心からの行楽客が多く来がちな一地方中堅病院の憂鬱な夜を語る「医局23時19分」。第2回のテーマは、秋の行楽中の事故です。
三連休のド真ん中に当直にあたってしまった可哀想な救急外来の面々の愚痴に耳を傾けてみましょう。
赤城くん:研修医1年生。野戦病院に来てしまった気がする、気弱なドキドキの一年目。
黄河くん:研修医2年生。すげぇデキる先輩。誰に対しても敬語。
桃山先生:女性オーベン。よく見れば美人。だがそれを覆って余りあるガサツなお姉さん。
スケボーですっ転んで膝を切った人を二人で縫合しながら
赤城くん:三連休の中日に丸一日当直なんてやるもんじゃないですね…。*1)
黄河くん:行楽日和ですからね。都心からいっぱい人がやってくるんです。羽目を外して怪我をする方々が多少いらっしゃるのも、仕方ありません。
患者さん:すみません…。
黄河くん:いえいえ。貴方のことではありませんよ。*2)
赤城くん:くそ~、青葉先輩は今頃江ノ島でサーフィンですよ。
黄河くん:彼は今、麻酔科*3)ですからね…。当直表も早々とこの三連休×つけてましたし。*4)
患者さん:いたっ。
黄河くん:ああ、局麻追加して下さい。*5)
桃山先生:(ガラッ)ねぇあんたたち、外傷来るわよ。頭から落ちてあまりレベル良くないんだって。どっちか、手おろして*6)こっちについてちょうだい。
黄河くん:いいですよ、赤城先生行って下さい。こちらは私がちゃっちゃと終わらせますから。
赤城くん:(えっ、最後までやりたかったのに…)わかりました…。
救急車から電話:先ほど依頼した安岐川救急です。36歳男性、会社の同僚とバーベキュー中、酔っぱらって1mほどの土手を頭から落っこちたそうです。レベルはIの2ですが*7)ちょっと飲んでまして。バイタル特に問題ありません。
桃山先生:あぁもういいわよ、連れてきてちょうだい。家族には連絡ついた?
救急隊:それが荒川区の方で、会社の同僚しか来てないんですよ。今、連絡取ってもらってます。
桃山先生:家族にできるだけ早く来てもらえるよう伝えてね。*8)じゃお待ちしてます。
*1)三連休の真ん中(たいてい日曜日)は普通の病院はもちろん、地元の開業医もやっていないため、ご近所のものすごくショボい風邪から、遠くで全然病院に引き取ってもらえなかった可哀想な救急車まで、山ほどの人間が救急病院に押し寄せる。
*2)どう見ても貴方のことだ。
*3)麻酔科は手術中の麻酔だけが仕事で、入院の受け持ち患者がいない病院が多い。休日のオペは緊急しかなく、それは当番制でオンコールが決まっている。よって土日完全オフとなることも可能であり、遠出には絶好の科。
*4)ここの病院の研修医は、当直を決める前に都合の悪い日を申告し、その日は避けて当直を組むシステムのようだ。だからといって土日や三連休に×ばっかりつけてると周囲に顰蹙を買う。ほどほどにしよう。
*5)縫合に使う麻酔は局所麻酔。1%キシロカインが多い。局部麻酔と言い間違えるとかなり恥ずかしいので気をつけよう。詳しいやり方が知りたい君はKokutai2004年6月号のねじ子先生の秀逸なイラストまたは「ねじ子Web」を見よう。
*6)作業を止めて、清潔手袋をはずしてくれということ。
*7)救急隊はJapan Coma Scaleを完璧に記憶していて、ナチュラルに使用される。
*8)家族=引き取り手のいない酔っ払いほど迷惑なものはない。異常があれば何らかの処置が今すぐ必要だが、本人は前後不明なため書類上の同意が取りにく い。異常がなければないで、それはただの「酔っ払い」であり、貴重なベッドを占領された上に下手をすれば翌日の朝までホテル代わりにされてしまう。

