ねじ子のLINEスタンプが発売されています

2018冬コミ新刊『現着!QQQ ー病院に着く前にー』

久々に、マンガと文章の本を作りました。
『現着!QQQ ー病院に着く前にー』という本です。

★ 2018冬コミ 新刊

hyoshi

『現着!QQQ ー病院に着く前にー』
96ページ 1000円

現着は「げんちゃく」と読みます。「現場に到着」という意味です。QQQは「救急のクイズ」がベースですが、なにか同じものが3つ揃うと特別なできごとが起こるような気がしませんか?そんな感じです。

119番が鳴り、救急車が呼ばれ、救急隊が現場に着いてから病院に着くまでの間。短いようで、当事者には永遠のように長く感じられる、あの時間。その間に必死に頭を働かせて考えること。そんな内容をクイズにしました。

もともとは、救命救急士さん・救急隊員さん向け実務情報雑誌『プレホスピタル・ケア』2011年8月号~2014年2月号にて連載した原稿です。今回加筆修正をし、第1話から9話までをまとめました。実は半分くらいしか入らなかったので、どこかでもう一冊出す予定です。

救命救急士の秋山くんと、その幼なじみで特撮オタクの外科医・辻先生による掛け合い医療マンガをお楽しみください。先生によるクイズののちに、解答編となる会話文が続きます。
何を言ってるかよくわかんないと思うので、以下にサンプルをのせます。

 

QQQ-1 QQQ-2 QQQ-4QQQ-5 QQQ-6

収録内容はざっとこんな感じです。
(目次自体がクイズの答えのヒントになってしまうので、順番は本編と変えています)

・高所からの転落
・頭部外傷
・夜間の呼吸困難
・女性の腹痛
・指の切断
・吐血
・熱傷
・おもちの窒息
・動いていく皮疹
・熱中症
・酔っぱらいへの対処 etc

救命救急士さん向けの連載であったこともあり、搬送時の判断に迷う症例を多めに扱っています。救急車が呼ばれた現場で、救命救急士さんたちは救命作業を行いつつ、重症度にあわせてどの病院に搬送するかを決めています。これはたいへんな作業です。現場でできる検査なんてほとんどないし、状況は刻々と変わるし、患者さんやご家族にやいやい言われることもあるし、カメラを構える無責任で邪魔な野次馬も多いし。短い時間の中で、むずかしい判断を日々迫られています。頭が下がります。そんなみなさんの助けに少しでもなれればと思いつつ、本をまとめました。事故や急病に居合わせた一般の皆さんの病院選びの判断の助けにもなると思います。ちなみに私は久しぶりに特撮ネタがたくさん描けて楽しかったです。(2018/12/30)

よっすの孤独を思う

どうしようもない内容だけれど、自分自身の混乱の解消と救済のために、この文章を書きます。

私はよっすぃこと吉澤ひとみさんが好きだった。よっすぃがいるから私はずっとハロヲタを続けられた。黄金期と呼ばれる誰もがモーニング娘。を知っていた時期から、人気が衰退し、売上が落ち、レギュラー番組も次々となくなり、音楽番組にもだんだん呼ばれなくなっていく時代を、彼女はリーダーとして支えた。私はそんな彼女が好きだったし、衰退期にも腐らない姿勢に勇気づけられていた。私のハロプロ現場デビューは彼女の卒業公演だった。一番好きな子が卒業するから私は、今よりずっと閉鎖的だった当時のアイドル現場に足を運ぶ勇気を持てた。彼女がモーニング娘。を卒業し、音楽ガッタスが消滅した後は熱心に情報を追うこともなくなったけれど、出演番組はほぼ見ていたし、ブログやインスタもたびたびチェックしていた。

よっすぃはずっと、自分の心の中やプライベートを他人に見せない人だった。ファンに見せなかったのはもちろんのこと、仕事仲間であるメンバーにも見せなかった。それはずっと昔からそうだった。おそらく彼女は長い芸能活動のかなり初期の段階で何かに深く傷つき、心を閉ざしてしまったのだろう。モーニング娘。卒業直前に弟さんが交通事故で死んだことも、よっすい本人の口から語られることはなかった(スポーツ新聞にすっぱ抜かれて公になった)。弟さんの不幸を使って商売をすることもほとんどなかった。モーニング娘。の他のメンバーがモーニング娘。から突然脱退したり、舞台に穴を開けたときも、特に文句も言わず、黙々と仲間をフォローする仕事をしていた。恋愛の報道はいっさいなく、婚約報告は突然だった。結婚のお相手の情報は事故が起こるまでかなりしっかりと(おそらく強い意志をもって)隠匿されていた。子どもが生まれたときも事後報告で、(ファンは当時やきもきしていたのだけど)誕生から一年経ったのちに「実は小さく産まれていて大変だった」ことをブログで明かした。その大変さをリアルタイムにブログやインスタで中継していれば相当のレビュー数を稼げていたであろうに(芸能人ママブログにはそういう要素もあるのに、彼女自身も同じような体験をした母親のブログを見て支えられていたと告白していたのに)彼女はそういう選択をしなかった。いつもしなかった。彼女は芸能人としては不適切なほど秘密主義であった。そして私はそういうところも好きだった。

これは私の個人的な事情だが、藤丼がハロプロからいなくなった時期と、よっすぃが子供の低体重に悩んでいたことをブログで告白したのはちょうど同じ時期であった。2017年7月だ。私はこのとき「あ、私たちファンはアイドルが一番大変なときに何もできないんだね」と強く感じた。そしていま、私はより強くそれを感じている。何もできない。私は無力だ。当たり前だよね、ファンごときが天下のアイドル様に何かできるわけないじゃん。わかってる。わかってるよ。でも、本当に何もできない。何もしてあげられないんだよ!私が人生に悩んでいるときに、アイドルたちは私の心の暗闇に光をともし、進むべき方向を指し示す灯台になってくれていたのに!その逆はできない。彼女たちが一番つらいとき、ファンである私にできることなんて何ひとつない。いやもっと大きく言えば、人間が人間に対してできること(家族でもない他人に対して、してあげられること)って、ひどく少ないのかもしれない。そんなことわかってる。わかってるけど、私はいま、強く無力感を感じている。今のよっすぃを救えるのは彼女の家族とごく限られた周囲の人間(事務所の人など)だけだ。他の人間が彼女にしてあげられることは何ひとつない。残念ながら。

私の中の冷静な医者の部分は「事故の時点で診断はついていなかっただろうし、病院に紐付けもされていなかっただろうけど、彼女はアルコール依存症に限りなく『近い』状態と推測されるし、少なくとも今後はアルコール依存症に『準じた』治療をする必要がある」と思っている。つまりそれは「一生の間、『永遠に』『一滴も』酒を飲まない」ということである。彼女の場合はさらに「車を運転しない」も加わる。この二つを一生守り抜くこと。それができなければ、アルコール依存症患者の未来にはさらなる地獄が待っている。今よりも状況は悪化し、人生は破滅に向かい、人間関係は粉々に砕け散る。私の中の冷徹な医者の部分はそう言っている。そんな患者さんはありふれていて、もう何十人と見てきた。

いったんアルコール依存状態になってしまった患者は、一滴でも酒を飲むと、一瞬で元の依存状態に戻る。そこまでの断酒期間がどんなに長くても関係ない。「一生の間、一滴も、酒を呑んではいけない」のはそのためだ。これは大変なことである。「禁酒」を一生守らせるためには、ご家族の献身的なフォローが不可欠だ。残念ながら、これまでのよっすぃを取り巻く環境は彼女に酒を飲ませることを可能にしていたのだろう。つまり家族や周囲は「イネイブラー」だった。イネイブラー(enabler)つまり、アル中患者が酒を呑むことを(不本意ながらも)可能にしてしまっている人たちだ。

