一家に一台
チェルノブイリのお母さんが一番欲しがったのも、カウンターだそうです。
スーパーの生鮮食品売り場にも、ぜひ一台置いて下さい。
放射線値が低ければ、福島産だろうが茨城産だろうが、安心して買います。2011/3/27
馬鹿ばかしさの真っ只中で犬死にしないための方法
東京で自分と自分の子供を守るためにはどうしたらいいか、毎日ギリギリの判断をしています。ICUで患者さんを見守っている時のように。刻々と変わる状況の中、平時に比べればかなり最低な選択肢ばかりの中から、せめて最善と思われる一手を探す。その決断を、新しいデータが出るたびに繰り返す。かかっているのは自分と、子供の健康。ICUの患者さんには、死亡もしくは退院という「終わり」が必ず来るけれども、今回は「終わり」が見えませんね。たぶん、数ヶ月から数年は続くことでしょう。あー、疲れた。
医者の中にも「救急に向いている人」と「向いていない人」がいるように、この危機的状況には「向いている人」と「向いていない人」がいます。向いていない人は、決して無理をしてはいけません。とても対応しきれません。「気にしぃ」な人に「大丈夫」という言葉はもう無効ですから(大本営と東京電力のグズグズ後出しジャンケン発表が、そうさせました…非常に残念です…)安息を得るためには、耳を閉じて情報をシャットダウンするか、西に逃げるしかありません。しかしどちらも、この現代社会では非常に難しい。こりゃ袋小路です。首都圏でうつ病の患者さんが今後急増することだけは間違いありません。下手すると、放射能そのものによる健康被害よりも、ストレスによる健康被害の方が大きくなりそうです。後世の医者に、「放射能うつ」とでも名付けられるのでしょうか。
ちなみにねじ子は、馬鹿ばかしさの真っ只中で犬死にしないために、こんな時こそエロ満載の同人誌とか読んでますよ。どうせだからこの機会に、よしながふみ先生の買いそびれていた同人誌を全部買おうかと思っているくらいです。こんな時こそ、趣味。こんなときこそ、いつもやっている娯楽を、きっちりやろうぜ。それが陰鬱を避ける、唯一の方法だよ。現実逃避ばんざい!
東京都の水道に対する対応をねじ子は支持します。
迅速かつ、極めて科学的な対応だと思います。一日で元に戻るのも、迅速で科学的な証拠です。採血データが良くなったら、昨日と今日で治療方針が変わるのは、当たり前のことですから。今後、雨のたびに各地でこんなことが起こるんだろうなぁ。はあ…。(2010/3/25)
そろそろ春が来るんでしょ?
はやく桜が咲いてほしい。(2010/3/25)
放射線まんが その3
度重なる緊急地震速報と余震と地震酔いと計画停電とラッシュといつまでも終わらなそうな放射能汚染のニュースで、もうどうにも陰鬱でたまらない首都圏の皆さん、こんにちは。私もです!震災当日から沸騰しているアドレナリンも、そろそろ枯渇してきました!!
抑うつの対策に、「光」は非常に重要です。朝の光を浴びましょう。放射性物質が怖い!という方は、屋外に出なくても、ガラス越しでかまいません。カーテンを開けて、日の光を部屋に入れましょう。つーか私自身が、節電のために照明が暗い&エアコンなしで寒いのでカーテンを閉めきって生活をしていたら、なんか気分が非っ常ーに滅入りました。光って重要です。日の光を浴びましょう。レッツ光合成。
サルまんをねじ子は心から尊敬しております
サルまんにて「ページ100万」として紹介された漫画を今、思い出します。
サルまんの主人公の二人(相原さんと竹熊さん)は、「奥さま生活百科 ~とっても安全でクリーンな原子力発電~」というタイトルで
母「ほーら、このプルトニウムだってゴハンにかけて食べても全然平気なのヨ!」
子「うわーっ 原発って本当に安全なんだネ!」
というマンガを描いて原子力発電所にプレゼンしに行ったものの、ボツになります。
相原「ボツになるとは…」
竹熊「やはり、あまりにも安全を強調しすぎたのが、かえって逆効果だったか…」
あり得なすぎるブラックジョークとして存在していたネタが、まさか現実になるとは。
ヨウ素131入りのお水でご飯を炊きながら、ねじ子はマンガを描くのでした。
責任をとるとはどういうことか
福島第一原発内で現在作業されている方々は、発表されている放射線量と、距離と、滞在時間を考えると、長期的視野において健康上かなりヤバイ段階であることは想像に難くありません。総勢何人で、どのような環境で防護され、何交代制なのかなど、具体的なことが発表されていないので詳細はわかりませんが。(何故発表しないのか不思議です。彼らの健康問題は原発の今後のコントロールに直結した問題でしょうに。)
