2024年 ねじ子の俺コンランキング
1位 click / ME:I
コール&レスポンスが気持ちいい名曲。最初のワンフレーズにこの曲の魅力が詰まっている。
センターで桃奈が振り向いて「おっおー♪」
オタク「おっおー!」
桃奈「君の声がする♪」(にっこり笑顔)
単純明快なコール&レスポンスだ。フェスなど、一見のお客さんでも声を出せる。歌詞も素晴らしい。ステージの上のアイドルと客席の自分がはっきりとつながる内容なのだ。非常に気持ちがいい最高の「入り」だ。ハロプロというコール&アンドレスポンスの巨大キングダムからやって来た海賊・桃奈が、堂々とした笑顔で観客を迎え入れるところもよい。ここの桃奈、観客に「君の声めっちゃ聞こえるよ!よくできたね!」って顔してるんだよね。すごくいい笑顔してるの。日プ女子全体を貫いていたステージ哲学である「最初の5秒で観客を掴む」が体現されているところもよい。
このあとに続く
心菜の「のっくのーっく♪」
オタク「のっくのっく!」
心菜「未知のドア開けて♪」(ドアを両手で開ける動きを真顔でやる)
もいい。最初の「おっおー」で入りそびれた初見の客も、すぐに学習してここで一緒に叫ぶことができる。一年前は伊勢の田んぼのあぜ道を歩いていた心菜が、現在進行形で未知のドアをひとつひとつ開けているんだろうな、という心象風景がこちらにも伝わってくる。コール&レスポンスの大ベテラン桃奈からド新人の心菜へ受け継がれるところもいい対比だ。
他にも「まむまみあーい」はとても叫びやすいコールだし、自然発生した「ミャイミャイ」も叫びやすい。私はハロプロ育ちなので、自然発生して生き残ったコールこそ「いいもの」だと思っている。だってそれは観客の魂の叫びだから。「ミャイミャイ」は公式のコールではないのかもしれないけれど、私は好きだ。大好きだ。それに対して、順番にメンバーの名前を叫ぶ間奏のコールは(空白のリズムを埋めるものではなく)観客がメインボーカルをやらされることになるので、あまり気持ちよさがない。勉強しなくちゃいけないし、義務感が強くなってしまう。まあ勉強してコールするんだけれども。
オタクのコールの話、ここまで。
さて、私がこの曲を初めて聴いたのはドコモGALAXYのCMであった。CMではサビのみが繰り返されており、当初は「耳なじみよく聴きやすい。くり返しBGMとして流れるのに特化しており強いインパクトを残す意図はない」という印象を受けた。
その後ハロヲタの間で話題になっていたYoutube動画を見て、私は衝撃を受けた。
これは美しい。まずシンプルに画質が高い。普通に4Kだ。セットもCGも豪華で手間がかかっており、映像作品として楽しい。めっちゃ金がかかってる。加工なのかフィルターなのかメイク技術が高いのか——あるいはその全てなのか——とにかく全員がとびきり美しくうつっている。字幕も違う。パートを歌っている子の名前と歌詞が、右下端に同時に出る。これもすごくいい。「いま歌ってたの誰!?」「いま映った可愛い子誰?」という疑問にすぐに答えてくれる。非常にわかりやすい。カメラアングルも多彩で、さらにその一つ一つがYoutubeにあがる。これが無料で、いつでも、世界中どこからでも見られるのだ。
サービスがいい。よすぎる。なんだこれ。
世のドルオタが「韓国の音楽番組は日本とぜんぜん違う。比較にならないほどレベルが高い」と言っていた理由を、私はこのとき初めて理解した。今の若い女子アイドルが韓国音楽番組に出演するのを夢見る理由もわかった。この映像がYoutubeに上がって、世界中の人が瞬時に、無料で、くり返し見ることができるのだ。しかも消えることがない。半永久的に、くり返し何度も見られる「作品」が残るのだ。これはアイドル本人にとっても嬉しいだろう。
