「大切な人を取り戻すために戦う」というテーマがゴーバスターズと重なっていることもあり、ルパパトとゴーバスターズはよく比較対象になっていた。ゴーシュが持っていたキーアイテムであるルパンコレクション「ゲリ・ル・モンド」の元ネタがゴーバスターズの武器だった関連もある。ゴーバスターズが失った大切な人たちは、結局最後まで帰ってこなかった。ルパンレンジャーの大切な人たちは果たして帰ってくるのかどうか?これは物語をつらぬく根幹の議題であった。
私は一年間ずっと「大切な人たちは帰ってこない」と思っていた。ゴーバスターズが大好きだから、「大切な人たちは帰ってきてはいけない、帰ってきたら都合が良すぎる」とすら思っていた。化けの皮の作り方が判明してからは(ザミーゴ・デルマのデルマって、そういう意味だったのか……)大切な人たちのうち誰か一人くらいは化けの皮の姿で登場し、快盗の顔が絶望にゆがむとさえ思っていた。
「快盗の正体がどうやってばれるか」はもう一つの物語の注目ポイントだ。視聴者はみな楽しくその状況を予想していた。放送中は「ルパンレッドがパトレン1号をかばって変身がとけるorマスクが割れる」という予想が最も多かったと思う。兄を突き飛ばして行方不明になる要因を作った魁利くんが、兄によく似た圭一郎のことは身を挺して助けることができた=成長、というベタながらも熱い展開を予想する人は多かった。もちろん私もそうなるだろうと思っていた。警察をかばった快盗(魁利くんが圭ちゃんをかばう or 初美花が咲也をかばう)→ 快盗はそのせいで死ぬ、またはどっかいく → 警察が全力で快盗を助けにいく → 和解 → 共闘 → 働きを認められ恩赦、という王道の展開だ。
しかし、誰も予想しなかった方法で正体はバレた。仮面を「自ら」外すさまを「全世界公開生中継」するとは思っていなかった。
我々はなぜかみな「警察、しかもパトレンジャーだけに正体がばれる」と思い込んでいたのだ。GSPOの諸君はすでにジュレの彼らの人柄と事情をよく知っているから、ルパンレンジャーの正体がわかっても決して悪くは扱うまい。プライバシーを尊重して余計な公表もしないだろう。彼らの功績を踏まえて、罪を帳消しにしてくれるかもしれない。そこまでいかなくても、減刑と社会復帰に協力してくれるのでは?と見積もっていたのだ。その見積もりは甘かった。結局、番組を見ていた誰もが警察「だけ」に正体がばれると思い込んでいた。
現実でもよくあることだ。警察沙汰や逮捕案件はこの世にいっぱいあるけれど、実名報道されるのはほんの一部である。実名と外見が世間に公表されるかどうかで、その後の容疑者が送る人生はまるで違う。保釈後の生きやすさが全然違うのだ。「知り合いの範囲だけで過去の悪事がさらされる」のなら、社会復帰は比較的たやすい。逆にこのネット社会において、本名や顔が報道されて個人情報が残ってしまうとダメージが非常に大きい。
悪役のボス・ドグラニオはそこまで考えたうえで、素顔の全世界公開に踏み切ったのだろう。さすがである。一味違う。最高にゲスい。器の広い好々爺にしか見えていなかったドグラニオ様の外道っぷりは、この行為でぐんと増した。彼は確かに外道の世界のボスである、と我々にじゅうぶん感じさせる描写であった。「なんて残酷なことをするの!さすがはギャングだ!いい趣味してんな!」って私も思ったもん。この世で一番恐ろしいのは親身になってくれる警察ではない。無責任で善良な一般市民の、保身に基づく集団行動である。いつの時代もそうだ。
誰も予想しなかった方法での正体バレを見た私は一転して「ここまで犠牲を払ったんだから大切な人たちは絶対に帰ってきて!帰ってこなきゃダメでしょ!」と思うようになった。それまでずっと「大切な人は死ぬでしょ、なんなら皮になって帰ってくるよ!うっしっし!楽しみ!」とさえ思っていたのに。全世界生中継を見た瞬間に「快盗たちの失ったものが大きすぎる。ここまでの犠牲を払ったんだからルパンレンジャーの諸君には願いを叶えてほしい」と切に願うようになってしまった。
だってこれでは彼らの大切な人が戻ってきても、一緒に暮らせないではないか。2年前と同じ穏やかな暮らしはとうてい望めない。帰ってきた魁利君のお兄さんも弟が心配で仕方ないのではないか、彩さんは透真と穏やかな新婚生活など送れないではないか、初美花は自分の服飾の夢が叶わないし、しほちんも親友を思って苦しむのではないか。それでいいのか、いやよくないだろ。あ、それでもいいから大切な人たちに生き帰って欲しかったのか?すげぇな。でも、その大切な人の隣に自分はいなくてもいいの?本当に?