救急車到着
患者さんは首に頸椎カラーを*9)巻いて血塗れの頭でご登場。
赤城くん:うわっ、酒臭い!!! 患者さんもとい酔っ払い:おぅ。おれは、おれは、大丈夫だよ!!!!
桃山先生:赤城、モニターつけて。状況は?誰か見てたの?
救急隊:酔っぱらって堤防の上を歩いていて、同僚が見てる前で頭から落ちたそうです。他はどこも打っていないと。*10)下は石がゴロゴロしている河原でして。かなり出血してます。*11)
患者さん:あ~。うっせ~離せぃ。俺は~うぃっ、帰る!
桃山先生:…は~。酔っぱらいはこれだから嫌なのよねぇ…。今んとこバイタルは大丈夫ね。金山さ~ん、胸部骨盤のポータブル*12)呼んで~。赤城、念のため外傷のABC*13)やって。
赤城くん:え?何それ?ABC?あ、えぇーと、まずAirway。…声出てるから大丈夫か。*14)B、Breathing。聴診、聴診…。左右差はないような気がする…、自信ないけど。*15)あと、あと、えっと次は…。
桃山先生:大丈夫?じゃ次は循環。血圧は大丈夫だし、まぁ念のためFASTやって。*16)
赤城くん:えええぇぇぇ!ででできませんよう。
桃山先生:こうやるのよ!(腹部にエコーを当て出す桃山先生)…うん、大丈夫そうね。(お腹を押しながら)痛くないわね?赤城、お腹の音聞いといて*17)。あ、ポータブル*18)来たわ。はい伝票。レントゲン撮るよ~。みんな離れて~。(かしゃっ。)
赤城、ライン取って、ついでに採血。オペ前一式よろしく。*19)あと血ガスも。
黄河くん:オペになるかもしれないからラインは20以上で取ってくださいね。*20)
赤城くん:は、はいっ!先生、ナート*21)終わったんですか。
黄河くん:えぇ。レントゲン見て来ましたけど、胸と骨盤は問題なさそうですね。バイタルも良いし。FASTもやったんですね。じゃ、あとは頭と首ですか。*22)赤城、頭の傷見て。
赤城くん:10cmくらいざっくり切れて、骨まで見えてます。脳は…見えてないかな。…あぁまたナートか!ちょっと嬉しいな!*23)
桃山先生:…決めつけるのはまだ早すぎるわよ赤城。ゆっくりナートどころじゃないかも知れない。*24)
黄河くん:救急隊の方、なにか基礎疾患*25)は聞いてますか?
救急隊:いえ、特には。そもそもご家族遠くて、会社の人しか来てませんし。
黄河くん:まぁバーベキューするくらいだから、普通の生活していたんでしょうね…。
赤城君、瞳孔径も見て下さい。
赤城くん:あ、えーと、4/4,あり/ありですね。アニソコ*26)もありません。
患者さん:あにすんだよ、離せよぅっ!
黄河くん:…四肢もよく動きますね。*27)バイタルも良いし*28)、もうCT行きますか?
桃山先生:そうね。頭はオムツか何かで巻いてあげて。CTが血塗れになるわ。あと、頚椎カラー、うちの病院のやつに代えよう。今ついてるヤツは救急隊に帰してあげて。*29)
*9)首から上に外傷がある時は、首にも損傷があると考えて、頸椎カラー(図:こんなの→☆)をはめてから運ぶのが大原則。搬送の間に首の安定がズレて頸椎損傷がひどくなりました!ではシャレにならない。
*10)この情報がどこまで信じられるか、判断が非常に難しい。今回のケースはしっかりした目撃者がいたので良いが、目撃者がいなかった場合、本人も酔っ ぱらっているため何をどこまでぶつけているのか、さっぱりわからなくなる。結果「疑わしきは全身精査」となり、大丈夫だと診断がつくまで検査をやり続ける ことになる。
*11)頭の皮下組織はやたらと毛細血管が豊富で、怪我したときの出血量が多い。実際よりも見た目が派手。
*12)「頭だけ」の可能性がかなり高くても、一応、外傷の基準に乗っ取って診断を進めるオーベンの先生。胸部外傷および骨盤骨折の有無を確認するため、 胸部・骨盤のレントゲンは必ずはじめに撮る。放射線技師さんが来てくれるまでに多少時間がかかるので、オーダーはIDができたらすぐにやっておく。
*13)正確には外傷のABCDEs。普通のABCと少し違う。
A:Airway(気道)
B:Breathing(呼吸)
C:Circulation(循環)
D:Dysfunction of CNS(中枢神経障害)
E:Exposure & Environmental control(脱衣と体温管理)
重傷度の順になっているのがミソ。Aがダメな(例えば気道が閉塞している)時は、何らかの処置をする(異物除去、エアウェイ、気管内挿管など。)Aが完全 に大丈夫になるまでは、次のBに進んではいけない。これをA→B→C→D→Eの順に見落としなく進めてゆく…という、外傷の初期診療として非常に有名な概 念。詳しくは次回・交通外傷の巻で行う予定。
*14)声が出てる=気道がふさがってはいないということ。
*15)胸部外傷の有無はまず聴診から。全肺野で左右差がないことをきちんと確認しよう。本当はさらにこれに、皮下気腫や気道偏位の有無を確認し、胸部X線を見る。まぁこの人は大丈夫そうなので、比較的適当。
*16)Focused Assessment with Sonography for Traumaの略。ファストと読む。お腹の臓器が破裂してないか、胸・腹・心臓に致命的な大出血がないかをエコーで即座に確認する方法。これも詳しくは次回で。
*17)腸音がある=お腹がよく動いている=お腹にダメージがない確率が高い。良い傾向。
*18)レントゲンを出す大型機械をもって放射線技師さんがやってきてくれる。被爆しないように2m以上離れるか、物陰に隠れよう。ポータブルがどのくらい早く来てくれるかで、その病院の事務やコメディカルの「やる気」具合がうかがえる。
*19)緊急手術になりそうな場合は、手術に必要な採血をあらかじめすべてやっておく。具体的には血算・生化学・血型・感染症・凝固・血糖といった所。夜間休日は測れる項目が少ないので「検査できるすべての項目」になってしまうことも多い。
*20)手術中の大出血にそなえて、輸血も可能な太さの点滴を取る。赤血球が詰まりやすくなるので、輸血には20ゲージより太い針が推奨される。
*21)縫合のこと。
*22)頭の中で外傷時のABCを順に追っかけている黄河。優秀である。ABCは大丈夫だと解ったので、D=中枢神経障害=頭は大丈夫か?に目が行っている。
*23)頭部の怪我は、血行が良いため治りやすい。また傷口が髪の毛に隠れるため、どんなに下手糞がガタガタに縫っても、傷口が目立たないですむ。1年目研修医の練習台にはうってつけなのだ。
*24)酔っぱらいは、酔いが醒めたときの「真の意識レベル」がわからない。普通の人なら痛いところも、全く感じなくなっている。ただの酔っ払いだと思っ て朝までベッドで寝かせていたら、実は硬膜外血腫を見逃していたとか、くも膜下出血を併発していて気づいたときには死んでいたなど、身の毛もよだつ恐怖体 験も多い。なめてかかっていると痛い目に遭う。
*25)意識障害時は、常に「元のレベルがどれくらいだったか」が問題となる。また、今後オペになった場合、全身管理の上で基礎疾患の有無は非常に重要。
*26)瞳孔の大きさが左4mm・右4mm。対光反射、左も右もあり。瞳孔の左右差なし、ということ。アニソコとは瞳孔不同anisocoriaの日本人らしい略。
*27)教科書的にはもっときちんと神経学的所見をとった方がよいのだろうが、実際はとっととCT送りにした方が結論が早い。
*28)バイタルが安定していないのに救急外来から出してはいけない。CT室は急変のメッカである。そのくせ点滴や薬剤など緊急処置に必要なモノすら置い ていないことも多く、かなり焦る。CT台の上で呼吸停止→気管内挿管などという事態にならないよう、必要な処置は全ておこなってから行こう。
*29)バタバタしてそれどころでない時は救急隊も諦めて、次に患者さんを搬送に来たときに拾って帰る。よって救外には各地の救急隊のカラーがゴロゴロと転がっている。交換する時には絶対に首を動かさないようにしよう。

ガラガラとストレッチャーはCT室へ
(頭部CT画面をみんなで見ながら)
赤城くん:うわっ、白い。白いですよ!!*30)
黄河くん:エピドラ*31)ですね。対側も何か…。
桃山先生:対側、サブドラ*32)になってるじゃない。外傷性SAHは*33)… 今んとこ、なし。シフト*34)もしてないわね。こりゃきっとオペだわ、脳外科呼びましょ。今日のオンコール誰?*35)ちょっと見てくる。技師さん、骨 条件*36)も撮ってね。家族とは連絡ついたのかしら?…うーん、黄河!ちょっとあと細かいこと頼んだ!!誰か必ず患者さんには付いていてね!
黄河くん:はい…。先生、頸部CT*37)もとりますか?
桃山先生:あぁ、そうね、いちおう撮ろっか。
黄河くん:じゃ頭部3方向*38)と、頸部3方向*39)を撮ったら帰ります。
*30)印刷されてくるものを待っているのがもどかしいときは、必ず自分もCT室までついていって、撮影時にモニターに映し出される映像を確認する。CTにおいて、脳はグレーに写るのに対し、出血はヘモグロビンの沈着によりくっきりと白く写る。
*31)エピドラ=epidural hematomaの略=硬膜外血腫。10分前の外傷なので言うまでもなく急性。
*32)サブドラ=subdural hematomaの略=硬膜下血腫。こちらも急性。頭部外傷においては、ぶつけた対側にも衝撃が加わって何かが起きていること多し。
*33)くも膜下出血subarachnoid hemorrhagの略。ザーと読む。この場合は、外傷によりクモ膜下腔に血が出ている状態。外傷じゃないSAHは、脳動脈瘤破裂によるものが圧倒的に多い。
*34) 脳は2つの膜によって、4つのお部屋に別れている。大雑把に言うと、大脳鎌という膜で右脳と左脳を分け、小脳テントという膜で大脳と小脳を分けている。右 側で出血して頭蓋内圧が亢進すると、真ん中にあるはずの大脳鎌が押されて、左側に寄って映る。これをmidline shiftという。略して「シフト」。頭蓋内圧が高い状態であり、脳ヘルニアになって呼吸が止まる危険がある。あんまり嬉しくない。
*35)全科当直などという贅沢なことをやっていられるのは人員の多い大学病院くらいである。大抵の中規模病院にそんな余裕はなく、脳外科などは何かあった時に呼び出されるオンコール制。
*36)CTにおいて骨に合わせた吸収率の部分のみ、より細かく見える設定で印刷すること。普段は脳実質がもっともよく見える設定にされているため、頼まないと出てこない(気が利いた技師さんだと、勝手に取っておいてくれる。)骨折を見るとき便利。
*37)首の骨の骨折がありそうで、単純X線では頸部が綺麗に写らなそうな時は、頸部もCTを撮る。どうせ撮るのなら、ここでいっぺんに撮った方が効率がよい。
*38)頭蓋骨骨折の有無を見るため、頭部の単純も撮る。CTは「輪切り」方向なので、骨条件であっても、水平に走る骨折は見逃しやすい。よって頭部単純 レントゲンで確認する。正面・側面の2方向に、後頭部を打っているときはTowne(タウン)、頬骨を打っているときはWatersをプラスする。3方向 というと、普通は正面・側面・Towne。
*39)頸椎の骨折やズレ(頸椎脱臼)を確認するために、首のレントゲンは頭部外傷において必須。頸椎カラー(プラスチックなのでX線に写らない)を外さ ずに撮る。重傷度や病院ごとの流儀に応じて、正面・側面の2方向だけだったり、プラス開口位の3方向だったり、プラス右前斜位・左前斜位の5方向だったり する。開口位とは、口を開けて正面から口の中を撮るX線。こうしないと、顎の骨にかかってしまって正面からのC1・C2が見れない。

