℃-uteの武道館講演に行った。℃-uteの日(9月10日)のチケットは入手困難だったので前夜祭(9月9日)である。非常に素晴らしいコンサートだった。ねじ子は3回ほど泣いた。
最近は武道館の敷居が低くなってきている。知名度も実力も関係なく、ぽっと出の新人でもイベントを打ってる印象がある。「武道館に思い入れを持つなんて古くさい」という意見もうなずける。けれども、少なくとも℃-uteちゃんたちにとって、武道館を平日2日間満員にできたことには大きな意味がある。彼女たちはどん底からここまではい上がってきたのだから。下積みの美談を作り上げるために作為的に用意された「苦労」の押し売りではなく、本当に底が見えないどん底から。そう、今では信じられないかもしれないが、℃-uteは確かにどん底だった。
8人で華々しくインディーズデビューした『まっさらブルージーンズ』に、ねじ子は当時ひっくり返るほどの衝撃を受けた。ファンの数は一気に拡大し、レコード大賞新人賞も獲った。でも、その後が非常にまずかった。村上愛が最悪の形で辞め(男性との相合傘をストーカーに撮られた翌日に電撃引退)、有原栞菜も違った種類の最悪の形で辞めた(ジャニーズの男の子と写真を撮られる)。この時の相手が悪かったせいで、現在に至るまで主要な音楽番組に出ることも、大きなタイアップを取ることも難しくなってしまった。そして追い打ちをかけるように梅田えりかchanもモデルを目指して卒業した。製作陣も初期のテンションを保つことができなくなってしまったのか、楽曲の質も目に見えて低下していく。挙げ句の果てに、梅さん卒業後初のシングル『SHOCK!』は愛理のソロ曲であった。愛理ファンおよび(ソロを望んでいなかった)愛理本人は大いに困惑し、愛理以外のメンバーのファンは激怒した。移り気なアイドルファンはもちろんのこと、度重なる不幸に耐えてきた古参ファンたちをも呆れさせるのに十分であり、熱心で強固なハロヲタでさえも℃-uteに(いや、正確には事務所に)失望してしまった。
不幸なのはそれだけではない。この頃、モーニング娘。は新メンバーを長期にわたって募集していなかった。その目的の一つはおそらく、Berryz工房と℃-uteにファンの目を向けさせることにあった。しかし、℃-uteを襲った度重なる不幸によって、その目論見は残念ながら当初の予定ほど上手くいかなかった。ファンの一部はPurfumeに流れ、48Gに流れ、ももクロに流れていった。そしてハロプロはその歴史上で最もファンの少ない時代を迎えた。2010年頃のことだ。10代後半~30代男性という女性アイドルファンのボリュームゾーンを根こそぎ余所さまにもっていかれて、ハロヲタにはロリコンとゲイと一部の女しかいなくなったのだ。ねじ子自身はそのころ最も狂信的なタカ派のハロプロ信者だったけれども、当時のハロプロ現場は確かになかなか見応えのある客層であった。どこに行っても「コミケの三日目より凄惨な光景だわ」と思った。私たちはキモヲタと呼ばれ、古臭いと言われ、「まだやっているの」と言われ、テレビでもネットでももちろん現実社会でも、散々馬鹿にされた。
もちろん℃-uteの売上と観客動員も目に見えて減っていく。でも彼女たちは諦めなかった。必死にダンスを揃え、歌唱力を上げ、容姿を磨き、決して太らず、腐らなかった。そして色々な「新しい試み」をした。結果的にはその新しい試みが実を結び、今に至ったのだと思う。
まず、ハロプロのアイドルにしては珍しく対外的なアイドルフェスに打って出た。アイドル横丁祭やニコニコ超会議に鬼気迫る勢いで出演し、毎回素晴らしいパフォーマンスをした。なぜ当時℃-uteが選ばれたのかはよくわからないが、とにかくとんでもない気迫で、10年選手としてのキャリアをきちんと出し切った。「℃-uteはライブがすごい」という評判もここから生まれた。
