアのエンディング『パぺピプ☆ロマンチック』と新しい戦隊のエンディング『ケボーン!リュウソウジャー』が激しい首位闘いをする予定です。どちらも映像・ダンス込みでとても楽しい。楽曲そのものよりも、これから1年を通してどれだけ作品を面白く見続けることができるか。これからの1年を楽しみにしています。(2018.3.29)
1年間楽しんでいたルパパトが終わった。私は東映特撮ファンクラブ(TTFC)を2月で解約するためにTTFC限定動画を見まくっている。
「東映特撮ファントーク特別版 スーパー戦隊!大!イエロー戦士祭り【PART3】」 にて、マジイエロー兼ビートバスターの松本寛也さんが『特命戦隊ゴーバスターズ』と小林靖子にゃんについて語っていた。見られない人のために、以下概要を書き出す。
※ここから先は『特命戦隊ゴーバスターズ』のネタバレが含まれます。『ゴーバスターズ』見てない方は、全編視聴してから読んでください。※
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「靖子にゃんはよくダークサイドに落ちるとか闇落ちとか言われてますけど、ぼくはそれはいいと思っていて、しっかり残さなきゃいけないものを入れられる人ってあんまりいない。」
――中略――
「僕が死ぬんです、最後。ゴーバスターズって。それって残酷じゃないですか。でもその死っていう体験だったりとか、――僕たちがやってたのは震災がモチーフって言われているんですけど――そういう後世に残さなければいけないもの、レガシーとか遺産は、しっかりと何かに刻んでいかなければいけない。僕はあのときゴーバスターズをやって、いろいろ言われましたよ、ゴーバスターズって。だけどそれはそれですごくいいと思います。議題にも出るし、子供たちが、もしかしたら大人になって見て、ああこういうお話だったんだって振り返れる。あのとき震災があって、だからこういう戦隊があって、だからあの人は死んで、この人たちは生きている。っていうものがしっかりと描ける脚本家さんってなかなかいないんじゃないかなって思います。だから僕は(靖子にゃんが)好きです。」
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私は動画を視聴しながら泣いていた。7年越しに陣さんがそう言ってくれて嬉しかった。
確かに私の周囲(当時子供と一緒に戦隊を見ていた親御さんたち)は、陣さんが帰ってこない最終回に驚いていた。でもそれは当時、確かに必要な描写だった。ゴーバスターズは震災で親や大切な人が「本当に」いなくなった子ども達のために作られた物語である。ここで陣さんやゴーバスターズの家族だけが帰ってきたら、それはあまりに「都合がよすぎる」。視聴者の子ども達が「自分と違いすぎる」「これは絵空事の物語だ」と思ってしまう。だって、津波で死んだ人たちは帰ってこないのだ。絶対に帰ってこないんだよ。帰ってこないのが、あれを見ていた当時の子ども達の、残酷で圧倒的で逃れられない現実だった。子ども達の大切な人は帰ってこないのに、陣さんだけが帰ってきたらおかしいでしょ。「大切な人は帰ってこないけど、それでも残された人間は今自分にできることをやり、周囲と助け合いながら生きていく。それしかないし、それでいいんだ」これがゴーバスターズという物語の全体を貫くメッセージであり、あの時代にそった正しい「希望」の物語だった。
ゴーバスターズの結末は賛否両論だったと松本さんは言う。おもちゃの売上が低かったこともあり、まるで子どもに人気がなかったかのように(ネットでは)揶揄もされた。そんなことはない、現実の子ども達に確認もしないで勝手なことを言うなよ。うちの子も周囲の子もがっつり最後まで見てたよ。最終回に驚いていたよ。私はあの誠実さが好きだったし、あの誠実さに救われていたよ。人は死ぬんだよ、突然死ぬんだよ。生き返りゃしないんだよ。医者をしててもその圧倒的な不条理に驚くことがあるよ。それでも残された人たちの人生は続くんだよ。忘れたり忘れなかったり時々思い出して泣いたりしながら生きていくんだよ。それは確かに、当時の子どもの現実だったんだよ。
あのころ東日本に住んでいたら、震災で死んだ人、財産や大切なものを失った人、これまでと同じ生活を続けられなくなった人が周囲に必ずいた。直接の知り合いにはいなくても、知り合いの知り合いならば被害にあった人が必ずいた。原発は爆発し、どうなるかわからなかった。そそくさと西日本へ旅立つ知人もいた。それでも私は今ここで、復興を目指して生きていくしかない。自分の仕事を続けるしかない。それはつらい日々だった。希望は少なかった。自分の行動が正しいかもわからなかった。でも、助け合って生きていくしかなかった。当時まだ東日本がどうなるかわからない状態で、それでも乳飲み子を抱えて東京で生きていくしかない状況の中で、私はあの物語の誠実さに救われていた。静かに森を守り続けるスタッグバスターの姿に自らを重ねた。
あれから7年経って、陣さん(の役者さん)があの結末を肯定してくれて本当によかった。ありがとう。嬉しかった。私は当時不勉強だったから、浅はかにも「この役者さんは死ぬことに納得していたんだろうか?」と思ってしまったんだ。最終回の後にゴーバスターズのシアターGロッソ素顔の戦士公演に行ったときも、死んだはずの陣さんが普通に出てきて「え?」と思ったし、陣さんも「なんか帰ってこれちゃった!」とか言っちゃって、エンディングのダンスも普通に踊ってて、「なんじゃこりゃ?」と思ってたんだ。「さすがに役者さんもやりにくいんじゃない?大丈夫?」と不安に感じていたんだ。ちなみに当時のGロッソは第5弾の本人公演でも当日券があった。後方席は埋まっていなかった。底抜けに明るく楽しいキョウリュウジャーの放送がすでに始まり、大人気を博していた。あの当時のGロッソは決して楽しいだけの空間ではなかったと思う。それでも私はゴーバスターズに勇気づけられていたし、彼らを長く見ていたかった。ルパンレンジャーVSパトレンジャーGロッソ第5弾素顔の戦士公演で満員の客席を見ながら、私はあのときの震災を引きずった乾いた空気を一人思い出していた。
イエローバスターちゃんが『ラブライブ!サンシャイン』声優として東京ドームに帰ってきて、満員の観客の前でGロッソに触れてくれたことも嬉しかったなぁ。心が温まる。二人ともありがとう。私は今でもゴーバスターズの誠実さが好きだよ。
(2019.3.22 結局TTFCは「ルパパトヒロイン旅」の後編が見たかったから解約できなかった。おのれ東映)
あ、ルパパト第5弾素顔の戦士公演は最高でした。以下覚書。
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■Gロッソ施設 覚え書き(2019/3/2現在)
・ポップコーンバケツは前回のやつを持っていけば中身だけ詰めてもらえる、300円
・ルパパトポップコーンバケツ完売、リュウソウ購入可能
・地下の遊び場(スーパー戦隊ランド)は3/10までルパパト、3/21からリュウソウジャー
・↑サプライズでパトレン1号(ガワ)が握手しに来てくれたよ!子供たち大喜び。
・隣のゲーセンのカードダスはまだルパパト。てれびくん4月号によるとリュウソウジャーデータカードダスは2019/3/14から稼働
■Gロッソ第5弾 本編覚え書き こちらはうろ覚え(2019/03/02 10:20の回)
・OP完全再現のナレーション → 中央で振り返るアルセーヌ → OPに乗って乱闘しながら本人たち登場 → 一人ひとりスポットライト当たってポーダマン相手に生身アクション。最高。
・ギャングラーにほんの少しの憎しみの心を最大限に増幅されるコレクションを使われ、操られるノエル
・「人間が憎い!幼い僕に手を差し伸べてくれる人間などいなかった!」ノエル渾身の叫び
・ノエルの人生が丁寧に描写される初の機会である
・快盗の正体がバレた後の設定。快盗衣装と警察制服、ルパンレッドとパトレン1号で「魁利くん」「圭ちゃん」と呼び合う夢の世界
・「ほんとは快盗のこと恨んでるんだろ?」突然の魁利節が圭一郎に炸裂
・快盗への憎しみを増幅する攻撃を受ける圭一郎
・圭一郎が魁利くんを攻撃しだす → 「俺一人に集中攻撃かよ」 → サイクロンダイヤルファイターを魁利くんから奪う → ただ一人、瞬時に圭一郎があやつられている「ふりをしている」と理解する魁利くん → デストラを押さえつける魁利くん → 金庫を開ける圭一郎 → 最高
・圭一郎「恨むべきは快盗ではない、この状況を作ったギャングラーだ」と断言
・咲也が相変わらず初美花大好きで何より。透真「快盗だと知ってもですか」咲也「快盗だとしても、初美花ちゃんは普通の女の子」透真「それを聞いたら、初美花も…」ここで空気を読めないギャングラー襲来
・ザミーゴに凍らされ地面に落ちるギャングラーを見た咲也、「コレクション入ってないよね?」と透真に確認する。やさしい。
・「魁利くん、快盗をやめるつもりはないのか」「まーた説教かよ」「説教ではない、助言だ。……真っ当に生きたいとは思わないのか。人生はやり直せるんだ」←ここ好き。快盗だとわかっても魁利くんの将来を案じてあげる圭一郎えらい
・透真は初美花ちゃんが氷漬けにされたのを見て「よくも初美花までも!」と叫び、飛び出して氷漬けにされる。透真の父性描写すき。
・自らの気合と子ども達の声でザミーゴの氷を(ある程度)溶かす圭一郎
・ザミーゴ「ほんと暑苦しい男だぜ」魁利「ほんとにな、でもそれが時には希望の光になったりして」ん?まじで?
・凍らされてしまった仲間と警察を助けるために「みんなの力を貸してほしい!俺がせーの!って言ったら『がんばれ!』って叫んでくれ!!」と客席の子供に向かって叫ぶ魁利くん。ヒーローショーのお約束。舞台中央で叫ぶ姿はロックスターのようだ。君もやればできるんだね。
・そう思っていたらちゃんとザミーゴが突っ込んでくれる。いい脚本だ!ザミーゴに「寒いことすんなよ。お前はそんなやつじゃないだろ」と揶揄された魁利くん「暑苦しいのが近くにいるからな。俺の心も溶かしたのかもな」ん?今なんて言った?これは私の夢か?観客の妄想を具現化するコレクションか?
・子ども達の応援で氷が溶けたあと咲也と初美花が「いえーい!」といいながらハイタッチしてる!わー!これは私の夢だー!!いよいよ白昼夢が見られるようになったぞー!
・氷から解放された圭一郎が、魁利に手を差し伸べる。ちょっとためらった後にその手を取って階段を登る魁利。まさに「見たいもの見せましょう」状態。
・ザミーゴと乱闘中、階段落ちするルパンレッド。ちなみに中の人はTV本編と同じ浅井宏輔さんらしい。さすがの迫力。通路席の女性の肩を借りながらルパンレッドは立ち上がる。その女性客は悶絶のち昇天していて可愛かった。
・スーパールパンエックスのことはいつも少し複雑な気持ちで見ていたんだけど、ルパントリコロールとパトレンU号の間で一列に並んでいると、画面が締まってとてもいいな。強そう。
・「初美花ちゃん、快盗なんてもうやめようよ!」な咲也、素晴らしい。初美花を危険な目に合わせたくないんだね……。それに対して「ルパンコレクションを集め終わるまでは……ごめんなさい!」と答える初美花。
・ラストのノエルの描写が最高。「ノエル!お前快盗なんだから警察足止めしておけよ!」「ノエル!お前は警察なんだから我々に協力しろ!」と言いながら逃げる快盗、追う警察、舞台から去っていく6人→「オーララー、結局こうなっちゃうんだねぇ。でも僕は快盗と警察、どちらかなんて選べないよ。だって僕は、魁利くんたちも圭一郎くんたちも、どちらも大好きだからね。(高所にいるアルセーヌを見ながら)ね、アルセーヌ」ノエル「きみはどっちを応援する?」ノエル一礼、幕が閉じる。
・本編最終回で描かれなかったその後のノエルの心境を描いてくれてよかった。
・映像化希望。せめてオープニングだけでも!画質悪くてもYoutubeでもTTFCでもいいから!最終回のノエルの消化不良に困惑している視聴者のためにも!
