2024年 ねじ子の俺コンランキング
1位 click / ME:I
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コール&レスポンスが気持ちいい名曲。最初のワンフレーズにこの曲の魅力が詰まっている。
センターで桃奈が振り向いて「おっおー♪」 オタク「おっおー!」 桃奈「君の声がする♪」(にっこり笑顔)
単純明快なコール&レスポンスだ。フェスなど、一見のお客さんでも声を出せる。歌詞も素晴らしい。ステージの上のアイドルと客席の自分がはっきりとつながる内容 なのだ。非常に気持ちがいい最高の「入り」だ。ハロプロというコール&アンドレスポンスの巨大キングダムからやって来た海賊・桃奈が、堂々とした笑顔で観客を迎え入れるところもよい。ここの桃奈、観客に「君の声めっちゃ聞こえるよ!よくできたね!」って顔してるんだよね。すごくいい笑顔してるの。日プ女子全体を貫いていたステージ哲学である「最初の5秒で観客を掴む」 が体現されているところもよい。
このあとに続く 心菜の「のっくのーっく♪」 オタク「のっくのっく!」 心菜「未知のドア開けて♪」(ドアを両手で開ける動きを真顔でやる)
もいい。最初の「おっおー」で入りそびれた初見の客も、すぐに学習してここで一緒に叫ぶことができる。一年前は伊勢の田んぼのあぜ道を歩いていた心菜が、現在進行形で未知のドアをひとつひとつ開けているんだろうな、という心象風景がこちらにも伝わってくる。コール&レスポンスの大ベテラン桃奈からド新人の心菜へ受け継がれるところもいい対比だ。
他にも「まむまみあーい」はとても叫びやすいコールだし、自然発生した「ミャイミャイ」も叫びやすい。私はハロプロ育ちなので、自然発生して生き残ったコールこそ「いいもの」だと思っている。だってそれは観客の魂の叫びだから。「ミャイミャイ」は公式のコールではないのかもしれないけれど、私は好きだ。大好きだ。それに対して、順番にメンバーの名前を叫ぶ間奏のコールは(空白のリズムを埋めるものではなく)観客がメインボーカルをやらされることになるので、あまり気持ちよさがない。勉強しなくちゃいけないし、義務感が強くなってしまう。まあ勉強してコールするんだけれども。
オタクのコールの話、ここまで。
さて、私がこの曲を初めて聴いたのはドコモGALAXYのCMであった。CMではサビのみが繰り返されており、当初は「耳なじみよく聴きやすい。くり返しBGMとして流れるのに特化しており強いインパクトを残す意図はない」という印象を受けた。
その後ハロヲタの間で話題になっていたYoutube動画を見て、私は衝撃を受けた。
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これは美しい。まずシンプルに画質が高い。普通に4Kだ。セットもCGも豪華で手間がかかっており、映像作品として楽しい。めっちゃ金がかかってる。加工なのかフィルターなのかメイク技術が高いのか——あるいはその全てなのか——とにかく全員がとびきり美しくうつっている。字幕も違う。パートを歌っている子の名前と歌詞が、右下端に同時に出る。これもすごくいい。「いま歌ってたの誰!?」「いま映った可愛い子誰?」という疑問にすぐに答えてくれる。非常にわかりやすい。カメラアングルも多彩で、さらにその一つ一つがYoutubeにあがる。これが無料で、いつでも、世界中どこからでも見られるのだ。
サービスがいい。よすぎる。なんだこれ。
世のドルオタが「韓国の音楽番組は日本とぜんぜん違う。比較にならないほどレベルが高い」と言っていた理由を、私はこのとき初めて理解した。今の若い女子アイドルが韓国音楽番組に出演するのを夢見る理由もわかった。この映像がYoutubeに上がって、世界中の人が瞬時に、無料で、くり返し見ることができるのだ。しかも消えることがない。半永久的に、くり返し何度も見られる「作品」が残るのだ。これはアイドル本人にとっても嬉しいだろう。
日本のテレビ音楽番組はこれに比べてどうだろうか。画質は低く、カメラワークも決してよくない。一番最悪なのはフルじゃないことだ。奇妙な省略を食らって、フルで歌わせてもらえない。一番とサビだけだったりするんだよね、何なんだあれ。トークや過去VTR上映会してる時間を削って全員フルで歌えばいいのに!と何度も思う。でも決してそうはならない。字幕で歌詞が出ていても、パート割りはわからない。照明が暗く、セットも何もない。もちろんネットには上がらない。上がってもTverのみの期間限定だったりする。もちろんここに貼れるような合法動画もない。再放送もない。見逃したらおしまい。そのくせ2時間の番組中で推しの歌の時間はたった2分程度なのだ。馬鹿馬鹿しい、付き合ってられないよ。ああ、日本と韓国で音楽番組のクオリティにこんなに差が付いてしまっていたのか……。
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韓国音楽番組最大の売りは、一人一人をずっと専用カメラで追う「ソロアングル」である。これを「チッケム」と呼ぶ。全員分のチッケムがYoutubeにあがる。これは嬉しい。推しメンのチッケムはずっと見ていられる。