単純X線のお部屋にて
患者さん:なんだよ~オレは大丈夫だよ~!帰らせてくれ~!!(もぞもぞ暴れ出す患者さん)
赤城くん:さすがに今日は帰れないよ。頭の中、出血してるもの…。
黄河くん:ちょっと押さえましょうか。赤城君これ着て(放射線防護服を渡す)。あぁ次は頸部側面ですよ、手を引っ張って下さい。*40)
赤城くん:はーい。
黄河くん:(できあがった画像を見ながら)あ、やっぱりエピドラの所に骨折線ありますね。右側頭骨にピッと。首は、…問題なさそうですね。四肢は大丈夫ですか?よく見て下さい。*41)
赤城くん:…手足はキズもないです。よく動くし。
*40)頚部側面は、首のレントゲンの中でも最も情報が多い。しかし仰向けになった状態で普通に撮ると、肩の筋肉や骨が重なってしまい、C6・C7が見え なくなってしまう。これを防ぐために両手を引っ張って肩を落としたり、クロールのような体勢をとらせて軟部組織の分厚さを散らす。
<絵>
*41)四肢に打っていそうな所があったら、ついでにここで撮っていく。逆にここで見つけないと、ロングオペの間じゅう骨折してる場所が歪んだまま放置されたりして、あんまりよろしくない。
救急外来に帰ると…
現像されてきたCTの前で、早くも脳外科の先生と桃山先生が談義中
桃山先生:…やっぱオペですか?
呼び出された可哀想な脳外科:そうですね。他は大丈夫ですか?*42)
桃山先生:今のところ、胸部腹部とも問題ないです。…そういえば誰か採血の結果見た?(コンピュータを見る)出てる出てる。腎機能・肝機能とも問題なし、よっしゃー!!*43)黄河、首はどうだった?
黄河くん:…私の目には、問題ないように見えます。
桃山先生:よっしゃ!あたしも見る!…大丈夫ね!自覚症状なかったらカラー外して!
黄河くん:はい…。首を私が持ってますから、自分では動かさないでください。カラー外します、(うなじから骨に沿って首を押しながら)ここは痛くないですか?右へ動かします…次は左。痛くないですか?*44)
患者さん:んあ?痛くねぇよ!
黄河くん:自分でも動かせますね?痛くないですね?どこかしびれているところはないですか?*45)
患者さん:ねーよねーよ!何だよおまえ!!
黄河くん:…まったくどこまで信用できるんだか。はずしていいんですね?桃山先生。*46)
桃山先生:うん、いいよー。
看護師さん:ご家族はあと10分で着くそうでーす。
桃山先生:よし、あとは脳外科にまかせた!オペ出ししたら、とりあえずここは終了ね!
*42)実は腹部の外傷を見逃していて、長い脳外科の手術中に腹腔内出血で血圧低下!!…などということの無いよう、きちんと確認。
*42)肝機能や腎機能が正常値であることから、先程のエコーでは確認できないくらいの実質臓器の傷(肝破裂、腎破裂など)が無いことを確認している。肝破裂時は肝酵素(GOTやGPT)が上がり、腎破裂時は腎機能が悪くなる。
*43)まず誰かが首を支えて左右に動かし、痛みもしびれもないことを確認。次に自分で動かしてもらって大丈夫なことを確認。首の後ろを押して、頸椎の棘突起も折れてないことを確認。これらがすべて大丈夫で、かつレントゲン上も問題ない時、はじめて頸椎カラーをはずせる。
*44)変形や後縦靱帯硬化症などがあって、もともと脊髄管が狭いとき、ちょっとの衝撃で脊髄がダメージを受けてしまうことがある。中心性頸椎損傷とい い、歩いて来院する脊髄損傷なので要注意。骨折や脱臼などのあからさまな変形はないのでレントゲンやCTではわからず、直接脊髄を映すMRIを緊急でとら なくてはいけない。上肢の運動・知覚鈍磨が主な症状。
*45)黄河の頭に浮かんでいるのも中心性頸椎損傷。しびれも知覚麻痺もないと言っているが、酔っぱらっているためにどこまで信用して良いかわからない。 今ここで完全に否定するためには、MRIを撮るしかない。しかしMRIは夜間撮れない病院も多いし、撮れたとしても非常に手間がかかる。撮影時間も長い。 すぐにオペが必要な患者に、それだけの時間を割く必要があるだろうか…?すっきりと割り切ることができない、迷い所である。迷った時はオーベンの許可を取 ること。それが研修医の大原則だ。よって黄河は桃山先生に改めてお伺いを立てている。最終決断と最終責任は、その場のリーダーにあるのだから。
しかしまた救急車からの電話が鳴る
ぷるるる…
救急隊:先生たびたびすいません、多馬川の河原でよっぱらって足滑らせて、1分くらい溺れて水に沈んでた患者さんなんですが…
桃山先生:…三連休だからってみんな浮かれおって!!酒飲んでバーベキューなんかやるからよ!!自業自得よ!!キー!
赤城くん:先生、落ち着いて下さい…。お気持ちは痛いほど分かりますから…。

地方中堅病院に勤める人々の真夜中の風景をつづる「医局23時19分」、第1回のテーマは、来る夏にふさわしく「熱中症」です。今回は時間外救急外来にて当直中の1年目研修医赤城くん、2年目研修医青葉くん、そして指導医の緑川先生の会話をそーっと覗いてみましょう。
赤城くん:あー、たるいっすね~。こんな時間になってもまだ暑いっすよ~。あんま患者さん来なくて今日はラッキーでしたね。明日ロングだから*1)、今日はなるべく寝たいっす俺。
青葉くん:夏は患者さん少ないんだよ*2)。今のうちにゆっくり鑑別診断しとくといいぞ。冬は患者さんあまりに多くて、考える暇もなくなってくるからな。
赤城くん:へいへい。
緑川先生:救急車来るぞ。80歳のおばあちゃんで、昼間農作業したあと気分悪くてずっとぐったりしてるそうだ。
赤城くん:はぁ。ぐったりねぇ。
青葉くん:頭になんかあったのかな?*3)実はもともとだったりして。
緑川先生:まぁこの暑さだしな、脱水や熱中症かもしれん。あとは基礎疾患があるかどうか…*4)
*1)ロングオペ。6時間くらいかかることが予想される手術のこと。実際は手術中の思わぬ出来事等によりもっと長くなる。腹部大動脈瘤置換術、頭頸部の腫 瘍摘出+再建術、多くの胸部外科の手術などがこれにあげられる。研修医は大抵何もせず、でも、清潔になって突っ立ったまま見学していなければならない。当 直明けは立ったまま眠る研修医が続出する。
*2)夏は患者数が全体に少ない。冬はインフルエンザ等の影響により、極端に増える。(科によってバラつきあり)
*3)要するに脳に何かあった=大抵、出血(脳出血・くも膜下出血・硬膜外血腫など)か、梗塞のどちらかではないかってこと。CT送りにすれば大抵の鑑別がつく。
*4)意識障害の鑑別は山ほどある。実は認知症等があり、元々このくらいのレベルで、何が緊急疾患なのかよくわからないことも多い(家族に普段のレベルを 聞いて比較するしかない。)*3)で青葉くんが言っているような中枢神経障害は誰でもすぐに思いつくが、ぬけがちなのが内分泌疾患。糖尿病持ちなら低血糖 や糖尿病性ケトアシドーシス、肝硬変なら肝性脳症など、基礎疾患から推理しなきゃいけないものも多い。