日本のテレビ音楽番組はこれに比べてどうだろうか。画質は低く、カメラワークも決してよくない。一番最悪なのはフルじゃないことだ。奇妙な省略を食らって、フルで歌わせてもらえない。一番とサビだけだったりするんだよね、何なんだあれ。トークや過去VTR上映会してる時間を削って全員フルで歌えばいいのに!と何度も思う。でも決してそうはならない。字幕で歌詞が出ていても、パート割りはわからない。照明が暗く、セットも何もない。もちろんネットには上がらない。上がってもTverのみの期間限定だったりする。もちろんここに貼れるような合法動画もない。再放送もない。見逃したらおしまい。そのくせ2時間の番組中で推しの歌の時間はたった2分程度なのだ。馬鹿馬鹿しい、付き合ってられないよ。ああ、日本と韓国で音楽番組のクオリティにこんなに差が付いてしまっていたのか……。
韓国音楽番組最大の売りは、一人一人をずっと専用カメラで追う「ソロアングル」である。これを「チッケム」と呼ぶ。全員分のチッケムがYoutubeにあがる。これは嬉しい。推しメンのチッケムはずっと見ていられる。
これは先にハロプロがやっていたことだ。ハロプロのソロアングルは2006年にはすでに存在していた。「鞘師里保ソロアングルDVD」というような名前で、各メンバーのソロアングルがファンクラブ限定でDVD発売されていた。私も鞘師や香音ちゃんのソロアングルが好きで、よく見ていた。それらは海外のファンに非常に人気が高く、動画サイトにも(無断で)よくあがり好評を博していた。
※参照商品
- FC限定 Berryz工房 夏焼雅 ソロアングル ハロプロ 大運動会&ライヴ 2006 スポーツフェスティバル (amazon)
- 9枚組ソロDVD BOX「モーニング娘。コンサートツアー2007秋 ボン キュッ! ボン キュッ! BOMB」SOLO BOX(ヤフオク)
- ソロDVD BOX モーニング娘。コンサートツアー2008秋 リゾナント LIVE (メルカリ)
- 鞘師里保 on ソロアングルDVD モーニング娘。 2011 春 新創世記 ファンタジーDX~9期メンを迎えて~ (ヤフオク)
日本のファンはコンサート現場に行けば推しだけを見ていられる。目でソロアングルできる。でも、現場に行けないファンはどうしたらいいのか。メインカメラはパートを歌っているメンバーのみを抜く。すると事務所に推されていない、歌割のないメンバーのファンは推しの姿を見ることさえできないのだ。そんなメンバーのファンにとってソロアングルDVDは光明であり、命綱だった。推しの可愛い顔とパフォーマンスがずっと見られる、まさに夢のような時間を得られるのである。特に海外のハロオタにソロアングルは大好評だった。
↑海外ファンのコメントが多かった鈴木香音ちゃんのソロアングル『彼と一緒にお店がしたい!』。私も500回くらい見た。
チッケムってさ、ソロアングルDVDなんだよ……。ハロプロが先にやって、すでに先細ってしまったやつなんだ……。ハロプロっていつもそう!普段着でのダンス練習映像を公開するのもそう!今はダンスプラクティテス動画って呼ばれてるけど、モー娘。がASAYAN時代から見せてるやつ!戦隊みたいな色分け女子アイドルもそう!私カワイイアイドルもそう!全部ハロプロがかなり先にちょろっとやって、貫かなかったアイディアなんだ……。
話を元に戻そう。韓国音楽番組の映像のクオリティの高さに驚いて、私は『click』を聴き始めた。日本の地上波音楽番組にME:Iが次々と出るのも見た。その中で生歌論争が行われているのを確認した私は、ようやくME:Iに興味を持ち、始まりのオーディションである日プ女子を視聴し始めた。この後の流れはこちらに続く。
オーディションを見終わった後で、clickのMVを改めて見た。
なんだこれ。よくわからない謎の映像だ。
日プ女子からのファンがデビュー曲に文句を言っている理由が、ここでようやくわかった。なるほど確かにこのMVは謎に満ちている。意図がわからない映像が随所に差し込まれているし、不思議な衣装が多い。