これは先にハロプロがやっていたことだ。ハロプロのソロアングルは2006年にはすでに存在していた。「鞘師里保ソロアングルDVD」というような名前で、各メンバーのソロアングルがファンクラブ限定でDVD発売されていた。私も鞘師や香音ちゃんのソロアングルが好きで、よく見ていた。それらは海外のファンに非常に人気が高く、動画サイトにも(無断で)よくあがり好評を博していた。
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※参照商品
FC限定 Berryz工房 夏焼雅 ソロアングル ハロプロ 大運動会&ライヴ 2006 スポーツフェスティバル (amazon)
9枚組ソロDVD BOX「モーニング娘。コンサートツアー2007秋 ボン キュッ! ボン キュッ! BOMB」SOLO BOX(ヤフオク)
ソロDVD BOX モーニング娘。コンサートツアー2008秋 リゾナント LIVE (メルカリ)
鞘師里保 on ソロアングルDVD モーニング娘。 2011 春 新創世記 ファンタジーDX~9期メンを迎えて~ (ヤフオク)
日本のファンはコンサート現場に行けば推しだけを見ていられる。目でソロアングルできる。でも、現場に行けないファンはどうしたらいいのか。メインカメラはパートを歌っているメンバーのみを抜く。すると事務所に推されていない、歌割のないメンバーのファンは推しの姿を見ることさえできないのだ。そんなメンバーのファンにとってソロアングルDVDは光明であり、命綱だった。推しの可愛い顔とパフォーマンスがずっと見られる、まさに夢のような時間を得られるのである。特に海外のハロオタにソロアングルは大好評だった。
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↑海外ファンのコメントが多かった鈴木香音ちゃんのソロアングル『彼と一緒にお店がしたい!』。私も500回くらい見た。
チッケムってさ、ソロアングルDVDなんだよ……。ハロプロが先にやって、すでに先細ってしまったやつなんだ……。ハロプロっていつもそう!普段着でのダンス練習映像を公開するのもそう!今はダンスプラクティテス動画って呼ばれてるけど、モー娘。がASAYAN時代から見せてるやつ!戦隊みたいな色分け女子アイドルもそう!私カワイイアイドルもそう!全部ハロプロがかなり先にちょろっとやって、貫かなかったアイディアなんだ……。
話を元に戻そう。韓国音楽番組の映像のクオリティの高さに驚いて、私は『click』を聴き始めた。日本の地上波音楽番組にME:Iが次々と出るのも見た。その中で生歌論争が行われているのを確認した私は、ようやくME:Iに興味を持ち、始まりのオーディションである日プ女子を視聴し始めた。この後の流れはこちら に続く。
オーディションを見終わった後で、clickのMVを改めて見た。
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なんだこれ。 よくわからない謎の映像だ。
日プ女子からのファンがデビュー曲に文句を言っている理由が、ここでようやくわかった。なるほど確かにこのMVは謎に満ちている。意図がわからない映像が随所に差し込まれているし、不思議な衣装が多い。
私なりにMVを読み解いてみた。まず、オーディション中の公約として、オーディション一位がデビュー曲のセンターになることは決まっている。MVの制作は韓国だ。韓国の制作陣がオーディション1位通過の笠原桃奈をフューチャーするにあたり、どんなイメージが浮かんだか。それは「笠」であり「桃」であり「武士のような女の子」であったと推測する。だから「笠=傘」で「桃色=ピンク」の傘を、剣客のように振り回すことになった。そう私はとらえた。グループのイメージカラーにも合う。ピンクの傘を忍者の刀のように背負った制服姿の桃奈が、剣に見立てて傘を振り回し、仲間を雨粒から守る。これが制作陣の一番伝えたいイメージだったのではないだろうか。
次にダンスブレイクを目立たせたい。あと謎の猫も目立たせたい。あ、あと未来のアイドルって設定もあったわ!それも入れよ!じゃあ未来っぽい宇宙空間やコールドスリープで!よっしゃオーダー全部入れたるわ!……とした結果、一気につめこみすぎた のではないだろうか。そんな印象を受けた。混ぜすぎ。
そして私のこの超考察をもってしても、ピンクデカリボンとピンク毛玉猫耳車の意味はまったくわからない。なんだあれ。何を伝えたいのか?意図がわからないのでコメントのしようがない。わかったら誰か教えてください。
『click』の謎のおっさんが変身した猫ことミャイがメンバーよりも分量を取った結果ファンの怒りを買い、次のシングルのオープニングで森に捨てられたのにはちょっと笑ってしまった。気持ちわかる。でもさーメンバーが拾っちゃうからさー。もー、捨て猫を安易に拾っちゃダメって言ってるでしょ!異世界に飛ばされてるじゃん!奇妙な祭りに参加させられてるじゃん!トリップさせられてない?変な夢を見させられてハイになって踊らされてない?大丈夫?