つまり私は「実名」と「顔」の「全世界公開」が今の時代において最も重い懲罰であり、耐えがたい苦痛である、と認識していることになる。その通りである。このSNSとスマホの時代において最も重くてどうにもならない懲罰は「デジタルタトゥー」である。そんな残酷な現実をルパパト制作陣は視聴者の子どもたちに突きつけてきた。うーん、恐ろしい。確かに私も「快盗はあそこまでの犠牲を払ったんだから、彼らの目的はなんとしても達成されて欲しい」と思うようになっちゃったよ。宇都宮Pは初めからこの展開を考えていたはずだよね。うちのルパンブルー推しの小学生男子も48話を見た直後にぼそっと「透真……。48話冒頭で夜逃げしていた方がよかったな……」とつぶやいていたよ。「むやみに自分の名前や住所をネットに書くな、教えるな。自分の写真を絶対に送るな」という教育はいまや小学校でもよく行われている。「一回ネットに流した情報は一生消せない。絶対に消せない」という文言とともに。
ルパンレンジャーとしてのデジタルタトゥーがばっちり残ってしまった彼らの将来はいったいどうなるんだろう。特に未成年で手に職もない魁利と初美花は、どうやって自立して生活していけばいいんだ。あのリアリティーのフィクションラインの日本社会では、元の生活に戻ることも一生快盗を続けることも難しいだろう。保険もないし病院にも行けないし外出や買い物もままならないだろう。やだよー、初美花ちゃんが怪我や病気で苦しむの見たくないよー。ねじ子はルパン家に独自の高い医療技術があることに一縷の望みをつないでいたのだけれど、49話で市販の瓶入り鎮痛剤(おそらくアセトアミノフェンかアスピリン)をガバ飲みしている魁利くんを見た瞬間にその線は消えた。やべぇ、ルパン家の医療水準は低くて古いぞ。現在日本の医療技術があれば、あんな無意味なことはさせない。肝臓を壊すだけだ。ロキソニンを普通に1錠飲ませて、6時間後にも飲めるようにもう1錠手にもたせる。あ、ひょっとしたら外国からオキシコドンを密輸入している可能性もあるか……。褐色の瓶だしな……。だとしたらある意味ルパン家の医療水準は驚くほど高いな、完全非合法だけど……。圭一郎と咲也じゃなくても一刻も早く快盗辞めさせたくなるな……。
結局ルパンレンジャーは全員、劇中の「勝利条件」を半分しか満たしていないのだと思う。透真はこのままじゃ彩さんと結婚できないし、初美花は服飾の夢も咲也への淡い恋心も捨てなくちゃいけないし、初美花の両親はあまりに気の毒だし、魁利くんだって一生怪盗はつづけらんないでしょ、仕事どうするの、「おれ怪盗向いてるわ」と自虐的に語っていた伏線はどうするの、お兄さんともそこそこは一緒にいたいでしょ。ルパンレンジャー最大の目的「大事な人を取り戻す」は果たされたものの、それは彼らの勝利条件の半分に過ぎない。半分のままで諦めるのか、諦めないのか、どちらにしても社会とどう折り合っていくのか、決意や結末は語られていない。ノエルの「勝利条件」に至っては完全に道半ばであり、何の結論も出ずにストップしている。
もちろん今後の客演や追加映像やヒーローショー等を考えて、とりあえずTVシリーズを終わらせるための「最終回」としてベストの状態で「時を止めた」ことはわかる。どうにでもできる、非常にいいところで止まっていると思う。あれだけ壊滅的なテコ入れを受けながら本当によくここまで素晴らしいドラマが続いたと思うし、最高の最終回を迎えたと思う。スーパーパトレン1号が出てきたときに我が家では拍手喝采が巻き起こったよ。スーパーパトレン1号の肩のトリガーを2号と3号がつかみ後ろから支えて一緒にストライクを撃ったときはスタンディングオベーションが巻き起こった。日曜の朝から布団の上でパジャマでスタンディングオベーション。いったい何をやってるんだ。
よっすぃ~こと吉澤ひとみcが逮捕された週という神がかり的なタイミングで放送されたヨシー・ウラザー回は、「司法取引」という制度を子供たちに説明するための回であった。これは将来的にルパンレンジャーに司法取引制度を適応するための伏線だったと私は今でも思っている。そうじゃなきゃあの回、いらないでしょ?いつか司法取引するんでしょ?司法取引して共闘するんでしょ?なんならルパンレンジャーも警察の外部戦力になるんでしょ?私は今でも勝手にそう信じているのだけれど。三谷幸喜さんも「いつかみんな警察戦隊になる」って予想してたじゃん。将来の客演のためにVS構造をある程度引っ張りたいのはよくわかるし、ダブルレッドがゲストで出てきて小競り合いするたびに客席がキャッキャッと沸く姿は容易に想像がつくけれど、うーん、いつまでやるんだろう?このままではノエルの結論はいつまでたっても出ない。彼らが対立をやめるのは10years afterになってしまうのだろうか?わたし、そこまで生きていられるかな?初美花ちゃんに社会復帰して夢を叶えてほしいし、咲也さんとの淡い恋の行方が見たいと願ってしまうのはおたくである私の勝手な思い入れなのかな?