そして岡井千聖ちゃんのネット動画における功績も大きい。最も有名なのは『まっさらブルージーンズ』の「踊ってみた」をYoutubeにアップしたことだろう。プロ本人が「踊ってみた」動画をあげるのは今では珍しくないが、当時は新聞の社会面で紹介されるほど画期的だった。ダンスの上手さにも驚いた。真似しやすい正面からの定点撮影だったために、素人さんがそれを真似る「踊ってみた」動画もたくさん派生した。さらに岡井ちゃんをトレースしたMikuMikuDanceのモーショントレースが作られ、二次元の様々なキャラクターがニコニコ動画で『まっさらブルージーンズ』を踊り、爆発的人気が出た。『Kiss me 愛してる』でも同様の現象が起こり、若年層への℃-uteの知名度は飛躍的に上がった。
武道館の前に集まったお客さんは本当に若かった。そして女性が多かった。可愛い女の子達がメンバーカラーのTシャツを着ている。「気持ち悪さの象徴」とまで言われていたヲタTシャツをお洒落に着こなしている。可愛いフリルのミニスカに合わせたり、デニムのホットパンツに合わせたり、リボンを着けてアレンジしている。こんなにたくさんの人が℃-uteのために武道館に集まるなんて、にわかに信じられない。『SHOCK!』が初披露されて、絶望に彩られていたあのよみうりランドの観客にこの光景を見せてあげたい。というか、少なくとも私は見ることができている。あのとき在宅でSHOCK!を受けていた私も、今はちゃんと武道館にいる。『Kiss me 愛してる』のイントロにのせて、目の前で中島早貴ちゃんが潤んだ目を必死にかっ開きながら現れた瞬間に、ねじ子も涙腺が決壊してしまった。つまりオープニングから泣いていた。我ながら気持ち悪い。女であることをいいことに、「ニコニコ経由でファンになった新参のteam℃-uteでーす♥キスミーは神♥まっさらも神曲♥♥」って感じの新規客を気取ろう! と思っていたのに、はなからキモヲタ丸出しである。失敗した。しかも研修生が出て来るとどうしても研修生に目がいって一人一人コンディションをチェックしちゃうあたり、私も性根からハロヲタである。あー、リカコ可愛かったなー。Juice=Juiceのオープニングアクトも最高だったなー。思いがけず金子りっちゃんと浜ちゃんも見られたし、Berryz工房もゲストで来たし、武道館入口にいたベイビーレイズからティッシュもらえたし、ポッシボーのロビンちゃんから手渡しでチラシもらえたし、チケット代以上にお得なライブだったわー。
私は「『まっさらブルージーンズ』をMステ(または紅白)で歌い踊る℃ちゃんたちを見たい!」とずっと思ってきた。一人でも多くの日本国民にあのラミラミを、暴力的な腰振りを見せたい。それは見果てぬ夢のまま終わることも、わかっていた。でも今の勢いならば、ひょっとしたらひょっとして実現できるのかもしれない。そんな可能性を感じさせる素晴らしいライブだった。まだまだ上を目指してほしい。上、というものがいったいどこにあるのかはわからないけれども。(2013/9/11)
Mステのモーニング娘。は最高でした。全員のコンディションがよく、ヘアメイクも可愛かったし、衣装も見たことがない可愛いものでした。歌番組のために新しい衣装を作るなんて。そんな大盤振る舞い、一体いつぶりのことでしょう!娘。さんたちも、6年間Mステに出ることができなかった鬱憤を一気に爆発させたかのようなエネルギッシュなステージで素晴らしかったです。ああ、また出てほしいな。
以下のイラストは2013年夏コミ無料配布用に描いたものです。
道重さゆみ
田中れいな
譜久村聖
生田衣梨奈
鞘師里保
鈴木香音
飯窪春菜
石田亜佑美
佐藤優樹
工藤遥
おまけ。