2nd single “Hi Five“
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2位 はいよろこんで / こっちのけんと
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2014年の日本において最も全世代に聴かれた一曲だと思う。子どもたちもこの曲大好き。けんとさんのことも大好き。もちろん彼らは『仮面ライダーW』も大好きでフィリップも大好きだったので、けんとさんがフィリップの弟さんだと知って驚いていた。もちろんそんなことは一切関係なく『はいよろこんで』は名曲である。MVのイラストもいい(かねひさ和哉さん作)。
「鳴らせ君の3から6マス」の「3から6マス」は心電図の正常範囲の値であるというけんとさんのコメントを聞いて驚いた。たしかにそうだ。あまり認識したことはなかったが、RR間隔が「大きいマスで」3から6が正常範囲である。それ以下だと頻脈、それ以上だと徐脈。リズム自体が狂っていたら不整脈である。なるほど。その後に続く「トントンツートントントンツーツー」はモールス信号のSOSである。
つまりこの曲は、「はいよろこんで あなた方のために」を強くしいられて過剰サービスさせられている社会人が、自分の心拍がおかしくなる前に他人に助けを求めろ、という啓蒙の歌なのである。心と体が壊れる前にSOSを鳴らせ! という強いメッセージだ。「ブラック企業やブラック要求からは全力で逃げろ!」と魂で叫んでいると言ってもいい。精神疾患を自ら公表しているけんとさんが歌うからこそ、この曲の説得力は増す。歌詞に強い社会性がある。
……十数年前、私や息子がフィリップの出世にキャッキャと喜んでいる間に、けんとさんは有名人の弟として人知れず苦しんでいたのかもしれない。それに気付いて私は胸が痛い。
ハロプロのアイドルも、自分がデビューしたことによって(自分ではなく)親や兄弟の人生が180度変わってしまったことに苦悩する子が多かった。自分は夢を追って覚悟を持って「人に見られる」仕事を選んだ。だから理不尽にも納得できる。でも、家族はそうではない。それなのに現実では、家族も一緒に喧騒に巻き込まれてしまう。 芸能事務所に守られるわけでもなければ、将来や収入が約束されているわけでもないのに。なんのメリットもないのに有名税だけはたっぷりと支払わされてしまうのだ。なんたる理不尽だろう。
それでも、それでも両親は大人だからまだいい。小さい弟や妹の人生が自分のせいで変わってしまったこと、苦労をかけてしまったことに苦しむハロメンはたくさんいた。若いうちの急なスポットライト にはそのような弊害がつきまとう。ハロプロ以外の事務所が低年齢大所帯アイドルから手を引いている理由は、そんなところにもあるのかもしれない。まぁハロプロは相変わらず女子小学生大量捕獲 なんですけどねガハハ。
これからのけんとさんの道が光あふれる幸福で満ちていることを願っている。
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さて突然だが、けんとさんは12人目のME:I である。ヒットの時期がかぶっていたこともあり、音楽番組共演やtiktokダンスコラボも多かった。どちらも新参者でジャンルがかぶっていないこともあり、アウェイな環境で共演するたびにお互いの心を支え合っていることが伝わってきた。それはまるでテレビという生き馬の目を抜く戦場における唯一の戦友のようであった。何より、けんとさんは優しい。本当に優しい。既婚者だからガチ恋オタクも安心だ。緑のメンバーカラーも空いている。めがねをかけた緑色のミャイのイラストを描いてるミーアイおたくもたくさんいる。我々ユーミーはけんとさんのことを12人目のME:Iとして歓迎している。いつか曲を書いて欲しい。可愛いけど少しだけ社会的な歌詞でよろしく。
3位 FUN☆FUN☆わんだふるDAYS! / わんだふるぷりきゅあ!エンディング
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『わんだふるぷりきゅあ!』は素晴らしかった。飼い犬が突然変身して主役プリキュアになる第1話には度肝を抜かれた。「お前が主役なのかい!」とリアルに叫んだ。そして、この設定は意外にもよかった。
一般的に犬の知能は人間の2~3歳程度だときく。ちょうど子どもがプリキュアデビューする年齢である。主人公はいつも初めての体験に無邪気に喜び、中学生女子はあまりやらない行為をして、周囲を振り回す。これがとても愛らしく感じる。
周囲を振り回す猪突猛進型の主人公はヒーローものの脚本でよく使われる。物語がよく回るからだ。しかし、主人公が馬鹿すぎたり考えなしで動きすぎると、それはそれでつらい。見ていていらいらしてしまう。「主人公が犬」はこの問題をよく解消してくれた。犬だから飼い主が大好きなのも当然だし、日常生活で知らないことが多いのも当たり前だし、世の中のことがよくわからずに突っ走ってしまうのもうなずける。自然に思える。ヘイトが湧かない。いわゆる「馬鹿レッド」 と言われる型の英雄譚において、主人公にヘイトをためない 効果的なやり方なのだ。これは『パウ・パトロール』の世界的大成功によって発見された手法であり、プリキュアでもとても上手くいったと思う。