これからよっすぃは一切酒を飲まないように変わっていかなければならない。彼女自身も、周囲も、変わらなければならない。そしてこれはとてもむずかしい。酒はこの社会にありふれていて、安値で簡単に手に入れることができるからだ。それでも、彼女と周囲は大きな決意をもって変わらなければならない。さらなる悲劇を見たくなければ。子供の未来のためにも頑張ってほしい。私の中の冷静な医者の部分はそう言っている。

でも、おたくとしての私は違う。「ねぇ推しメンが手錠腰縄で連行される姿が連日報道されるってどんな気持ち?ねぇねぇどんな気持ち?」と私をからかってくる架空のドルヲタ仲間や、「お前はおたくとして一つ先へ行った!誰も見たことのない景色を今のお前は見ているんだぞ!冨樫よりもうすた京介よりも小林よしのりよりも、お前は先に進んでいる!最先端だ!喜べ!状況を楽しめ!」と神の視点で私に語りかけてくる人物を心の中に作りだしても、私の心は癒えない。全然だめだ。自らの心の傷を神の目線で俯瞰で見るのは有効な防衛機制のはずなんだが、心が萎えるばかりだ。

結局よっすぃは最初から最後まで普通の女の子だったのだ。とびきりかわいい、つんく♂の言葉を借りれば「天才的に可愛い」普通の女の子。普通の女の子を我々ファンが勝手に女神として持ち上げ、もてはやし続けたことで、彼女は何らかの闇と心の傷とプレッシャーを抱え、結婚し出産してもその不安を解消できなかったのだ。だからアルコールを飲み続けたのだ。しかも、それさえも、我々ファンは「酒豪」として楽しんでいた面がある。これは私たちが18年間彼女を追い詰めた結果でもあり、つまりは私たち自身がイネイブラーだったのだ。考えすぎなのかもしれないが、事故の報道があった日以来、私はそう思うことを止められないでいる。

私たちドルヲタは弱い。弱い人間だ。だからアイドルなんか好きになるのだ。そこらへんの少女を女神のように崇めるのが私たちの渡世だ。それがないと、この世はあまりにつらい生き地獄なのだ。彼女らは生身ではみなごく普通の女の子だ。女神なんかじゃない、そんなことわかっている。ぜんぶキモヲタの妄想だって自分でもわかってる。わかってるから、大目に見てほしい。そうやってアイドルに甘えて、アイドルというシステムに甘えて、私たちはここまで生き永らえてきたのだ。見たことも会ったこともないのに勝手に決めつけるけど、ユースケ・サンタマリアだってマツコ・デラックスだって柳原可奈子だって松岡茉優だって蒼井優だって吉田豪だって朝井リョウだってタワレコ社長だってピザーラ社長だってきっとそうなんだ。

でも、私は、勝手に女神扱いされてしまった女の子の気持ちを考えたことはあるのだろうか?羽を勝手に生えさせられた女の子側の気持ちを考えたことが、これまで本当にあったのか?勝手に女神扱いされるなんてたまったもんじゃないのでは?自分だって、医者を勝手に聖職者扱いする人間には辟易してるのに?

ジブリ制作・宮崎駿監督「On Your Mark」を初めて見たとき、若かった自分が日記に書いた内容を、今ここで引っ張り出し、コピー&ペーストしてみようと思う。以下がそれである。


「On Your Mark」を見て思ったこと。「羽の生えた女の子の気持ちを考えたことはあるの?」


羽の生えた女の子を救うことが生きていることの意味だ、という男の人の気持ちはわかる。その通りだと思う。宮崎駿も村上春樹も谷崎潤一郎も、いつだってそうだった。勝手に理想の女性を作って、それを混沌とした世界で生きるための心の支えにしてしまう。それはきっと正しいのだと思う。少なくとも、戦歴や利益や金や名誉や権力のために生きることよりもずっと美しい。

でも、羽の生えた女の子の側の気持ちを考えたことがあるのだろうか?勝手に女神扱いされてしまった女の子の気持ちを考えたことはあるのだろうか?

この物語の中に、XX遺伝子は羽の生えた女の子しかいない。私の体はXX遺伝子でできている。だから私は、とりあえず女の子の心のなかに入り込んでフィクションを鑑賞する。でも、入ってみたら、その心のなかには何もない。空虚。からっぽなのだ。それは、あえて空っぽに作られている。女の子の心情など描かれる必要はないのだろう。わかってる、この作品はそれでいい。

でも私はどうしても「羽の生えた女の子の気持ち」を考えて、そして深く落ち込んでしまう。そんな私に「女の子の気持ちを考える必要はない」と言ってくる人もいる。たいてい男性である。そう言われるとますます深く落ち込んでしまう。馬鹿になれ、と言われれているように聞こえてしまう。実際はそうではないとわかっていても。

これが当時の私の感想である。若い女子であった私の。すでにハロヲタであった私の感想だ。そして40代になった私はいま、自分の弱さとずるさを心の奥底から引きずり出され、悲惨な結果を目の前に突きつけられている。どうしようもない。10年間推していたアイドルの名前に容疑者がつき、手錠と腰紐で連行されていく姿を毎日どこかで(ネットもテレビも一切遮断したのに電車の中の液晶に不意打ちで出てきたり、訪ねたコンビニの入口に置いてある新聞の一面にデカデカと名前が載っていたり)目に入れさせられて、私は気がふれたのかもしれない。よっすぃがモーニング娘。から卒業してからはや10年、救いようもないことに、私はいまだに年端もいかない女の子たちを女神としてあがめ立て続けている。懲りもせずに。目もあてられない。こんなときいつも私を癒やしてくれたつんく♂さんも、もういない。

私はよっすぃのことを何も知らなかった。
過去10年間推していたのに知らなかった。
あんなに酒に溺れているなんて知らなかった。
子育てに不安が強かったことも知らなかった。
(噂が本当なら)旦那さんにいろいろと事情があることも知らなかった。
だって彼女は何も言ってくれなかった。
ブログやインスタにもそんなこと書いてなかった。
富にあふれた豊かな暮らしと子育ての写真を毎日インターネットに載せて、
精一杯の幸福を演出をしたあと、
ふと真顔にかえって、
とんでもなく強い安酒を浴びるように呑んでいたんだろうか。
そんなことしないでいい、ぜんぶ、なにもかも、しなくてよかったのに。
どうして、君はいつから、こんなになったんだい?
自分ではいつからおかしくなったか、わかるはずだろう?
拘置所でずっとそれを考えていたんだろう?
いや、だからこそ、引退を選んだのか?
モーニング娘。になったことそのものから、君の歴史を直さなくちゃいけないのかい?
それなら、モーニング娘。のあなたをずっと応援していた私は、私たちは、いったいなんだったんだ?

……知は力なり。私は医者だから、困ったときは医学とサイエンスに帰るのだ。彼女と彼女の周囲がやることはもう決まっている。法律に則って粛々と罪を償い、被害者の皆さんに誠意ある謝罪とじゅうぶんな賠償をする。そして、アルコール依存症の「専門病院」にきちんとつながる。そこらへんの芸能人御用達病院じゃダメよ、都道府県に必ず一つはある、アルコール依存症専門病院よ。周囲の人間はイネイブラーにならないように努める。酒は絶対に未来永劫、一滴も呑まない。必要なら断酒薬を使う。そして、「アルコールのない状態で」日常生活をていねいに積み重ねていく。規則的に食事を作る、食べる。入浴する。よく寝る。朝が来たらお茶かコーヒーをいれる。朝食を作り、食べる。晴れた日には洗濯をし、雨の日には掃除をする。雨があがったら、外に傘をほして水滴を乾かす。常備菜を作る。それを毎日食卓に出し、かつ腐らせないように定期的に冷蔵庫にしまう。夜が来れば入浴し、歯を磨いて寝る。そうやって日々のなんでもない動作をくり返し、少しずつ積み重ねていく。子どもがいるなら、子どもとともに。それ以外の方法はない。一切ない。