・金子香緒里さんの脚本最高
・映像化が無理ならどこかの本に第5弾の脚本をそのまま収録して下さい。よろしくお願いします。あ、できれば第2弾の脚本もお願いします。これはただ個人的に私が見逃したから。
■Gロッソキャスト うろ覚え
・初美花とつかさの太もも黒タイツだけでチケット代は出る(最重要項目)
・第4弾で快盗の皆さんは仮面を付けており顔が見えない場面が多々あったのですが、第5弾は全員正体バレ後のため、顔出し快盗衣装で最高に美麗でした。魁利くんと透真くんと初美花ちゃんの美しいお顔がよく見えました。
・工藤は少し髪が伸びた、髪色も本編時より黒に近くなった
・魁利くんウィッグなんだろうけど違和感なし
・ノエルもちょっと髪色が暗くなったけど違和感なし
・圭一郎が小顔でスタイル良すぎてびびった
・ノエルのアクションには大人も子供も男も女も観客全員がきゃっきゃきゃっきゃと喜んでいた。ノエルが回るたびにみんな大騒ぎで拍手喝采。
・全員イケメンで全員かわいい
・ていうかみんな皮膚が発光して見えた。表面がつるつるで淡く光っていた。なぜ?皮膚にLEDが埋め込まれているの?
・最後にリュウソウレッドが来てくれた。魁利「今日はこのあと、素敵なゲストを招いています。(なんか圭一郎に横から言われる)あ、ゲストじゃなくて俺たちとともに戦う戦士です」からのリュウソウレッド登場。元気に飛びはねてた。レッド二人はそれを見ながら「元気ですね」「元気だね」といい花火回のラストのように微笑み合っていた。「ルパパトロスの皆さんもいると思いますが、まだまだルパパトもいろいろ続いていくんで。今後ともよろしくお願いします。」と魁利くんが言ってくれて、会場はやさしさに包まれた。
・ちなみに最終回放送直後の回も行ってました。客席のテンションがものすごい高かった。圭一郎「皆さん、最終回見てきましたか?見てきたひとー!(\はーい/)あれを見て、よく来られましたね!」魁利「帰ったらまた録画見てね!」工藤はちょっと泣いていた。
ハロー!プロジェクトは「ハロメン」と「事務所」と「ハロヲタ」の三位一体によって作られている。突然だが私はずっとそう考えている。ちなみにつんく♂とまことはこの場合「ハロメン」にあたる。
「ハロメン」はたくさんいる。新しい子も次々入ってくる。でも、残念ながら、2018年は私が好きなハロメンが次々卒業を決めた。そういう時期なのだろう。
「事務所」についてはもうあえて何も言うまい。いろいろ事情もあるのだろうし頑張っているとは思うが、少なくとも今年は現状維持目的の活動が目立って新しいアイディアに乏しかった。つまり今年のハロプロは「ハロメン」と「事務所」に新要素が少なく、私はあまり楽しめなかった。
「ハロメン」と「事務所」が低調なとき、見ていて一番面白いのは3番目の要素「ハロヲタ」である。つまり客席が一番面白い。完全に本末転倒だけれど、「ステージよりも客席が面白い」という状況はハロプロにおいてしばしば発生する。
伝説の名曲『ロマンチック浮かれモード』など新しいヲタ芸を次々と生み出した時期もそうだった。そもそもヲタ芸は黄金期を終えたモーニング娘。の人気が急落し、大きい会場にもかかわらず後方席がガラガラでどうしようもないコンサートにおいて自然発生した鑑賞方法である。ステージが豆粒にしか見えない後方席が来ちゃった、どうしよう、周囲はガラガラで盛り上がりに欠け正直つまんない……という状況において、それでもコンサートを楽しむために作り出された応援方法なのだ。どうせステージは見えないから前方を見ない動きがたくさん入る(完全に横や後ろを向いたり、ぐるぐる回ったり)。周りに客がいないから振りが極端に大きい。手足も大きく動かす。ヲタ芸とはもともと、ステージが見えず音しか聞こえないガラガラの環境で楽しむためのいわば「ヤケクソの祭り」だったのだ。
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だからモーニング娘。の人気が落ち着いて、来客数に見合った広さの会場でコンサートをするようになった(つまり狭い箱でライブをするようになった)ハロプロからヲタ芸は消えていった。そりゃそうだ、ステージが見えるならステージを見るに決まっている。あんなに動かれると隣の客に迷惑だし。ヲタ芸はハロプロから飛び出してアイドル声優や地下アイドル界隈へと流れていき、Youtubeやニコニコ動画に受け継がれ文化として花開いた。
青空期~プラチナ期の2003~2007年頃にハロプロの現場で成熟したオタク文化もそうであった。「推し」という概念や「推しメン」という言葉・誰でも大好き(DD)・箱推し・現場推し・サイリウム祭り・生誕祭・現場でのコール・振りコピ・踊ってみた・リリースイベント・握手会・チェキ2ショット撮影・そのためのCD大量購入・はがし・手のひら確認・カラーTシャツ・人気投票・年間楽曲大賞・匿名掲示板での活発な議論など、当時のハロプロの現場で成熟した文化は、その濃いファンたちが他の地下アイドルやAKBに流れていったことにより、まるでAKBグループにおいて生まれた文化であるかのように喧伝され世間で消費された。
それでも私たちハロヲタはどんな時期でも、自分たちがおたく文化の作り手の一部を担ってると過度に自負していた。握手会でアイドルを襲撃するAKBオタクが発生した年に、モーニング娘。のコンサートではなぜかアンコール中の誰もいない舞台に上がってピアニカを披露する オタクが爆誕した。アイドルが誰もいないステージに登って、ハロヲタの皆さんに自分の演奏を披露したい。これは確かに私たちハロヲタの一つの夢である。大きなコンサート会場では、終演後いつも場外で自作の紙芝居を披露しているオタク さんがいる。私もつい足を止めてしまう。「結局道重」というTシャツを着てブレイクしているロックバンドもいる。どれもこれもハロヲタらしいエピソードだ。ハロヲタの応援方法はいつも独自で特殊で、私はそれを見るのがとても好きだ。そして2018年、ハロヲタはTwitterでの宣伝力と現場の即興コールでDA PUMP再ブレイクのきっかけを作った。
たとえハロプロに面白みを感じられないときであっても、ハロヲタはいつだって優しくあたたかく変わらぬ姿でコンサート会場にあり続けている。中の一人一人は入れ替わっているはずなのに、なぜか寸分も変わらずそこにある。みんなを見てると心が躍る。重低音の聴いた地響きのようなコールを聴くと、私も元気が出る。私はいつもファミリー席で一人静かにペンライトを握っているただの暗い女オタクだけど、みんなのことを勝手に20年来の友人だと思っている。たとえ去年モーニング娘。が好きになったばかりの人でも、10代でも、ハロヲタであれば全員わたしの20年来の親友だ。私はずっとみんなに励まされている。
素知らぬ顔をしていたけど、ルパンレンジャーのGロッソにもきちんとハロヲタは来ていた。工藤に迷惑をかけないように、「ハロヲタのマナーが悪い」って言われないように、まるで大人の特撮オタクや母親や父親であるかのような顔をして、きちんと現場に来ていた。工藤の顔が映っているグッズを東京宝島で買い漁っている仲間をたくさん見た。私には同族がわかるのだ、だって私もそうだから。私達は名前も知らず顔も知らず、ただ現場やSNS空間で時折すれ違うだけの間柄だけど、魂の底でつながっている。
2018年の私はハロヲタとして散々であった。過去に10年間推していた吉澤ひとみちゃんが逮捕された。ハロプロの未来を今後10年間支えると確信していた梁川奈々美ちゃんが引退を決めた。大好きだった『HUNTER×HUNTER』には自分があまり得意ではないアイドルのネタばかり散見されるようになり、とても読みにくくなってしまった。
私のおたく心は負傷し、回復にしばらく時間がかかる。それでも他のハロヲタが、他のメンバーを推しているみんなが、ハロプロを支えてくれている。私がプラチナ期のモーニング娘。とベリキューを支えている間になんとか鞘師が来て、9期10期も入って、たくさんのドルヲタがハロプロに戻ってきたように、私も次の素敵な女の子がハロプロに入ってくるまで過去の名曲でも聴きながらゆっくり傷を癒やそうと思う。
1位 もう 我慢できないわ ~Love ice cream~ / モーニング娘。’17 (尾形春水、羽賀朱音、加賀楓、横山玲奈)
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つんく♂の中にいる14歳少女に逢うために私はハロプロの曲を聴いている、そう改めて実感させてくれる一曲。つんく♀ちゃんかわいいいい!!会いたかったよ!!ずっとずっと君に会いたかった!!!
冷静に戻って分析すると、私はつんく♂の「性に目覚める前の女子」と「性に目覚め始めたばかりの女子」と「好きな人とセックスをする決意をした女子」の歌が好きなのである。その方向で一番大好きなのは『夢見る15歳』。次に好きなのは『愛しく苦しいこの夜に』。残念な方向で大好きなのは『大人の途中』。この観点において『もう 我慢できないわ ~Love ice cream~』は一粒で二度楽しめる貴重な良曲だ。
シンプルに歌詞を読めば、アイスクリームに偏狂する変わった女子のお話である。ただの食欲旺盛な女子だ。でも、性行為やオーガズムを知ったあとの女にとって、この歌の「アイスクリーム」は彼氏やセックスの暗喩になる。ふと気がつくと頭の中アイツのことでいっぱいになるんでしょ。暑い日は当然、寒い日も震えながらほしいんでしょ。寝る前も求めちゃうし寝起きからのガツンでしょ。普段は忘れているのにふとした瞬間に思い出したら、他のすべてが手につかないんでしょ。えっちだなぁ。直接的すぎてこちらが照れるほどだ。無邪気な少女時代には、この曲のタイトルはただのアイスクリーム・ラブなんだけど、恋を知ったあとはアイ・スクリーム・ラブになる。愛を叫んでいるんだよね。完璧なダブル・ミーニングだ。つんく♀ちゃんすげぇよ!