私なりにMVを読み解いてみた。まず、オーディション中の公約として、オーディション一位がデビュー曲のセンターになることは決まっている。MVの制作は韓国だ。韓国の制作陣がオーディション1位通過の笠原桃奈をフューチャーするにあたり、どんなイメージが浮かんだか。それは「笠」であり「桃」であり「武士のような女の子」であったと推測する。だから「笠=傘」で「桃色=ピンク」の傘を、剣客のように振り回すことになった。そう私はとらえた。グループのイメージカラーにも合う。ピンクの傘を忍者の刀のように背負った制服姿の桃奈が、剣に見立てて傘を振り回し、仲間を雨粒から守る。これが制作陣の一番伝えたいイメージだったのではないだろうか。
次にダンスブレイクを目立たせたい。あと謎の猫も目立たせたい。あ、あと未来のアイドルって設定もあったわ!それも入れよ!じゃあ未来っぽい宇宙空間やコールドスリープで!よっしゃオーダー全部入れたるわ!……とした結果、一気につめこみすぎたのではないだろうか。そんな印象を受けた。混ぜすぎ。
そして私のこの超考察をもってしても、ピンクデカリボンとピンク毛玉猫耳車の意味はまったくわからない。なんだあれ。何を伝えたいのか?意図がわからないのでコメントのしようがない。わかったら誰か教えてください。
『click』の謎のおっさんが変身した猫ことミャイがメンバーよりも分量を取った結果ファンの怒りを買い、次のシングルのオープニングで森に捨てられたのにはちょっと笑ってしまった。気持ちわかる。でもさーメンバーが拾っちゃうからさー。もー、捨て猫を安易に拾っちゃダメって言ってるでしょ!異世界に飛ばされてるじゃん!奇妙な祭りに参加させられてるじゃん!トリップさせられてない?変な夢を見させられてハイになって踊らされてない?大丈夫?
2nd single “Hi Five“
2位 はいよろこんで / こっちのけんと
2014年の日本において最も全世代に聴かれた一曲だと思う。子どもたちもこの曲大好き。けんとさんのことも大好き。もちろん彼らは『仮面ライダーW』も大好きでフィリップも大好きだったので、けんとさんがフィリップの弟さんだと知って驚いていた。もちろんそんなことは一切関係なく『はいよろこんで』は名曲である。MVのイラストもいい(かねひさ和哉さん作)。
「鳴らせ君の3から6マス」の「3から6マス」は心電図の正常範囲の値であるというけんとさんのコメントを聞いて驚いた。たしかにそうだ。あまり認識したことはなかったが、RR間隔が「大きいマスで」3から6が正常範囲である。それ以下だと頻脈、それ以上だと徐脈。リズム自体が狂っていたら不整脈である。なるほど。その後に続く「トントンツートントントンツーツー」はモールス信号のSOSである。

つまりこの曲は、「はいよろこんで あなた方のために」を強くしいられて過剰サービスさせられている社会人が、自分の心拍がおかしくなる前に他人に助けを求めろ、という啓蒙の歌なのである。心と体が壊れる前にSOSを鳴らせ!という強いメッセージだ。「ブラック企業やブラック要求からは全力で逃げろ!」と魂で叫んでいると言ってもいい。精神疾患を自ら公表しているけんとさんが歌うからこそ、この曲の説得力は増す。歌詞に強い社会性がある。
……十数年前、私や息子がフィリップの出世にキャッキャと喜んでいる間に、けんとさんは有名人の弟として人知れず苦しんでいたのかもしれない。それに気付いて私は胸が痛い。
ハロプロのアイドルも、自分がデビューしたことによって(自分ではなく)親や兄弟の人生が180度変わってしまったことに苦悩する子が多かった。自分は夢を追って覚悟を持って「人に見られる」仕事を選んだ。だから理不尽にも納得できる。でも、家族はそうではない。それなのに現実では、家族も一緒に喧騒に巻き込まれてしまう。芸能事務所に守られるわけでもなければ、将来や収入が約束されているわけでもないのに。なんのメリットもないのに有名税だけはたっぷりと支払わされてしまうのだ。なんたる理不尽だろう。