救急車来ました
救急隊員:日中農作業を少しやって、その後家でゆっくりしていたそうですが…。気が付いたらぼーっとしていたとのことです。
緑川先生:おばあちゃん、わかる?お名前は!?(患者さんを叩きながら)うおっ、こりゃ熱いな。 おばあちゃん:あ~。う~。(嫌がりながら)
青葉くん:あんまりレベルよくないですね…*5)バイタルはどうかなっと。モニターをつけて。
緑川先生:とりあえず体温を測ってくれ。血圧85、脈120か…。こりゃちょっとショックになっとるな。*6) 看護士の荻野さん:41.2℃です。
青葉くん:こりゃ熱中症かな。
緑川先生:誰かライン取って!なるべく太いので!*7)あと血ガスと採血を!
青葉くん:は~い。僕血ガス取ります。お前、ラインな。なるべく20ゲージ以上*7)で取れよ。おばあちゃんちょっとごめんね~太股の付け根から採血するよ~痛いよ~ちくっ。
赤城くん:あ、はいっ!!
緑川先生:とりあえず冷やすぞ。
赤城くん城はライン取って、全開で冷えた*8)ラクテック*9)でも落としてくれ。 あと荻野さん、タライに水と氷いれて、ガーゼ沢山浸しておいて。あと氷嚢と、扇風機持ってきて。
赤城くん:せんぷうきぃぃぃぃぃぃ!?
青葉くん:おや、熱射病初めて?
赤城くん:はい…
緑川先生:あらゆる手を使ってよーく冷やすんだ。それが重要。
*5)このときのレベルはJCS(JapanComaScale)でI-3、GCS(GrasgowComaScale)でE4V2M5くらいか。
*6)ショックとは血液として循環している血漿量が極端に少なくなって、臓器や全身を維持していくのが難しくなっている状態のこと。何らかの理由で、血液 が体の中を流れにくくなっていると思うと簡単。臨床的には、意識レベルが悪い、血圧下がりまくり(収縮期80mmHg以下)、心拍数の増加(100/分以 上)、尿量の低下(20ml/時間)などで判断する。「ガーン!!」という一般的に使われる「ショック」とは基本的に全然違うので気をつけよう。
*7)大量輸液が必要なので、なるべく太い針で点滴を取れってこと。その方が落ちるのが早いから。だいたい18~22ゲージが大人においては使われる。数字が小さい方が太い。
*8)この時のために、冷蔵庫でキンキンに冷えた輸液ボトルをいっぱいストックしておく。逆に外傷や低体温の時などは、体温が下がらないように人肌程度に暖めた輸液ボトルを使う。
*9臨床においてほとんどの説明は商品名で行われる。病院によって入っている商品が違うのでその都度覚えなくてはならない。研修医や学生はまず、自分の所 で使われているメジャーどころを押さえるべし。ちなみにラクテックとは生理学でも出てくる乳酸リンゲルの、一番メジャーな商品の名前。

そして患者さんはこんな状態になった…。
<絵>
赤城くん:すげぇ…
緑川先生:お前ら胃洗浄*10)できるか?よく冷えた水道水でいいから、胃洗浄して体を中から冷やすんだ。これはかなり効くぞ。
赤城くん・
青葉くん:は~い。(二人で胃洗浄開始)
緑川先生:あとはおしっこが出るかどうかだな。お~い誰かバルーン入れてくれ。 荻野さん:あっ、あたしやりましょう。
緑川先生:やはり尿はあんまり出ないな…。あ、尿検査出しておいて*11)。血ガスの結果出たか?*12)よし、血糖・Na・Kは大丈夫だな。pHも酸素化もとりあえずOKそうだな。この年でHb15とはかなりの脱水だな。*13)ラクテートは10か…。
青葉くん:あんまり循環動態、良くなさそうですね。*14)
緑川先生:ま、そりゃそうだな。まずは冷やしながら脱水を補正するしかないのさ。MOF*15)になってなければいいんだが…。 看護士さん:ラクテック終わります!どうしましょう!?
赤城くん:え、どどどうしよう。*16)
青葉くん:同じのもう一本全開で行って。
赤城くん:(先輩すげぇ…)
緑川先生:もう一回体温測ろう。どうだ?
赤城くん:あ、39.5℃に下がりました。採血も出ましたよ。
緑川先生:む、よこせ!どれどれ…。BUN高い、Creは0.7か。脱水。*17)肝酵素は大丈夫。*18)ま、いいだろう。多臓器不全は免れたようだしな。血小板と、PTも…問題なし*19)。よし!おいICU用意しておけ!
*10)胃洗浄についてはKokutai10月号のねじ子大先生の美しいイラスト参照。
*11)ここでオーベン大先生はミオグロビン尿のことを考えている。研修医君たちは気が付いていない。
*12)血ガスは早く出る。1分もかからないので、緊急の時はとても便利。機械によっては電解質やアニオンギャップ、果てはヘモグロビンや乳酸なども調べ てくれる。この病院に入っている血ガスは高性能のようだ。ちなみに緑川先生はここで糖尿病性疾患や電解質疾患を排除している。
*13)女性しかも高齢であれば、Hbは平均よりやや低めくらいが正常値である。それなのに基準値範囲内に入っているということは、血管内の水分が足りないということ。
*14)ラクテートつまり乳酸が高い=解糖系の代謝回路が働いている=末梢で酸素が足りてない=あんまり循環が良くないってこと。酸素が不足すると、嫌気的解糖が増えてゆくってのは生化学でやったね。
*15)MOF=多臓器不全のこと。multiple organ failureの略。つまりいろんな臓器が軒並み駄目になっていっている状態。腎不全と肝不全がいっぺんに起こっちゃったとき等に使われやすい。モフと読む地方とエムオーエフと読む地方がある。
*16)研修医はいきなり決めなくちゃいけないことが降ってくると、とてつもなく弱い。
*17)一般に、BUNとCre両方高いと、腎不全。BUNがやたら高いくせにCreそんなに高くないときは、脱水やら消化管出血を考える。この場合は脱水。
*18)多臓器不全になっていなくて一安心。逆に来た時点で多臓器不全だと、お年寄りの場合救命すら難しい事が多い。
*19)DICにもなっていなくて一安心。ホントはDICの診断にはFDPやフィブリノゲンの値も必要なのだが、夜間にはこれらは測れない(下手すると採血もできないような)救急病院も多い。この病院でも測定できないようだ。