モーニング娘。に加入したばかりのまだ擦れていない新人女子を選んでこの曲を歌わせている点も素晴らしい。彼女らは前者の感覚、つまり「ただの食品の歌」と思ってこの曲を歌う。後者の意味に気が付く年齢の女子には決してこの曲をあてがわない。これがまた、たまらなく味わい深い。終盤の「初めからないならば諦めもつくけれど、知ったからはもうやめられない!」という歌詞には、歌い手がもう一つの意味を「知った」あとに、振り返って赤面することができる二重構造が仕込まれている。「そういうことだったのか!騙されたよ!何を考えているんだつんく♂さん!いや、確かに、知ったからにはもう元には戻れないな……」と思う瞬間が、彼女たちの人生にも必ず来る。素晴らしい。はーちんとあかねちんとカエディとよこやんは、この暗喩にいつ気付くのかな?もちろん気付かなくてもいいし、実は最初から気付いていてもいいよ。
はーちんがいる間にこの曲を生で聞くことができなかったことが私の2018年オタク活動最大の心残りである。この曲を聴くために私は武道館のはーちん卒業公演に行ったのに、セットリストに入ってなかった。はーちんの名台詞「この感動を共有したい」が聴ける『Oh my wish!』もなかった。なんでだよ!卒業コンサートだというのに、はーちんを活躍させるつもりがないでしょ!?嫌になっちゃうよ!そんなセットリスト組むようだから、はーちんという逸材に逃げられるんだよ!はーちんは最も道重さゆみに近い存在だったのに!(5位につづく)
2位 眼鏡の男の子 / BEYOOOOONDS
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最高。こんなにトンチキな曲なのに、終始笑いをこらえながら見ていたのに、最後まで見たら突如、自らの青春の記憶ともう二度と戻ることのできない失われた時間がよみがえってきて私は泣いていた。不覚。星部ショウさんの現時点での最高傑作だと思う。聞くところによると、この曲は星部さんが一番最初に事務所に持ち込んだ作品らしい。マジかよ。これが星部さんの本当にやりたい事なんだよな…。すげえな。一番の自信作がこれってことでしょ。めずらしい感性の持ち主だ。間奏のバックに流れてるつぶやき「megane…niau… megane…suteki…」も好き。いい意味で頭がおかしい。一体何を考えてるんだ。
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無駄に高い技術力(彼女らはおそらく生歌をテレビで披露するのも人生初のはず)、演劇仕立てのダンスと歌詞と奇妙な衣装(麻雀牌柄の洋服なんて初めて見たよ)、小芝居の始まりと終わり風のイントロとアウトロ、そのくせ丁寧に描かれる思春期の都会の少女達の日常風景描写。これらすべてが見事に融合して、笑えるけど泣ける群像劇ができあがっている。
BEYOOOOOOOOOOOOOOOONDSの「小劇団をテーマにしたアイドル」というコンセプトを最初に聞いた時は「もー、事務所ってばまた変なことを言いだしたよ!いつまで変化球を投げるつもりなの?ハロプロでは普通に歌って踊える可愛いアイドルグループを絶対に作りたくないの!?」と大いに失望したのだけれど、この曲を聴いて評価が180°変わった。こんな曲があってこの曲でデビューするなら、小劇団アイドルは大正解だ。必要以上に芸達者な子役である桃々姫(女弁士役)と、地方アイドル上がりのくるみとみぃみと、電車好きのハロプロ研修生と、どこからか突然現れたお嬢様高校生・島倉りかと、圧倒的センターオーラのゆはねちんを同時に使うには、むしろこのくらいどぎついパッケージじゃないとダメだったんだろう。
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ところがこの曲の続編である『文化祭実行委員長の恋』になると、私はとたんに恥ずかしい。共感性羞恥を発動して聴いていられなくなってしまう。なぜだ?「文化祭実行委員長が地味な男子に無理やり女装させる」「そこで彼のかっこよさに気付く」「彼女になる」という展開が、まるで現実味がない絵空事に見えるからか?もともと可愛い女の子の前田こころちゃんを男子役にした上で女装させるというねじれた行為に残酷さを感じてしまうからか?(普通に直球で可愛い女の子をやらせてあげなくていいの?)それともサビのパンチライン「彼は美人な男の子」が、古くより耽美小説やBL漫画で常用されている「使い古された文言」だからか?とにかく恥ずかしい。見ていられない。この違いは一体何なんだろうね。
3位 今夜だけ浮かれたかった / つばきファクトリー
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児玉雨子さん珠玉の作詞。先ほどは「つんく♀が作る、好きな人とセックスする決意をした女子の歌が好き」と書いたけど、この曲はまさに好きな人とセックスをする決意をした女子の歌である。「ねえ わたし ほんとうを言うとこのまま帰るの いや、いや」「今夜だけ浮かれたかった 真面目心がじゃまをした」「口を滑らすはずだった」「誰にでも話せるような 思い出作りはしたくない」あたり、勇気を出して誘いたいけど誘いきれない思春期の少女の迷える心情がきれいに描写されている。雨子最高。歌詞から夏の夜風と火薬の匂いがするよ!
この曲の真骨頂はCメロの「浴衣を着なかった理由 まぶたをさす髪の毛 どしたら輝けるの 泣きたいわ」である。メンバー全員が浴衣を着たMVにもかかわらず、この曲の主人公は浴衣を着てないんだよ!最後まで聴くとそれが判明するんだよ!「浴衣を着なかった理由」それはもちろん、途中で脱ぐつもりだったんだよ!意中の相手とどこかの屋内で、裸になるつもりだったんだよ!自分で着られる服にしたんだよ!
でも、できなかったんだよね。少しの勇気を出すことができず、浮かれることもできず、彼女は玉砕する。グループで花火を見に行って精一杯頑張ったのに、決定的な一言を言えなかったんだよね。駅のロータリーで解散するんだよね。「なんでもないよ さようなら」と言って電車に乗るんだよね。帰り道、星空を見ながら「今夜だけわがまま言えば 星空を見なくてすんだ」と回想してるんだよね。うわー!最高の描写!甘酸っぱい!ほんの少し勇気を出して誘い文句を言うはずだったのに、言えなかったんだよね~!わかる!わかるよ!私も小野田さおりんに片思いされる少年になりたい!または、そんなさおりんの横顔を心配そうに見つめる女友達になりたいよ!
4位 素直に甘えて / Juice=Juice
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Juice=Juice 2ndアルバムの一曲。朋子の声とボサノヴァサウンドが最高にマッチしている。かなともの歌声が好きだからこの曲が好き。自分でも属人的な選曲だと思う。この曲はかなとものための曲だよね。アルバム曲と言うこともあって、Juice=Juice不動のセンターである佳林ちゃんの出番は少ないけど、この曲の大人の女性の誘惑描写は佳林ちゃんには合わないので、これでいいと思う。
段原瑠々の「今時なフリだけは一丁前」、かなともの間奏あけの「男のくせにおしゃべりが過ぎるわ 愛してみたいのなら本音を晒して」(※とても好きなパートだけど、あまりにジェンダーバイアスの強い歌詞でどうかと思う)、稲場まなかんの終始クネクネした動き、すべてが大人。幼い少年を誘惑する大人の女性を演出している。そして最後の最後に、最年少の梁川奈々美ちゃんによる「覚えて~cherry~♪」。ここで我々ハロヲタは盛大にずっこける。まさにハロプロ。このミスマッチこそハロプロの真骨頂である。やなみんはきっとcherryの意味を「さくらんぼ」しか知らないはずだ。それがいい。「さくらんぼだと思ってるなー」って歌い方しかできないやなみんが、cherryの意味を完全に把握した大人の女性になったのちに、またこの曲を歌う。歌い方もきっと変わる。その時が来るまで10年間、この曲とやなみんの成長を見守るのがハロプロの醍醐味だ。それなのに!やなみんは卒業してしまう。いやだ!そんなのいやだよ!
やなみんがいなくなってしまうことを私はまだ信じ切れていない。卒業するコンサートの箱がとても小さいことも悲しい。絶対に入れないじゃん、誰だよ会場決めたやつ。もっと大きいところでやれよ。武道館でやれよ。ひなフェスでやれよ。できたはずだよ。
他の人のことは知らない。少なくとも「私にとって」2016年に行われた新体制は失策であった。私が好きだったグループはどんどん形を変え、好きだったメンバーはどんどんアイドルに見切りをつけて辞めていく。それでもこの計画を主導した人たちは決して責任をとらない。決して失敗とは認めないし、計画の変更もしないし、損切りもしない。損切りをさせられているのは人生をかけている若い女子たちである。カントリーがあんなことになっていなければ、やなみんはまだ辞めなくてすんだはずだ。
そもそも現在のハロプロは誰が責任者なのかさっぱりわからない。作品をプロデュースするにあたり顔も名前も出さないでいいんだから、責任なんて取れるわけがないし取る必要もない。そりゃそうだ。でも、それって、芸術作品と言えるのかな? 作品を作るという行為は、その作品が生み出す良い影響も悪い影響もすべて自分の名の下に責任を取る覚悟 があるからこそ、許されるのだ。コミケや同人誌やpixivでさえ、奥付に作者名のない作品など許されない。
首謀者の顔も名前もわからないまま、ハロプロはきっと今後も続いていく。どんな失策をしても何のダメージもなく、のうのうと同じ場所に同じ首謀者たちが座り続けるのだろう。それは何より私の心を萎えさせる。つんく♂の「責任者がないならば組織である意味がない」という歌詞はシンプルに今のハロプロを指していると私は思う。SNSでは日大ラグビー部のタックル問題を予言しているといわれていたけど。
4位 自由な国だから / モーニング娘。’18
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決して好きなメロディではない。制服の衣装も好きじゃない。でも、私のための歌詞だから。「この曲は私のためにある!この歌詞は私のために書かれた!」 と感じる瞬間が今まで何度もあった。2018年ハロプロ歌詞だけランキングでは堂々1位である。
この曲はとにかくサビだ。「自由な国だから 私が選ぶよ」このワンフレーズだけが私の脳内で何度も反復される。特に去年の夏はそれが顕著で、医学部受験の女性差別のニュースを見るたびに、そのニュースを受けて自分の身を守るためのポジショントークしかできない現役医師たちを見るたびに、外野から物知り顔で意見を述べているつもりで実はただ自分の中の差別意識を露呈している状態の人を見るたびに、この曲のサビが何度も脳内で再生された。
つんく♂さんは「自由な国だから 私が選ぶよ」って言ってくれるけど、この国は自由な国じゃなかった。私たちは、ちっとも選んでなんかいなかった。私が自分で選んでいるかのように、とりつくろわれているだけだった。
私は医者になることを自分で選んだ。そのつもりだった。でも、そうじゃなかった。自分で選んでいる「つもりに」させられているだけだった。私たちはだまされていた。 男も女も現役生も多浪生も、医学部受験生はみんなだまされていた。公開されていない条件で競わされていたんだから、受験生はみんなだまされていたのだ。
「自由な国だから」を聴くたびに、私は強い悲しみにとらわれているだろう当事者の女子を思って泣いてしまう。今も「自由な国だから」を聴くと涙腺が緩む。「つんくさんはそう言ってくれるけど、日本はちっとも自由な国じゃなかった!選ばせてもらえなかった女の子たちがたくさん、たくさんいるんだ!私の後輩になって、私の仕事を楽にしてくれるはずだった女の子たちだよ!」 と叫んでしまう。
自分で選んだわけでもない「性別」のみによって明確に差別されたこと。いくら努力をしてもすべてを無にされること。そのくらいの圧倒的な差別を受けること。その差別を平然と、悪びれもなく、正当化する人たちがかなりの数でいること。そんな人たちが複数の大学の医学部の上層部に居座っていること。すべてが苦しくて、すべてが悲しい。
「あの時のセリフとニュアンス全然違うね 恥ずかしくないのが不思議だよ」という歌詞も、差別発覚後の医大側の対応に寄り添う歌詞だった。順天堂大学が出してきた、面接での男女差別を「(男子と比べ)女子のコミュニケーション能力が高いから」としたいいわけ、それを保証する根拠として米国の論文を出してきたのを見たとき、私は笑ってしまった。まさに「恥ずかしくないのが不思議だよ」。それ以外の感想を持てない。そんないいわけして恥ずかしくないのが本当に不思議だよ。
(もちろん論文の作者であるアメリカの学者・米国のテキサス大のローレンス・コーン教授は反論している 。自分の論文を差別の根拠に使われてはたまったもんじゃない。当たり前だ。そんなことをされたら学者生命の危機だ。優生学の発展に寄与したナチス・ドイツの学者と同じ道を歩みたい学者など、どこにもいないのだ。)
私の後輩女医になるはずだった賢い女子学生達を苦しめることは絶対に許さない。少なくとも社会学的には「2018年当時の日本には明確な女性差別があった」例として、この事件は永久に教科書に載ることが決定している。その点では東京医科大学と順天堂大学と北里大学と聖マリアンナ医科大学(反論中)は歴史に名を残した。決して医学的業績ではないけれど。