それでも、それでも両親は大人だからまだいい。小さい弟や妹の人生が自分のせいで変わってしまったこと、苦労をかけてしまったことに苦しむハロメンはたくさんいた。若いうちの急なスポットライトにはそのような弊害がつきまとう。ハロプロ以外の事務所が低年齢大所帯アイドルから手を引いている理由は、そんなところにもあるのかもしれない。まぁハロプロは相変わらず女子小学生大量捕獲なんですけどねガハハ。
これからのけんとさんの道が光あふれる幸福で満ちていることを願っている。
さて突然だが、けんとさんは12人目のME:Iである。ヒットの時期がかぶっていたこともあり、音楽番組共演やtiktokダンスコラボも多かった。どちらも新参者でジャンルがかぶっていないこともあり、アウェイな環境で共演するたびにお互いの心を支え合っていることが伝わってきた。それはまるでテレビという生き馬の目を抜く戦場における唯一の戦友のようであった。何より、けんとさんは優しい。本当に優しい。既婚者だからガチ恋オタクも安心だ。緑のメンバーカラーも空いている。めがねをかけた緑色のミャイのイラストを描いてるミーアイおたくもたくさんいる。我々ユーミーはけんとさんのことを12人目のME:Iとして歓迎している。いつか曲を書いて欲しい。可愛いけど少しだけ社会的な歌詞でよろしく。
3位 FUN☆FUN☆わんだふるDAYS! / わんだふるぷりきゅあ!エンディング
『わんだふるぷりきゅあ!』は素晴らしかった。飼い犬が突然変身して主役プリキュアになる第1話には度肝を抜かれた。「お前が主役なのかい!」とリアルに叫んだ。そして、この設定は意外にもよかった。
一般的に犬の知能は人間の2~3歳程度だときく。ちょうど子どもがプリキュアデビューする年齢である。主人公はいつも初めての体験に無邪気に喜び、中学生女子はあまりやらない行為をして、周囲を振り回す。これがとても愛らしく感じる。
周囲を振り回す猪突猛進型の主人公はヒーローものの脚本でよく使われる。物語がよく回るからだ。しかし、主人公が馬鹿すぎたり考えなしで動きすぎると、それはそれでつらい。見ていていらいらしてしまう。「主人公が犬」はこの問題をよく解消してくれた。犬だから飼い主が大好きなのも当然だし、日常生活で知らないことが多いのも当たり前だし、世の中のことがよくわからずに突っ走ってしまうのもうなずける。自然に思える。ヘイトが湧かない。いわゆる「馬鹿レッド」と言われる型の英雄譚において、主人公にヘイトをためない効果的なやり方なのだ。これは『パウ・パトロール』の世界的大成功によって発見された手法であり、プリキュアでもとても上手くいったと思う。
もう一組のプリキュアペアは、猫と飼い主である。すました美少女の白猫と、耳年増の同級生少女。この組み合わせもとてもよかった。おもちゃの売上的に追加戦士がいないことが心配だったけど、売上もよかったようだ。ストーリーの面白さと売り上げが比例していると安心する。
さらにもう一組の追加ペアは、ペットのウサギと男子である。ウサギと男子は番外戦士枠で、映画でしか変身しなかったけれど、それでも嬉しかった。ヒロプリ(ヒーローになることがテーマ)とわんぷり(動物と人間の絆がテーマ)は男女ともに人気があるモチーフだったので、男子が家にいる親としてはありがたかった。親子で楽しく観ることができたから。
ちなみにこの男子と準主役の女の子が物語中で早々にカップルになった。これもよかった。女児向けの少女漫画の恋愛描写は「付き合うこと」がゴールに設定されているけれど、実際の人生はその後の方がずっと長い。付き合うのってただの始まりだからねー。本当はその後の方がずっと重要なのに、そこはなかなか描写されない。カップル成立したら終わり!いっちょあがり!解散!ではなく、付き合った「その後」の生活をきちんと描写してくれたことが新鮮で嬉しかったです。