結論として最終回には大満足してる、想像の余地が残っているのは素晴らしいと思う、かつ、今後も展開があると信じている。ギャラクシー賞も取ったことだし、Vシネクストかスピンオフやりませんか?だってさ、あと一回、あと一回なんだよ!あと一回あればスーパールパンイエローがこの目で見られるはずなんだよ!!!!!!!!!!!(本音が出た)!!!!三谷幸喜さんも一回くらい脚本書いてみてくれませんでしょうか。大それた願いだってわかっても、口に出してみた。「口に出したことは叶う」っていうし。もう恥も外聞もなくルパパトの新規映像が見たい。見たいんだよぉ!どうすればいいんだよぉ!!DXおもちゃだって全部買ったよ、ブルーレイも手に入るものは全部買った、関連書籍も全部買った!「『南山堂医学大事典』より高い児童書」こと『てれびくん超全集』だってブツブツ文句言いながらも買ったよ!ブログだってたくさん書いた!!これ以上何をすればいいの!?ふがー!教えてよアルセーヌ!!!!
※ 以下自分用メモ 回収して欲しいネタ一覧 ※
・そもそも誰が警察に装備を流したか。ノエル?悟(化けの皮前)?悟(化けの皮後)?
(ちなみに私は化けの皮前の悟、小学生の息子は化けの皮後つまりナリズマが横流ししたと予想している。警察の装備を作ったのはノエルだけど、装備を流したのはノエルではない、と考えている根拠は、警察に輸送されるときグッドストライカーが雁字搦めに束縛されていたこと。ノエルならばグッディを説得することができるはずだし、ノエルは友達にそんなことしないと思う。よってグッディの輸送はノエルの意思ではない=横流しはノエルの意思ではない、と予想。)
・ついでに言うと「もう一人のパトレン2号」最後の悟は何者だったのか
・ノエルは最終回の後、警察組織にいるのかいないのか、日本にいるのかいないのか
・ルパンコレクションのコンプリート特典はいったい何か
・アルセーヌが100年前にかなえた願いとは何か
・「ギャングラーの本体は金庫である」というギャングラーと異世界人とコレクションの関係性
・そもそもルパンコレクションって何?誰が作ったの?
・最終回後の快盗の社会復帰の度合い
・透真と彩さんの結婚式
・没音声であるルパンブラック・0号・マイナス1号の回収
・Wヒロインアイドル回(しつこい)(別に回収されるべき伏線でもない)
・オープニングの初美花の後ろ歩きの伏線回収はもう諦めた
以上です。大人財布用意して待ってます。(2019/9/1)
2019年6月、TVアニメ『シンカリオン』の放送が予兆もなく突然終わった。4月から2期の放送が始まったばかりだというのに、驚いた。その2ヶ月後の夏休み、我が家に大量のシンカリオンが入庫した。「もうシンカリオンは誰かにあげちゃっていい」「空いたスペースに新しいおもちゃが欲しい」というお子様のおうちから大量に譲り受けたのだ。昨年販売されたシンカリオンがこれでほぼ全種揃った。私たちは昨年ルパパトとビルドとジオウのおもちゃに夢中になりすぎて、シンカリオンをそれほど買っていなかったのだ。具体的に言うと主役4人のマシンしか買ってなかった。
合体パーツが多い6000円以上もするシンカリオンを、私はそこで初めて手にした。シンカリオンドクターイエロー、ブラックシンカリオン、500系こだま、そしてシンカリオントリニティだ。どれ一つとっても、おもちゃとして素晴らしい出来である。このうちの一つでも2019年の発売であれば、今年のおもちゃ大賞はDXキシリュウオースリーナイツセットではなくシンカリオンシリーズが取っていたのではないかと感じる※1。それくらいどれも独創的でかっこいい。組み立て方法は革新的であり、変形は大胆で複雑。かつ子供にもじゅうぶんできる形状。デザインもかっこいい。何より一箱で完結する。この手の合体ロボおもちゃにしては、安い。プラレールとしても自走する。これはすごい。大人の私でもわくわくする。変形しながら私は思わず感嘆の声を上げてしまった。

特にブラックシンカリオンの自由度とジョイント構造は、今年の戦隊合体ロボであるキシリューオーに強く影響を与えていると私は思う。キシリューオーの「竜装ジョイント」は、ブラックシンカリオンの黄色い羽パーツを自由に刺せるギミックと同じアイディアだ。ブラックシンカリオンは1つ穴で、竜装ジョイントは4つ穴という違いはあるけれど。