入院準備にバタバタする周囲
赤城くん:…確かに日中は暑かったけど、なんでこんな時間に運ばれて来るんだろう?
緑川先生:家族の発見が遅かったのかもしれんが。…でも、夜間や自宅内でも熱中症は起こるぞ。クーラーの付いている家ばかりとも限らないしな。日射病ばかりではないんだぞ?
赤城くん:うっ、そもそもそこらへん僕国試でも苦手で、よくわかってなかったんです…。
青葉くん:後でイヤーノートでも見ておきな。*20)
緑川先生:さて入院するにあたり、これから注意することは何だ?
赤城くん:えっと…えっと…*21)
緑川先生:まずは尿が出るかどうか。それが最大のポイントだ。熱中症の時は高度の脱水で MOFやDICになりやすい。お年寄りでそうなったら終わりだ。とにかく細胞外液を入れる*22)。おしっこが出るのを確認するまではカリウムフリーが好 ましいが、ま、どちらでも良い*23)。大量に落とす。時間尿量のチェックはかかさずやる。尿が出てなければ輸液をさらに増やす。熱中症は腎不全になるこ とも多いからな。尿出なくてKが上がったら透析も回さなきゃいかん*24)。あと、腎不全といえば…この後、起こりうる有名なことは何だ!?
赤城くん:えっと、えっと…(なにそれ)
青葉くん:(俺もわからない、黙ってよ~っと)
緑川先生:横紋筋融解だ。*25)ミオグロビン尿くらいは知ってるだろ?尿検査は明日の 朝必ずオーダーして、尿の色は自分でも見ろ。わかったな。あと、朝の血算、生化、今日出せなかった凝固、血ガスは必ず出しておくこと。横紋筋融解なら、 CPKと、Kくらいは当然見ておけよ、わかってるな?
赤城くん:(後で、イヤーノート見ようっと…。)
青葉くん:(後で、今日の治療指針見ようっと…。)*26)
球外戦隊ネラレンジャーに朝は来るのであろうか!?以下次週!!(嘘)
*20)困ったときのイヤーノート。訳して年帳。医者になっても、ド忘れたときや珍しい疾患が来たときに辞書的に使う。後輩にあげずに取っておこう。
*21)時々振ってくるオーベンからの高度なパス。その難易度は中田なみ。たいてい答えられず、穴があったら入りたい気持ちになる。
*22) 本当なら国試的には、熱中症の治療は「血漿浸透圧330mOsm/l以上なら1/2生理食塩水、未満なら生理食塩水。中心静脈圧で管理」だが、そもそも浸 透圧なんぞを計算している間に患者さん死んじゃうのが救急外来。しかもクソ忙しいので現場で計算はあまりしない(余裕があればもちろんした方が良いに決 まっているが)。中心静脈圧も、中心静脈取んなきゃ測定できないわけで、すぐやるには侵襲が大きすぎる。それよりは末梢静脈でもいいから、素早くたくさん 入れるほうが先決。ここでは最も血漿成分に近く、点滴したとき最も血液に残りやすい細胞外液を選択している。もちろん生理食塩水でも良い。
*23)実際はラクテック等に含まれているKはごく微量であり、あまり関係ないといわれており、細胞外液(多くは乳酸化リンゲル)を使ってしまうことが多 い。当然のように、本来なら「尿が出るまでKフリー」が絶対だが、一般病院の現実はそんなもん。国家試験の時は絶対真似しないようにね(はぁと)
*24)急にKが上がると、不整脈が起きてあっと言う間に死んでしまうので様々な手段を使ってKを下げる。カルシウム剤(商品名カルチコール)静脈注射、 グルコースインシュリン療法、メイロンでアルカリ化してアシドーシス補正、イオン交換樹脂(商品名ケイキサレート)注腸などだが、それでも下がらなければ 最終的には血液透析で無理矢理取り除くしかない。
*25)横紋筋融解:体中の筋肉が突然解けだす病気。様々な原因による。長時間の昏睡、熱射病、マラソン、crush症候群など。何にしろ、筋肉から溶け 出たミオグロビンが腎臓のフィルターを詰まらせて急性腎不全を起こすのが一番困る。ミオグロビンの混じったレンガ色のおしっこが出るのが特徴。筋肉から溶 け出るCPKやK(カリウム)の採血データで病勢を判断する。
*26)「今日の診断指針」「今日の治療指針」は、迷ったときにとっても使える辞書的存在。親しみを込めて「大人のイヤーノート」と呼ばれる。