4年前までの私は毎週ミュージックステーション、略してMステを見ていた。誰が出ていようと、誰が出ていなかろうと、見ていた。ブランキー・ジェット・シティ最後の出演の『SATURDAY NIGHT』も、ミッシェル・ガン・エレファントがTATOOのドタキャン穴埋めにリハーサルなしで『ミッドナイト・クラクション・ベイビー』を披露したのも、Coccoが歌い終わった後に裸足で走り去ったのも、スピッツの春風のような歌声とペコペコしたアルペジオも、ちゃんと覚えている。でも、いつからかMステで「歌を歌う」人たちは少なくなっていった。生演奏はもちろんのこと、生歌さえも存在しなくなっていったのだ。長い時間をかけて「今のMステにあるのは音楽ではない、商売だ」という結論に至ったねじ子は、Mステを見るのをやめた。その代替はYouTubeである。好きな時に好きな曲を、ワンクリックで好きなだけ聴くことができる。非常に便利だ。何の不自由もない。
それでも、モーニング娘。がMステに出るのならばテレビが必要なのである。デヴィッド・ボウイだって40年前に『すべての若き野郎ども』の中で”Man I need a TV when I’ve got T. Rex(ねじ子訳:テレビが必要なのはT.Rexが出る時くらいさ)”と歌っていた。NHK-BSで『ジギー・スターダスト・ザ・モーション・ピクチャー』を放送したとき、この部分の字幕は「T.Rexがいるのにテレビなんて必要か?」となっていた。私はこれをずっと誤訳だと思っていた。でも確かに私も、モーニング娘。がいてくれるのならテレビなんて必要ないし、かつモーニング娘。が出演するのならばその時だけはテレビが必要なのである。NHKの翻訳は決して誤訳などではなく、深い洞察に基づいたより良い解釈だったんですね!
というわけで、Mステ出場を祝って!夏のコミケで無料配布したモーニング娘。さんたちの落書きを次のエントリーで貼ろうと思います。メドレーを歌うとのことですが、いったい何の曲でしょうか。ねじ子は『One・Two・Three』と『愛の軍団』を熱望します。衣装は『愛の軍団』のMV衣装か、FNSうたの夏まつりで着ていた白服がいいなあ。こういうのは、番組が始まるまでいろいろと予想する時間が一番楽しいですよね。いったん放送されてしまうと、脳内祝勝会や脳内反省会が始まっちゃってなかなか純粋に楽しめなくなりますから。あと18時間、いろいろと妄想して楽しみたいと思います。(2013/8/23)
しまった!twitterで告知したらすっかり安心してしまって、ブログで告知するのを忘れていた!
夏コミ参加します。今回はなんと二日目です。 初めて!ハロプロと同じ日だ!ひゃっっほ~い♪( ´θ`)ノ
2013/8/11(日)(コミケ2日目) 東地区”Q” 47a サークル名:「ねじ子アマ」
今回は手技の新刊はありませんが、手技図譜【診察編】のアップデートキットと、ねじ子の趣味で描いたモーニング娘。のイラストをコピーして持っていきます。 2013/7/29に『ねじ子のぐっとくる体のみかた』が発売になりましたが、 平成医療手技図譜【診察編】+アップデートキット ≒ ぐっとくる体のみかた のはずです。商業誌化されていても、同人誌が好きって人も多いんですよね。というわけで、同人誌版を持っている方はぜひ今回のアップデートキットも入手してください。
※当日、ねじ子本人は販売ブースにはいません。
ダウンロードもできるようにしました。下の搬入商品リストからどうぞ。 アップデートキットは当初有料の予定でしたが、コミケで販売してしまうとダウンロードでの配布がしにくいことから、コミケでも無料にしました。 コミケに来てくださった皆さん、ありがとうございました。「新刊ないですか」の方々すみません。今回は無料配布物で許してください。「もうコミケでの新刊発表やめちゃうんですか」の方、やめませんのでご安心ください。「マッチングでお世話になりました」とか「プレホスピタルケアの連載読んでます」とか、売り子さんから伝言聞きました。うれしいです、ありがとうございました。コミケはあと一日ありますが、熱中症に気をつけて皆さん頑張ってください!