きらびやかな芸能界のお仕事と比べれば、それは地味でつまらない作業のくり返しに見えるかもしれない。でもそんなことは決してない。アルコール依存からの復帰は、一生をかけるに値する重大な仕事だ。人生をかけてやり遂げるべき立派な仕事である。きっと大ディマジオだってマイケル・ジャクソンだって貴女を見たら褒めてくれるはずだ。もっと踏み込んで言ってしまえば、それをやり遂げなければ、貴女と貴女の周囲の人生はさらに崩れていく。これは医者として、かつ貴女のファンだった人間としての最後の助言である。まさに今が瀬戸際なのだ。周囲の人間もそれをわかって、支えてあげてほしい。

すでに一般人である個人に対してここまで踏み込んだことを書くのは、あまり褒められたことではないのかもしれない。でも私は彼女のファンだったから、彼女が最後の直筆メッセージで言及していた「今日まで応援し支えて下さったファンの皆様、ご支援いただいた皆様には、裏切るような結果となってしまったこと、本当に、本当に申し訳ございませんでした。」の該当者だと思うから、あえて書いた。私たちに謝る必要などまったくない。本当に申し訳ないと思うなら、いま今日まさにこの時から、一切の酒を断ってくれ。裁判で言っていた「急激に減っています」じゃあダメだ。一滴も呑むな。それを一生続けろ。私の云いたいことは畢竟ただそれだけである。(2018.12.20)

エピペンの打ち方 特集 ナース専科2018年12月号

ナース専科12月号に寄稿させていただきました。

テーマは「エピぺンの打ち方」。アナフィラキシーショックの治療に使うエピぺンについて書いています。エピペンは救急車が来る「前に」その場にいる人たちが使うものですから、教職員や保育士さんなど一般の方にも読める内容を目指しました。

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13ページの特集です。表紙になぜかいつものパンダが出張っています。

こちらで6ページほど試し読みもできます。

試し読み→

App Store→

Google Play ストア→

そして、紙の雑誌「ナース専科」は今月号を持って休刊となります。時代の流れとはいえ、2009年から9年間お世話になった雑誌の休刊はとてもさみしく思います。書籍の発行やweb版ナース専科は今後も続くとのことですので、そちらでもよろしくお願いします。(2018/11/12)

冬のコミケ受かりました

冬のコミケ受かっていました。やったあ。12/31大みそかです。評論・情報ジャンルの医療島にいます。よろしくお願いいたします。

コミックマーケット95 

2018年12月31日月曜日 東地区 “O “19b

サークル「ねじ子アマ」

コミケWebカタログにてサークル情報ページ公開中です。

平成最後の冬コミですね!新刊を準備したい!したい!したい!(2018/11/11)

『ねじ子のヒミツ手技#(シャープ)』 はオペ室・ICUがテーマです

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ひさしぶりに商業誌が出ます。『ねじ子のヒミツ手技#(シャープ)』です。2018/10/3発売です。

今回の本では、手術やICUで行われている手技を紹介します。ナースさんのみならず、医者向けの内容も増えてきます。よってタイトルにも、従来の『ヒミツ手技』より少しだけ上級者向け、という意味を込めて#(シャープ)と付けました。半音高いってことです。でも、決してむずかしい内容ではありません。

元ネタはもちろん、ハロ-!プロジェクトの知られざる名ユニット「タンポポ#」です。往年の名ユニット「タンポポ」の期間限定後継ユニットで、「アンブレラ」という名曲を生み出しましています。メンバーは岡井ちゃん、熊井ちゃん、光井ちゃん、亀井ちゃん。名字にすべて「井」の字が入る4人で構成されています。だから「タンポポ#」。シャープじゃなくて、井戸の井。洒落がきいてる!さすがはつんく♂さん!

もくじ

  • 清潔と不潔の概念
  • ガウンテクニック
  • 手術器具の名前
  • 糸結び
  • 器械縫合
  • 包帯交換
  • ICUってどんなとこ?
  • 輸血
  • 人工呼吸器
  • 脳死判定

ちなみに、この本は同人誌『平成医療手技図譜 手術編 改』と『平成医療手技図譜 ICU編』をまとめて若干の加筆を加えたものになります。当時描ききれなかった「ガスボンベの色にまつわるトラブル」「ジャクソンリースバッグ」「抜管」「抜管後の酸素マスク管理」を書き足しました。加筆部分を見たい方は、そこらへんだけ読んでね。

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帯は『パナケイアの手』でお世話になった松本救助先生に書いてもらいました!うれしい!かわいい!やったあ!松本先生ありがとうございます!私の本にいつもと違う新しい風が吹いている!ぴゅー!

2018年10月3日発売です。あー、うー、ドキドキしてきた。

 

同人誌『平成医療手技図譜』と商業誌の関係 まとめ

平成も終わるので、ねじ子の発行同人誌『平成医療手技図譜』の一覧を作ってみました。

  • 針モノ編

 平成医療手技図譜【針モノ編】

  • 管モノ編

 平成医療手技図譜【管モノ編】

 こちらの二つを商業誌化したものが『ねじ子のヒミツ手技 1st Lesson』です。

  • 救命救急編

 平成医療手技図譜【救命救急】

  • 夜間外来編

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こちらの二つを商業誌化したものが『ねじ子のヒミツ手技 2nd Lesson』です。

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  • 診察編

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こちらを商業誌化したものが『ねじ子のぐっとくる体のみかた』です。

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  • 神経編

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こちらを商業誌化したものが『ねじ子のぐっとくる脳と神経のみかた』です。

さらに、

  • 手術編 と 手術編改

 平成医療手技図譜【手術編】ope_mk2

  • ICU編

ICU

こちらの二つを商業誌化したものが『ねじ子のヒミツ手技 #(シャープ)』です。

 

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さらにまだ商業誌化されていないのが以下のふたつです。

  • 精神編

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  • 心療内科編

 hyoshi

こちらも商業誌化の予定です。現在進行中。

全部一枚の画像にまとめるとこうなります。

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 平成最後のコミケなので、次の冬コミには全種類を少しずつ持ち込みできたらいいな。コンプリート勢の皆さまの要望により添えるようにしたい。(2018/10/3)

 

知恵のプリキュア・キュアアンジュは医者になるのかな なってくれ このご時世だからこそなってくれ

HUGっと!プリキュア最新回(第27話)、産婦人科の女医さんが赤ちゃんを取り上げたあと、「大変だよ。でも、この仕事、最高だよ!」と快活な笑顔で宣言したシーンで、私は号泣してしまった。馬鹿みたいに声を上げて、おんおん泣いた。

私はこの1ヶ月ずっと、東京医科大学のニュースに傷ついていた。女子学生が受けた圧倒的で理不尽な差別。そしてその後に世をはびこった、病院というブラック企業からの離職者が多いことを性差のせいにする身勝手な言動の多さに、私はとても苛立ち、傷ついていた。プリキュアで号泣する自分を見て、私は初めて自分が深く傷ついていることに気が付いた。

私が私の誇りにしている医学という学問そのもの、勉強して勉強して勉強しまくったゆえにつかんだ様々な試験での評価、医者として積み重ねてきた経験、そのすべてを、ただ私の性別ゆえに、突然、無にされてしまう、そんな恐怖感。私が私の性を選んだわけではないのに、性別ゆえに、正当に評価されない世界であったことの恐怖。実際に、女というだけで学ぶ機会さえも奪われてしまった後輩たちがいる。自分の住む医学という世界がそんな修羅の国であったことに、私は根源的な恐怖を感じた。恐ろしかった。

私は、私よりも先輩の女医に「医者って、最高の仕事だよ!」と言ってもらえて嬉しかった。ひどく励まされた、たとえフィクションであっても。私はただ、私よりも先を行く先輩女性に、「医学は最高の学問だよ!」と言ってほしかったんだ。プリキュアを見てそのことに初めて気が付いた。

だから、私も。私より若い、医学部を目指している女子学生さんたちに向けて、言います。アジテーションはあまり得意ではないのだけれど、差別撤廃運動というものは差別を受けている当時者の熱意のこもった言葉のみを栄養源として前に進んでいくものだから、いまここで言います。