ニュースを見るたびに私は怒りでどうにかなりそうだった。あまりに心が傷付き、目に入る何もかもを暴力的な言論でねじ伏せてやろうか、という衝動が沸くほどであった。私たちが「1928年のイギリスでは女性一人で図書館に入ろうとすると断られた」というヴァージニア・ウルフの文言を見て「うわー、当時のヨーロッパは野蛮な差別社会だったんだね……」と冷笑さえ浮かべるように、「2018年の日本では女性が医学部入試で減点されていた」という事実は、未来人にとって、2018年現在の日本があまりに野蛮で差別的な失笑ものの時代であることの証左となる。これはもう決定事項だ。だから私が個人的に憤る必要はない。わかっている。正しくない衝動だって自分でもわかっている。それなのに、ニュースを見るたびに怒りの業火が私を包んでしまう。
でも、つんく♂さんが私の代わりに怒ってくれてるから。 「自由な国だから」って高らかに宣言してくれているから。だから私が大声をあげて抗議しないですんでいる。 きっとそうだ。ありがとうつんく♂さん。これからも、憤りが私を支配するたびに『自由な国だから』を聴くよ。そしてこの世の残酷さを思って泣くよ。そしてこれからも「私が選ぶよ」。自由な国だからね。朝どの靴をはいていくかも、化粧をするかしないかも、スカートをはくかズボンをはくかも、タンポンにするかナプキンにするかも、コンドームと低用量ピルのどちらで避妊するかも、ドトールのミラノサンドをAにするかBにするかCにするかも、住む場所も、もちろん職業も、この文章を上げることさえも、すべて私が選ぶよ。私の選ぶ権利を迫害する存在には全力で立ち向かっていくよ。
5位 Are you Happy? / モーニング娘。’18
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この曲を聴いていると脳がしびれる。頭蓋骨がゆれる。とんでもない熱量と圧を感じて一歩引いてしまう。「ここから出して!」の連呼と「すごい好きだから すごい寂しい」「一緒にいた後は 不安しかない」での主人公女子の意識のゆらぎにつられて、私の心も揺さぶられるんだろうな。
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(1位から続く)はーちんは可愛かったなぁ。はーちんがいなくなって私はかなしい。量産型でない個性的な顔立ちなのにとびきり可愛く、一発で顔が覚えられる子だった。声質も可愛かった。頭もよかった。根性もあり、それを表に出さずにスイスイと動ける子だった。彼女に足りないのは歌唱力だけで、それ以外は何もかもを持っていた。それなのに彼女はいなくなってしまった。今のモーニング娘。は、はーちんがのびのびと長期間いられる環境ではないのだ。その事実が悲しい。
この曲ははーちんの卒業曲であり、はーちんの歌だと私は思っている。「ここから出して!」も「来年の誕生日の分 先に愛してね」も、そのままはーちん。モーニング娘。を辞めて名門大学を目指す関西上流階級出身の女子の歌だ。
おそらくはーちんの家族、はーちんの住んでいる世界において、彼女がモーニング娘。であることにそこまで高い価値はない。我々おたくにとってみれば「この世のすべて」と言ってもいいほど高い価値をもつモーニング娘。だけど、おそらく関西名門私立高校出身、フィギュアスケートをたしなむ御家庭において、モーニング娘。であることにそこまで価値はない。大学卒という学歴の方が家庭内での価値がよっぽど高いのではないだろうか。いや、ひょっとしたら「大学に行ってない人間など親戚じゅう見渡しても一人もいない」レベルかもしれない。大学に行かないこと自体があり得ない、考えられない環境なのかもしれない。
はーちんはきっと人一倍苦労しただろう。さまざまな大人の意見に挟まれて、自分が何者で何をしたらいいかわからなくなったのではないか。なんで自分がモーニング娘。に選ばれたのかも、よくわかっていなかったかもしれない。彼女は唯一無二の存在だから選ばれて当然なんだけど。その美貌と上品さと頭の良さ、自己主張の少なさ、すぐに溶けてしまう春の薄氷のような儚さは、彼女のイメージカラーである水色と相まって他の誰にもない魅力を醸し出していたのに。
2番のはーちん唯一のソロパート「努力してるでしょ わたし 幸せになりたい」のはーちんのアップが映るところで、私はいつも悲しい気持ちになる。そうだよ、はーちんは努力していたよ。誰よりも人一倍努力していたよ。はーちんが10年間いられるような、10年後に立派な花を咲かせるような、そんなモーニング娘。であってほしかったよ。
はーちんは道重さゆみと入れ替わるようにモーニング娘。に入ってきた。はーちんは誰よりも道重さゆみに近い存在だったと私は思う。さゆに憧れて芸能界に入ったアイドルは山ほどいる。でもその誰よりも、はーちんは道重さゆみに近かった。さゆのことを全く意識していないはーちんこそが、10年後に道重さゆみになれる。最初は歌もダンスも下手、西日本の名家のお嬢様、とびきりかわいくて個性的な外見、かわいい声質、頭が良くトーク力が高い、ファンサービスの上手さ、画像加工能力の高さ、人知れず努力できる根性。当時のさゆにそっくりである。はーちんが10年間モーニング娘。にいられたら、彼女は道重さゆみになれたはずだと私は今でも思っている。
でも、当時と今は時代が違う。モーニング娘。はもうそこまで人気がない。将来の保証もない。はーちんを引き留められるだけの満足感と充実感を彼女に与えることは、我々にはできなかった。はーちんは芸能の世界に見切りをつけ、自分の家族の世界に帰って行く。
はーちんは頭が良すぎたんだ。はーちんも、ももちも、やなみんも、藤丼も、たぶんよこやんも、みんな頭が良すぎたんだ。だから「ハロプロに長くいても意味がない」って気が付いちゃうんだ。気付いた瞬間にもうアイドルなんてやってられなくなるんだ。わかるよ、そりゃそうだよ。だって今どき、満足に大学にも行かせてもらえないくせに、25歳で追い出されるんだよ! そりゃないよ!現在の20代子女は、大学新卒就職がうまくいかなかったら将来飢え死にする危機感をもって就活に挑んでるんだよ!寿退社とか25歳定年とかあまりに非現実なんだよ!子供が生まれたって仕事は続けるんだよ!片方の親だけじゃ収入が足りないから!給料は上がらないから!高度経済成長時代のおじいちゃんたちと価値観がまるで違うんだよ!
こんなにハロプロが好きな私も、自らがハロプロに入ろうとは思わない(※もちろん見た目的にも年齢的にもまったく!入れるはずない!ってことはわかってます※)。私から「学問の自由」と「表現の自由」を奪う団体に私は所属できない。ハロプロ大好きだけど、その中に入ってたった一度の人生をかけることは絶対にできない。だからこそ、ハロプロでアイドルに人生をかける決意をした女子のことは全力で応援する。はーちんは彼女の魅力が詰まった儚く素晴らしい卒業コンサートをした。はーちんが大学に行きたいと思うのは当然の欲求である。「学問の自由」は憲法で保証されている。自分にしかないやり方で幸せになって欲しい。
6位 フラリ銀座 / モーニング娘。’18
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フラリ銀座好き。つんく♀ちゃんの恋する乙女の歌がモーニング娘。のシングルで炸裂するのは久しぶりである。うれしい。
銀座から日本橋まで思ったより近いんだな、という現実感と、「腕組んでると二人 星まで行けそう」と感じる、時空を超越した高揚感。この2つが同居している歌詞の世界観がたまらなくつんく♀。好きだ。いつものつんく♀ちゃんの発情ソングだ。
そしてこの曲は石田亜佑美の曲だな。仙台の可愛い田舎娘が、あの!噂で聞く都会の街!銀座に!行くから!すごく頑張って!はしゃいじゃっている!様子がとてもよく出ている。ワクワクが手に取るように伝わる。自分なりに頑張った(結果的にレトロになってしまった)服で、初めて銀座に行く!しかも彼氏と歩く!その高揚感(星まで行けそう)と身近な現実感(銀座から日本橋まで思ったより近い、飯もうまい、という実際に街を歩いてみたときに心に浮かぶ意識の流れ)の両立が素晴らしい。ダンスのセンターをあゆみんが張ってるのは当然だと思う。
7位 46億年LOVE / アンジュルム
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往年のSMAPの名曲を作っていた林田健司さんの曲。ハロプロ提供はこれが初めて。ファンキーでとてもいい曲だ。むしろなぜこの曲を男性アイドルに提供しなかったんだろう?ジャニーズの男性アイドル達が歌っていれば、かなりのヒット曲になったのでは?そっちの方が林田さんのもらえる印税額も多かったのでは?こんなにいい曲をもらえて、我々ハロヲタとしては本当に嬉しいしありがたいのだけれど、純粋に不思議です。
アンジュルムはこれまでいろいろな路線を模索してきた。その中でも私はファンク路線が好き。『臥薪嘗胆』が好き。『うまく言えない』が好き。男性ボーカル加工された『臥薪嘗胆』がとても好き。
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こういう男性ファンクボーカルっていま、岡村ちゃん以外あんまりいませんよね。当時のSMAPや一時期の関ジャニ∞が担っていた役割。誰か来てくれ!和製ファンクで女性ファンを魅了してくれ!待ってます。
8位 ハロー! ヒストリー / ハロプロ・オールスターズ
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ヒャダインさんがとても丁寧な仕事をしてくれている。ありがたい。ヒャダインさんはハロプロ全グループをよく見てるなぁ。もっといろんな場面でこの曲を歌って欲しい。
ドラマ主題歌になった『蓼食う虫も like it!』より、『ハロー! ヒストリー』がずっとずっと好きだ。ていうかどうしてドラマタイアップが『蓼食う虫も like it!』なの?ハロプロ楽曲大賞を取った『46億年LOVE』がB面扱いなのはなんで?
もちろんヒャダインが悪いわけではない。だってヒャダインの作った他の曲、『ハロー!ヒストリー』も『WE ARE LEADERS! ~リーダーってつらいもの~』もすごくいいのだから。どうしてハロプロは、良い商品ほど奥に隠して陳列するんだろう?どうして?客として純粋に不思議。結局のところ、ハロプロという組織はたくさんの大人の声が入れば入るほど楽曲がダメになっていく 場所なのだと思う。なぜかは知らない。
9位 雑煮でケンカしてんじゃねーよ / 宮崎由加(Juice=Juice)、牧野真莉愛(モーニング娘。’17)、川村文乃(アンジュルム)
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これから正月のたびに脳内でこの曲が流れる。確実に毎年流れる。私の灰色の脳細胞はそういうしくみになっている。雑煮でケンカなんか誰もしないわ。でも「雑煮」を話のネタにさまざまな食卓で自分の生家の風習について語らなければいけない場面は、私のこれからの人生においてきっとたくさんある。毎年ある。そのたびに私の脳内には「雑煮でケンカしてんじゃねーよ♥」という宮崎さんの少し外れた可愛い歌声が流れ続けるのだ。彼女が卒業した後も、歳をとった後も、ずっとずっと。こんなに恐ろしいことはない。渡部チェルさん恐るべし。
以上です。2018年は豊作の年でした。つばきファクトリーの曲ぜんぶ、「Never Never Surrender」「銀色のテレパシー」「春恋歌」「青春シンフォニー」「夜中 動画ばかり見てる…」「マナーモード」「Uraha=Lover」もよかったですが、特記すべきことが少ないので割愛しました。
2019年は術後5年を迎えるつんく♂さんの復活 と、BEYOOOOOOOOOOONDSの展開に期待しています。奇妙奇天烈だけど現実味がある(ここ大事)小劇場をお願いします。(2018/3/20)
『快盗戦隊ルパンレンジャーVS警察戦隊パトレンジャー』のおもちゃが売れていない。特撮好きの大きいお友達の間では「ルパパトは脚本も面白いし、役者も人気だし、Twitterのトレンドにいつも入っているのに、どうしておもちゃが売れなかったんだ!!」という議論が真剣になされている。その議論をしているお友達一人一人がその時間を使ってAmazonを開きビークルの一台でもクリックしてくれればいいのだが、決してそうはならない。まあそれはしかたがない。
脚本とストーリーは戦隊モノとして近年稀に見る面白さである。この面白さはデカレンジャーやマジレンジャーやシンケンジャーやゴーカイジャーやキョウリュウジャーに匹敵すると私は思っている。つまり、戦隊ものとして破格の面白さである。パトレンジャー側の年長者である朝加圭一郎とつかさ先輩のキャラクターは非常によくできているし、現代的で正しいヒーロー像である。特に朝加圭一郎というキャラクターは昔からある熱血真面目主人公に見せかけて、きちんと他人の事情を思いやり現実に即した結論を瞬時に導き出す柔軟さをもあわせもった新しい形のヒーローである。理想的な上司と言ってもいい。対するルパンレンジャーは、ダークヒーローとして今の子供向けテレビで表現できるギリギリのラインをついた「やんちゃ」をきちんと表現している。彼らは現在の法制度では決して救済されない犯罪被害者家族なのだ。誰も助けてくれないからこそ、自らの手を汚してでも大切な人を取り戻そうとして戦っている。しかも3人のうち2人は未成年だ。どちらの集団にも理がある。だからこそ悩み、互いを疎ましく思いながらも互いに引かれ合うのだ。その対立をきちんと手を抜かず表現しているし、子供にも理解できるちょうどいい複雑さだと思う。「いつものVS戦隊の映画は開始10分で共闘してるし、今回も夏にはもう一緒に戦うでしょ!」というこちらの予想を覆して、終盤まで対立した信念をもってそれぞれの敵と戦っている。その中でキャラもきちんと成長している。関係性の変化も丁寧に描かれている。ギャグも多くクオリティが高い。適齢期の息子たちもストーリーとキャラクターに惹きつけられながら、楽しんで見ている。ガワのデザインも美しい。快盗衣装と国際警察の制服もかっこいい。「工藤はとんでもない当たり戦隊を引いたな!さすが工藤!もっている女だ!」と上半期は強く思っていたし、今でも思っている。