--今回の搬入商品リスト--
★平成医療手技図譜【診察編】アップデートキット(予価100円無料配布) 手技図譜【診察編】アップデートキット(高解像度版) (印刷用3.9MB) 手技図譜【診察編】アップデートキット(低解像度版) (WEB用0.6MB)
★描きおろしねじ子の完全趣味のペーパー(無料配布)ねじ子webオフライン (0.8MB)
平成医療手技図譜【針モノ編】(※1,6) 800円
平成医療手技図譜【管モノ編】(※1,6)1000円
平成医療手技図譜【救命救急】(※2,6)1000円
☆(再版) ねじ子の【救命救急/ヒミツ手技2nd】ヒミツのアップデート (1.0MB) ↑2012夏コミにて無料配布したものです。
平成医療手技図譜【夜間外来】(※2)1000円
☆(再販)平成医療手技図譜【手術編】1000円(※3)
平成医療手技図譜【診察編】1000円(※4,6)
平成医療手技図譜【神経編】1000円(※5)
救外戦隊ネラレンジャーzero 600円(※6)
救外戦隊ネラレンジャー3rd 300円
ねじバッジ(全5種) 各100円
※1 『ねじ子のヒミツ手技 1st lesson』にほぼ収録されていますが、同人誌販売継続の要望も根強く、在庫分は販売継続します。 ※2 『ねじ子のヒミツ手技 2nd lesson』にほぼ収録されていますが、同人誌販売継続の要望も根強く、在庫分は販売継続します。 ※3 将来的には商業誌化する予定ですが、結構先になりそうですので、今回再販しました。 ※4 『ねじ子のぐっとくる体のみかた』にほぼ収録されていますが、在庫分は販売継続します。 ※5 『ねじ子のぐっとくる脳と神経のみかた』として2013秋に商業誌化予定ですが、在庫分は販売継続します。 ※6 在庫僅少です。在庫分までの販売の予定です(が…同人誌にもファンが多いから再販するかも)
とくに今回は【手術編】を多めに搬入しています。 商業誌化は結構先になりそうな本です。 (ネラレンジャーも当分同人誌のみです)
『ねじ子のぐっとくる体のみかた』の増刷が早々に決定しました。大変ありがたく思っております。
しかし増刷が決定したあとに、間違いを発見しました。あらま。
p123の肛門鏡の使い方です。右手にペンライトを持たないと、暗くて何も見えません。
訂正が間に合わなかったので、p123だけ掲載します。初版と第2版をお持ちの方は個人的に差し替えてください。
3刷以降は訂正が反映できると思います。
夏のコミケには間に合わないでしょうから、冬のコミケにでもお役立てくださいね。あ、違った。臨床現場でお役立て下さい。(2013/08/09)
ねじ子の新刊が出ます。
2013/7/29発売です(早い書店さんでは26日頃から店頭に並ぶとのことです)。
『ねじ子のぐっとくる体のみかた』 です。
よーするに、てっとり早い全身のチェック方法です。
専門用語で言うと「身体所見の取り方」の本になります。
もちろん医者(とその卵の皆さん)には、基本的な診察方法の本として使えます。ナースさんとパラメディカルの皆さんにとっても、全身状態のてっとり早いチェック方法(フィジカルアセスメントという言葉もありますね)として、わかりやすく書きました。カタログのように診察方法を並べている本はたくさんありますが、それだとなかなか覚えにくい&実際の感覚に直結しにくいと思うので、体のしくみと病気の成り立ちから考えるようにしています。
同人誌『平成医療手技図譜 診察編』を大幅に加筆修正した本です。当時入りきらなかった項部硬直と虫垂炎と「ケツの穴のみかた」こと直腸診を書き下ろしました。同人誌を持っている紳士淑女諸君は、そこだけでもチェックしてみて下さい。