救急外来を舞台に「医学生にテクニカルタームを教えよう」という企画の作品です。本編中では、ドラマにありがちな「説明的なセリフ」を排除して、普通にテクニカルタームや省略語・業界用語を使っていきます。そのぶん、註釈で内容をフォローしている…はず(笑)。 オマケの4コママンガもついています。同人誌の「救外戦隊ネラレンジャーzero」は同じ状況設定で、4コママンガをたくさん加筆したものです。
いよいよ試験十日前。こんな時期にKokutaiを読んでいるなんてよっぽど余裕があるか、定期購読か、藁をもすがる気持ちの方くらいかと思いますが、と りあえず超直前ですよ皆さん!!直線一気の差し馬代表ねじ子といたしましては、全勢力をそそぎ込んでラストスパートする時期です。自分で自分にムチ入れて かっ飛ばしましょう。
超直前にはまず、
1.全範囲に頭をならさなくてはいけません。
国試は全範囲が出ます。直前に「間に合ってないから」とか「苦手だから」とかいう理由で一つの科目だけ集中してやってしまう方がよくいますネ。循環器だけひたすら解いてるとか。…確かに循環器は重要です。出題数も多いし禁忌も多いし。でもそれだけをやってると、けっこう他の科目忘れます。他 の科目の「勘」を鈍らせている状態で、試験を受けてはいけません。ショボい刀しか持っていないのなら、せめてピカピカに研いで戦場に赴きたいというもの。 全範囲って、じゃあ何をすればいいの?という貴方は3.を読みましょう。必修や禁忌の問題集も意外と全範囲をカバーしてるので、オススメです。また、同様 の理由で、
2.もうこの時期になったらQBをつぶすのは諦めましょう。
ねじ子は国試5日前に100%皮膚科を解き終わり、そこで過去問題集つぶしを諦めました。内緒だけどQB呼吸器全然終わってなかったけど諦めました。本当にすみません。5日前ではあまりにナンなので、一応、一週間くらい前にはやりたい科目のQBおよび100問は、終わらせておくのが好ましいと思います。そしてそして、
3.大・見直し大会をしよう!!
試験直前にパニックになって気が狂わないために、この時期はとにかく自分がやってきたことを信じるための勉強をしましょう。それは復習。そう復習。なんで先月、おもむろに問題をコピーして集めておけと言ったのでしょうか?カードにしておけと言ったのでしょうか?それは、直前にそれらのカードの大見直し大会をするためだったのです!!ストックにしていたカードも引っぱり出して、全てのカードを見直しましょう。「まとめノート」を作っていた人は、それの見直しでもかまいません。自分の解けなかった問題の、大!復習大会を、この時期にやりましょう。これをすると、全範囲に頭を慣らせる上に、自分の弱点を短期間で埋められるので、精神的な地盤が安定します。
これまでそういうまとめ作業らしきものを何もしていなかった、そんな貴方は「模試で間違った問題のうち60%正解率問題の見直し&ここ2年くらいの過去問の見直し」(詳しくは先月号参照)を今からでも遅くないので繰り返しましょう。同様の効果が得られるかと存じます。
4。そして公衆衛生をしよう!
公衆衛生は2週間前からでかまいません。あ、言っちゃった。なぜなら!海馬における短期記憶の保存期間は、2週間といわれているからです。公衆衛生は社会科と同じです。意味のない年号を丸暗記しても、受験が終わったら綺麗さっぱり忘れてしまうように、忘れちゃう科目です。丸暗記しましょう。そして国試が終わったら2週間できれいさっぱり忘れましょう。
国家試験の点数は75%で良いのです。テキトーな確率ですが、半分の問題が完全に解けて、半分の問題が二択に絞れればいいのです。あきらめたらそこで試合終了だよ…という安西先生の言霊を何度もリフレインしつつ、最後のストレスフルな日々を乗り切っていきましょう。
一年間かけてお届けした「ヘタレによるヘタレのための」国家試験攻略法、如何だったでしょうか。真面目なkokutai読者の中で、きれ~いに浮い ていた当企画ですが、一人くらい「ねじ子のお陰で受かったよ!ありがとう!!」というヘタレ仲間がいらっしゃったら、ねじ子これ以上の喜びはありません。 それでは皆さん行ってらっしゃい!最後まで足掻けば、きっと良いことがありますよ。
さて特集にてまじめな皆さんの一ヶ月前の過ごし方の例をご紹介しました。
※ 同号にて巻頭特集「医師国家試験勝手に受験マニュアル」が掲載されていたため。そっちが読みたい方はここへ。
こちらはちっとも真面目じゃないし勉強してないしどうしようという皆さんのための一ヶ月と二週間前の猛ダッシュ&スタンバイ講座です。
不真面目な受験生たるもの、まだまだ内科QBおよびマイナー問題集の一周が終わっていないくらいの根性でいなければ駄目です。そうであって欲しいです。そんな奴いないって?いやいや、必ずいるはずなのです。俺がそうだったんだから間違いない。すでにQBなどとっくのとうに終わっているような優秀な人達はこれを読んではいけません。フツーに特集を読んで下さい。
この時期にまだQBが終わっていない人に、2周目などあるとは思えません。そんなものがあると思うな。でもでも、QBを解いているとき、「もう一度見たーい」と思える問題はあるでしょう。全然手も足も出なかったり、ポイントの詰め込まれた重要な問題だったり、ある程度の繰り返しや暗記が必要な問題だったり。そんな「もいちど」問題には付箋をつけておきましょう。そんな付箋問題を、たとえば翌日の朝やその日のちょっと勉強に飽きた時間に、ざっと見て、それでも重要だと思ったら、解説も含めてその問題をコピーしておきましょう。そしてカードを作りましょう。カード等にするのが面倒くさかったら、QBを首っ引きで解く気がまるでしない疲れた週末などに、 ハサミとのりを片手に、カード作りに精を出すと良いです。それすらも面倒なら、コピーした束をまとめておいておくだけでもかまいません。コンビニへ行くの が面倒ならばコピー機orコピー機能付きfaxを買いましょう。そんなに高くありません。浪人して予備校に行くことを考えれば全然安いです。ねじ子の作っ ていたカードの見本はこれ。

作ったカードは持ち歩き、隙があれば見ます。電車の中でチラっと!お風呂場でもチラっと!覚えきったカードは分野ごとに束にして 保管しておき、理解しきれていないカードを、また持ち歩いて、何度か見る。それを繰り返しましょう。カードにすると、適当なときに適当な分野のものを作れ ること、後で分野ごとにまとめられること、軽くて持ち運びが楽なこと、そして覚えていないものだけ選んで持ち歩けることが利点といえるでしょう。
そして最も重要なこと、それは特集でも言った「模試の問題」&「昨年の復元問題」についても同様にコピー&カード化することです!!「正解率60%縛り」で引っかかった問題については特に作るようにしましょう。
受験の能力は情報処理能力です。特に医師国試のように膨大な情報量の試験では。よく出題される範囲を見極め、その中で自分が弱い穴を 見つけ、いかに埋めてゆくかがポイントです。QBをがむしゃらに全部解くのも良いでしょう。しかしそれは広いキャンパスを薄く塗りつぶすようなものです。 ねじ子にはそういう方法は向きませんでした。あまりにキャンパスが広すぎて。私はまず、出そうな所だけを濃く塗りつぶすこと。そして塗り忘れをどんどん潰してゆくこと。試験にあまり出ない部分は思い切って塗らない=捨てることを心がけました。模試および昨年の問題は「出そうな所」のエッセンスが詰め込まれた珠玉の問題集なのです。そして作ったカード群が「塗り忘れ」です。何度もそれを見ることによって、塗り忘れた場所の色をどんどん濃くしていく。それがパンダ式の真髄です。こうやって、内科QBは93回縛りで飛ばし飛ばしカード化し、神経を捨てつつ、マイナーはウロ放射麻酔整形を捨てそれ以外は「今日中に100%眼科終わらす宣言略してKG宣言」とか言って1~2日に1冊のペースで終わらせてました。
我々は差し馬です。他の学生さん達がとっくにスタートゲートをくぐっていた時期に、まだパドックどころか美浦の牧場で草をはんでいた我々としては、そのくらいこなしましょう。今はまさに第4コーナーと言ったところでしょうか。これからが差し馬および直線一気の見せ所です。次号はいよいよ10日前「短期記憶よ花開け」の巻だ!
今月の一言

医学というのはホントにいろんな分野がありますネ。覚えるべき事も大量にあって、その果てしなさに気が遠くなっちゃいますネ。その全てを網羅するのは、よほど大容量のハードディスクを兼ね備えている天才様でないと不可能です。暇とやる気が無限にあるなら、「標準」シリーズを全て買って熟読し、整形外科手術のネイルの止め方を全て覚えてみたりするのもいいでしょう。でもでも。凡人たる我々にそんな暇はありません。国試に受かるためにはとりあえず出題されてるポイントをしぼることが重要です。「標準」なんていりません。
国試においては、一つの科について「一冊の参考書」と「一冊の問題集」があれば十分です。あくまで誤解しないように言っておく と、参考書は読むためのものではなく、問題集を解いていてわからない所を調べるためのものです。それをどの本にするかは人それぞれ。使い慣れた、好きなも のを選ぶと良いでしょう。私は「いつまでもだらだらとクローン病が続いて、とにかく問題収録数が多い」問題集が大嫌いだったので、シンプルかつ問題数を絞った問題集を好んで選びました。とりあえず阿呆ねじ子の独断と偏見に満ちた使用書物は下図。