私は下を向いてブラックシンカリオンをかちゃかちゃといじりながら、「とても勝てない……。こんなのとても勝てないよ……」とつぶやいてしまった。心根から出た気持ちだった。私にシンカリオンをくれた5歳の少年の耳にそのつぶやきは拾われてしまい、「えっ?なにが?ブラックシンカリオンは強いよ?」と不思議がられてしまった。「あ、いや、勝てるよね、強いよね!ドクターイエローもブラックシンカリオンも強い!」と笑ってごまかした。
こんないい商品に、ルパパトの玩具はとても勝てない。デザインも、プレイバリューの高さも、可動の多さも、盛り込まれた変形ギミックの数も、アイディアの量も、値段も、売り方のわかりやすさも、映像とのマーチャンダイジングの上手さも、何もかも上をいっている。完全に負けた。完敗だ。ブラックシンカリオンもシンカリオンドクターイエローも500系こだまもシンカリオントリニティも、どれもこれも本当によくできているよ!
そして、そんなよくできたおもちゃであるシンカリオンでさえも適齢期の少年には簡単に飽きられ、たった半年で手放されてしまう。なんたる非情。私は現実に打ちのめされた。これが子供だ。興味がどんどん新しいことに移っていく、それが子供達の日常であり健全な成長なのだ。去年終わった戦隊のことをいまだ引きずってグズグズ泣きながら長文を書いているのは、大人でありおたくである私一人なのだ。圧倒的な現実の残酷さに私は打ちのめされている。そして里子に出された先である我が家のおもちゃ箱でも、シンカリオンの出番はそれほど多くない。息子たちはすでに、さっそく手に入れた飛電ゼロワンドライバーとエイムズショットライザーに夢中である。それでこそ子供だ。
それでも私は、少し壊れた状態でやってきたシンカリオンドクターイエローを修理するために、夜中一人でyoutubeの玩具レビュー動画を見ながらプラスドライバーを握っている。ドクターイエローの構造はむずかしく、いまだに立ちポーズの作り方すらよくわからない。でも私にこれをくれた小学生と保育園児は、完璧に組み立てて完璧に元に戻していたなぁ。このくらい複雑な構造でも全然いけるんだなぁ。ジュウオウジャーの最初のDXロボとか簡略化されすぎてて子どもすら引いてたなぁ。低年齢児童のためにシンプルを目指したのかもしれないけど、そんな必要なかったよなぁ※2。そんな事を考えながらドクターイエローを頑張って修理しても、果たして子ども達は遊んでくれるのだろうか?わからない。それでもやる。
子供向けのおもちゃを売る商売は霞をつかむような生業だと思う。何が当たるのかさっぱりわからない。先がまったく読めない。外した場合の損失が大きいし、必要以上にあたってしまった場合の在庫管理も難しい。少子化で子供の絶対数が減ったうえに、親の多くは氷河期世代である。我々の世代の平均賃金は極端に少ない。その中での勝負である。こんな大博打を何十年間も何十億もかけてやっているバンダイと東映は、素直に尊敬に値する。なんだかんだ言って私は仮面ライダーディケイド以来、11年間連続で仮面ライダーの変身ベルトを買い続けている。あ、サンタさんが勝手に届けてくれたのもあるわ。サンタさんってば、親の意思に反して子供のお願い通りのものを勝手に届けてくれるから困っちゃうよね。サンタさんにお手紙書かれたら、しかたないよね。今年のサンタさんは一体何を届けてくれるのかな。楽しみに待っているよ。
※1リュウソウジャーは剣の武器が最も子供受けがよい。ニンニンジャーの剣以来の「ちゃんとした」剣のおもちゃだ。嬉しい。近年ちゃんとした剣のなりきりおもちゃが出ていなかったから、これはいい商品だと思う。ちなみに「ちゃんとした」剣のおもちゃとは、①音が鳴る ②光る ③可動部がある この3つを満たしていることである。これを満たしていないDX玩具のなんと多かったことか。ドリルクラッシャー君、ニンニンコミック君、ルパンソード君、パトメガボー君、ジカンギレード君、ジカンデスピアー君、アタッシュカリバー君、君たちのことだよ。