彼らが命を懸けて頑張っている理由の一つは、関係ない人たち(地域住民)を逃がす時間を稼ぐことです。原発はもう使いものにならず、放射性物質の量と半減期を考えれば、半径何十kmが何百年間と人の入れない土地になることは、もう決定しています。それでも、彼らは命を懸けて時間を稼いでくれているのです。自衛隊や消防隊員もそうです。頭が下がります。貴重な時間です。なぜ、その間に避難範囲を広げないのでしょうか。海外の避難範囲と日本の避難範囲が違う根拠が、何も発表されていません。根拠があるならそれを開示してください。ただ大丈夫と言っているだけでは、誰も納得しません。放射線被爆は、「距離」と濃度の濃い場所にいた「滞在時間」が最も重要です。過大評価なら過大評価で、いいじゃありませんか。健康と安全に関しては過剰防衛くらいの方が良いのです。諸外国が言っているように80kmではなくても、何故せめて30kmを40kmにしない?50kmにしない?何故?まさか訴訟に備えているのか?そしてなぜ保安院の天下りの皆さんはとっとと50km離れたところにいるのか?自分たちの表明が正しく、諸外国が間違っているというのなら、20km地点の「屋内」にいるべきなのに。大いなる疑問です。単純に離れるだけで、何の罪もない地域住民の「発癌の危険性が減る」ことは明らかなのに。
現場作業員が命を懸けて作ってくれている、貴重な時間を無駄にしてはいけません。私の患者さんで、半径50km圏内に居住していて、妊婦さんまたは小さい子供のいる方がいらっしゃったら、私は医者として「逃げられるのならば50km圏内から逃げて下さい」「短期的には問題ありませんが、長期的にはお子さんの発癌リスクが上がります」と伝えます。東京の患者さんなら、「逃げる必要は現段階ではありません。安心して下さい」と言います。それが私の医者としての責任です。(2011/3/20)
(追記 2011/3/20)
海外(アメリカ)の避難範囲が80km(50mile)というのは、大前先生の説明(http://www.youtube.com/watch?v=8GqwgVy9iN0&feature=youtu.be)
によると、ガイドラインによるものだ、と。日本の避難範囲は、状況を分析した結果だ、とのことです。ありがとうございます大前先生、やっと話がわかりました!基準が二つあったら、「どちらかが正しくてどちらかが間違い」みたいな話になってしまいますが、そうではないのですね。それならば、日本の避難範囲は「現時点においては」妥当であるという、東大の放射線チームの分析も、海外の諸機関のコメントも、納得できるものになります。
しかし屋内待避には限界はあります。屋内待避の人には援助物資もろくに届かず、病院には援軍もなく(屋内待避の指示が出ているような地域への援軍の希望者はいないでしょう)孤立していきます。そんな状態でいつまで屋内待避していればいいの?数日?数週間?数ヶ月?数年?食料も尽きるでしょうし、子どもは飽きるでしょう。屋内待避の地域の皆さん、いや、やはり「私の家族」「私の患者」なら、50km圏内の妊婦さんと子供には、その圏内からの脱出を勧めちゃうなー。自分の患者さんなら、「現時点では大丈夫」ではなくて、「起こりうる最大の被害」を考えてあげたいから。もちろん、今すぐ慌てて着の身着のまま逃げる必要はなく、したがってパニックになる必要はありません。大事なものをまとめる時間は十分にあります。そのことは「屋内待避」という勧告が証明してくれています。
信用がなくなった医者の言うことを聞く患者はいない。
原発が使えなくなることを避けるために海水冷却を拒み、海外の援助を拒否し、もうダメと確信したら逃げようとしていた東京電力上層部および、この期に及んでレベル5という過小評価をし(スリーマイル島に失礼)、NHKで原発爆発の映像が出た直後(土曜日)から解説員が言っていた「自宅待避区域で屋外に出たときの対処法」をなぜか今更嬉々として発表する原子力安全保安院が、どうしようもないクズなのはもう決定的事項として、今回は「政府の大本営発表」がどう駄目だったかについて書きたいと思います。
医療における隠語に「死にますムンテラ」というものがあります。ムンテラとは、医療情報を患者さんに説明すること。重症の患者が来たときに、「この患者はこのままでは死にます」と家族に最初に説明することを「死にますムンテラ」と言います。「考え得る最低の事態」を、最初に覚悟しておいてもらうのです。もちろん、実際そのまま放置すれば死ぬような状態の時だけ、これを言います。すると、ご家族は最悪の想定からスタートしてくれるので、どんな状態で落ち着いたとしても、その結果を納得してくれます。