産婦人科、特に産科
基本的な分娩の病態生理を、チャートでもコンパスでもいいので押さえましょう。とりあえずlate decerelation→急速推娩と、胎児回旋さえ わかっていれば何とかなります。しかし産科の陣痛胎児心拍数問題には難問が多く、解けない問題は全く解けません。QBとアプローチとコンパスで全部答えが 違うという素敵な問題もあるくらいです。受けた人間から言わせていただくと、国家試験会場でも、非常に微妙な陣痛胎児心拍数で答えが割れてたんですわ。再現を担当した人間の気持ちによって再現画像が違い、よって答えも急速推娩から経過観察まで様々になってしまうのです。
小児科
これはお世辞でも何でもなく、100%小児科と100問小児科が最高にオススメ。これ以上、いりません。100問小児科は前後編で総勢☆問もあり「どこが百問じゃ!嘘つき!嘘つき!!」と泣きたくなりますが、良問が詰まっています。
マイナー
昔、マイナーは科の持ち回り制で出題されていました。「今年は皮膚科の年」「今年はウロ」など、出題科目が決まっていたのです。よって対策も立てやすかっ た。そのかわり、やたらマニアックな泌尿器疾患や誰も知らない皮膚腫瘍が出ていたのです。QBなどを紐解くと、昔の年代の意味の分からない問題が大量に 載っているのはそのためです。とりあえず眼科・耳鼻科・皮膚科は頑張ってやりましょう。画像一発問題が多く、わかれば3秒で答えられますが、わからないと 手も足も出なくて試験中に悲しい気持ちになります。実は出題数も多いこの3科を制するものがマイナーを制す!…と、スラムダンクの安西先生も言っていまし た。嘘です。他は捨てましょう。あ、言っちゃった。間違えました。余裕があったらやりましょうネ!図の…(未)というのは、案の定、ねじ子、問題集解いて ません。ええ、解いてませんとも。えっへん。(いばるな)
次回はいよいよ試験直前だ!
今月の一言

今年の国家試験は少し早まるとのことですね。直前ダッシュ型の不真面目な学生諸君にとっては、非常にやっかいな出来事です。1月の段階ではラングハンス巨細胞とランゲルハンス細胞の違いもよくわかってなかったねじ子のこと。そんな勝手な事をされては非常に困ります。ヘタレによるヘタレのための国試戦略を1ヶ月早めなければいけません。というわけで12月に書く予定であった「いよいよQB(アプローチ)が終わらない(内科編)」は、一ヶ月早まって今回の登場です。
「QB、何周終わった?」この時期の医学部6年生の口に頻繁に上る話題です。皆さん、QB終わりました?え、とっく?それどころか2周終わった?……貴方 は今回のパンダ新聞を読んではいけません。今回は「全然QBが終わりそうになくて毎日不安で泣いている」方のための、丸秘テクニックなのですから。
ねじ子は全く国家試験対策をしていませんでした。11月末、卒業試験が終わった日に大学の購買部で初めてQBを買う私の姿を見て、友人たちは愕然と していたものです。そう、ねじ子の国家試験対策は12月から始まったのです。QBの全体枚数を残りの日数で割ってみると。なんと1日でQBを80ページ解 かなくてはならないという。8時間勉強しても1時間で10ページ。1ページ6分。…無理です。「コツコツ解く」という正攻法を早々に諦めざるを得なかった 阿呆ねじ子。目の前に広がる真っ白な本の山を見ているとひどくブルーな気持ちになってきます。「あぁ、やらなきゃなぁ…」そう思いながら、溜息をつきつつ 横にあるスラムダンクに逃避する日々。あきらめたらそこで試合終了だよ……そんな幻聴が聞こえてきつつも、ついつい諦めたくなってしまいました。
そんなねじ子が短時間でQBを網羅するために編み出した秘策、それは「93回縛り」です!!つまり93回以降の問題しか解かない、というもの。
QBにはかなり古生代の問題も載っています。
勿論、古き中にも良問があります。時間と脳内記憶メモリに余裕のある方は全て解くのも良いでしょう。しかし、どちらもなかったねじ子は「過去3~4 年分くらい解けば十分だろ」と勝手に判定しました。問題が回収になった95回以降、「プール問題」というのが確かに存在し、ちょっと選択肢を変えただけの 同じ内容の問題が確かに頻発しています。昔はさておき、現在の医師国家試験は「同じ問題が出る」試験なのです。「良問は繰り返し出る」そして「ここ3年間 にも出ている可能性が高い」のです。もしそれだけで「物足りない!もっと間質性肺炎の問題が解きたい!!」とか思ったら、その周囲の問題もついでに解いて みればいいのです。それはあくまでおまけ。あら不思議!!QB1冊が1日で終わってしまいました。こりゃめでたい。余裕のある方は92回縛りや90回縛り に変更してみても構わないでしょう。
さらにそれですら時間がない、という貴方には次の奥の手を。
その2・ QBを一冊目からやろうとしてはいけません!!
…ではどこからやるべきでしょう。
模擬試験で「全然取れなかったなぁ」と思う分野からやりましょう。
ねじ子はQBを、内分泌→腎→血液→感染症→免ア膠→循環器→消化器→呼吸器という順番で潰していきました。つぶす、と言っても94回縛りで潰したんですけどネ!しかも神経内科は脳梗塞と脳出血とパーキンソンだけやって後は捨てちゃったのネ!
次回は「マイナー編」です。

今月の一言

ガイドライン(医師国家試験出題基準・厚生労働省刊)がついに発売されました。製作会社が癒着したり瘢痕治癒したり潰瘍になったり、紆余曲折しつつよう やっと生まれた新ガイドライン。●●円です。お近くの医学系書物が売っている本屋さんでパラパラと立ち読みしてみましょう。はっきり言ってクラスで一冊共同購入で十分と貧乏人のねじ子は思いますが、そんなことを言うと厚労省から刺客が送られてきそうなので、黙っておきます。言ってるか。でもでもガイドラインって何?そんなもの必要なの?皆さんそう思いませんか?
正式名称:医師国家試験出題基準。その名の通り国試に「何が出るか」の指標です。この世には星の数ほどの病気があり、新しい病気が生まれては消えていま す。それら全てを勉強し暗記しろ!と言うほど厚生労働省も鬼ではありません。星の数程の病気のうち「これしか出さないよん」と決めているのがガイドライン なのです。そう、国試にはガイドラインに載っている病気しか出ません。逆にどんなにマイナーでもガイドラインに載っている以上、出る可能性があります。
そしてここが最も!重要なところですが、
実はこれまでの国家試験の問題は、ガイドラインの順番に出ていたのです!
これが、ガイドラインが神といわれている所以です。
例えば去年の問題を解いてみましょう。臨床問題なら必ず、産科→新生児→精神→皮膚→眼科→耳鼻→肺→消化器→循環→血液→神経・整形→腎ウロ→内分泌→免ア膠→感染→麻酔救急、という順番に必ずなっていることに気がつくはずです。
※今回のガイドラインでは産科→新生児→精神→皮膚→眼科→耳鼻→肺→循環→消化器→血液→腎ウロ婦人→神経・整形→内分泌→免ア膠→感染→麻酔救急 と若干変更になった模様
例えば、回盲部病変でクローン病と腸管ベーチェットで迷ったら。その問題の周囲を見渡してみましょう。ガイドラインにおいてクローン病は「消化器」の項に 含まれ、ベーチェットは「膠原病」に含まれています。よって、その問題が大腸癌の前にあればクローン病であり、SLEの次にあればベーチェットなのです。はっきり言って滅茶苦茶ですが、本当にそうだったのです。現実に当てはめると「うーん、512号室の患者さん何で熱出てるのかよくわかんないナ。511号室が慢性C肝で、553号室が胆嚢炎だから、肝臓か胆嚢の病気であることは間違いないんだけど」てな笑える状況になりますが、これは結構使えるテクニックであり、ねじ子などそれで国家試験を乗り切ったようなものです。
問題文を読みます。治療法を聞かれていたとしても、必ず頭の中でまず診断を考えるはずです。その「診断」を、頭の中で思い描くだけでなく、必ず問題文に書きましょう。ねじ子はこんな風に書いてました。そして診断ができない問題が出たとき、前後から推測していました。
国試にはいくつかの法則があります。それを理解することがダメ受験生が国試に一発逆転合格するコツです。そしてその最たるものが、この「腐ってもガイド ライン順」なのです。これが良い事だとは決して思いません。今回は、ガイドライン順じゃないかもしれません。でも、頭の片隅にこのことを入れておいて下さ い。ひょっとしたら、皆様のお役に立つかも、知れません。