※2ジュウオウジャーの最初のDXロボは足が分離されず、あまりに稼動が少ない串刺し変形であった。最後まで見ると、14個ものキューブが可動変形合体する圧巻の全合体が見られるのだけれど……。(2019/9/16)
ルパパト放送終了後、ルパパトロスをこじらせた私はルービックキューブをはじめた。もちろん目標は「ルービックキューバー」になることである。

半年かけ、私はついに一人で6面を揃えることができるようになった。子どもの頃から幾度チャレンジしても、まったくできなかったのに。ありがとう工藤。あなたのおかげだ。この歳になっても新しくできることが増えて嬉しい。まだまだ成長できる、その事実が嬉しい。
ルパパトロスへの薬として私は今、『ジュウオウジャー』と『ファントミラージュ』を交代で見ている。同じ香村脚本であるジュウオウジャーと、初美花ジェネリック感の強い衣装で何の憂いもなく「大切な人を守りたい!」と宣言するファントミ女子を見ていると、なんだか胃の中で混ざって回腸のあたりでルパパトかのような成分を摂取している気分になれる。周囲の人間には「体感幻覚では?」と指摘された。
すべてが終わった今だから言うけど、私は朝加圭一郎に何度も鞘師里保の面影を見ていた。まっすぐな黒髪、白い肌、小さい顔、意志の強そうな黒い眉、涼し気な奥二重から放たれる鋭い眼光、薄い唇がムニュッと波型に結ばれる笑い顔。赤を身にまとってセンターに立つ姿。ほら鞘師。鞘師でしょ。しかも隣にはお姉さんピンクと2人の緑がいるんだよ!?え、これ奇跡じゃね?これはもう9期でしょ!9期だ!やったあ!
私は大上先生に意気揚々と伝えた。
私「朝加圭一郎って鞘師にそっくりじゃない?顔がすごく似てる」
大上先生「……。君は鞘師が恋しすぎて、目がおかしくなってるんだね」
私「そんなことない!ほらこのスレッド見て!みんな鞘師と1号が似てるって言ってる!同じこと言ってるハロヲタ、たくさんいるよ!」
大上先生「それはみんな同じ病気の人でしょ」
私「え」
大上先生「患者会が開催されている場所だって言ってるの、そこは」
私「え?そうか、ここに『りほロス』患者が集まっているのか。え、それにしても、客観的に見ても似てるでしょ?奥二重だし唇薄いし黒髪だし色白だし赤い服だしセンターだし」
大上先生「……いや、そこまでは似ていない」
信じられなかった。私は朝加圭一郎がアップになるたびに鞘師を思い出していたというのに。30分の放送中で最低3回くらい鞘師の面影を見ていたのに。そっくりではないか。
ところがである。
2019年3月の「ひなフェス」で本物の鞘師が帰ってきて圧巻のステージを見たあとにルパパトの朝加圭一郎を見たとき、私はまったく鞘師を思い出さなかった。そこにいるのは朝加圭一郎という成人男性そのものだった。「なーんだ!ぜんぜん鞘師に似てないじゃん」と思った。その時期にちょうどファイナルライブツアーを観劇したため、魁利くんの「やっぱり兄貴とぜんぜん似てねーわ」という台詞に私の気持ちはぴったりと重なった。わかる、わかるよ魁利くん!魁利くんも兄が突然いなくなって、会いたくても会えないからこそ、兄ちゃんと圭ちゃんを重ねて見ちゃったんだよね!本物の兄が帰ってきて、二人を同時に見比べることができるようになったら「ぜんぜん違う」って気付くよね!私も同じだよ!!兄貴じゃなく鞘師だけど!!!!朝加圭一郎を見て「なんだ、ぜんぜん鞘師に似てないじゃん」って思った、私も!期せずして魁利くんの追体験をしちゃったよ!
さらに、ところがである。
ひなフェスのあと鞘師は再び表舞台からいなくなり、何の音沙汰もなく数ヶ月が経過した。そのころ私は期間限定上映の映画『ルパンレンジャーVSパトレンジャーVSキュウレンジャー』を見に行った。そしたらね!画面の中の朝加圭一郎がもう何度も何度も何度も何度も何度も鞘師に見えるんだよー!うわーん!私はもうだめだー!病気だ!わかってる!病識はある!また「りほロス」になってるんだよおおお!しかも今後はりほロスのうえに、ルパパトロスまで加わるんだよ!!ひーん!私はもうだめだー!もう圭ちゃんでも兄ちゃんでも鞘師でもなんでもいいから、早く帰ってきてえぇぇぇぇ!