もう一組のプリキュアペアは、猫と飼い主である。すました美少女の白猫と、耳年増の同級生少女。この組み合わせもとてもよかった。おもちゃの売上的に追加戦士がいないことが心配だったけど、売上もよかったようだ。ストーリーの面白さと売り上げが比例していると安心する。
さらにもう一組の追加ペアは、ペットのウサギと男子である。ウサギと男子は番外戦士枠で、映画でしか変身しなかったけれど、それでも嬉しかった。ヒロプリ(ヒーローになることがテーマ)とわんぷり(動物と人間の絆がテーマ)は男女ともに人気があるモチーフだったので、男子が家にいる親としてはありがたかった。親子で楽しく観ることができたから。
ちなみにこの男子と準主役の女の子が物語中で早々にカップル になった。これもよかった。女児向けの少女漫画の恋愛描写は「付き合うこと」がゴールに設定されているけれど、実際の人生はその後の方がずっと長い。付き合うのってただの始まりだからねー。本当はその後の方がずっと重要なのに、そこはなかなか描写されない。カップル成立したら終わり!いっちょあがり!解散!ではなく、付き合った「その後」の生活をきちんと描写してくれたことが新鮮で嬉しかったです。
あっそうそう、ペットとの死別とそこからの再生 を描いた点もよかった。
4位 It’s Going Down Now / 高橋あず美・Lotus Juice
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『ペルソナ 3 リロード』の先制戦闘曲。アトラスサウンドチーム作。ボーカルは高橋あず美さん、ラップはLotus Juiceさん。ライブverはこちら。
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「あれ?後ろに見慣れたロゴマークがあるな」と思って目を凝らして見たらコットンクラブって書いてあった。親の顔より見たロゴじゃん 。ハロプロ運営ジャズライブハウス・コットンクラブ。正確にはハロプロ関連会社の株式会社コットンクラブジャパン運営ライブハウス。初めて訪れた土地のはずなんだが?なんで実家に到着してんの?
コットンクラブは生演奏と生歌に特化した会場である。音響も最高だ。立地がよく飯もうまい。スタッフの経験値も高い。それは保証する。でもまじかよ!海外のオタクにめっちゃ喜ばれてるじゃん!
私は『ペルソナ 5』からペルソナシリーズに入った新参者である。名作の誉れ高い『ペルソナ 3』にはリメイク版の『ペルソナ3 リロード』で初めてふれた。物語よし!曲よし!歌よし!キャラよし!UIよし!ゲームデザイン最高によし!全体的にめっちゃおしゃれ! という七拍子 がそろったRPG作品としての骨格は、『ペルソナ 3』にしてすでに完成している。そりゃ人気出るわ。アトラスにどんなにあこぎな完全版商法をされても、新作や続編が出るたびに食いついてしまうのもよくわかる。
この曲は海外のストリーミングサービスで異例の再生回数を誇る。「謎 今年、誰も知らない日本発の超ヒット曲」 という記事もあって笑ってしまった。誰も知らない、はないよ。正確に言うと『ペルソナ3』しかも『リロード』をプレイした人だけが」知っている名曲である。非常に限られているが、確かに存在している。我々は世界中に少しずつ存在している……。
私もゲーム音楽の一つとしてペルソナシリーズのBGMを愛聴している。ゲーム戦闘曲は作業用BGMに向いてるので、ゼルダやポケモンの戦闘曲とともに何度もBGM再生している。でもそれを「表で」「声に出して」宣言するかというと、確かに言わない。口には出さないけど、確実に複数回聴いている。 そんな人が独立してばらばらにいる。数字で言うと10000人に一人かもしれない。でもその一人は確実に世界中に散らばっていて、50億人で集計すれば50万人になる。そしてその50万人はこの曲を何度も何度も繰り返し再生し、ひとりひとりの生活の個人的戦闘の背景を美しく彩っている。
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ちなみに『ペルソナ 3』なら通常戦闘曲のこの曲も大好き。やんややんややんややんややんやんやーん。ネットで今調べたら「ベイベベイベ」と呼ばれていた。非常にインパクトあるイントロからすぐに続くラップも最高。この曲から始まるバトルが楽しい。JRPGにおいてボーカル入りの戦闘曲は当時非常に珍しかったと聞く。金字塔的な曲だ。
そして『ペルソナ 3 リロード』をプレイして、海外のおたくが日本の学園生活に過剰に憧れている 理由も少しわかった。かけがえのない生活をスタイリッシュに送っているように見えるのだ。一分一秒が充実して輝いているように見える!時事問題につながったトラブルに見舞われる友人に出会い、その悩みを解決していく!その展開もワクワクする!実際の東京の高校生活はこんなにスタイリッシュじゃないし、理不尽で胸糞が悪いイベントの方が多いのだけど、そういう部分は悪役側に配置される。そしてすっきり退治される。これは爽快だ。
ちなみに一番口ずさんでいるのはこの曲。貴方のテレビに時価ネットたなか~買うのは今しかない!イェイ!