医学部を目指している女子学生の皆さん、どんどん医学部を受けてください。
どんどん医者になってください。
勉強の手をけっして止めてはいけません。

私はあなたたちを歓迎します。
他の誰がなんと言おうと私は、あなたたちが白衣を着て、私の目の前に現れるときを待っています。

今、あなたたちはニュースを見てきっと不安になっていることでしょう。
医学界全体が女医を歓迎していないかのような印象を受けている人もいるかも知れません。
でも、私は今ここで、胸を張って言います。

女性はもっと医者になるべきですし、女医はもっと増えるべきです。

そのソースは米医学誌「JAMA Internal Medicine」に発表されたハーバード大学公衆衛生大学院の「医療施設での治療で女性医師が担当した高齢者は、男性医師が担当した場合よりも生存率が高く、再入院の程度も低い」とする研究論文です。それと、世界的に見ても日本は女医の割合が少ないという事実をもとに、「日本の女医はもっと増えるべきだ」と私は考えています。

でもそんなことよりももっと感情的に、もっと個人的に、もっと力強く、私はいま、逆風にさらされながら勉強を頑張っている後輩女子たちを応援したい。だってそれは、過去の私そのものだから。

ほかの誰がなんと言おうと、私はあなたたちを歓迎します。
不安になっている受験生の皆さん全員にエールを送りたい。
ひとりひとりを抱きしめに行き、温かいミルクとチョコレートをあげたいくらいです。

ふぅ。ねじ子はいにしえのオタクなので、語りだすと長いのです。文字数が多すぎる。Twitterには向いていません。だからここに書きました。(2018/8/18)

『クラシカロイド』二期のクラ・クラがたぐっちとれなしに見えてつらい

今から愚痴を書きます。

私はこぶしの辞めた三人が好きだった。昨今のハロプロは私の好きな子から順に辞めていってしまう。大上先生には「いや、あなたの好きな子から辞めていくんじゃなくて、あなたの好きな子だから辞めちゃうんでしょ」と言われた。そのとおりだ。私は、不条理を我慢せず、与えられた椅子を蹴って、自分で自分の人生を切り開いていく決心を固めちゃうような気丈な女の子が好きなのである。若さ故の無鉄砲なのかもしれない。でも、ロックってそういうものでしょ。モーニング娘。って、ロックボーカリストオーディションから作られた集団でしょ。デヴィッド・ボウイも言っているではないか。「若者が怒りの精神を持ったり、刹那的な振る舞いをするのは大事なことだと思うよ。若いってのは、そういう事なんだからね。でも、それはやがて過ぎ去って新しい視点を持つようになる。その段階に至る為には、そういう無鉄砲な時期が必要なんだろうね」と。

思えば最初から、私は福田明日香が好きだった。当時は「推しメン」なんて言葉はなかったけれど、私の最初の推しは福田明日香で、人気絶頂の中一人違和感を感じ、静かに辞めてしまうような心の持ちようが好きだったのだ。

藤丼もたぐっちもれなしも、私はまったく悪いとは思っていない。むしろ当時の彼女らを取り巻いていた状況を思えば「そりゃ辞めるわ」と思う。彼女たちが憧れて入ってきた頃のハロプロはもうないのだ。あの頃はつんく♂がいた。今はもういない。これは思っている以上に大きな変化だと私は思っている。

この変化の差は、当時「おはガール」レギュラーの仕事がありながらもある日突然いなくなってしまったサキチィに対する、つんく♂からのお知らせを振り返ることでもよく分かる。

スマイレージに関する大事なお知らせ

「また、本人はまだまだ未熟な学生で未成年です。
社会人なら仕事を途中で投げ出すようなことは許されないのかもしれませんが、
彼女のまっすぐな気持ちをご考慮いただき、どうか温かく温かく見守ってあげてほしいと
願っております。」

藤丼とたぐっちに対する西口社長から出たお知らせとの差は歴然としている。二人に関するお知らせは脱退の責任をすべて未成年女子にかぶせる内容であった。本当はいったい何があったのかは知らない。知るよしもない。でも、本名で、素顔を完全にさらして、青春を投げ打ってアイドル活動をしてきてくれた未成年の女子に対するデジタルタトゥーとして、あまりにひどい文章であると私は感じた。財産も地位もある会社上層部の人間がただ自分の保身だけを考えた末に出てきた文章に、私には見える。自己保身ばかりで、メンバーへの愛がない。リスクを冒して大切な思春期に長期間活動してきてくれた女の子への感謝の念がまるで見えない。彼女らは、いくらステージの上で大きく見えても、板を降りればただの小さい女の子だ。当然社会的に弱い立場である。しかも彼女たちにはこれからも長い人生がある。日本女性の平均寿命を考えればあと60年はある。この先の人生の方がずっとずっと長い。

結局、私はいまだに、藤丼とたぐっちに対する事務所からのお知らせの文章を許容できていないのだ。つんく♂のいないハロプロという組織に、希望が持ちにくい理由の一つでもある。

そもそも、これまでのハロプロという組織はつんく♂が父親だった。それは変えようもない事実だ。女の子たちは、つんく♂が親だと思ってハロプロに入ってきたのである。メンバーの親だって「いざとなったらつんく♂さんが守ってくれる」と思っていたからこそ、不安定で危険な噂が絶えない芸能の世界に、大切な子どもを預ける決心をしたんだろう。それなのに、現在のハロプロは、ある日突然つんく♂という実父と引き離され、突然あらわれた知らない人間が継父を名乗り、しきっている状況である。しかもこぶしファクトリーは当時唯一つんく♂のオリジナル曲が与えられていなかった。そりゃ家を出て行く決意をする子もいるだろうし、継父に反発する子も出るだろうし、そんな人事を行った上層部を憎く思う子もいるだろう。当たり前だ。

突然仕事をやめるだなんて無責任?何を言うのか。そういう不安定さこそが、思春期の少女だろう。思春期の子どもの不安定さや刹那的な振る舞いを消費し、楽しむのがハロプロのアイドル文化である。こんなときだけ格好つけて、建前を押し付けないでほしい。人格的にも肉体的にも成熟して安定している女性を応援したいなら、成人女性を応援すればいいのだ。そんな文化はたくさんある。AKBに行くなり坂道を登るなり女優なり声優なりキャバクラなり風俗なり普通に彼女を作るなりして、成人女性をたっぷり愛すればいい。安定して仕事もできる、契約で縛ることもできる大人を。突然いなくなったり、情緒不安定になったりしない大人の女性を。その方がいいに決まっている。でも、ハロプロのファンはそうじゃないでしょ?事務所も違うでしょ?

ハロプロのファンも、事務所も、つんく♂も、結局一番好きなのは14歳の少女なのだ。これは疑いようもない。もう少し幅を取るなら、8歳から17歳くらいまでの少女。初登場は若ければ若いほどいい。山のピークは14歳。まだ初潮も来てなさそうな少女を集め、ともに思春期を迎え、迷い、とまどい、ゆらぎ、ほころび、変化し、ときに無茶をし、心と体が成長する姿を楽しむこと。これこそが真のハロプロである。彼女らの若さと迷いと衝動こそがハロプロの真骨頂であり、つんく♂のアイディアの源であり、我々ハロヲタの生きる糧なのだ。思春期の少女の変化を楽しんでいるのだから、我々は彼女らの不安定さも同時に受け入れなければならない。私たちは児童を労働させ、あまつさえそれを楽しんでいる鬼畜である。児童を働かせているくせに、情緒不安定や無謀さだけを責めるのはおかしい。当たり前だろ、思春期なんだから。