さて、ブログタイトルが「新創世記ねじ子DX~新刊を迎えて~」であるからには、9期メンバーにあたる4人が新メンバー、もとい新刊として一気に加入することになります。一人目(フクちゃん)は『ねじ子のヒミツ手技 2nd 改訂版』、二人目(生田)は『ワナにはならない微分積分』、そして三人目(鞘師)はこの本です。次のお仕事は鈴木香音ちゃんにあたりますね。そんな妄想をすれば、この暑い中でも仕事にやる気が出るというものです。うふふ、頑張ります。(2013/7/23)
7月5日は最悪の日だった。ハロプロの新しいユニットJuice=Juiceの大塚愛菜ちゃんが突然脱退してしまったからだ。インディーズCDがいい曲で、そこそこ売れて、メジャーデビューの日程も決まり、なにもかもこれからだったのに。彼女は突然辞めてしまった。しかもその理由が「契約条件が親御さんとの間で合意に至らなかった」からだという。なんだそれ。まぁ、ハロプロの事務所が説明する「脱退理由」はいつだって適当だから――よく言えばいつも「優しい嘘」をつくから――今回も本当の理由がどこにあるのかはわからない。1年後くらいに「あぁ、実はこういうことだったのね」と腑に落ちるニュースが届くことも多い。そう、たとえ大塚ちゃんが半年後にAKB研修生になっていても、avexアイドルオーディション合格者一覧に名を連ねていても、Nゼロからデビューして大塚オレンジ愛菜になっていても、スマイル学園でファンと一緒にプールに浸かっていたとしても、別に驚かない。あ、最後のはさすがにちょっと驚くかも。正直言って理由なんかどうだっていい。もしこの発表が本当ならば 、「契約条件って一体なんだよ!」とか「14歳の子供の夢を親が砕くなよ!」とか「それでいいのか、つかぽん!モーニング娘。9期オーディション落選組から拾われて、ここまで3年間も研修生として頑張ってきたんじゃないのかよ!やっとデビューできるんだよ!なんで今、こんなタイミングで辞めるんだよ!!」とか、いろいろと思うことはある。でもそれも、どうだっていい。彼女がいなくなってしまったという事実だけがどうしようもなく悲しい。
ハロプロは源氏物語に似ている。様々なタイプの女性の人生を、少女時代からおばあちゃんになるまで何十年間もかけて見守ることができる。それが源氏物語およびハロプロの真の醍醐味である。素人からデビューして、山あり谷あり恋愛あり結婚あり出産あり休業あり復帰あり、人生色々ありながらも芸能界という特殊な環境で生きていく女性の姿をずっと見ていられる(事務所に首を切られることがない)。今の状態の矢口ですらも、ぶっちゃけすげぇ面白いと思っている。一部のヲタは苦々しく思っているだろうけれども、それでも決して見切らないのがハロプロでありハロヲタである。一度愛した女はどんなに不細工でも、身分が低くても、落ちぶれても、不倫でも、セックスをやらせてくれなくても、一生フォローして六条院に囲う光源氏によく似ている。ハロヲタというものは、たとえどんな外見であっても心は光源氏なのだ。そんな我々にとって最も辛いのはメンバーが急に辞めてしまうことである。この文章を読んでいる多くの皆さんにとっては「大塚愛菜って、マジで誰それ?」くらいの感情しか沸かないであろうことも、重々承知している。それでも私は彼女をすでに3年間楽しんでいたし、これからもむこう20年間は楽しむ予定だったのだ。