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5位 かわいいだけじゃだめですか? / CUTIE STREET
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ぱるたんこと桜庭遥花ちゃんは日プ女子の参加者のなかでハロヲタが最も好きなタイプの女の子 だった。
第一に、ハロプロの聖地・北海道出身なこと。第二に、オーディションに参加できると決まったときに、いさぎよく高校をやめちゃったこと。こういう覚悟と思い切りの良さは古参ドルオタが一番好きなやつだ。第三に、可愛くて特徴的な声。第四に、スキルがないと言われてFランクにされても、くり返し練習し努力できる根性。第五に、しもぶくれ気味で可愛い輪郭の顔(安倍なつみや福田明日香や初期道重さゆみの系譜)。すべてハロヲタ好みのど真ん中である。
彼女がオーディションを落ちた後、あっというまにカワラボに拾われていったのは時代を象徴するエピソードであった。私はマジでハロプロに来て欲しかったんだけど、まったく、当然のように、かすりもしなかった。
ハロプロは日プ女子落ちをまったく拾わなかった。2024年のハロプロ界隈で私がもっとも驚いたのは「日プ女子落選者に声をかけなかった」 ことである。あれだけのハロヲタが日プ女子を見て、さまざまな女の子に興味を持ったというのに。事務所関係者だってオーディションを見ていただろうに。日プ参加者の女の子だって、それまで聞いたこともなかったハロプロという組織を(かっさーのおかげで)知ることになっただろうに。どうして?なんで声をかけなかったの?AKB大躍進の裏でローカルアイドルの有望株(りかこ、もりとち、くるみん、かわむーなど)をスカウトしまくっていた2014年頃の意欲的な経営陣はもういないのだろうか?まぁ実際は声をかけた全員にお断りされたのかもしれないけどさ。
さて、そんなぱるたんが加入したCUTIE STREETのデビュー曲。2024年Tiktokで流行してるいわゆる「かわいい」楽曲である。
これは見たことある。目新しくない。『かわいくてごめん』で女性声優界隈が頻繁にやってたやつだ。超ときめき♡宣伝部がやってたやつでもあり、FRUITS ZIPPERがやったやつでもあり、もちろんハロプロも昔やってたやつ。初めてタイトルを聴いたとき私が真っ先に思ったのは「カントリーガールズのキャッチコピーは『かわいいだけでなんとかなる、か?』だったな」であった。重ピンクとこはっピンクがやってた世界であり、カントリーガールズがやっていた世界である。もちろんいちばん酷似しているのは超ときめき♡宣伝部やFRUITS ZIPPERだ。
この曲がそれらと違う部分があるとすればそれは「小野小町」 だと私は思う。歴史を入れている。教養要素がひとさじだけ入ってるのだ。岡田斗司夫が言う「メガ・ヒットに必要な四大要素」は、 ①性的・体感的な快感、②勝負、③知性、④社会性 だ。このうち③知性 がはっきりわかるから、この曲はSNSを飛び出して一般層への広がりを持つことができた。カラオケでも歌いやすく、メロディも覚えやすい。
ちなみにヤマモトショウさんなら「おかあさんといっしょ」の『ももいろほっぺ』が一番好き。歌のお姉さん、体操のお姉さんと、マスコットキャラクターみももの三人が桃色の部屋で桃色の衣装で歌う。
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カワラボことKAWAII LAB. は、ハロヲタだった元むすびズムの木村ミサさんがプロデュースしている。振り付けはぱすぽ☆だった槙田紗子さんで、こちらもハロプロ好きだった。ちなみにイコラブも指原さん、つまりハロヲタの女性がやっている。いにしえのハロヲタばかりだ。
私もいにしえ、かつ(今のところ)現役のハロヲタなので、「みんな有能だなぁ」と思うとともに「ハロプロで仕事していてくれれば……」 と思うこともある。でも、それは叶わぬ願いだということもわかっている。野心的でアイディアのある若い指導者をハロプロは雇用しない。そして、野心的でアイディアのある若い人間はハロプロの中に入らない。つんくさんですら「手柄取り上げないで」と歌っている組織に、若い有能な人材はなかなか入ってはこないのだろう。
うーん、でもなぁ。宝塚だって宝塚が好きな人を技術者として入れているからこそ、クオリティをキープできているのでしょう?若い血とアイディアを入れなければ組織は枯れてしまう。ハロプロの上層部は現状のまま、いったいどこまでいくつもりなんだろう?