あっそうそう、ペットとの死別とそこからの再生を描いた点もよかった。
4位 It’s Going Down Now / 高橋あず美・Lotus Juice
『ペルソナ 3 リロード』の先制戦闘曲。アトラスサウンドチーム作。ボーカルは高橋あず美さん、ラップはLotus Juiceさん。ライブverはこちら。
「あれ?後ろに見慣れたロゴマークがあるな」と思って目を凝らして見たらコットンクラブって書いてあった。親の顔より見たロゴじゃん。ハロプロ運営ジャズライブハウス・コットンクラブ。正確にはハロプロ関連会社の株式会社コットンクラブジャパン運営ライブハウス。初めて訪れた土地のはずなんだが?なんで実家に到着してんの?
コットンクラブは生演奏と生歌に特化した会場である。音響も最高だ。立地がよく飯もうまい。スタッフの経験値も高い。それは保証する。でもまじかよ!海外のオタクにめっちゃ喜ばれてるじゃん!
私は『ペルソナ 5』からペルソナシリーズに入った新参者である。名作の誉れ高い『ペルソナ 3』にはリメイク版の『ペルソナ3 リロード』で初めてふれた。物語よし!曲よし!歌よし!キャラよし!UIよし!ゲームデザイン最高によし!全体的にめっちゃおしゃれ!という七拍子がそろったRPG作品としての骨格は、『ペルソナ 3』にしてすでに完成している。そりゃ人気出るわ。アトラスにどんなにあこぎな完全版商法をされても、新作や続編が出るたびに食いついてしまうのもよくわかる。
この曲は海外のストリーミングサービスで異例の再生回数を誇る。「謎 今年、誰も知らない日本発の超ヒット曲」という記事もあって笑ってしまった。誰も知らない、はないよ。正確に言うと『ペルソナ3』しかも『リロード』をプレイした人だけが」知っている名曲である。非常に限られているが、確かに存在している。我々は世界中に少しずつ存在している……。
私もゲーム音楽の一つとしてペルソナシリーズのBGMを愛聴している。ゲーム戦闘曲は作業用BGMに向いてるので、ゼルダやポケモンの戦闘曲とともに何度もBGM再生している。でもそれを「表で」「声に出して」宣言するかというと、確かに言わない。口には出さないけど、確実に複数回聴いている。そんな人が独立してばらばらにいる。数字で言うと10000人に一人かもしれない。でもその一人は確実に世界中に散らばっていて、50億人で集計すれば50万人になる。そしてその50万人はこの曲を何度も何度も繰り返し再生し、ひとりひとりの生活の個人的戦闘の背景を美しく彩っている。
ちなみに『ペルソナ 3』なら通常戦闘曲のこの曲も大好き。やんややんややんややんややんやんやーん。ネットで今調べたら「ベイベベイベ」と呼ばれていた。非常にインパクトあるイントロからすぐに続くラップも最高。この曲から始まるバトルが楽しい。JRPGにおいてボーカル入りの戦闘曲は当時非常に珍しかったと聞く。金字塔的な曲だ。
そして『ペルソナ 3 リロード』をプレイして、海外のおたくが日本の学園生活に過剰に憧れている理由も少しわかった。かけがえのない生活をスタイリッシュに送っているように見えるのだ。一分一秒が充実して輝いているように見える!時事問題につながったトラブルに見舞われる友人に出会い、その悩みを解決していく!その展開もワクワクする!実際の東京の高校生活はこんなにスタイリッシュじゃないし、理不尽で胸糞が悪いイベントの方が多いのだけど、そういう部分は悪役側に配置される。そしてすっきり退治される。これは爽快だ。
ちなみに一番口ずさんでいるのはこの曲。貴方のテレビに時価ネットたなか~買うのは今しかない!イェイ!