今月の一言

模擬試験においては復習が何よりも大事だといわれています。三度の飯よりも大事だといわれています。模試を受けることよりも、復習をすることの方が大事だと抜かす輩までいる始末です。まぁねじ子は決してそうは思いませんが、まぁ復習するとただでさえ美味しい模試が一粒で二度美味しくなるのは確かです。
だがしかし。量が多いですよねぇ、模擬試験。「あれだけの分量の問題を復習かぁ、したくねぇよ~」という皆さんの御意見も、ごもっともです。模試を受け た直後に「答え合わせ」をする人は多いでしょう。答えも気になるし。でもでも、ざっと見直すくらいが精一杯。一問一問吟味し、解説を読み、わからなかった ところはYearNoteで調べて…などやっていると、A問題だけでも3日かかっちまって百年経っても終わらないってばとい気が滅入ってくることでしょう。
そこで!ねじ子の秘策を伝授致しましょう。それは「模擬試験のおさらいの勉強会」を開くことです!!人数は何人でもかまいませ ん。勉強会に誘うお勧めメンバーは、昨年10月号kokutaiレジデント奮闘記を是非参考にしていただくとして。「勉強会」って何だかとっても魅力的な 響きがありますよネ!なんか青春ってカンジ!楽しそう!でもでも。ハテみんなで一体何を勉強したらいいのか、困っちゃいますよネ。QBの勉強会をしようと したら、僕の好きな○○ちゃんはアプローチ派だったから断られちゃったよ!たは!みたいな。でも模擬試験なら大丈夫。皆同じ問題を共有してます。みんなそ の問題を解いているのです。これは勉強会のネタとして最適です。
人数が6人の勉強会なら、6で割った余りが1の問題をA君、余り2をB君、余り3をC君、…(以下略)余り0をF君が担当することにします。担当 になった問題は、きちんと調べてくる。その問題に関しては、疑問点は勿論「おや?これ答えないよ!出題ミスじゃない?」などなど、不思議に思うことは全て 責任もって調べてくる。担当以外の問題に関しては質問役になっ、て何でも聞く。自分が知ってることは隠さずアドバイスする。
この方法のメリットは 1.一人でやるよりも6倍早くできる。そうでもしないとやっていられません。
2.できなくても良い問題が、わかる。模擬試験は、これまで出たこともないような、挑戦的な予想問題も出してきます。誰も解けない問題は、解ける必要ありません。8割の人ができる問題を落とさないのが、国試に受かる道です。勉強会の人間のうち、最高に頭のいいたった一人しか解けないような問題は、解けなくて良いのです。落ち込む必要はありません。
3.そして何より大切なこと!!それは「みんながどういう風に考えて解答を選んでいるか」を学ぶことです。みんなと同じように考える思考回路が国家試験においては何よりも重要です。特に賢い人の「ものの考え方」は是非パクりましょう。暗記する事をできるだけ少なくするための、病態生理的なものの考え方を、賢い人は知っています。
4.連帯感が生まれます。たとえそれがまやかしであっても。
というわけで復習できずに自分を責めている貴方、是非一度勉強会を催されてみてはいかがでしょうか。

今月の一言


夏休みの模試、受けました?全然解けないっすよね!たはは!どうせなら自宅受験ではなく、試験会場で受けてみましょう。その方が実戦の雰囲気も出ますし、何より一人であんなモノをやっていると集中力が持ちません。さて、受けてみてどうでしょう?どれが臨床・各論だかわかりましたか?一般・総論だかわかりました?「ナニそれ」って感じでしょう?
国家試験には問題がA~Iまで9種類あります。まず問題文の長さから3つに分かれます。
<一般> 1行問題。ウルトラクイズ形式。 →1問1点
<臨床> 3行以上の問題文。「23歳女性…」とかから始まる。 →1問3点
<長文> めちゃくちゃ長い。1症例につき3問・10症例。俗に言う「C問題」→1問3点
「一般」の反義語は「臨床」ではありませんし、「臨床」の反義語は「基礎」であって、決して「一般」でも「長文」でもありません。これらが対になっている ことが国家試験分類を難しくしている全ての原因です。Kokutai編集部長であるはずのJ氏すらも「よくわからん」と豪語させる所以でしょう。これを問 題文の長さによって「一般」ではなく「1行クイズ」、臨床ではなく「3行問題」、そして「長文」だと考えれば、すっきりします。
そしてそれとは別に、問題の内容から3種類に分かれます。
<必修> 常識問題や、禁忌問題。
<総論> 公衆衛生を含む、医学の総論っぽいこと。主要症候や身体所見など、医学の「横糸」的なこと(例:「脾腫をきたす疾患はどれか」)
<各論> 疾患ごとの質問(例:「突発性難聴のオーディオメトリーはどれか」みたいな)マイナーも。
これは何となくわかるでしょう。「必修」「おおざっぱ」「細かい各論」と思いましょう。
これらは線形代数でありそれぞれ独立事象です。よって表を作るとこうなります。(問題は去年(2003年、第98回)に当てはめたもの)

必修で8割、必修を除いた一般問題だけで足して65%(250問中130問程度)、これまた必修を除いた臨床問題だけで65%(臨床には試行問題とかいう意味の分からないものが含まれていて、採点対象にならない。それを除いた200問中、130問程度)取ると合格です。相対評価なので、毎年若干変わるのですが、まぁだいたいそんなもんでしょう。一般は一般だけ、臨床は臨床だけで合計するので、一般が1点・臨床が3点であっても、実は大して意味がないことがわかるでしょう。その3点がひどく重荷になるのは「臨床・必修」だけです。そうF問題です。F問題で間違うとヒジョーに痛いのです。
模擬試験会場で問題用紙を開いたら、こんな文章が出てきました。「32歳女性、35週の妊婦さん。腹痛を主訴に来院。ほにゃららほにゃららで、ど うやらエコーしてみると早期胎盤剥離のようだ。あら大変。すぐ行うべき治療はどれか。」さてこれは何問題でしょう?まず文章が長い、けど「長文」ほどでは ない。そうこれは「3行問題=臨床問題」ですね。そして内容は?必修ではなさそう。一般は公衆衛生だったり、症候について聞いたりするから、なんか違う。 ぶっちゃけこの問題は「早期胎盤剥離ていう疾患の治療法について」聞いてるんだから、「各論」ですね!というわけでA問題は「臨床・各論」だとわかりまし た。次はB問題。ぺら。あ、1行問題だ。「1行=一般」だ。内容は?「樟脳の誤嚥に対する正しい処置は?」知るか!…この細かさは「各論」だな。「一般・ 各論」か。
…ていう感じです。始めのうちはどれがどれだが、すぐにはわかりません。ねじ子は模試を受ける度に「これは一般・総論?」などと予想し、問題の表紙にメモしておりました(前号参照)。実際は必修がどれかだけわかれば十分なのですが、精神衛生のために、分類を予想し、かぎ分ける能力を模擬試験のうちから身につけておきましょう。

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