「はぁ、こういう急な辞め方した子は、他所さまから復帰してもあまり上手くいかないんだよねぇ。はぁ、歌上手かったのになぁ。はぁ、ハロプロで人気が出そうなタヌキ顔だったのになぁ。はぁ、『私が言う前に抱きしめなきゃね』の歌い出し最高だったのになぁ。はぁ、いやでも、大丈夫だ。私にはまだ、かなともとあーりーとウグイスがいる。あぁ、でも。はぁ、なんで」と真夜中のモニターの前でため息を連発していたら、なんだか自分がどんどん深い沼の底に沈んでいくようで、浮き上がってこられなくなった。私は昨日締切だったはずの原稿を仕上げなければならないのに。朝になったらレタスを切ってサラダを作ってご飯を盛って、夫と子供を送り出さなければいけないのに。梅雨の間にたまった洗濯物を完璧に洗って干して畳んでしまわなければいけないのに。どろどろの沼の底から這い上がることができない。でも「Juice=Juiceのつかぽんが辞めたショックで仕事が手につきません」と言ったところで(それは紛れもない事実なのだが)誰も取り合ってくれないだろう。そっと優しくパキシルを処方されるのがオチだ。私は明日からも、まっとうな大人の社会人として生きていかなくてはいけないのだ。
三次元の恨みは二次元で晴らせ。これがねじ子の処世術である。三次元で辛いことがあったら、さっさと二次元に飛べばいい。つかぽん脱退のショックで沈んだ深海からさっさと浮上するために、ねじ子は公開されたばかりの映画『劇場版銀魂 完結篇 万事屋よ永遠なれ』を見に行くことにした。しかもなるべく「聖地」と呼ばれるところで、熱いファンに囲まれながら見たい。私のぺしゃんこに潰れた心なんて、オタクの皆さんの溢れるリビドーで吹き飛ばしてほしい。と、いうわけで初日の池袋に行った。映画はとても面白く、ねじ子は深海から見事に浮上した。バック・トゥ・ザ・フューチャーの1・2・3をまとめて見たような、または小林靖子が得意とするタイム・パラドックスを用いた仮面ライダーのオールスター映画を見ているような、そんな充実感だった。①人気のキャラをすべて出す②でも主要キャラは誰も死なせない、なぜなら③本筋のストーリーに決定的な影響を及ぼす展開は御法度だから。④でもハラハラドキドキするストーリーと派手なバトルは必須で、⑤(ヒットした場合に備えて)必ず続編を作れるようにしておく。以上の要素を娯楽映画が満たそうとすると、どんな作品もオールライダー映画の如くならざるをえないのだろう。
それでも目を引く要素はいっぱいあった。歴史を変えるために未来からやって来たキャラクター達が戦ってタイム・パラドックスにより消滅する、という設定自体はよく見るが、あんな消え方は初めて見たこと。完結篇でありながら前日譚としても解釈できること。この映画のキーワードは三位一体で、入場者特典も三位一体フィルムだ。万事屋は銀時と新八と神楽で三位一体、真撰組は近藤と土方と沖田で三位一体、攘夷は桂と高杉と坂本で三位一体。その万事屋と真撰組と攘夷も、拮抗組織として三位一体。そして銀魂そのものもギャグとSFとチャンバラ・アクションの三位一体で、どれが欠けてもダメなこと。非常によくできているなぁ。
ねじ子の日本オタク大賞2013は今のところ『ジュエルペット きら☆デコッ!』と『帰ってきた特命戦隊ゴーバスターズVS動物戦隊ゴーバスターズ』の一騎打ちだったのだが、『坂田銀時×坂田銀時 MOVIE大戦アルティメイタム』おっと違った『劇場版銀魂 完結篇 万事屋よ永遠なれ』もそれに匹敵する出色の出来だった。ありがたい、これで明日も生きていける。あ、でも一言だけ言わせてくれ。変な病気にかかったと思ったら、5年間も一人で放浪してないでさっさとお医者さんに相談してね!たとえ現代医学では治らない病気だとわかっていても、病院には来てね!「その病気どこからもらってきた!この疫病神!」とか言って責めたりしないからさ、絶対に!感染症において「最初の一人」「最初の患者」の情報ってすげぇ大事なのよ!よろしくお願いします。(2013/7/21)
長らく入手困難となり、Amazonマーケットプレイスでは阿呆みたいな高値がついていた数学書『むずかしい微分積分』 が、装いも新たに技術評論社さんから復刊されます!やった!