しかし、最初に「たいしたことないですよ」「きっと治りますよ」などの過小評価した文言を言ってしまうと、その後、どんなに努力した最前の結果であっても、患者さんやその家族は、その結果に納得しません。障害が残ったりすると特に、「もっとよい結果があったのではないか」「藪医者だったのではないか」「ひょっとして医療ミスがあったのではないか」と考えるのです。医療の説明とは、そういうものです。過小評価や希望的観測や優しい嘘は、よけいな不信の元になります。癌の告知や余命の告知だって、今時は、ほぼ全例で「患者さん本人」に行います。それで取り乱す人は、実はそれほどいません。患者さんはみな、我々医者が思うよりずっと、知的で理性的なのです。
今回の原発放射能漏れとそれに関わる被曝問題の「説明」は、まさに「生命に関わる重大な問題」を「ムンテラする」ことに似ていました。大前さんのyoutubeの解説によれば、おそらく、津波で電源がさらわれた時=つまり土曜日の段階から、この結末は想定されています。「最悪の事態」がどういう状態かも、その頃からわかっているのでしょう。原発はもう使いものにならず、放射性物質の量と半減期を考えれば、半径何十kmが何百年間と人の入れない土地になり、周辺の農作物は食べることができなくなり、東日本の第一次産業は壊滅的打撃をうけることは、もう決定しています。それ以上は今後次第。ねじ子はそれくらいで解釈しています。とにかく最初から「最悪の想定」を言うべきでした。
しかし実際は、枝野さんも東京電力も原子力保安院も、会見において、最初に何の根拠も示さずに「大丈夫」と言ってしまいました。これでは、例えどんなに頑張っているにしても、どんどん状況が悪化しているように見えてしまいます。これは不安を増強する形になる、最低の説明方法です。こと健康に関して、最初にまず「大丈夫」と言ってしまうのは、非常にマズイのです。医者がこれをやると、徹夜で頑張って最前の手を尽くしたのに、こちらは何のミスもしていないのに、患者さんとその家族からは感謝もされず、何を言っても信じてもらえず、逆に恨まれ、裁判に訴えられる結果になります。未来を予測できなかった藪医者=つまり能力が著しく低いか、何らかのミスがあって想定外の事態に陥った、と判断されてしまうのです。最悪です。「官僚答弁」は、責任の所在を巧妙にぼかしながら、確定したことだけを言います。これは「緊急時の医療の説明」には全くもって向かないのです。それに気が付くのが遅すぎました。日本人は官僚が考えているよりもずっと賢いです。「最悪の想定」を言ってもパニックになどなりません。むしろ正確な情報を与えれば、あっというまに冷静で正確な対応をします。想像以上の商品を作ったりもします。各地のガイガーカウンタのまとめがすでにweb上にあり、原発からの距離測定iphoneアプリがすでにあるように。本来は、原発の建屋がまだピカピカのうちに、「これはチェルノブイリ並になる可能性がある。だからチェルノブイリ並みの対応をとる。」と宣言するべきでした。「可能性がある」なら、間違っていません。最初は患者さんは「えー、大げさだなー」と言います。でも、どんどんその通りになっていく現状を見て、「この先生の言う通りになった…すごい…この先生は信頼できる…」と思ってもらえるのです。そうやって信頼を作っていくのです。
国際的な放射能漏れ事故での対応でも、(チェルノブイリで公然として行われた)「過小評価」と「周辺住民への情報の隠蔽」が、最も唾棄すべき行為として認識されているというのに、今回の東京電力の行ったことはまさに「過小評価」と「情報隠蔽」でした。チェルノブイリではその不信からグラスノスチ(情報公開)が起こり、結果としてソ連という大国が消滅しました。天災では国は滅びませんが、人災で国は滅ぶのです。
いわき市に救援が来ないと、NHKで住民が悲鳴を上げていました。30km以上離れている地区なのに、もうそこを安全だと誰も思っていないのです。もう、国の発表を信じてないのです。そんな大本営を信じられる幸福な時代は終わりました。国民の知識はもっとずっと上です。福島の県民は自主的に避難を始め、関東の自治体はその受け入れを粛々と進めています。日本の「20~30kmは自宅待機」ではなく、海外の避難基準「避難範囲80km」を、みんな信じているのです。どちらが科学的に正しいか、そんなことはどうでもいいのです。「もう現場では、日本政府の言うことを誰も信じていない。」これがすべてです。この瞬間、日本の政府は、日本人の安全と健康を守ってくれる「主治医」ではなくなったのです。患者さんから、主治医として「失格」だと判定されたのです。こんな恐ろしいことがあるでしょうか。政府の大本営発表を国民がまったく信じなくなる時代を、この目で見られる時が来るとは、正直思っていませんでした。戦争の追体験をしている気持ちです。(2011/3/20)