思春期の少女の無鉄砲さを許せないのなら、大人を応援すればいい。青春を通り過ぎた年齢の、自分の判断ができて強かな野心がある子はたくさんいる。ハロプロにだっている、宮崎由加ちゃんとか金澤朋子ちゃんとか飯窪春菜ちゃんとか。でも、彼女らはハロプロであまり人気が出ない。あくまでも傍流だ。ハロプロの主流はやはり、14歳までに加入した小さい女子と、その成長する姿なのである。我々が愛しているのは思春期の迷いであり、ほころびであり、衝動であり、不完全ながらも成長の余地を残している姿なのだ。不安定だからこそ、成長する。そのどちらかだけを味わうことはできない。両方おいしくいただかないと。事務所のお偉いさんたちもね。どちらかだけなんて無理よ。

ちなみに今の日本の基準でこれはロリコンとされる。光源氏が紫の上を手篭めにしたのは13歳だし、ほんの少し前は普通に「ねぇやは十五で嫁に行き」と歌っていたのだから(数え歳で15だから満13~14歳のはず)歴史を考えればそのくらいの少女を神聖視するのは何ら不思議ではないのだが、現在はロリコンとされる。

というわけで藤丼とたぐっちとれなしは、我々のような鬼畜でロリコンなクズどものことはきれいさっぱり忘れて、自分の実力で自分にしかできない仕事を積み重ねて、自分の人生をつかんでいってほしい。次はもう誰からの評価も気にしないでいい。お偉いさんやお金持ちに気に入られなければ一生上にのしあがれない世界とは違う。異性の客や上司に、大なり小なり女性性を駆使して接しなければ生き残れない世界とは違う。自分自身の力で、誰にも奪われない評価を、自分の手でつかみ取っていくことができる世界に、あなたたちは帰ってきた。これからがあなたたちの人生だ。ふんばってほしい。あんな奇妙な契約解除の文章のことは忘れていい。何がハロプロのルールだよ、できるもんなら内容を明文化して発表してみろよ。公表することすらできないルールのくせに。思春期に思い悩むのも、さまざまなことをして自我の確立のためにあがくのも、その中で周囲の大人に反発するのも、怒りの精神を持つのも、当然のことなんだよ。それがなければ次のステージへ進めない。私だって18歳の頃はそうだった。

「本名であんな文章を残されたら、ろくなところに就職できないぞ」なんていう言葉はまったく気にしないでいい。それはただの呪詛だ。そんなことを言っている奴らよりもいい大学に行くなり、いい資格を取るだけで、そんな呪詛は簡単に吹き飛ぶ。心配ない。キャリアとはそういうものだ。それでも、もし本当に就職に困ったら、藤丼もたぐっちも私のところにいらっしゃい。二人とも愛してるよ。れなしはきちんと定期的に病院に通ってね。お願いよ。

(2018.8.20 衝撃から一年ほど経過したのでアップロードしてみた)

群馬大学医学図書館にて「森皆ねじ子展」が開催されています

群馬大学解剖学教室の「解剖ちゃん」のご厚意により、群馬大学医学図書館にて
「森皆ねじ子展」が開催されています。1/29~5/31です。
お近くの方は是非どうぞ!!

群馬大学さんからのお知らせページです。

高崎前橋新聞にて、森皆ねじ子展の記事が載りました!ねじ子のことを理解してくださってることがよくわかる丁寧な記事で、とてもありがたく思っております。
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↑最大瞬間風速で1位が取れた!やった!

派生してYahooニュースにも載ったよ!ふええ!Yahooニュースに載るの初めてだよう。
(アドレスは消えているのでスクリーンショット)

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ワダすみたいな者に……
こんなに素敵な事が
いくつも起きて
いいんでしょうか……?
(※『HUNTER×HUNTER』掲載期間中に書いたので頭がすっかりハンター仕様です。ジャンプに『HUNTER×HUNTER』が載っている間は新しいビデオゲームを買ってもらったばかりの少年のように私の頭は『HUNTER×HUNTER』で占められてしまいます。1年でたった10週間だけ。この10週は私にとってもエンペラータイムなのです。あ、なのだよ)

解剖ちゃんさんと医学図書館の司書さん達が、とっても素敵なテーブルクロスとパワーポイントを作ってくださいました。感謝です!
にぎやかしに、色紙や過去のねじ子グッズも提供しましたよー。
詳しくは解剖ちゃんのTwitterをご覧ください。現地の写真がいっぱいあります。

マイナーなものも含めて、ねじ子の同人誌はすべてコンプリートしております(ちなみに販売はしておりません)。一般の方も閲覧は自由!とのことです。是非お立ち寄りください。(2018/2/19)

2017年 ねじ子のハロプロ楽曲ランキング

ここ三ヶ月ハロステよりもハロヲタステの方をよく見てるねじ子です、やっほーたい。今年はハロプロハーブが不足した一年でした。

いや、上半期は素晴らしかったんだ。集大成ともいえる卒業ライブが続き、悲しいながらもすがすがしい達成感のある充実したオタク生活を私も送っていたんだ。ところがどっこい、6月以降のハロプロは凄惨な別れと断絶がくりかえされるばかりで、私のやわなハートはぼろぼろである。単純に言えばみんな辞めすぎだし、グループは解体だの増員だので変わりすぎだし、結果どれも没個性になっているし、肝心のリリース活動は縮小しすぎである。困ったもんだ。

ハロプロが「アイドルの公務員」と揶揄されていた時代は終わった。父親のようにメンバーを長年守ってきたつんく♂もハロプロを去った。メンバー採用時の契約や雇用条件も徐々に変わっているのかもしれない。メンバーは大量に登用され、次々に辞めていく。時代に合わせてついにハロプロも、薄利多売の使い捨て商売に足を踏み入れたのかもしれない。

私は女性アイドルとの握手にもハイタッチにも2ショット撮影にも興味がない。でも、それらはお客さんにとても人気がある。お金も儲かる。接触商売と色恋商売は身の危険と隣り合わせの肉体労働だから、続けているアイドルはどんどん消耗し、辞めていく。既存のメンバーは次々と脱落し、新兵のように若いメンバーが投入されるも、見せ場を作ってもらえる機会もないままに続々と消えていく。サイクルだけがどんどん早くなり、結果として、女性アイドルという職業は「使い捨ての駒」になる。残念ながら、そこに愛はないし芸術もない。

私はただ、愛を持って長期的にメンバーを育てつつ、誠実に音楽を作り、「生歌で」踊るライブを続けてくれれば、それでいいのだが。ハロプロは20年間そうやってきたはずなのだが。現状はそれも難しいのだろうか?日本のポピュラー音楽を支える環境はそこまで困窮しているのだろうか?CDが売れず、Youtubeに対応できず、ものづくりもおぼつかなくなって、年端もいかない女の子に握手させるしか金儲けのアイディアが残っていないのだろうか?ひょっとして業界全体が破綻の道を進んでいるの?そんなのいやだよ。しっかりと音楽を作り続けてくれさえすれば、私はいくらでもハロプロという楽園に踏みとどまれるんだ。つんく♂という偉大な音楽家、兼父親のいなくなったハロプロに果たしてそれが可能なのだろうか?私にとって今後のハロプロは未知の領域に突入する。

私自身はつんく♂さんに帰ってきてほしいと思っている。特にモーニング娘。に関してはつんく♂さん以外の作品を求めていない。私はモーニング娘。をつんく♂さんの名の下に「作家買い」している。

そもそも鑑賞や評論というものは、どうあがいても作者に依存されて行われるものだ。それがさだめである。サラリーマンの給与の範囲で買った名もない仏像でも、運慶作だと判明したとたんに数十億円の値がついてサザビーで落札されるのだ。かくいう私も、三島由紀夫の長編小説が好きだから、彼の糞みたいな男尊女卑観満載のエッセイも我慢して読むのである。糞だけど。一人の作家を好きになったら、その人の全集を読む。それが鑑賞であると、私は高校時代に教わった。そしてモーニング娘。はつんく♂の全集であり、つんく♂の作品集だ。ほかのものはいらない。それがどんな名曲であっても、ほかのものはいらないんだよ。