2013/5/9発売です。文章を大上丈彦、漫画とイラストを森皆ねじ子が担当しています。
amazonはこちら
タイトルは『ワナにはまらない微分積分』 に変更になりました。
旧『むずかしい微分積分』はタイトルで客を3倍に増やした秀逸な本 だと思っていたので、旧タイトルが「会議を通らなかった」と聞いたときは正直、ショックでした。でも、その分たくさんの漫画を描き下ろして、いろいろな要素(オオカミさんの森の数学教室、ライバル組織の登場、表紙に漫画を載せちゃう等)を盛り込むことができたので、結果よかったと思っています。なお、『むずビブ』のタイトルに魅せ られていた旧版ファンのために、技術評論社さんが非っ常~に粋な計らいをしてくださいましたよー!『ワナにはまらない微分積分』をお買いあげの際は、ぜひ表紙カバーを取って、カバーの裏を確認してみてください。 大上センセイのファンならニヤリとできる仕掛けがほどこしてあります。
本の内容は微分積分、主に高2から高3の範囲です。そこからさらにテーラー展開やオイラーの式まで解説します。旧版が出たのはずいぶんと前ですが、今と なってはソフトバンク新書『マンガでわかる微分積分』の続編といってもいい内容になっています。『マンガでわかる微分積分』のさらに先を勉強したい!とい う方にもオススメです。ぜひどうぞ。
さて、旧『むずかしい微分積分』は私のイラストデビュー作でした。当時はまだアナログ絵描きで、勉強の合間に(勉強しているふりをしながら)医師国家試験の勉強に使っていた京大式情報カードに絵を描いていました。
適当に描いた、いや違った、気合い入れて描いたけど非常に間の抜けた オオカミとヤギの絵が、むずかしい数学書の表紙に選ばれて非常に驚いた記憶があります。いやはや。あれから10年が経ち、私もまだ漫画を描くことができていて、装いも新たな復刊にたくさんの漫画とイラストを描きおろすことができたことを心から嬉しく思っています。(2013.05.02)
遅報で大変申し訳ないが、『マンガでわかる微分積分』のタイ版が出ている。
タイは、ハロープロジェクトの人気が妙に高い国だ。特にBerryz工房が大人気で、下手すると日本本国よりも人気がある。 まずはこれ↓。どちらも、タイの国民的ヒット曲をBerryz工房がカバーした名曲。
VIDEO VIDEO
そしてこれ↓。タイで行われている日本文化関連イベント(J-TRENDS IN TOWN)で披露されたものらしい。モーニング娘。の『One・Two・Three』だ。この曲は世界中の好事家にダンスカバーされている。その中でも最も魅力的な「踊ってみた」動画だ。センターで踊る鞘師パートの男性がキレキレで最高だ。その横のデブゴン、じゃなかった石田パートの男性もテンション高くてイイね!
VIDEO
『マンガでわかる微分積分』の初版は2007年12月だった。ねじ子は漫画の中に、モーニング娘。のネタを3カ所入れた。当時、モーニング娘。はとっくに時代遅れで、ゴシップまみれだった。2007年といえば、加護ちゃんが2回目の喫煙でクビになり、モーニング娘。に中国人が加入し、辻ちゃんがデキ婚し、ミキティが庄司とフライデーされモーニング娘。を脱退し、飯田さんもデキ婚発表の翌日に伝説のバスツアーを行い、ゴマキの弟が強盗で逮捕され、そのせいでゴマキがハロプロを卒業した年だ。ファンの間では「ハロプロ崩壊の年」として今も語られている。それでも私は、モーニング娘。のネタを仕込んだ。だって大好きだったから。クオリティは高いと信じていたから。もう、周囲から「なんで今さら?」という顔すらされなかった。特殊な趣味の変人として、遠巻きに見られていた。Crazy完全な大人である。しかも孤立状態だ。
微分積分は風化しないが、芸能ネタは風化する。時間がたつと、その芸能人の持っている「前提」が失われて、または変質して、面白さが通じなくなっていくのだ。だから「マンガに芸能ネタを入れてはいけない」と古くから言われている。私が仕込んだモーニング娘。のネタも、時代とともに風化して、書き直しが必要になっていくのだろうと思っていた。私自身ですら。
ところが現実は、当時においてすら無駄と思えたモーニング娘。の小ネタが、翻訳された外国においても「そのまま通じる」時代がやって来た。こんなこと、考えてもいなかった。あぁ、モーニング娘。は不死鳥のように復活した!外国にそのまま持っていくことさえ、できる!! 森光子さんのネタはどう翻訳されてどう解釈されているのか、まったくわからなくて不安だというのに!ていうか、森さん死んじゃったよ!どうしよう!!