……そして私はいままた、性懲りもなく『ファントミラージュ』のファントミダイヤが鞘師に見えているし(赤だし、涼しげな目元だしダンス上手いし)さらにそのうえ『仮面ライダーゼロワン』のイズが鈴木香音ちゃんに見えている。だってさ、くりっとした目、ぱっつん前髪のおかっぱ黒髪、胸の曲線が際立つ銀色の衣装、しかも緑だよ。これはもうまじで香音ちゃんでしょ。『恋愛ハンター』の香音ちゃんだよ。わーい!やったー!かのんちゃんだー!かのんちゃんだー!わかってます、私はもうだめです。
※追記 鞘師はその後RIHOMETALとしてステージに帰ってきてくれました。ありがたいことです。複雑な気持ちを抱くハロヲタも多いとは思いますが、私個人はRIHOMETALを大歓迎しています。小学生だったアクターズスクール広島時代から続く鞘師とすぅちゃんの歴史が10年以上経った今でも続いていること、お互いのピンチに手を取り合ったこと、その協力が世界的な大舞台の上で行われていることがとても嬉しい。私は歓喜の涙を流しています。世界中のメイトのみなさん、鞘師をよろしくおねがいします。あ、鈴木香音ちゃんとルパパトはまだ帰ってきていません。(2019/9/10)
2019年8月16日金曜日の夜。
他人の病気を治し他人を健康にするために自らの身を削り精神の安寧を持ち崩している現状にひどく疲れ、汚いシーツの上でひとりうつ伏せになってNHK-FMの8時間生放送『今日は一日#ハロプロ三昧』を聴いていたら涙が流れてきた。
ラジオの終わりには『Happy大作戦』が流れた。この曲は疲れた心に染みわたる。「そうだ、もっと良いアイディアいっぱい出し合って切磋琢磨するしかない」そうだよね。それしかないって、わかってる。わかってるんだけど。こんな私だって、「恋も仕事も勉強も全部100%手は抜かない」で、ここまで頑張ってきたんだよ。
「世界はー!あーぁ!ひーとつー!」という歌詞でこの曲は終わる。でも。世界は本当に一つなのか?私にはそうは思えない。世界は隙あらば自分以外の他人を糾弾し、自分と違う属性を持つものを下に置き、立場の弱い人間から搾取する構造を構築する。今の私にはそのように思えてしまう。ああでも確かに、このラジオを聴いている間だけは!世界は一つだ!私たちは大きな「愛」という名の糸で繋がっている。そう思える。放送ブースにいるキラキラした娘たちと、夜中に一人部屋でradikoを聴きながら泣いている私と、私と同じように一人部屋でスマホを抱える孤独なリスナーたち。今まさに全員が電波の糸で繋がっている。同じ気持ちを抱えてこの夜を過ごしている。
そして放送が終わった瞬間、私たちはまた一人になる。空に向かって突然放り出されたような浮遊感が私を包む。
ハロプロの可愛い女の子たちを守るためだけに生きていけたら、どんなにかいいのに。
こんな私でも、疲れた金曜日の夜にそう思ってやまないときがある。
『46億年LOVE』という曲の中で「夢に見てた自分じゃなくても真っ当に生きていく今どき」と、雨子は語っていた。この曲は同時代性が高い歌詞として若い女性ファンたちに受けている。さっきラジオでそう言っていた。
でもね、私たちの世代は真っ当に生きてきたのに、気付いたら夢に見ていた自分からかけ離れていたんだよ。その乖離はどんどん広がって、もう取り返しがつかない。「取り返しが付かない」という残酷な現実が、今まさに私たちの目の前に突きつけられている。それが40代氷河期世代の現実だ。私たちの世代は同窓会ができない。同じ小学校、同じ中学校、同じ高校に通っていたのにもかかわらずそれぞれの社会的格差が開きすぎているからだ。私たちの世代は、ニートか引きこもりか生活保護か、派遣切りに何度もあって精神を持ち崩しながらも日銭を必死で稼いでいるワーキングプアか、なんとか正社員になったもののバブル世代とゆとり世代に挟まれた数が少ない世代として、働きづめで疲弊しきっている中間管理職しかいない。誰も同窓会など開こうとしないし、その余力も残っていない。賃金格差が激しいから、集まろうとしたところでどの値段の店を選んだらいいかもわからない。だんだん話題も噛みあわなくなってしまった。自家用車で言うならば、高級車持ちか、車自体を持ってないか。この二択しかない。「あいだ」がないのだ。私たちは分断されている。そして我々の親世代は要介護の年齢になり、自らはたっぷりと年金をもらいながらもなぜか我々の税金や人手を頼ってくる。いったい何を言ってるんだ?我々の世代を雇用せず賃金も上げず棄民したのはあなたたたちなのに?