正直に言えば、つんく♂さんという「がんサバイバー」に対する事務所の対応に、医者として少なからず憤りを感じている部分もある。もし発表されている病状が「事実ならば」、つんく♂さんの5年生存率は90%以上あるはずだ。つまり、ほとんどの場合、このまま生き延びる。逃げ切れるはずなのだ。「10%も死ぬじゃん!」と言われても、普通に生活している人間だって事故で突然死ぬことはある。「おまえ将来、交通事故で死ぬかもしれないからクビね」と言われたら、これはかなりの理不尽であり、誰もが就業差別だと思う。「おまえは5年後に10%死んでるかもしれない」という理由でつんく♂さんのライフワークを取り上げてしまっている現状に、私は結局、納得ができていないのだ。ただでさえ生きるのに不安と苦痛がともない、治療に結構なお金と時間がかかる「がんサバイバー」の皆さんを、さらに苦しめることになってしまう。そんなのは医者として認められない。「がんサバイバーから仕事を取り上げるな!つんく♂さんは私の心を何度も闇からすくい上げてくれた、命の恩人なんだよ!彼を排除した事務所を許せない!」という、非常に子どもじみた憤りにとらわれてしまうことが、正直に言うと何度もあった。

※ちなみに、がんになっても仕事を辞めない・辞めさせないことは、今の日本の医療におけるスタンダードである。がん患者の就労支援の取り組みとして、厚生労働省も「今すぐに仕事を辞める必要はない、と患者に伝えろ」と基幹病院にお達しを出している。

実際は発表されているよりも病状は重いのかもしれない。私からは見えていない真実だって、きっとたくさんあるだろう。私の憤りは、ただ一面からしか見ていない短絡的な思考である可能性が高い。それでも私は、今後何が起こっても、少なくともモーニング娘。だけはつんく♂さんの意のままに音楽をやらせてあげてほしいと思っている。

12月に発表されたモーニング娘。の新しいアルバム『⑮thank you,too』は素晴らしかった。アルバムを通して聴いた私は天を仰ぎ、叫んだ。「つんく♂はまだ、モーニング娘。をあきらめていないのか!」と。つんく♂さんがモーニング娘。をあきらめていないから、私もモーニング娘。をあきらめることができない。困る。こんなにいいアルバムを作られちゃ困るんだよ。藤丼がいなくなってから、私は糞事務所の糞事務所ぶりにうんざりして、もうハロプロごと見捨てようと、ずっとずっと思っていたのに!どうしてつんく♂さんはハロプロを、モーニング娘。を見捨ててくれないの!?あんなにひどいことをされているのに!?どうして!?あなたが見捨ててくれないから、私もモーニング娘。を見捨てることができないんだよ!困るよ!私は今ハロプロハーブが完全に切れていて、ようやく20年間にわたる依存から逃れられる、ハロヲタがやめられるかもしれないって思ってるのに!

いつだってそうだった。矢口が脱走したときも、℃-uteが5人になったときも、スマイレージからゆうかりんが抜けたときも、鞘師が留学したときも、私はいつも「もう終わりだ」と思った。ハロプロのすべてにうんざりして、既存の曲すら聴けなくなった。それでも、つんく♂の楽曲はいつだってハロメンを見捨てなかった。私はつんく♂の作る新しい曲によって、何度も何度もハロプロに引き戻されてきた。たった一曲しか書き下ろさなくても、その強大な引力によって、いつも私は第二宇宙速度を出し切れずに、ハロプロという星の重力圏内にむりやり引き戻されてきた。今回もそうだ。

唯一つんく♂とのつながりを明言しているモーニング娘。が、いろいろありながらもハロプロ内で文句なしの一強状態なのは至極当然のことである。だってまだそこにはつんく♂がいるから。そこにだけは、いるから。そもそも、つんく♂が苦手な人は、もうとっくに48だの坂だのスターダストだのアイマスだのラブライブ!だのアイドル声優だのに移行済みだよ。今さらハロプロを支えている酔狂な人なんて、つんく♂が好きだからに決まってるじゃないか。それ以外に何の理由があるのさ。あ、ロリコンの皆さんがいたか。そうだそうだ、彼らを忘れちゃいけない。和月先生、おへその国へ来て我々といっしょに松原ユリヤちゃんを今後20年間応援しませんか?こっちは完全合法ですよ?

つんく♂という巨大な引力を持つカリスマのいなくなったハロプロ(とくに娘。以外のグループ)が、現在の売上減少を乗り越えることができるのかどうか、私にはわからない。私自身も、セットリストにつんく♂の曲が少ないと判明しているライブへ足を運ぶ機会が極端に減ってしまった。今後どうするつもりなんだろう?『ジェラシージェラシー』よりも『BRAND NEW MORNING』を表題曲にする決定をしたハロプロ上層部(どうやら私とは感覚が違うらしい)のお手並み拝見である。

1位 モーニング娘。’17 ジェラシー ジェラシー / モーニング娘。’17

 

最高の歌詞とつんく♂節。

まず、白黒半分に分かれた衣装が好き。イントロをセンターでバキバキに踊る石田あゆみちゃんの動きが好き。ふくちゃんがクネクネしながら「羨ましいのに」って歌うところが好き。ふくちゃん史上最高のソロパートだと思う。これまでのふくちゃんの数あるソロの中でも最も表現力が高い。きっとふくちゃんは本当に、他のメンバーを見て「若いだけでうらやましい」「細いだけでうらやましい」と思ってるはず。ぴったりなんだよ。

「人間 脳なんてきっと多分ほとんどMade with Jealousy」の小田さくらにいたっては、もう人間ではない何者かに進化している。メーテルとか妖怪人間ベラとか日活ロマンポルノの未亡人とか指名手配ポスターの中にいる過激派政治団体の女幹部とか。たった一人で女王の風格。女子フィギュアスケートでいうなら、すでにカタリーナ・ヴィットかミッシェル・クワンかアリョーナ・レオノワ。他の女子たちが習い事の延長、または学校の部活でフィギュアスケートを滑っているのに、ひとりトリプルアクセルが飛べなくなった20代後半ベテラン女子選手が醸し出す妖艶な風格を身にまとっている。

そして誰もが評価する謎のラップ「Rich Young Girly 細い」。細い。Skinnyではなく、細い。突然の日本語。ダサい。そして大サビ前に音が一瞬止まっておっさんの声で突然入る「ジェラシー」。最高にダサい。笑っちゃう、でもそこがいい。くせになるダサさだ。これは昔からハロプロに参加しているラッパー・U.M.E.D.Y.さんの声である。一番有名なのは『恋愛レボリューション21』のイントロ「へいよー れんあい れぼりゅーしょん にじゅーいーち いくぞ よーなーう!」の声ね。

U.M.E.D.Y.さんは脳腫瘍(しかも悪性度の高い膠芽腫)で、もう長いこと闘病していた。この曲はつんく♂さんとU.M.E.D.Y.さんという、ともに40代でがんに罹患した音楽家の曲なのだ。そう考えると、歌詞の趣も変わってくる。他の女子にすぐに嫉妬しちゃうありがちな10代女子の心情だけではない。死に至る病と戦わざるをえない運命につき落とされた若き音楽家である両名が、健康で未来ある他の音楽家に嫉妬し、もがきながら作った曲なのである。なんで自分だけがこんなに早く死ななくちゃいけないんだ、悔しい、他の音楽家に嫉妬する。それでも「悔しさが明日を作る」と信じて「悔しさが情熱に着火」しながら作った作品なのだ。嫉妬を原動力に「だからこそ明日に向かう」し、そんな「私の努力を誰かたたえて」と叫んでいるのだ。このリリックをつんく♂さんがどんな気持ちで書いたのか、U.M.E.D.Y.さんがどんな気持ちで歌ったのか、それを思うとたまらない。U.M.E.D.Y.さんは闘病のすえ、この曲のリリースの10ヶ月後に亡くなった。こうなるともう、私にとって『ジェラシー ジェラシー』は断末魔の魂の叫びになってしまう。

この曲とカップリングで「新時代の幕開け!」などという単調な歌詞を書かされ、図らずも歌詞の深度を比較されることになってしまった星部ショウさんには同情を禁じ得ない。

2位 つばきファクトリー 笑って / つばきファクトリー

おしゃれで可愛い色合いのMV。「笑って」と言いながらも笑わない映像。可愛いメロディと歌詞。メンバーも全員可愛い。作詞作曲は「泡沫サタデーナイト!」でおなじみ津野米咲さんです。笑わないりさまるが好き。おのみずの歌声が好き。巻き込まれちゃった田舎娘感が強く残るあんみぃも好き。天才かつ天真爛漫な大阪娘のまおぴんも好き。ロコドル出身らしいあざとさをもつイカちゃんも好き。男性向けの薄い本で拉致監禁→快楽墜ちする美少女にありがちな要素をすべて兼ね備えた外見のりこりこも好き。つばきはいいな!この良さがずっと続いてほしいな!いつまで続くかな!ずーっと続いてほしい!けど!決してそうはならないんだろうな!