5位 かわいいだけじゃだめですか? / CUTIE STREET
ぱるたんこと桜庭遥花ちゃんは日プ女子の参加者のなかでハロヲタが最も好きなタイプの女の子だった。
第一に、ハロプロの聖地・北海道出身なこと。第二に、オーディションに参加できると決まったときに、いさぎよく高校をやめちゃったこと。こういう覚悟と思い切りの良さは古参ドルオタが一番好きなやつだ。第三に、可愛くて特徴的な声。第四に、スキルがないと言われてFランクにされても、くり返し練習し努力できる根性。第五に、しもぶくれ気味で可愛い輪郭の顔(安倍なつみや福田明日香や初期道重さゆみの系譜)。すべてハロヲタ好みのど真ん中である。
彼女がオーディションを落ちた後、あっというまにカワラボに拾われていったのは時代を象徴するエピソードであった。私はマジでハロプロに来て欲しかったんだけど、まったく、当然のように、かすりもしなかった。
ハロプロは日プ女子落ちをまったく拾わなかった。2024年のハロプロ界隈で私がもっとも驚いたのは「日プ女子落選者に声をかけなかった」ことである。あれだけのハロヲタが日プ女子を見て、さまざまな女の子に興味を持ったというのに。事務所関係者だってオーディションを見ていただろうに。日プ参加者の女の子だって、それまで聞いたこともなかったハロプロという組織を(かっさーのおかげで)知ることになっただろうに。どうして?なんで声をかけなかったの?AKB大躍進の裏でローカルアイドルの有望株(りかこ、もりとち、くるみん、かわむーなど)をスカウトしまくっていた2014年頃の意欲的な経営陣はもういないのだろうか?まぁ実際は声をかけた全員にお断りされたのかもしれないけどさ。
さて、そんなぱるたんが加入したCUTIE STREETのデビュー曲。2024年Tiktokで流行してるいわゆる「かわいい」楽曲である。
これは見たことある。目新しくない。『かわいくてごめん』で女性声優界隈が頻繁にやってたやつだ。超ときめき♡宣伝部がやってたやつでもあり、FRUITS ZIPPERがやったやつでもあり、もちろんハロプロも昔やってたやつ。初めてタイトルを聴いたとき私が真っ先に思ったのは「カントリーガールズのキャッチコピーは『かわいいだけでなんとかなる、か?』だったな」であった。重ピンクとこはっピンクがやってた世界であり、カントリーガールズがやっていた世界である。もちろんいちばん酷似しているのは超ときめき♡宣伝部やFRUITS ZIPPERだ。
この曲がそれらと違う部分があるとすればそれは「小野小町」だと私は思う。歴史を入れている。教養要素がひとさじだけ入ってるのだ。岡田斗司夫が言う「メガ・ヒットに必要な四大要素」は、 ①性的・体感的な快感、②勝負、③知性、④社会性 だ。このうち③知性 がはっきりわかるから、この曲はSNSを飛び出して一般層への広がりを持つことができた。カラオケでも歌いやすく、メロディも覚えやすい。
ちなみにヤマモトショウさんなら「おかあさんといっしょ」の『ももいろほっぺ』が一番好き。歌のお姉さん、体操のお姉さんと、マスコットキャラクターみももの三人が桃色の部屋で桃色の衣装で歌う。
カワラボことKAWAII LAB. は、ハロヲタだった元むすびズムの木村ミサさんがプロデュースしている。振り付けはぱすぽ☆だった槙田紗子さんで、こちらもハロプロ好きだった。ちなみにイコラブも指原さん、つまりハロヲタの女性がやっている。いにしえのハロヲタばかりだ。