カワラボもイコラブも、ハロプロとよく似たシステムを取り入れて新しい女性アイドル組織を作り大躍進している。この二つは「口パク」ではない。生歌主義で日本のテレビ番組に出るし、ライブもする日本の女性アイドル集団だ。これはいよいよハロプロとかぶっている。客を食い合う組織 が続々と生まれていることをひしひしと感じる一年であった。
6位 Bling-Bang-Bang-Born / Creepy Nuts
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アニメ「マッシュル-MASHLE-」オープニング主題歌。アニメのオープニング映像のダンスのキャッチーさも相まって、小学生にも大ヒットした。子どもも歌える一曲だ。
「欧米のヒットチャートはヒップホップが強いけれど、日本においてラップで大衆的なヒットを飛ばすのは難しい」とよく音楽識者が言っていた。私も同じように思っていた。でも、この曲は2024年のナンバーワンヒット曲になった。
この曲の勢いに乗ってCreepy Nutsは東京ドームを埋めた。それもすばらしい。ゴッドタンに出まくっていたDJ松永さんが本気で音楽に取り組むと決め、バラエティをお休みし、 宣言通りヒットを飛ばしたことも素晴らしい。二人ともテクニックが強いよね。まじ強い。R指定さんラップうめぇ。カラオケで歌ってみるとこの曲のラップの難しさにびっくりする。口が全然回らないのよ。
個人的なことだが、私自身はラップにうとい。メロディが少ない音楽を愛することができず、ラップのみの楽曲をくり返し聴く習慣をもつことはできなかった。その上、私のようなアンテナの低い人間まで流れてくる日本音楽業界のラップのリリックは「上流階級の不良ごっこ」になってしまっていたので、私にはどうにも共感できなかった。「そんなこと言っても君たち、私よりずっと金持ちの家に生まれて社会的地位も保障されてるじゃん。それホットカーペットの上の憂鬱でしょ」と思ってしまっていたのだ。かと言って本当に犯罪自慢や俺モテる自慢をされても、それはそれで困る。共感はむずかしい。
ヒップホップは自身と社会との乖離や怒りを歌詞に載せるものだから、私が共感できなくても他に共感できる人がいればそれでいい。例えばちゃんみなさんやAvichiさんのリリックは私自身とシンクロする部分も多く、たやすく肌を合わせることができる。つまりは共感しやすい。
クリピは30代男性の等身大の、まったく上流階級ではないおのれ自身を歌っている。それが好きだ。悪いこと自慢じゃないところも好きだ。私(40代女性子持ち)と境遇が全然違ってもシンクロできる。「そうだね」「わかる」「なるほど」と思える。理解も共感もできる。そこが素晴らしいと思っている。
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(2025/10/10)
2023年 ねじ子のハロプロ楽曲ランキング
ねじ子の俺コンランキング2023ハロプロ版です。 2年遅れですが書きます。
1位 なんざんしょ そうざんしょ / モーニング娘。’23VIDEO
つんく♂さん作詞作曲の恋する女の子の曲。久しぶりで嬉しい。女子目線で語られる不思議なデート が始まる。
主人公はどうやら、家まで彼を迎えに行っている。彼は準備が遅くだらだらしており、それを見た彼のお母さんは恐縮している。デート内容は「でっかいパフェ」を食べに行くことに決まっている。しかもそれは彼の希望 らしい。それなのにやたらもたもたしている彼。結局行かない可能性すら示唆されている。なんだそれ。「私が居なきゃ終わってる」し「将来が思いやられる」し「後悔の念に駆られる」けれど、「甘える技は天才的な人」なのである。
なんだそれ。いや、こんな人とは別れろ。 そもそも、なぜすでに将来が決まっているの?なぜ家まで上がりこんでいて、彼の母親がこっちの味方状態なの?自由な出会いと恋愛の末に成立したカップルと思いにくい。「母性の域を超えている」大きな愛で「こうなりゃとことん教育するしかない」とまで考えてる。いやそこまでする?
どうやら、彼はいいところのお金持ちのボンボンである。おそらく少しポンコツであり、時間を守れず、浮世離れしている。それでも教育するだけの見返りがあると 主人公は踏んでいる。そうじゃなきゃここまでやらない。というわけで、これは「いいところの子」との「親公認」で「世間公認」のお付き合いなのではないだろうか。上級階級の男子に、結婚前提の交際を目的として紹介された女子の曲。そう考えれば辻褄が合う。「お見合い」したあとのデート曲だ。
こんな状況は普通の庶民の男女には存在しにくい。誰を想定してるんだろう?あ、そうか飯窪さんか。飯窪さんの曲なのか。私は勝手にそう結論づけた。明石家さんまさんの息子さんと「結婚前提」の「交際前提」の飲み会をセッティングされ、それをラジオでネタにされまくっていた飯窪さんの状況として考えると、しっくりくる歌詞なのだ。
私の周囲の世界ではこのようなシチュエーションをあまり見かけない。「こんな男とは別れた方がいいのでは?教育するメリットある?そもそもすでに成長した大の男を『教育』しなおすって無理では?」と思ってしまう。でも資産家に嫁ぐことが前提であれば、そのくらい目を潰れるのかもしれない。