私たちの世代にとって雨子の歌詞は前後が逆だ。「真っ当に生きてきたのに、夢に見てた自分じゃない」。それが氷河期世代の「今どき」である。女性ならばもう妊娠がしにくい年代になってしまった。男性だって40代で年収が低ければ、結婚相手が見つかる可能性が極端に低くなる。将来への希望がついえた瞬間に、自暴自棄になって世の中に漠然と復讐する人間も出てきてしまう。京アニを放火したクズもカリタス小学校のバスを狙ったクズも、(ついでにその報道を受けて高級官僚の父親に殺されてしまった練馬の無職男性も)ぜんぶ私と同世代だ。彼らや彼らの犯した犯罪を擁護するつもりは毛頭ない。彼らに殺された人たちもまた、私や私の子供と同じ属性をもつ弱い人間なのだから。彼らは残念ながら強い人間を狙わず、自分よりさらに弱い存在に牙を向ける。
汚ないシーツの上で一人ハロプロ三昧を聴きながら泣いている私の隣に、宮本佳林ちゃんみたいな女の子がそっと寄り添ってくれたらどんなにかいいのに。でも、そんな瞬間は私たちの元には永久に訪れない。この先も一生そんな瞬間は訪れない。自分には無縁のことだ。それに気付いてしまった。40年間ずっと真っ当に生きて、自分なりに手を抜かずに死ぬ気で勉強して死ぬ気で働いてきたのに。自分たちを取り巻く世界はもう永遠に変わらず、我々の世代が報われることはないと、私たちは気付いてしまった。
私も現世で徳を積んで、来世はハロプロに楽曲が提供できるオタクになることを誓う。前世において、私は少し徳の積み方の方向性を間違えてしまったようだ。音楽ではなく医療の方に、映像ではなく書籍の方向に行ってしまった。くそう。(2019/08/16)
先のコミックマーケット96における同人誌『ねじ子の重症熱傷』の売上の寄付を完了しましたので、ご報告します。
売上110部×500円=55.000円に私個人からの寄付を加えて、合計100.000円を
(株)京都アニメーションの支援金預かり専用口座口座 に2019/8/28付けで寄付しました。
ご協力して下さった皆様ありがとうございました。(2019/8/28)
夏のコミケありがとうございました。私の参加した3日目は史上まれに見る暑さと、普段と違うイベント形式で不測の事態が多かったことが不幸にも重なり、待機列から熱中症搬送が相次ぐ事態になってしまったようです。東駐車場待機列の現場で救助活動をされた医療関係者の皆様(おそらく全員が一般参加者の立場だったはずです)には、本当に頭が下がります。大事に至った患者さんがゼロであったのは、すべて彼らの尽力のおかげです。どんなに感謝しても足りません。コミケを守ってくれた英雄です。マジで。ありがとうございます。
ねじ子の次のイベント参加は冬のコミケの予定です。4日間開催が続くため2019/12/30になります。大みそかではありません。終わったあとにハロプロ楽曲大賞にもハロプロカウントダウンにも行けます。やったね!
コミケもコンサートも仕事も学校行事もイベントも東京周辺の何もかもが、オリンピックまでは望まぬ形の変化や不測の事態が続きそうでうんざりしていますが、知恵と勇気でなんとか乗り切っていきましょう。これは自分に言い聞かせています。(2019/8/26)

『ねじ子の重症熱傷』、なんと表紙を盛大に誤植していました。重症熱「症」ではありません。重「症」熱「傷」です。いやあぁあぁあぁあぁああああ!こんなに派手な誤植をするとは!!不覚!