私もいにしえ、かつ(今のところ)現役のハロヲタなので、「みんな有能だなぁ」と思うとともに「ハロプロで仕事していてくれれば……」と思うこともある。でも、それは叶わぬ願いだということもわかっている。野心的でアイディアのある若い指導者をハロプロは雇用しない。そして、野心的でアイディアのある若い人間はハロプロの中に入らない。つんくさんですら「手柄取り上げないで」と歌っている組織に、若い有能な人材はなかなか入ってはこないのだろう。
うーん、でもなぁ。宝塚だって宝塚が好きな人を技術者として入れているからこそ、クオリティをキープできているのでしょう?若い血とアイディアを入れなければ組織は枯れてしまう。ハロプロの上層部は現状のまま、いったいどこまでいくつもりなんだろう?
カワラボもイコラブも、ハロプロとよく似たシステムを取り入れて新しい女性アイドル組織を作り大躍進している。この二つは「口パク」ではない。生歌主義で日本のテレビ番組に出るし、ライブもする日本の女性アイドル集団だ。これはいよいよハロプロとかぶっている。客を食い合う組織が続々と生まれていることをひしひしと感じる一年であった。
6位 Bling-Bang-Bang-Born / Creepy Nuts
アニメ「マッシュル-MASHLE-」オープニング主題歌。アニメのオープニング映像のダンスのキャッチーさも相まって、小学生にも大ヒットした。子どもも歌える一曲だ。
「欧米のヒットチャートはヒップホップが強いけれど、日本においてラップで大衆的なヒットを飛ばすのは難しい」とよく音楽識者が言っていた。私も同じように思っていた。でも、この曲は2024年のナンバーワンヒット曲になった。
この曲の勢いに乗ってCreepy Nutsは東京ドームを埋めた。それもすばらしい。ゴッドタンに出まくっていたDJ松永さんが本気で音楽に取り組むと決め、バラエティをお休みし、宣言通りヒットを飛ばしたことも素晴らしい。二人ともテクニックが強いよね。まじ強い。R指定さんラップうめぇ。カラオケで歌ってみるとこの曲のラップの難しさにびっくりする。口が全然回らないのよ。
個人的なことだが、私自身はラップにうとい。メロディが少ない音楽を愛することができず、ラップのみの楽曲をくり返し聴く習慣をもつことはできなかった。その上、私のようなアンテナの低い人間まで流れてくる日本音楽業界のラップのリリックは「上流階級の不良ごっこ」になってしまっていたので、私にはどうにも共感できなかった。「そんなこと言っても君たち、私よりずっと金持ちの家に生まれて社会的地位も保障されてるじゃん。それホットカーペットの上の憂鬱でしょ」と思ってしまっていたのだ。かと言って本当に犯罪自慢や俺モテる自慢をされても、それはそれで困る。共感はむずかしい。
ヒップホップは自身と社会との乖離や怒りを歌詞に載せるものだから、私が共感できなくても他に共感できる人がいればそれでいい。例えばちゃんみなさんやAvichiさんのリリックは私自身とシンクロする部分も多く、たやすく肌を合わせることができる。つまりは共感しやすい。
クリピは30代男性の等身大の、まったく上流階級ではないおのれ自身を歌っている。それが好きだ。悪いこと自慢じゃないところも好きだ。私(40代女性子持ち)と境遇が全然違ってもシンクロできる。「そうだね」「わかる」「なるほど」と思える。理解も共感もできる。そこが素晴らしいと思っている。
(2025/10/10)