モーニング娘。の女子は上流階級の「お嫁さん候補」としてうってつけなのだと思う。関西における宝塚卒業生みたいなものだ。すれてないし、いろいろな意味で比較的安全に囲われているし、努力家であることはお墨付きだし、もちろん可愛らしく、知名度もありすぎずなさすぎずちょうどいい。トロフィー・ワイフが欲しい貪欲な人にもいい。卒業後に、この歌詞のような状況になるハロメンって実は結構多いのかもしれない。私には縁遠くても、ハロメンにとってはありふれた話なのかも。
新しく加入した井上はるさんと弓桁あここんが1番・2番の最初にソロパートを歌っているのもいいですね。明るくて夢がある。
2位 OCHA NORMA /シェケナーレVIDEO
発表時はこの曲にあまりピンときていなかった自分を殴りたい。私がこの曲を初めていいな!と思ったのは、つばきファクトリーの武道館コンサート「2023秋 可惜夜~山岸理子・岸本ゆめの 卒業スッぺシャル~暁」のオープニングアクトを見たときであった。遅い。
アニソン界隈ではTVアニメ「シャドウバースF」セブンシャドウズ編EDとしてとっくに注目されており、雑誌Newtypeの「アニソンを聴きまくってるDJたちが選ぶ2023年ベストアニソントップ20!」 で『シェケナーレ』は1位に輝いている。
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たしかにこのED映像のダンスには『らき☆すた』や『ハルヒ』によく似た多幸感がある。アニメEDのシェケ!シェケ!の手をふる振り付けはOCHA NORMA本家と同じ。
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つばきファクトリーのオープニングアクトとして武道館で聴いたこの曲を、数年後に開催されるOCHA NORMA単独武道館公演 の最後に聴くことができたなら。私は泣いてしまうかもしれない。あぁ、落ちサビで銀テープが宙に舞っているのが見える。
3位 プライド・ブライト / Juice=JuiceVIDEO
山崎あおいさんの魅力大爆発の一曲。かなともとまなかんが抜け、石山咲良ちゃんと遠藤彩加里ちゃんが入り、なかなか安定しなかったJuice=Juiceの今後の方向性がぴたりと定まった一曲だと思う。これだよ、これ。るるちゃんとれいれいががっつりと音程を支え、ゆめりあいが1番のAメロBメロを作り、サンフラワーが飛び道具としてキリングパートを決める。いいね。
どうしてJuice=Juiceに入った子はみんな歌がうまくなっていくんだろう。不思議だ。そのノウハウを共有してほしいよ。
4位 つばきファクトリー / でも…いいよVIDEO
メンバーのアップと森の自然がとても美しいMV。森の映像の質感がとてもいい。これからもこのクオリティを常にキープしてMV撮影よろしくお願いします!ハロプロ様!
彼女たちの表情はあどけなく、清廉で純粋だ。でもよく聴くと歌詞はどろどろ。どろっどろのどろ。
「ほんのちょっと遅かった出会い」「週末も会いたいよなんて二度と言わないよ」という歌詞から、主人公はどう考えても不倫中 である。しかも「二番目の女でいい」という弱気な姿勢が終始一貫 している状態だ。よくない、これはよくないよー。既婚者は時間の無駄ですよー。やめときなさーい。あなたの若く美しく何でもできる時間を無駄に使っちゃだめですよー。
それはさておき、映像の美しさと歌詞の泥沼感の対比はとてもいい感じ。この切なさと儚さと上品さを出せるのはハロプロにおいてつばきしかいない。まじでつばき。ザ・つばき。最高。
作詞は西野蒟蒻さん、作曲と編曲はスウェーデンのエリック・リボム(Erik Lidbom)さんです。Erik Lidbomさんは私の中でかなりのヒットメーカーです。メロディがいつも美しい。
5位 求めよ…運命の旅人算 / BEYOOOOONDS
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ハロプロがときどき出す「お勉強ソング」である。『ロックンロール県庁所在地』が有名ですね。どうやらこの曲は「普通じゃないテーマを」「小学生や親御さんにも届くように」というコンセプトが先に決まり、そこから旅人算の歌詞ができていったという。ニシのホイッスルボイスも最高。よい曲である。よい曲なんだが、なんだが、……旅人算って、あんまり使わないのよ。 わざわざ公式として覚えない。算数が得意な子どもなら特にそう。「考えればわかること」なのだ。
ハロプロお勉強ソングの先駆け『ロックンロール県庁所在地』には需要があった。なぜなら、県庁所在地は非常に覚えにくいから。そのくせ小学四年生で無理矢理にでも暗記しなければいけないから。だから小学生向け勉強ソングとして一定の需要があったのだ。でも旅人算はそうじゃない。旅人算は暗記ではなく「考え方」なのである。 なぜ歌にするのか、その目的がよくわからない。そうすると「大人が子ども向けを狙っている」意図だけが浮き上がって見えてしまう。うーん、小学校算数の特殊算から選ぶなら鶴亀算の方がよかったな……。そっちは中学受験でもよく使うから……。
6位 OCHA NORMA / オチャノマ マホロバ イコイノバ ~昭和も令和もワッチャワチャ~VIDEO