3位 Juice=Juice Fiesta! Fiesta! / Juice=Juice

Juice=Juice新メンバー加入後のデジタルシングル第一弾。作詞作曲はペルー出身のエリック・フクサキ。デジタルシングルの欠点は正しい歌詞の流布に時間がかかることである。MVの発表も妙に遅かったし。おかげさまで、Fiesta!Fiesta!スペイン語ラップ部分はニコニコ動画において空耳天国になってる。「キッコーマン!」「アフォ!」「物申す!」「馬!」「馬!」「馬!」「馬!」「バス移動!」「ダ~メよ~」は耐えられたけど、「一般のお客さんは座って!」と「飲み続けてゲロった!」で私の腹直筋は死んだ。

さて、Juice=Juiceに新メンバーが入ってきたのはつらかった。

わたしはやなみんのことをカントリー・ガールズ加入当初から「ハロプロの今後十年間を支える救世主だ」と思っていたし、『Ready Go~ありのままで~』は松たか子よりもMayJよりも、段原瑠々ちゃんがハロプロ研修生公演で歌ったやつが一番心に響くと思っている。デビューできるかどうかすらわからないのに、広島から単身出てきた彼女の悲壮の決意がにじみ出ていた。

私はJ=Jの5人もみんな大好きだ。追加メンバーの2人も大好きだ。それなのに、つらかった。J=Jの新体制を見るのがきつくてきつくてしかたなかった。「どうして私がこんな気持ちにならないといけないんだ!個人ではみんな大好きなのに!どうしていいのかわからない!」という状態で私は数ヶ月を過ごした。

ねじ子は初期のJ=Jつんく♂曲が大好きだ。作業用BGMとしてもう1000回は聴いている。特にかなともの声が好きで、彼女のパートはすべて覚えている。覚えるつもりなどなかったのに、耳が勝手に覚えてしまった。彼女の声が聞こえるはず、と心が期待しているところで、彼女以外の声が聴こえてくるのがつらい。彼女は辞めたわけじゃないのに、まだグループに健在で、病気を抱えながら日々がんばっているというのに。彼女のパートで彼女でない声が来るのがつらい。予想以上につらい。新しいパート割を聴くたびに心が沈んでしまう。もちろん、かなともが悪いわけではない。パートをもらった新メンバーが悪いわけでもない。メンバーを恨むのはお門違いだ。悪いのは決定権があり、かつ表には出てこない大人たちである。わかってる。それでも、がっかりしてしまう。「新しいパート割、きっついなぁ……」と思ってしまう自分もきつい。

Juice=Juiceの武道館公演へ行くかどうかもさんざん迷った。過去の曲、とくに『イジワルしないで抱きしめてよ』のかなともパートをかなともじゃない人が歌っているのを聴いたら、私は気が狂う。正気ではいられない自信があった。ぜったいにぜったいにがっかりして、膝から崩れ落ちてしまう。わざわざ仕事を早退し、周囲に迷惑をかけつつ子どもを夫に預け、寒空のなか武道館まで行き、明日も仕事だと言うのにわざわざ陰鬱な気持ちになるのかと思うと気が重かった。すると、とたんにチケット代8000円が重い。発券手数料と決済手数料の合計540円はさらに重く感じた。

そのたびに、私はFiesta!Fiesta!のライブ動画を見ることにしていた。

「金澤朋子のへそと尻を見るだけでも8000円の価値はある!」と呪文をとなえ、私はなんとかハーブを補充しつづけた。結果として行ったJ=Jの武道館公演はとてもよかった。歌が上手いって素晴らしい。フルコーラスって素晴らしい。つんく♂の古い曲をガンガンに歌ってくれるのも素晴らしい。全員にパート割があるのも素晴らしい。『Never Never Surrender』1番ラスト、全開の笑顔でセンターを張るかなともを見たときは昇天した。「ここだよ朋子!」って大声で叫べただけでも料金の元は取れている。うん。うん。それでもやっぱり、かなとものパートがかなともでないたびに、私のやわなハートにはヒビが入りまくったんだけどね……。特に「ねぇねぇ私のどこが好きよ」と「ねぇねぇあなたの匂い好きよ」と「今日も戦うエブリディ」は今からでも遅くないから、かなともに戻してくれないかな……。そして、あんなに求めていた!かなとものへそ出し衣装は!なかった!なんで?おかしくない?ここ、おへその国でしょ?おへその国を自称しているくせに最近のハロプロはへそ出し衣装が少なすぎるよね!?ちゃんと練習してきたん!?

4位 誤爆~We Can’t Go Back~

これだよ、これ。星部ショウの真骨頂はこれだよ。こっちでしょ?『BRAND NEW MORNING』も『弩弓のゴーサイン』も『五線譜のたすき』もぜんぜん面白くなかったけど、この曲はとても面白い。ていうか、『BRAND NEW MORNING』において星部さんは自分の書きたいことなんて一文字も書かせてもらえなかったんじゃないかな。あれ、全部上からの指示でしょ?指示された文言しか入ってない歌詞でしょ?そのくらい、あの曲からは作者の意思が感じられなかった。作者の上から入った指示と、その下でぺしゃんこに潰されている星部さんと児玉さんの肉片の残骸はよく見えるんだけど。だから『BRAND NEW MORNING』も『弩弓のゴーサイン』も『五線譜のたすき』も、作品としてはつまらなかった。それに反して『誤爆~We Can’t Go Back~』は最高に面白い。ハロプロ研修生北海道の『リアル☆リトル☆ガール』も面白い。Juice=Juiceの『TOKYOグライダー』『Never Never Surrender』も面白い。インディーズ向け作品や、タイアップが何もない時期にスッと挟み込まれる楽曲の方が出来がいいという、つんく♂にありがちだった法則が、星部ショウさんにもすでに当てはまってしまうのか……。ああ……。

5位 モーニング娘。’17 邪魔しないで Here We Go! / モーニング娘。’17


変な曲。そしてねじ子が今年最も萌えた曲。どぅーが卒業するに当たって最後に作られた、まーどぅーのための曲である。いしよし・辻加護以来の、モーニング娘。の長い歴史においても屈指の人気を誇ったカップリング・まーどぅーの片割れが卒業するにあたって、つんく♂が作った最高のレクイエムだ。まーどぅーは奇跡、まーどぅーは宇宙。まったくもってその通り。

こうは言うが、工藤はいい時期に卒業したと思う。よく決断した。よく頑張ったよ。モーニング娘。にいる間は、歯列矯正もさせてもらえないだろうし、髪も伸ばさせてもらえないし、化粧もろくにさせてもらえないし、工藤個人のことだけ考えれば今抜けるのは正しい選択だ。娘。ヲタ的には大打撃だけど。工藤の外見を美しく保つためには今のモーニング娘。には奇妙な制約が多すぎる。これからは加入時に見せていたギラギラ感、「狂犬チワワ」「ロリヤクザ」と言われていた頃の小生意気さと愛くるしさを武器に女優として頑張って欲しい。実際、武道館で見た最後の工藤には、ハロプロエッグの頃のギラギラした野望とそれに似合わない愛らしさが戻っていたように思う。