しかし、保育園で息子の周囲の戦隊モノの適正年齢(3~5歳)男子を見渡してみても、ルパパトのおもちゃを持っている子はいない。番組を見ている子すら、あまりいない(時間が遅くなったのは大打撃だ。日曜朝に10時まで家に縛られるのはつらい、早ければ早いほどいいのに)。変形合体おもちゃが好きな男子はほぼ全員、シンカリオンのおもちゃに夢中である。シンカリオンを何台も所有し、かつ、ことあるごとに買い足してもらっている。かくいう我が家も、シンカリオンはすでに4台あるしクリスマスでさらに増えた。ルパパトは合体ロボとしての魅力においてシンカリオンに完敗している。実際私は、子供たちがそこまで欲しがっていなかったルパパトのおもちゃを私自身のために買っていた。
なお「なりきりおもちゃ」を好きな男子は、みな仮面ライダーに夢中である。ビルドであってもジオウであっても、仮面ライダーのベルトやコレクションアイテムを集めまくっている男児は多い。残念ながら、VSチェンジャーを持っている子供は私の周囲に見当たらない。
要するにルパパトのおもちゃの敗因は、まず第一にシンカリオンであると思う。タカラトミーが一枚上手だった。
シンカリオンのおもちゃ自体は、何年も前(2015年3月)からほそぼそと存在していた。そしてそれは一部の子鉄と、その家族にしか知られていなかった。戦隊ロボットのライバルではなかったのだ。バンダイもおそらく当初はそこまで危機感を抱いていなかったと思う。
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2018年の1月からシンカリオンのTVアニメが始まった。とてもよくできた面白いアニメだ。これによってシンカリオンの知名度が爆発的に上がった。お年玉の使い道としてちょうどいい時期だったこともあり、シンカリオンのおもちゃの人気に火が付いた。それまで普通に買えていたシンカリオンは突如、品切れ続出となった。もともと新幹線やプラレールは3~5歳男子に絶大な人気を誇る安定したコンテンツである。合体変形ギミックもよくできていて、組み立てが楽しい。電池もいらない。元に戻せばプラレールとしても使える。つまりプレイバリューが高い。しかもシンカリオンは非常に安価だ。4000円以下でとりあえず合体変形して完成した一体のロボットになる。4000円で合体ロボット一式、これは戦隊に比べると格段に安い。主役のマシンである「はやぶさ」をまず最初に買えばいいから、親も子もわかりやすい。「最初の一台」として迷わず買える。①安い、②変形がかっこいい、③一箱で完成する、④わかりやすい。 後述するがこれらはすべて今年の戦隊おもちゃから失われた要素であった。
シンカリオンのアニメ1・2話がいつでもYoutubeで見られる仕様もよかった。最新話がYoutubeで一週間無料で見られるのもよかった。Amazonプライムで過去の全話が見られるのもすごくいい。なんといっても楽だ。途中からでも入りやすい。今の子どもたちはテレビなんて不便なものを見ないのだ。親のiPadを勝手に借りてYoutubeざんまいである。関連動画からどんどん勝手に見る。YoutubeのAIが視聴者を幼稚園男児だと見抜いた瞬間に、ずばっと関連動画でシンカリオンの最新話が出てくる。あまりに訴求力が高い。宣伝効果が違いすぎる。東映特撮ファンクラブのユーザーインターフェイスの煩雑さとは比べものにならない。
保育園前の親同士の会話で「今年の戦隊は2つあるらしいですね?」「そうなんですよー、ルパン3世と銭形警部みたいな感じでね、快盗と警察が対立しつつも共闘したりするんです!」「へー。見てないや。でも、見ている人の評判はいいですね」「そうなんですよー!話はすごく面白いんです!!ぜひ見てみてください!」と宣伝しても、彼らに見せる方法がない。最新話まで追いつく方法がないのだ。東映特撮ファンクラブに入会するしかないんだよね。さすがにそれは敷居が高い。シンカリオンの追いつきやすさ(Amazonプライム会員の親御さんは多い。初年度無料だし、定期便でオムツ届けてもらうと楽だから)とは比べものにならない。東映特撮ファンクラブってば、なんであんなに使いにくいの?そもそも有料だし。あんなもんマニアしか入ってないよ。それは私。あんなもんに課金してる母親なんて見たことないよ。それは私。
つまりシンカリオンとタカラトミーは2018年初頭の合体おもちゃ商戦の「つかみ」に大成功した。合体おもちゃは最初にコアとなる部分を買わせれば「勝ち」である。細かい部品や追加アイテムを買い足すハードルが格段に低くなるのだ。逆に、最初にコアとなる部分を買わなくてすめば、一年間最後までスルーできる。買い足す壁は非常に高くなる。毎年変わる戦隊モノのおもちゃは、1年で遊ばなくなって不燃ゴミになる可能性が高い。戦隊のおもちゃを買わなくて済む年があるならば、親としては非常に助かるのだ。 1年で2種類以上の合体ロボットおもちゃを買ってもらえる家は、そう多くあるまい。「どちらかにしろ」と言われるに決まっている。そしてその「2018年最初の一体」にシンカリオンは選ばれたのだ。タイミング的にも商品の魅力的にも、2018年初頭のタカラトミーの戦略はすべてにおいてうまくはまったと思う。
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対するバンダイが年始に行った商戦は、あまり賢いものではなかった。まず、商品が出なかった。なぜか知らんが合体ロボットおもちゃの箱の発売が遅かった。なりきり変身おもちゃである「VSチェンジャー+ルパンレッドのセット」、「VSチェンジャー+パトレン1号のセット」、各メンバーのビークル単品は放送開始直後の2月から出たが、合体ロボットのセット箱の発売はなぜか3月にずれ込んだ。3月といえばすでに合体メカ好き男児の家庭にシンカリオンE7はやぶさが入庫しきったあとである。完全に出遅れている。
しかも、VSチェンジャーなりきりセットを2月に買っている場合、合体ロボの箱を買うと必ず赤のマシンがかぶる。これはあまりに不親切な仕様であり、私も大いに混乱した。
私はハロヲタなので、放送開始当初から工藤になりきる気満々だった。VSチェンジャーとイエローダイヤルファイターを手に入れればいい、ということはわかったが、どれを買えばいいのかわからない。「イエローのマシン単品」と「VSチェンジャーの単品」があればよかったのだが、VSチェンジャーの単品販売はなかった。さらに長男はブルーダイヤルファイターを欲しがり、次男はパトレン1号に変身したがった。彼らは絶対におもちゃを取り合って兄弟げんかするので、VSチェンジャーは2つあったほうがよい。そうなるとハロヲタの私は「どうせなら全部合体ロボを買おう!これも工藤のためだ!」という結論に至り、合体ロボの箱が発売されるまで待つことにした。3月になってようやく合体ロボの箱が発売、私は喜び勇んでおもちゃ売り場に向かったのだが、どれを買えばいいのかわからない。いつも売ってるいわゆる「全部乗せ合体ロボットの箱」が存在しなかったのだ。とりあえず一箱でコンプリートできる商品が以前はあったよな?あれ?どうなってんだ?
ルパンレンジャーのロボの箱とパトレンジャーのロボの箱が別々にあって、両方買うと、中心コア部分のおもちゃ(グッドクルカイザー)がかぶってしまう。
番組当初おもちゃ屋店頭にあったPOP(さっぱりわからん)
(今思うと、商品ラインナップをルパとパトの2つに完全に分けたのはあまりよくなかったと思う)
金を使うのはいっこうに構わないが、おもちゃが無駄にダブるのは嫌だぞ。さあどうしよう。困ったな。
・・・・・・この私が!いったんおもちゃ屋から撤退してしっかり検索し直さないと、何を買えばいいのかわからなかった。おもちゃがかぶらないように、かつセットの方が安いならできるだけセットで購入する には一体どうすればいいか、わからなかったのだ。多くのご家庭の場合、ここで購入への道は完全に絶たれる。勝負はおもちゃ屋の中の一瞬で決まるのだ。 「手ぶらでおもちゃ屋を出たらおしまいだ、お母さんは二度と買ってくれない」ということを、子供たちは直感で知っている。「あとで買ってあげる」などという約束は、決して守られることはない。おもちゃ屋から出てしまったら二度と買ってもらえない。どこの家の子供も知っている宇宙の真理だ。私のように、ネットを調べつくして意地でも推しメンに金を落とす執念を持った母親などどこにもいないのだ。
検索の結果、「どのおもちゃを購入すればいいか」をわかりやすく図示してくれていたのは「我が軍」ことハロヲタの女性であった。ありがとう!見知らぬ工藤ヲタさん!我々は仲間だ!ていうかバンダイ公式か東映公式がこれを出してくれよ!!
そして私はVSチェンジャー(レッドダイヤルファイター付属)とVSチェンジャー(パトレン1号のビークル付属)とグットクルカイザー単品と青と黄と緑と桃のロボ単品を購入することになった。これで兄弟でVSごっこができる。ロボットも作れる。めでたしめでたし。でもなー!購入までのハードルが高すぎるんだよー!私が執念深いハロヲタだからこのハードルをなんとか超えられただけで、一般の善良な親御さんにはとても無理だ。ロボット購入まで至れない。購入へのモチベーションが一年で最も高い「つかみ」の時期にこれをやられてしまったら、合体ロボの「最初の一台」となるきっかけは完全に失われてしまう。年の最初に戦隊のおもちゃを買わないですんだならば、一年間買わないですむ。親としてはヨッシャラッキー!なんだよ。今の適齢期児童の親の多くは氷河期世代で、金がないんだよ。
私はある日、トイザらスである家族を見た。財布の紐がゆるゆるのおじいちゃんと、母と、5歳程度の息子の三人組だ。おじいちゃんはどうやら、孫に戦隊のDX玩具をすべて買ってあげるつもりらしい。孫も買ってもらう気満々である。母は、あまり高いものや無駄なおもちゃは購入したくないという気持ちをうっすらと持ちあわせておもちゃ屋に来ている、健全で教育的な心を持った一般的な母親のようだった。私のように工藤のためなら財布の紐がガバガバのガバな母親ではない。
彼らはルパパトのおもちゃコーナーの前で30分ほど困惑していた。「どれが欲しい?どれを買えばいいの?」と母親が息子に聞くが、当然子供には答えられない。わからないのだ。じいさんは「何でも買ってやるぞ。で、どれだ?」と言っている。ルパンの合体ロボの箱とパトレンのロボの箱を左右に持った母親が、息子に「ルパンレンジャー?パトレンジャー?どっちが好きなの?どっちがいいの?」と大声で聞いている。しかし息子は答えられない。彼はわかっているのだ、ここで無理矢理どちらかを答えてしまったら、片方の箱しか買ってもらえないことを。そしてそれでは足りないことを。 私は心の中で叫んだ。「そんな無体なこと選ばせないであげて!わかる、わかるよ。どっちも好きなんだろ!?わかるよ、私もそうだよ、うちの保育園男子もそうだよ。『こくさいけいさつのけんげんにおいてじつりょくをこうしする!』と叫んで戦った後、『あでゅー』って言いながら廊下に走り去っていくもん!ルパレンもパトレンもどっちも好きなんだよ。選ばさないであげて!」と。「こんにちは!わたし通りすがりのルパンイエロー推しのおばちゃん!ルパパトのおもちゃ、どれを買えばいいかわからなくて困っているんだね!?VSチェンジャーは今、トイザらス限定ルパレン&パトレンセット(そんなものも後から出た)しかないから、まずこれね!ルパンの青と黄色は単品で買おうね。あ、合体ロボもいる?でも箱で買うとどっちも赤がかぶっちゃうよね、困ったなぁ。じゃあ単品で緑と桃とグッティも買おうね、これでいいかな?あ、礼はいらないよ、むしろこちらこそありがとう、ルパパトを好きでいていくれて、おもちゃを欲しいって言ってくれて、本当にありがとう。これからも初美花ちゃんをよろしくね!」という助け舟を出したくてしかたなかったよ。ぐっとこらえるのが大変だった。結局一家は店員さんを呼び、15分ほどアドバイスをもらった後、私の思った通りに全てのおもちゃを買って帰っていた。めでたしめでたし。しかし、これは人員に余裕がある店舗の空いている時間帯だったからこそ許されることであり、祝日やクリスマス前はこうはいかない。全国の小売店で小さな悲劇が繰り返され、機会が損失されたことは容易に想像できる。くり返しになるが、そもそも子どもはルパもパトもどっちも大好きで、両方と仲良しなノエルも大好きなので、おもちゃを分ける必要はなかったと思う。
第二に、DX玩具に遊び甲斐がない商品が多かった。
● DXダイヤルファイター各種
まずルパン側のメイン合体おもちゃであるダイヤルファイター。音が鳴らない、光らない。ただのプラスチックである。それでも、ダイヤルファイターは敵(に扮した親)の体に押し当てて金庫を開ける(ふりをする)ごっこ遊びもできるし、ダイヤル部分をカチャカチャ回すのが楽しいし、そこそこ大胆に変形してくれるから、まだいい。
● DXトリガーマシン各種
警察側のビークルは可動の喜びがさらに少ない。変形も少なく(多少パーツが伸びるだけ)転がし走行ができるだけ。音も鳴らない、光らない。VSチェンジャーに入れた後にやれることが少ない。敵の金庫に絡んだごっこ遊びもできない。これに1500円は高い。同じ1500円で、ジオウのDXライドウォッチは回転するし、光るし、過去の有名ライダーの変身音を出してくれるんだよ。同じ値段なのにあまりにプレイバリューが低すぎる。なんでパトランプを光らせてくれなかったのさ!簡単にできるだろ!