タイのハロプロファンの皆さん、私のネタ届いてますか?タイの読者の中で、一人でもクスッと笑ってくれる方がいたなら、ねじ子は幸福に包まれながら永遠の眠りにつくことができます。あっ、まだ死んでる場合じゃなかったな。モーニング娘。の次のステージを見届けなくては。『マンガでわかる微分積分』文章担当の大上丈彦先生は、モーニング娘。9期が入ってすぐのフジテレビ「FNS歌謡祭」において(AKB・K-POPの口パク集団無双の中、モーニング娘。OGたちのバックダンサーで、未だにLOVEマシーンを歌わされる屈辱を受けていた中で)一瞬だけ前に出た鞘師里保を見た瞬間に「大丈夫だよ、モーニング娘。はまた売れる。間違いない。この子はすごい」と断言していたけれど。私はファンゆえに目が曇っていて、まだそこまで楽観視できていない。でも控えめに、「モーニング娘。はびっくりするほど持ち直してきたなぁ!」 と思っている。コンサートチケットが全然取れなくなった。池袋サンシャイン噴水広場の新曲リリースイベントも、以前なら仕事終わりにふらっと寄ればイベントもよく見れたし握手券付きCDも買えたのに、今はもう無理だ。朝から場所取りしていないと満足に見られない。困る。でも、嬉しい。私は今でもCrazyで完全な大人だけど、孤立状態ではなくなった。
シングル『Help me!』俺コンランキング一位、本当におめでとう。あ、違った。『Help me!』ロリコンランキング一位、本当におめでとう。あ、これも違った。『Help me!』オリコンランキング一位、本当におめでとう。新曲の『ブレインストーミング/君さえ居れば何も要らない』も一位になることを願っている。(2013.04.18)
3月22日、『ねじ子のヒミツ手技2nd 改訂版』 が出ました!
amazonはこちら 、 楽天はこちら
表紙の刺繍が変わったよ!
※本当はエヴァンゲリオンオマージュの帯を作ろうと思ったんですが、デザイナーさんがあまりに上手くてボツになりました。「似すぎ」という理由で。上手すぎることも、時として罪なのですね。
もちろん中身も変わりました。心肺蘇生法ガイドライン2010に対応した内容になっています。「心肺蘇生はいろいろあるけど、心マがなにより大事!よくわからんときは、ただ、胸を押せ!ジャストドゥーイット!!」 という「心肺蘇生の大筋」 は、なんら変わっていません。ねじ子が同人誌時代から主張していたことです。でも細かいポイントがちょこまかと変更になったので、私もそれに合わせてちょこまかと変えていたら、集計すると結構な大工事になりました。新たな書き下ろし (「小児の心肺蘇生」「松葉杖のセッティング」など)も入れています。第一版をすでにもっている方が新たに二冊目として買っても、勉強になると思います。ぜひご覧ください。
さらに、今月のナース専科本誌(4月号)の表紙・巻頭特集にも、ねじ子とパンダが登場しています。採血・注射・点滴の特集です。新人が増える4月にふさわしい内容になっています。ぜひご覧ください。
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