これは一般論であるが、障害児のための特別なクラスにおいて、比較的障害の軽い子が重度障害の子の「お守り役」にさせられてしまうことが往々にしてある。重症の子どもは(一瞬)落ち着くし、先生は楽になるし、周囲の大人たちは安心する。でも実際は、お守り役にさせられてしまった子どもへの負担があまりに大きい。お守り役の子の成長が見込めなくなってしまうのだ。それはそうだ、普通の子どもの世話を普通の大人がするのだってたいへんなんだから、さらにきつい仕事を子どもにやらせたら負担が大きいに決まっている。今では「お守り役の子ども」を作るのはよくないこととされ、教育現場では禁物になっている。それでもまあ実際は、「禁物」という戒めが必要なくらい「行われがち」なことなのだが。

気持ちを言葉でうまく表現できず、どうしても周囲から浮いてしまうまーちゃん。音楽的才能にあふれ、天真爛漫で自由な天才モーツアルト型のまーちゃん。そのまーちゃんに最も信頼される同期であり、努力家で真面目なサリエリ型の工藤。工藤は周囲から「まーちゃんのお守り役」として大なり小なり期待されていただろう。そしてそれは、野心がある思春期の少女にとって非常につらいことでもあったはずだ。だって工藤は誰からも愛され、誰とでも上手に付き合うことができる美少女なのだから。モーニング娘。は教育機関ではないから、「お守り役をつくることはお守り役の子どもの負担があまりに大きい、やめておけ」という定石が共有されているとは思えない。工藤と佐藤の関係の下には、観客には見えない数多くの葛藤と矛盾があっただろうと容易に想像される。だからこそまーどぅーはドラマティックであり、多くの百合女子を魅了したのだ。

「今まで何やってたんだろう All I do 自分の夢の責任者 自分だってことを ようやくわかった気がする」と歌う工藤。外へ出ることを決めた工藤が最後の大サビ導入で高らかに「邪魔しないで」と歌う。その工藤の左肩をさわり、後ろに押しのけながらセンターにあらわれ「やさしいキスも 今いらない 無駄はやめて!」と歌いあげるまーちゃん。2017年9月19日の「The Girls Live」で披露されたこの部分が、私が今年最も萌えたシーンだった。

工藤はモーニング娘。を去る。邪魔しないで、翼を広げるために場所を開けて、と言う。残されたまーちゃんは、優しい言葉はいらない、無駄だ、と最愛の工藤に言いながらもモーニング娘。に残り、センターとして孤独に歩いていく。これからのモーニング娘。の姿そのものである。二人の道はここでいったん分かれた。まーどぅーという、いびつで、かつ完成されたコンビの別れに対する最高のレクイエムをつんく♂さんは作ってくれた。私が言っていることがピンとこない皆さんは、とりあえずなんでもいいので自分が今萌えているカップリングの切ない別れのSSをpixivで適当に見繕い、この曲をBGMにして読んでみてほしい。私の言っている意味が少し伝わると思う。

あ、ちぃちゃんはおそらくあとから大人にねじ込まれたセンター。この曲のコンセプトとは驚くほど関係がない。

6位 モーニング娘。’17 若いんだし! / モーニング娘。’17

一転して、つんく♂が工藤個人に送る卒業ソング。映像がいい。私も今すぐつくばの研究学園駅に行って、工藤と一緒に、いや工藤になりきって風を切って歩きたい。そんな衝動に駆られる美しい映像だ。このMVをもってアイドルを卒業できたことを、つんく♂さんからこんなに素晴らしい曲をもらって皆に祝福されながらアイドルを卒業できることを、工藤は一生の誇りにして生きていっていいと思う。ちなみにこの曲調はトロピカルハウスというらしい。知らなかった。

工藤がルパンレンジャーに選ばれたことも嬉しい。ルパンレンジャーがとても面白いことも嬉しい。東京ドームシティのお披露目公演にも本人公演にも4年ぶりに行きたい、たぶんチケット取れないけど。大泉東映で入待ち出待ちしたい、寒いからとても無理だけど。ハロプロエッグ加入時から工藤はずーっと「戦隊モノが好き!」と言っていたの、私はちゃんと覚えてるよ。軽薄でいっちょかみ発言が多い工藤だけど、戦隊モノに関しては、にわかじゃないって私が証明する。当時、生田が「仮面ライダーゼロノスが好きです!」と言ったのに対して工藤が「私はマジレンジャー世代です!」と発言し「おいおいつい最近じゃねーかよ!」と戦慄したのも、おばちゃんきちんと覚えてるよ。あの頃の戦隊は面白かったね。デカレンジャー→マジレンジャー→ボウケンジャーの流れは最高だった。女の子たちも可愛かったなぁ。みんな元気でやってるかな。これで生田が持ち前の運動神経を生かして仮面ライダー出演者に抜擢されたら、当時の伏線がすべて回収されるね!やったあ!

7位 キレイ・カワイ・ミライ / PINK CRES.

PINK CRES.は今どきの女子である。今どきの女子を狙いすぎていて、ほほえみがこぼれるほどである。インスタ、カラコン、オルチャンメイク。インフルエンサー、バズ狙い。はやりの服、はやりの靴、はやりのスタイル、はやりのメイク。あまりに流行通り、あまりにメーカーの狙い通り。もちろん、アラフォーの私はまったくターゲットではない。それでも最高にかわいい彼女たちをほほえましい気持ちで見ていられる。いろんなものを乗せすぎて傾きかけたタワー状のチョコレートパフェがこちらに運ばれてくるときのようなドキドキ感だ。

おそらくこれは雅ちゃんの天性の明るさ、嫌みのなさゆえだと思う。全力で流行通りにふるまっていても、まったく気負いが感じられない。流行に全力で乗るのって実はとても疲れることだ。お金もかかるし、常に周囲の目線を気にしなくちゃいけないし、すぐに流行遅れにされるし、少しでもほころびが見えたら馬鹿にされるし。自分だって徐々に歳をとるし、体型も変わるし、肌も荒れるし、髪も伸びるし。それなのに雅ちゃんはまったく気負いがないのである。頑張っていなさそう。ただ生きているだけのように見える。ファッションという大きな流れの真ん中で、常におだやかにたたずんでいる。決して流されず、決しておぼれず、決しておごらず、他人を馬鹿にせず、ゆうゆうと、ファッションという名の激流の真ん中に彼女は立ちつづけている。必死であがき続けるもその場所に長くはいられなかった梨沙子とは対照的な姿である。まったく希有な人だ。

実際は、雅ちゃんもものすごーく努力しているんだろう。そうでなければあの場所にずっといられるはずがない。それなのになぜか、まったく!努力してる感じがしないのよねぇ。なんでだろう。実は雅ちゃんって、桃子よりも陰の努力を見せない人である。桃子は「白鳥が水面下では実はジタバタもがいてたなんてファンの方たちは知りたくないと思いますし」と口に出してファンに伝えてくる子だったけれど、雅ちゃんはそれすら言わない。すげぇ。徹底している。何歳までこれで行くのだろう。その名のとおり「雅」な姿に、私は感嘆し続けている。

今年は以上です。来年はモーニング娘。最新アルバムから『もう我慢できないわ~Love ice cream』がぶっちぎりで一位を取る予定です。アイスクリーム・らぶでありかつ、アイ・スクリーム・らぶ、ね。愛を叫んでいるのね。アイスクリームは当然のようにセックスの暗喩ね。ふと気がつくと頭の中アイツのことでいっぱいになるんでしょ。初めからないならば諦めもつくけれど、知ったからはもうやめられないんでしょ。暑い日は当然、寒い日も震えながらほしいんでしょ。寝る前も求めちゃうし寝起きからのガツンでしょ。えっちだなぁ。つんく♀ちゃん久々の女子発情ソングが味わえて私はすっかり恵比寿顔です。(2018.3.31)