● グッドクルカイザーVSX
作中で最も多くのマシンが合体したロボットであるVSXは、両足がすぐに外れてしまうという致命的な構造欠陥がある。手に持ってブンドドドドドドドドドドがしにくい、というかできない。飾っている間はいいのだが、手に持って動かしたり空を飛ばそうとすると、両足の下駄部分がボトッと簡単に落ちてしまうのだ。これはいけない。この構造で企画を通したのは制作側の怠慢だと私は思う。子供が遊べないのだから。
手に持って動かそうとするとここがすぐ外れる
あと、ダイヤルファイター&トリガーマシンをぜんぶコンプリートしても全合体ができず、パーツが大量に余ってしまうのも地味にきつい。コンプ欲がわかない。
● DXルパンソード
メイン武器もプレイバリューが高くない。まずはルパン側の武器。鳴らないし光らない。頼むから電池を入れさせてくれ。 これではただのプラスチックの塊だ。そして 可動はマジックハンド機能があるのみ。写真の範囲だけしか動かない。
これではマルカやプレックスが毎年出しているファミレスの入口にぶら下がったミニプラスチックおもちゃと一緒になってしまう。適正価格は800円といったところか。ちなみに箱は最高にかっこいい。世界一美麗な箱だと思う。
よって定価の2800円を出すためには2000円の価値を箱に見出さなければならない。
マジックハンドとしては病院の売店でよく売っている「らくらくハンド」の方がずっと性能がいいです。これ、ベッドに乗ったまま床に落ちたものを拾うのに便利なのよね。妊娠中や手術後や入院患者さんへの差し入れにまじオススメ。
● DXパトメガボー
警察側の最初の武器、パトメガボー。こちらは鳴る。でも、鳴るだけ。光らない。なんでパトランプを光らせてくれなかったのさ(2度目)!劇中でもあまり使われない。収録音声はサイレン音と声優不明の「こちら警察戦隊パトレンジャーです!」「そこの君、止まりなさい!」「無駄な抵抗はやめなさい!」「撃退!」「ダメ!ゼッタイ斬り!」のみ。……なぜそのセリフにした?本編で聞いたことないんだけど?「国際警察の権限において実力を行使する!」をなぜ入れない?朝加圭一郎がそれ言ってくれたら売上が100倍違ったと思うよ?セリフが固まってないなら、せめてジム・カーターの声がよかったなぁ。そしてなぜ本編のように拡声機能をつけてくれなかったの?「拡声器」をつけて声を大きくする機能があったなら、「国゛際゛警゛察゛の゛権゛限゛に゛お゛い゛て゛実力゛を゛行゛使゛す゛る゛!゛」って濁点をつけて叫ぶ「朝加圭一郎ごっこ」がみんなで楽しくできたのに!!
比較商品(1445円): スマイルキッズ 拡声器 ハンドメガホン ミニ AHM-103
こちらの武器も定価2800円だが、適正価格は1000円くらいだと思う。そして番組放送中11月段階でどちらもすでに駿河屋で新品800円になっている。残念ながら当然だと思う。このプレイバリューに2800円は出せない。大人でも、よほどのコンプリート欲が強いおたく以外は買うまい(それは私)。
もちろん、プレイバリューの高かった素晴らしいDX玩具もある。
● DXエックスチェンジャー
追加戦士Xの武器。こちらはロボにもなり変身もできる。音もなる。光らないのだけは残念だけど、分解・合体・連結のメカニズムは複雑で最高だ。変身なりきりおもちゃとしても使えるし、ビークルを2つ買い足せば合体変形ロボにもなる。VSチェンジャーにも付けられる。一人三役ができるおもちゃだ。「これだよ!これ!ようやくまともなプレイバリューのあるおもちゃが来たよ!」と、ねじ子は歓喜した。ルパパトの玩具に欠けていた要素のうち「変形がかっこいい、一箱で完成する、わかりやすい」は回収できた。もちろん、この玩具はよく売れた。そりゃそうだ。玩具系Youtuberのレオンチャンネルさんも2018年ナンバーワンにDXエックスチェンジャーをあげ「数年に一度レベルの傑作玩具」と言ってました。私もそう思います。
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確かにノエルは子供に人気がある。ネットではよく「ノエルは子供人気があるから、ノエルの玩具がよく売れた」と分析されている。でもそれは少し違う。「ノエルが登場するまで、ろくなDX玩具が出ていなかった」 が正しい。私はそう実感している。
● DXルパンマグナム
ルパパトの物語の根幹は、主役・ルパンレッドのエディプス・コンプレックスとその克服にある。父ではなく兄だけれど。精神世界での「兄殺し」の描写もきちんとある。その「兄殺し」の儀式によって得られたのがルパンマグナムであり、劇中最高の強さを見せる。しびれる設定だ。ルパンレッドの直接のコンプレックスの対象である兄は現在(自分のせいで)消えており、兄によく似たパトレン1号(もうひとりの主役)との関わりによってコンプレックスを克服していく、という展開は目を見張るものがあった。
おもちゃも楽しい。一台で合体変形、ロボにも武器にもなる、VSチェンジャーにも使える。バンダイも後半はプレイバリューの高いおもちゃを出してくれたなぁ。きっとみんな頑張ったんだよね。
● DXジャックポッドストライカー
映画限定で出た合体おもちゃの新しいコア部分。
これまでは合体変形のコア部分がグッドストライカー1体しかなく、VSと銘打ってるにもかかわらずロボット同士のバトルができなかった。両戦隊のロボが並び立って一緒に戦うこともできなかった。並び立つことができないということは、どちらかの戦隊は結果的にその間「見てるだけ」になる。おもちゃの見せ場も減ってしまう。
ジャックポッドストライカーが登場して玩具好きの大人たちは色めきだった。ようやくロボが並び立つぞ!いよいよロボでもVSだ!と。音声もなく、光りもしないのは残念だったけど(頼むから電池を入れさせてくれ(2回目)) とにかくデザインが最高にいい。赤と金の配色がいい。金の冠もいい。両肩に翼が生えるのもいい。ルパンレックスの赤・青・黄・金の配色も美しく夜空に映える。黄金の羽が生えて、黄金の剣を持てるのもいい。最高に見栄えがいい。黒とオレンジのグットクルカイザーよりも正直ずっとかっこいい。(ていうか、グッティは根幹アイテムであるにもかかわらず、何がモチーフなのかさっぱりわからなかった。人参?と思っていたら、終盤のギャグ回でキツツキであることが判明。まじかよ。ぜんぜん子供に人気のモチーフじゃないじゃん……。グッティの外見をジャックポッドにしていれば売上も変わったのでは……)
ジャックポッドストライカーは映画限定おもちゃであり、登場も今のところ映画だけ、販売も映画期間のみであった。生産数も非常に少なくあっという間に売り切れ、8月の終わりにはもうAmazonでプレミアが付いている。ねじ子も近所中探し回って小さいおもちゃ屋で最後の一個を確保した。クリスマス商戦で復活させてくれればよかったのに……。サンタさんが困ってたよ……。なんで需要があるDX玩具は品切れなんだよ……。売り方が下手すぎる……。ハロプロの事務所みたいだ……。
第三に、食玩やガチャガチャで買える商品にプレイバリューがなかった。
食玩やガチャガチャでたくさん売られていたのは「VSビークルライト」という商品である。VSビークルの小型版だ。VSチェンジャーをもってないと、まったく遊ぶ方法がない。単独で音が鳴ることもなく、変形もない。劇中にも出てこないためなりきり遊びもできない。残念なことに、多くのVSビークルライトはDX版と音声がかぶっている(まったく同じ音が出る)ため、DX玩具を持っているなら買う必要がない。しかもVSビークルライトはサイズが小さすぎて、ダイヤルを回して音を鳴らすセンサー部位までおもちゃが届かないのだ。これで完全な音声を聞くためには、ここ(下図参照)のボタンをわざわざ指で三回押さなければならない。うーん、いまひとつ。これでは熱心なコレクターですら買うまい。ねじ子も、VSビークルライト限定の特別な音声が出るものしか買わなかった(上の写真に載ってるやつ)。食玩とガチャガチャの売上不振は深刻なレベルだったと予想する。
ダイヤルファイターであればここを指で3回押すと暗証番号の音声が鳴る。警察のビークルでは何も起こらない(ここでも警察側の玩具のギミックが少ない。これだけ搭載ギミックの量に差をつけながら「快盗に比べて警察の玩具が売れない」などと言われても困る)
もちろん食玩やガチャガチャで人気になった商品もある。そういうのに限って、あっという間に売り切れて放送中からプレミアが付いている。
● サウンドロップ
俳優たちの声が聞けるドロップ。ガチャガチャに入っているのを見たことがない。あっという間に売り切れたようだ。仕方ないので、中野ブロードウェイでイエローだけ手に入れましたよ。高かった。800円もした。本当は全員分欲しかったんだけど、とにかく高い。プレミアが付いてしまっている。新品のガチャがあったら鬼回しするのに、どこにも置いてなかった。子どもたちが買うチャンスは全くなかったと予想する。
※12月頃になってようやく価格が落ち着いたので、通販で全部セットを買いました。終盤になったいま聴くと、魁利くんも透真も圭一郎も声が高くて、ほほえましいです。
・スイング01弾
大泉東映の映画館(東映のお膝元)と東京ドームシティGロッソ(これまた戦隊ショーのお膝元)でしかガチャガチャを見たことがない。Amazonに全部セットはあるが、プレミアが付いてすでに3000円以上の値段が付いている。高い。Gロッソでガチャを鬼回しして、何とかルパンレンジャー全員分を確保。パトレンはもう諦めた。
※その後、お金の力でなんとか揃えました。駿河屋で。
・勇動 第一弾
唯一商品化されている人型可動フィギュア。キャンディ・トイ、つまりお菓子のおまけだ。安い割にクオリティが高い。すぐに売り切れ、店頭ではどこにも売っていなかった。特に一番人気のパトレン1号はすぐに売り切れてお目にかかったことがない。一体持ってるけど、もう一体手に入れてスーパーパトレン1号を自作したいんですが……。そういう人が多いから売り切れるのか……。バンダイのキャンディ・トイ部門のブログが、本編のテコ入れ(おそらくボーイズ・トイ部門主導)に屈しない想像合体 や想像装備 をやりまくっていたのもよかった。その心意気、私たちにはきちんと伝わったよ。
● リポビタンDキッズ ルパパトボトル
どこに売ってるのまじで。Amazonや楽天ではプレミアつきまくってるよ。近所の薬局回りまくったけど、まじどこに売ってるの。コンプリートなんて絶対にできないわ、これ。
なんとか確保したぶん。味は子供たちに好評。
● ルパンレンジャーvsパトレンジャーチョコ
CMで「見つけたらすぐに食べてみよう!」と煽っているくせに、ぜんぜん見つからない。美味しいし、スペシャルな音声が鳴るダイヤルファイターが欲しいから、当たりが出るまで買い占める気まんまんなのに、どこにも売ってなかった。なんでだよ。もうGoogleで「ルパンレンジャー チョコ」と入れるとサジェストで「売ってない」と出てくるくらい、売ってない。どうして?私自身も、ものすごい田舎のコンビニとものすごい遠くのスーパーの食品売り場で見たことがあるだけである。夏までに計2回しか遭遇せず。新しいコンビニに入店するたびにお菓子コーナーを探しているのに、いくら探しても売ってない。ネット店舗ですら、ろくに扱ってない。まじでどこにあるの?箱買いさせてくれよ!スペシャルダイヤルファイター&ビークルセットが欲しいんだよ!ついでに工藤に貢ぎたいんだよ!