「実は表紙って誤植の確率が高いんですよ。よーく注意して見なくちゃいけません!」と『ナース専科』の編集さんが表紙カバーの色校を見ながら深夜の編集部で教えてくれたことを思い出します。新聞や雑誌の誤植も「見出し」が一番気が付きにくいって言うしね。いやー、大きすぎるミスって、意外とスルーしてしまうものなんですね。てへへ。本当にすみません。
それを受けて、表紙はこのように直しました。

『ねじ子の重症熱傷』はチャリティ目的であり、かつ読者の皆様に知識を共有してもらうのが目的でもあるので、しかるべきのちにwebでPDFを全公開しようと考えています。コミケで購入してくださった方々に不誠実とならないよう、ある程度のウィンドウ期間を設け、かつ今回は『収益』ではなく『売上』金額で寄付をすることにいたしました。
コミケで『ねじ子の重症熱傷』を購入して下さった皆さんは、京都アニメーションに500円を寄付された計算になります。webで『ねじ子の重症熱傷』のPDFを読んだ方は、読後に気が向いたらご自分なりの任意の額を京都アニメーション様に寄付してくださると嬉しいな。(2019/8/25)
二冊目の新刊 『ねじ子の重症熱傷』
A5/16p/コピー/500Yen

この本の収益は全額、この度の火災にて被害にあわれました京都アニメーション様に寄付いたします。
内容的には『令和医療手技図譜 重症熱傷編』または『人がやけどで死ぬワケを考えてみた』って感じです。チャリティです。コピー本です。

京アニの火災以来、私自身がどうしても心の中に抱えている犯人への憤り、失われたものの大きさとかけがえのなさ、圧倒的な理不尽に対して何もできない無力感を何とか昇華したいと思って作りました。
※収益全額に私個人からの募金をプラスして、京都アニメーション様の支援金預かり専用口座に直接寄付する予定です。(2019/8/10)
2019/8/11 東京ビッグサイト
西き-44a「ねじ子アマ」
★新刊は
- 『平成医療主義図譜 針モノ編 改』A5/148p/1000円 紹介はこちら。
- 『ねじ子の重症熱傷』A5/16p/コピー/500円 紹介はこちら。
※『ねじ子の重症熱傷』はコピー誌です。チャリティです。この本の収益は全額、この度の火災にて被害にあわれました京都アニメーション様に寄付いたします。
★色相環一周記念・全巻セット
- 『平成医療手技図譜』全巻セット 12冊/10000円

これプラス新刊の『針モノ編 改』になります。計12冊セット
色相環一周を記念して、全巻セットを作りました。
『針モノ編』『管モノ編』『手術編』『救命救急編』『夜間外来編』『診察編』『神経編』『精神編』『心療内科編』『手術編 改』『針モノ編 改』の全12冊(+おまけ)のセットです。10000円で、バラで買うよりも安いです。救命救急編と手術編の在庫の関係で「限定3セット」の販売になります。これまでの『手技図譜』をまったく持っていない方はこの機会に是非どうぞ。
★その他の既刊
『平成医療手技図譜』
- 針モノ編 800円
- 管モノ編 1000円
- 救命救急編 在庫なし
- 夜間外来編 1000円
- 手術編 在庫なし
- 診察編 1000円
- 神経編 1000円
- ICU編 1000円
- 精神編 1000円
- 心療内科編 1000円
- 手術編 改 1000円
- 『救外戦隊ネラレンジャー』600円
- 『現着!QQQ ー病院に着く前にー』1000円 紹介はこちら。
いずれも少部数ずつ持ち込んでいます。机の上にない場合はお声掛けください。
熱中症に気をつけて一日を乗り切りましょう。
※なお、商業誌『ヒミツ手技』『ぐっとくる』と同人誌『平成医療手技図譜』はこのような関係になっています。わかりにくい方はこちらを見てチェックしてください。

★ 2019夏コミ 新刊その1

『平成医療主義図譜 針モノ編 改』
A5 148ページ 1000円
13年前に作った『平成医療主義図譜 針モノ編』の改訂版になります。時代に合わせて変わったやり方や、『ねじ子のヒミツ手技1st』のために手を加えた部分を、同人誌にも加筆修正しています。
目次
・採血
・点滴(輸液ポンプ・シリンジポンプ・閉鎖式ライン 含む)
・注射
・動脈採血
・中心静脈カテーテル
・動脈ライン
・骨髄穿刺
・腰椎穿刺
今回新たに描き下ろしたのは「閉鎖式ライン」、そして一番大きく加筆修正したのが「中心静脈カテーテル」です。滅菌ガウンと大きい滅菌ドレープを掛けて行う「マキシマル・バリア・プリコーション」と、リアルタイムにエコー下で穿刺する技術「リアルタイムエコー下CV」を詳細に描き下ろしました。


50ページも増量した結果、計148pになっちゃいました。分厚い。

実は『平成医療手技図譜』の表紙の色は色相環に沿ったグラデーションになっております。
赤い表紙の『針モノ編』から始まり、だんだんに紫、青、緑、黄色と巻を重ね、平成の終わりにまた『針モノ編 改』を出すことで色相環を一周しました。やったね!最後まで誰も気付いてくれなかったけど!私は13年かけてまた始まりの赤に戻ってきました。血液の色であり、医者の色です。アイドルならセンター、戦隊なら主役です。
次は令和という時代が来るそうです。令和の時代でも東京ビッグサイトで皆様にお会いできることを願っています。
※そして今回はもう一冊、コピー本を今まさに作っています。また告知しに来ます。(2019/8/10)
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