※イオンまで遠征したら、箱買いできるくらいたくさんありました。スペシャルも当たりました。やったあ!
第四に、「欲しい」と思うアイテムが商品化されなかった。
● ルパンコレクション
東映公式
どうしてルパンコレクションを商品化してくれなかったんだろう。小さいサイズでガチャガチャで出してくれたら、私はそれが全何種であってもコンプしたのに。VSビークルライトではなく「ルパンコレクション」を廉価のコレクションアイテムとして商品化してほしかった。ルパンコレクションの総数はいくつで、コンプリート特典が何なのかは結局最終回まで明かされそうにないけれど、それでも私はルパンコレクションを地道に集めてコンプを目指し近所のすべてのスーパーの食玩の棚をさらっていたと思う。過去の戦隊に出てくる武器をモチーフにしたデザインと、往年の洋楽の曲名をモチーフにした名称はとてもおしゃれで気が利いていた。もったいないよね。ねじ子は医者なので《医者医者/Docteur,docteur》と《世界を癒そう/Gueris le monde》が欲しいな。
● 金庫
ルパンコレクションが小型のコレクションアイテムであったならば、当然それを収納する箱が必要になる。レンジャーキーを入れる宝箱や、フルボトルを入れるパンドラボックス、オーメダルホルダーのように。というわけでルパンコレクションを入れるのは当然ギャングラーの金庫である。普通の金庫でも金色金庫でもドグラニオ公園でもいいから商品化してほしかった。ダイヤルファイターをかざしたら何かが起こると、なお楽しい。解錠音声が鳴るのがベストだが、まぁそこまで贅沢は言うまい。
● バックル
全員のベルトに付いているバックル。ルパンレンジャー側は逃亡するときバックルからワイヤーを出して高く飛ぶ。パトレンジャーは警察手帳として、容疑者確保や名乗り前に提示している。ノエルはバックルでダイヤルを解錠する。つまり劇中で三者三様に活用している。真似したい。それなのに商品として出ない。なぜだ。全員分の警察手帳が欲しかった。しょぼくてもいいからワイヤーが欲しかった。「アデュー、おまわりさん」って言いたかった。写真は食玩で出たバックルの警察手帳なんだけど、店頭で見たことがない。Youtubeで商品を見る限り、ペラペラで何かが違う。DX玩具で出してほしい。
● 劇中歌ほか
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名曲揃いの劇中歌。でもあまり使われなかった。繰り返し使われる曲はOPの男女掛け合いの曲だけだ。OPはいい曲だけど、あまりに難易度が高すぎる。歌詞がよく聞き取れないし、覚えやすいメロディが「予告する~」と「もんがいふしゅーつのこーれくしょーん」だけだし。そもそも男児一人では歌えない。初めて聴いたときは正直、不協和音かと思ってしまった。そのくらい難しい。「つんくの『超HAPPY SONG』 ってすごくよくできた曲だったんだな」とねじ子は実感した。
エンディングのダンスがないのも残念だった。せっかく工藤なのに!工藤ならばマジレンジャーから「黄色の腰」を引き継ぐダンスができたはずなのに!どうしてビシバシ体操をEDにしなかったんだろう?みんなでダンスするための曲じゃないの?EDで使わないにしても、劇中のどこかで使って、圭ちゃん一人でも踊る動画を作ってYoutubeに上げていれば抜群の再生数を獲得したであろうに。まさか一回も流れないとは思わなかった。エアロビの曲もすごくいいのに、エアロビにしか使われなかった。まぁこれはエアロビ用に無駄に気合が入った制作陣の鼻息が伝わってくるからいいんだけど。
そして、よく売れる商品はどこにも売ってなかった(3回目)。
● Gロッソ素顔の戦士公演のチケット
全公演全席、瞬時に売り切れ。転売屋が購入しているのはもちろんのこと、Twitterを見ると大きいお友達も申し込み可能枠ギリギリまで大量購入して、友人同士で交換し、できるかぎり毎公演通っている状態のようだ。もしそのお金がDX玩具に回っていたら、どんなにかよかったのに(仮定法過去完了)。チケット1枚分でVSチェンジャー1個買えるし、ビークルなら2台買えるし、駿河屋タイムセール中ならバイカー800円だから4台買えるけど、……でもそうはならなかった。
● ぬいぐるみ
Gロッソとテレビ朝日ショップとアニメイトと一部ネットショップでの限定発売。もちろんあっという間に売り切れ。ねじ子はイエローの中身とガワだけをなんとか確保しました。一番人気の圭一郎はもちろんあっという間に売り切れ。ていうか圭一郎の中の人グッズはどれもこれもあっという間に売り切れ、プレミアがつき、メルカリには転売ヤーが湧きまくっている。すげぇな。
● FSK
フィギュアスタンドキーホルダー、略してFSK。ハロプロでも「#ご飯ととるのがいいと聞きました」でおなじみである。軽くて持ち運びしやすく、何よりSNS映えがいい写真が撮れるので、おたくたちに大人気の商品だ。リリウムの工藤のFSKと比べるとこんな感じ。ハロプロのFSK(1000円)より一回り大きく、2本も入ってお値段1380円。とても良心的だ。ハロプロに慣れていると何もかもが安く感じる!こちらはGロッソにて現在も購入できる模様。
他にもよい商品はいっぱいあったのに、とにかく金の使い道がなかった。5月頃、特にそれは顕著だった。おもちゃもガチャガチャも何も出ない。お布施すらできないんだよ。「欲しいものがない」「買えるものがない」と言っていた大きなお友達の資金はおそらく全額ブルーレイ・ディスクとGロッソ本人公演に流れた。
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「ルパパトのおもちゃは売れなかった、とくに前半の売上がひどかった。だから東映とバンダイはなんとかテコ入れをしようとした」それはわかる。「ストーリーの矛盾も辞さない路線変更を行う」これもよくあることだ、知ってる。でも、「ルパン側に比べるとパト側の玩具が売れてない、だから秋以降の強化玩具はすべてルパン側に寄せた」これはわからない。なんでだよ。
番組下半期におもちゃ屋店頭に置かれていたバンダイ製作のPOP。パトレンジャーを完全に切っている。迷ったらコレだ!じゃあないんだよ。ため息が出る……。
三谷幸喜が絶賛した脚本を、テレビブロスも絶賛した脚本を変えるなんて、芸術の神様への冒涜ではないのか。私は大きいお友達として、どうしてもそれを受け入れられなかった。戦隊もライダーも、スポンサーによって物語が大きく左右されることは知っている。ゲキレンジャーの理央メレも好きだったしゴーバスターズも好きだった。ライオブラスターを苦々しい思いで見た記憶もちゃんとある。響鬼の署名騒ぎもディケイドの脚本家更迭も、終わらなかったカブトもヒロインがいなくなった電王も知っている。それでも、つらい。
テコ入れへの抗議の意味で、私はサイレンストライカーを長い間購入しなかった。サイレンパトカイザーとスーパーパトレン1号を見届けるまで、私は決してサイレンを購入しない。そう決めた。息子たちは欲しがっていたけれど、これはわたしの大きなお友達としての意地である。 ゴーバスターズの時も私は放送開始直後からDXなりきりおもちゃ全部セットを買っていたのに、路線変更で素晴らしいストーリーとロボット戦を台無しにされた。OPまで変わった。またあの苦しみを味わうのか!もういやだよ!あの時も私はライオブラスターとタテガミライオーを絶対に買わなかったんだ!
快盗と警察の最終強化ロボ。ここに来て初めて、警察のほうがデザインがかっこいい、かつ可動の多いおもちゃが来た。圭一郎の制服の色に合わせた配色も素晴らしい。まぁ、ノエルが使ってるけど……。
ビクトリーストライカーは機首パーツが固定されずちょっとした振動ですぐにパカパカと開いてしまう致命的な構造欠陥がある(2回目)。さらに劇中ではグッディの上に乗せて羽をはやして飛ぶ「飛行モード」があったが、玩具で再現ができない。なんかもうヤケクソ?なのかな?魁利くんの快盗衣装そのままの色合いとデザインは素晴らしい。
スーパールパンXの肩アーマーのグリップはみんなで引くためにあるんだろ?戦隊みんなで支えるためにあるんだろ?支え合って戦うのが戦隊であり、仮面ライダーとの決定的な違いだろ?「ノエルってばどうしてそんな引きにくい位置にグリップ付けたの?とんでもなく持ちにくくない?」と思っていた自分がひどく悲しい。「あ、これ本当は1号につけるアーマーだ。2号と3号が握って引くためにあるんだ」と気付いてしまった瞬間、私は世界に絶望した。
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おもちゃが売れなかった原因はここにあげた以外にもいろいろあるだろう。でも、それら細かい理由は時が経てば忘れられてしまう。誰かの都合がいいように記憶は改変されてしまう。そしてただ、数字だけが残る。数字はわかりやすい武器になるから、ルパパトの評価を必要以上に下げたい意図で使われてしまうことも将来的にあるだろう。それならば私は、ルパパトという作品のために、工藤のために今できることをする。
私は東映の事情もバンダイの事情も知らない。ただ、ど真ん中の消費者だった。「ルパパトはあんなに面白かったのに、どうしておもちゃが売れなかったのか」その理由を、私はど真ん中の消費者の立場から、自分の思いつく限り誠実に書いて、今後の歴史のために残そうと思う。これからの子供達はAmazonプライムで(ほぼ無料で)過去の戦隊を見続ける。どんなに古いものでも、さかのぼって見る。すべて見る。おもちゃは今年一年で売り場から消えていき、物置の奥へしまわれ、不燃ゴミとして捨てられていくけど、映像作品は未来永劫残って歴史の洗礼を受けつづける。スマホやタブレットの中にある最も手近な娯楽として、未来の子供達が再生しつづけるのだ。彼らに「なんでこんなことになったんだ?」と思ってほしくない。大きなお友達にもそう思ってほしくない。
もちろんここまで書いて、このあとラストの脚本がボロボロになったら、それはそれで仕方ない。どっちらけの展開になるのかもしれない。その危険はまだまだある。よき終わりを迎えるといいなぁ。今からドキドキしている。うー。こんなに毎週ドキドキする日曜日は仮面ライダーオーズ以来だよ!初美花ああああああああ!生きて!しほちんと幸せになって!咲也さんはいい人だけど、お母さんはまだまだ交際は許しませんからね!魁利くんはいいや、どうせ圭一郎が何とかしてくれるでしょ。圭ちゃんが魁利くんのことほっとくはずないもんね。生きてても死んでても行方不明になっても、快盗を続けてても続けてなくても、闇落ちしてても闇落ちしてなくても、生きてる限り地の果てまで魁利くんのこと追いかけてくるでしょ、圭ちゃんは。最終回はニチアサの伝統にのっとって、透真と彩さんの結婚式だってわたし信じてるから!警察も快盗もノエルも大切な人たちも全員参列するって信じてるから!あ、仮面ライダービルドも最終回はグリスとみーたんの結婚式だって信じてた!ほら私ドルヲタだし!「推しと結婚してハッピーエンド、最っ高でしょ!」と思ってた。実際は推しに看取られながら死んでたけど!もちろんビルドみたいに「全部なかったことになるエンド」でも別にいいよ!時間が戻ったり、みんなの記憶がなくなったとしても、不思議な力が働いて魁利と圭ちゃんはお互いのことに気が付くし、咲也は初美花に一目惚れするでしょ。それがニチアサのルールだ。なんでもいい、そこに幸福があるならば。最終回を楽しみにしている。(2019/2/6 最終回4日前、バンダイの3Q決算発表前)
スーパーパトレン1号の情報が出て嬉しい。もう思い残すことはない。これでルパパトはきちんと完結した良い作品として終われる。正直、ほっとした。私は「サイレンパトカイザーと超パトレン1号を見るまで、サイレンストライカーは購入しない」と決めていたんだ。あのテコ入れが成功だったという業績を残したくない。私一人なんてちっぽけな売上だけど、それでも、貢献したくない。私はめんどくさいおたくだから、納得がいかないテコ入れに対する抗議の意味で、一人勝手に不買活動をしていたのだ。
ルパパトのDX玩具コンプリートまであと少し!あとはノエルの武器だけ!
散財は楽しい。この1年間とても楽しかった。適齢期男子の母であることをいいことに、私はルパパト関連商品を買って買って買いまくった。大人でよかった。わたしは幸せだ。なーに、聴きもしない同じCDを何枚も買うより、ずっと楽だ!ずっとずっと楽しい!なんといっても子供が遊んでくれるし、飾って見栄えがするし、なりきり遊びもできるし、がちゃがちゃ変形して楽しいし、飾ってニヤニヤできるし、さわってニヤニヤできるし、箱を見てニヤニヤできるし、組み立てても楽しいし、音を鳴らしても楽しいし、写真を撮っても楽しい。そこらじゅうの店で売ってるから入手しやすいし、思い出にもなるし、不要になっても処分が楽だし、バザーや中古屋に出すこともできるし。最高のオタクグッズだよ!
ドルオタってね、CDやグッズの処分がすげえ大変なんだよ。わざわざCDの大量破棄を手伝ってくれる業者 まであるの。分別も大変だしね。グッズやチェキはアイドルが卒業したらすぐに1円の価値もなくなっちゃうから。それに比べて戦隊のおもちゃは、手放すのも簡単だし、次の世代の子供が楽しく遊んでくれる。こんなに幸せなことはないよ!
真野ちゃんが仮面ライダーなでしこに変身したとき発散しきれなかった購入欲を、私は存分に解放することができた。本当に嬉しい。いや本当は今からでも100億円分おもちゃを買い足してネットで好き放題言っている外野(そういう人たちはDX玩具を決して買わない)を黙らせてやりたい。そこまでの財力が私にないことを申し訳なく思う。ごめん工藤。(2019.2.1)
12月23日に『快盗戦隊ルパンレンジャーVS警察戦隊パトレンジャー』Gロッソ素顔の戦士公演・第4段の千秋楽を見に行きました。子供と一緒に「推しごと」に行けるなんて、家族にも喜んでもらえるなんて、私は幸せものです。ありがとう工藤。
武道館以来一年ぶりに見る舞台の工藤は、アドリブも冴え、生き生きと飛び回っていました。ふわふわの衣装で快活な少女を演じる工藤を見て、私は『ステーシーズ―少女再殺歌劇』のハム恵を思い出しました。軍用チワワと呼ばれていた頃の工藤。ロリヤクザと言われていた頃の工藤。まだモーニング娘。に数字がついていなかった頃の工藤。全能感にあふれ過剰に張り切っていたあの頃の工藤。
クリスマスイブ・イブだったこともありサンタ帽子をかぶった姿も、「メリークリスマス!」と言いながら客席へ投げキスする姿も、非常に愛らしかったです。当時の娘。舞台で受けていた男役ではなく、年齢相応の可愛い女子として工藤を配役してくれたことが私はとても嬉しい。可愛い女の子を見ると、乾いた心にうるおいが戻りますね。「工藤に会いに行くんだから、きちんとした格好しなくちゃ!汚いおばさんの姿を工藤のきれいな瞳に入れるわけにはいかない!」と思って締切前でヘロヘロだったけどちゃんと風呂にも入ったし。おめかしもしたし。一年最後のよい推しごとができました。
月並みですが、可愛い子が悪役にやられて倒れもだえ苦しむ姿って、なんともいえない高揚感が湧きおこりますね!どきどきしちゃった!これはハロプロのコンサートでは決して味わえない興奮だな!うふ!
私の行った公演には、実はしょこたんとはるなんも見に来ていたようです。気が付かなかった。武道館南1階の関係者席を双眼鏡で覗きながら来場メンバー全員の名前をつぶやいてくれるおたくが山ほどいるハロプロの世界に慣れすぎていました。不覚です。はるなんの卒業公演に行けなかったかったこと(しかも会場には藤子不二雄A先生もいたらしい!同じ空気を吸いたかった!)に私はかなり凹んでいたのだけど、まさかその一週間後に、G-rossoという座席数765席の狭い空間で卒メンそのものとすれ違うことになるとは。しかもそれにまったく気付かないとは。おたくとしての勘も感度も鈍ってるな、私。
2018年下半期のねじ子のオタク活動はさんざんでした。
過去10年推していたアイドルが、女神と崇めていた女の子が、ある日突然容疑者付きの名前で連日トップニュースになり、手錠と麻縄で連行されるやつれた姿をあまたのメディアで毎日見せられたら、精神の安寧を保つのはむずかしくなります。よっすぃが逮捕されたあの日以来、わたしは自分とハロプロとの距離を決めかねています。
愛の燃料タンクに突然銃弾を打ち込まれて穴があいたというか、風船にとつぜん針を刺されたというか、とにかくあれ以来「ハロプロを好きだ」という気持ちを膨らますことがむずかしくなってしまいました。MVやライブを見た直後は「やっぱりいいな!」と思えるんですけど、その気持ちがなかなか続かない。川の底の小石のようにすばやく流れていってしまう。
なんなら私は、彼女がマクドナルドの仕事を休んだニュースをお昼休みの休憩中に見て、彼女や息子さんの体調を心配すらしていたんだよ。それなのに。ばかみたいだ。
傷口を自ら晒していく圧倒的なスタイル。 (新潟にはNegiccoがいるよ。もう15年間も真摯に活動を続けているよ。曲も手抜きなしで最高だよ)
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医学部受験のとんでもない女性差別が明るみになった時期とそれはちょうど重なっていて、私は精神的にくたびれてしまい、各種メディアから断絶した生活をしばらく送りました。そうしないと今ここで立っていることすらできなくなってしまうからです。
そんな私の心の均衡を保ってくれたのは毎週日曜朝の『HUGっと!プリキュア』と『快盗戦隊ルパンレンジャーVS警察戦隊パトレンジャー』でした。ルパパトは脚本とキャラ設定が非常によくできています(サイレンストライカーの扱いとスーパールパンXという存在の矛盾以外)。工藤のおかげで私はなんとか健康に年を越すことができました。
ニチアサ適齢期男子の母でもある私は、勝手にルパレンのおもちゃやグッズを買いまくりました。ああ買ったさ。山ほど買ったさ。ダイヤルファイターもVSチェンジャーもマグナムもソフビもお菓子もふりかけもキャラデコケーキもフィギュアもブルーレイもswitchのゲームもユニクロのヒートテックも買ったさ。子供が別に欲しがってないものも勝手に買いあさったさ。「じゃあこれは運動会のごほうびね!」とか言ってごほうびプレゼントの機会を勝手に増やして、自分の欲しかったマシンを手に入れまくったさ。「じゃあ病院の待ち時間にこれ読もうね!」とか言っててれびくんやシール絵本も(工藤の写真が載っているものを選んで)買いあさったさ。だって工藤のためだもの。もっと言えば、これからハロプロを卒業して女優や声優になりたがる後輩たちのために、道をつなげたかった。「ハロプロ卒業メンバーを起用すれば、ハロヲタがおもちゃを買ってくれる」という実績を作りたかった。お金で買えるルパンイエローのグッズはすべて手に入れたし、ルパンレンジャーのダイヤルファイターはぜんぶコンプしてるし勇動もすべて揃えた。ぬいぐるみもイエローは両方買った。「君はどっちを応援する?」って煽られていたから、確かに警察側のおもちゃはあまり買わなかったかもしれない。
自由な組み合わせで出撃を待つ皆さん
しかしまさか、警察側の武器をすべてルパン側に回す無謀なテコ入れがやって来るとは思わなかった。30話のスプラッシュ温泉回はそんなテコ入れを逆手に取った最高の脚本だったけれど、サイレンストライカーとスーパールパンXのどうにも料理できない凄惨さには心底がっかりした。もう12月なのに心配ビームでキツツキが飛んでたときは先行きが心配すぎてこっちが倒れるかと思った。
それでも、工藤が最初に言っていた通り、ルパパトは「歴代最高の戦隊」になるポテンシャルを今でも 十分秘めていると思っている。ちなみに私の中の戦隊シリーズ最高傑作はデカレンジャーとシンケンジャーです。ルパパトは今のところその2つに並んでいます。もちろん「物語は終わって初めて完成する」と真木博士の言ってるとおり、物語は最後まで見なければわかりませんが。年明け後の怒濤の展開を楽しみにしています。
追伸。東映さん、工藤にソロ曲を2曲もくれてありがとう。ハロプロ在籍中は工藤のオリジナルソロ曲はついに最後までなかったけれど(舞台ではあったかも?)卒業したその年に、外部から2曲もソロ曲をフィジカルで出してもらえるなんて。とってもありがたい。東映カレンダーに抜擢されたことも嬉しい。工藤が大事にされていて私も嬉しい。イエローの声の目覚まし時計やグラビアがたくさん出たことも嬉しい。イエローのグッズを買いまくった甲斐があったよ!あったよ!……あったのか?正直わからん!!客には数字が見えないから!でも私は満足だ!(2019/1/15)
あけましておめでとうございます。今年もよろしくお願いします。
昨年末のコミケではありがとうございました。 持ち込んだ新刊は想定していたよりも早く売り切れてしまいました。 足を運んでくださった皆様、ありがとうございます。
『現着!QQQ』はうちにまだ在庫があるので、夏のコミケにも持参する予定です。
入りきれなかった続きのぶんも『現着!QQQ 2』として、近日中に出したいな。
次の参加は(抽選に受かれば)夏のコミケの予定です。 初の4日間開催ですね。私は3日目、8月11日に参加予定です。
一般参加がリストバンド制になったり、コミケットプレスがなくなったり、南館という新しいエリアができたり、バズ狙いの有名人が次々と参戦したり、いろいろなことが起こりいろいろなことが変わっていくコミケですが、きっと中の人たちの熱気と人情と創作意欲と変態性だけはあいかわらず受け継がれていくことでしょう。私はそれを信じています。
(2019/1/9)
2019/12/31 東京ビッグサイト [東2ホール] O-19b「ねじ子アマ」
新刊 は『現着!QQQ ー病院に着く前にー』です。紹介はこちら 。
『現着!QQQ ー病院に着く前にー』96ページ 1000円
既刊 について。
今回は平成最後のコミケということもあり、『平成医療手技図譜』はこれまでの既刊すべてを少部数ずつ持ち込みます。机に出ていない場合はお声かけください。
『平成医療手技図譜』
針モノ編 800円
管モノ編 1000円
手術編 1000円
救命救急編 1000円
夜間外来編 1000円
診察編 1000円
神経編 1000円
精神編 1000円
心療内科編 1000円
手術編 改 1000円
今のところ『平成医療手技図譜』は以上10種です。 平成が終わった後のタイトルはこれから考えます。
なお、商業誌『ヒミツ手技』『ぐっとくる』 と同人誌『平成医療手技図譜』 はこのような関係になっています。 わかりにくい方はこちらを見てチェックしてください。
こちらも少部数持っていきます。
以上です。とても寒いですが凍傷や低体温症にならないように楽しんでいきましょう!(2018/12/30)
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