これもいい曲である。いい曲なんだが、歌詞がつらい。作詞家がものすごく苦労して捏ね繰り回したことが伝わってくる。苦労がうかがえる。そう思いながら星部さんのプレゼン動画も見た。↓
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歌詞を6回書き直しさせられた苦労が語られている。
私が一番がっかりしたのは、OCHA NORMAの「お茶の間」というグループ・コンセプトが、ここに至るまではっきりと固まっていなかったことである。
今の日本に「お茶の間」はない。 テレビがないご家庭も多く、「みんなでテレビを見ながら食事をとる部屋」という意味の「お茶の間」はもう絶滅危惧種である。誰の家にも「お茶の間」が存在したのは、昭和から平成前半までだ。歌詞の中でもそう言ってる。ではなぜ令和のいま10代女子を集めて「お茶の間」なのか。
ちなみにねじ子が「お茶の間」と言われて真っ先に思いつくのはオタク用語の「茶の間」 である。「テレビの前で消費しているだけの現場に来ないファン」のことであり、もともとはジャニーズファン界隈の言葉だと聞く。
実は私は、オタク用語の「茶の間」はコロナ禍でデビューしたOCHA NORMAにぴったりだと思っていた。「NORMA」は時勢的に、コロナ禍の暮らしぶりである「NEW NORMAL」 から来ているのだろう。SNSやYoutubeコンテンツやTiktokを駆使し、リアルでは会えなくても画面を通してたくさんの情報を提供・共有できる存在を目指すのだと私は勝手に思っていた。スマホの画面を通してリアルタイムにつながるアイドル。それができたら、確かにハロプロのアイドルとして新しい風が吹く。いいね、新しい。
でも、特にそうはならなかった。 ハロプロは相変わらずサブスクもTiktok音源も公開しておらず、Youtubeコンテンツにも特に変化がない。じゃあ「お茶の間」というグループ名でいったい何を目指しているんだろう?お茶の間の存在を知らない10代女子を集めて「お茶の間」を名乗らせる意味はなに?もう一度言うと、私が一番がっかりしたのはOCHA NORMAの「お茶の間」というコンセプトがセカンドシングルに至るまではっきり決まっていないと、この曲で感じてしまったことだった。なんでやねん。6回駄目出ししてる場合じゃないでしょ。ユニット名を決めた人間がコンセプトまで固めておいてよ。頼むよ。いきなり星部さんに投げられたって、星部さんも困っちゃうよ。船頭は誰なの? OCHA NORMAという船の船頭は誰?星部さんじゃないことと、メンバーじゃないことだけはわかる。まさか誰もいないわけじゃないよね……?
楽曲に戻ろう。Earth, Wind & Fire の『Boogie Wonderland』 がオマージュされたイントロが最高。赤羽橋ファンクなアレンジも素晴らしい。田代すみれちゃんの気の抜けた「ないはずじゃーん」から突然明るく転調するサビも好き。北原ももちゃんの落ちサビ「きっと生まれません What’s your お茶の間」の表情も最高。
以上です。2024年はリリースが増えることを願っています。
2023年 ねじ子の楽曲ランキング(後編) 2位 帰ってきたコーガ様戦 / ゼルダの伝説 ティアーズオブザキングダム
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『ゼルダの伝説 ティアーズオブザキングダム』より。前作『ゼルダの伝説 ブレスオブワイルド』においてコーガ様は謎の大穴に落ちて行方不明になった。いわゆる「ギャグ空間」への退場 で生死不明になったことが、まさか続編につながるとは思わなかった。あの穴が伏線だったとは。実は地下空間があったとは。そこでイーガ団が暗躍するとは。いやー、思ってもいなかったね。世界の広げ方がうまい。地図はそのままで、探索範囲を倍にすることができる。かしこい。地下は怖くて移動がたいへんだけど、探索も慣れれば楽しい。
そしてなんと言っても!この曲には!合いの手があるんだよ!!!!コール!コールだ!やったああああ!コールするぞ!コール大好き!私もイーガ団に入って「はっはい!はい!はい!」って叫びたい!私もイーガ団に入る!あの衣装どこに売ってる?買わせて!
実はイーガ団は、あの社会で馴染めなかったり街から追い出されたり捨てられた人間を救いあげて、元々の種族に拘らず組織に取り入れる 「セーフティネット」の機能を持っている。江戸時代の浪人組織みたいなものだ。ただのならず者集団に見えるが、実は社会にとって必要悪な集団 として描かれているのだ。街の外に出たら一晩で魔物に殺されてしまうあの世界で、拾ってもらえて、役割を与えられ、飯を食わせてもらえているのだから(バナナだけど)そりゃみんなコーガ様を好きになる。この曲のコールからは「コーガ様大好き!」 という気持ちが伝わってくる。だから好き。
3位 フリザゲイラ戦 / ゼルダの伝説 ティアーズオブザキングダム
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こちらも『ゼルダの伝説 ティアーズオブザキングダム』から、中ボス・フリザゲイラとの戦闘曲。風をつかさどる街・リトを支配するボスであり、吹き荒れる風を意識した楽曲だ。過去シリーズのリト族の曲のアレンジがふんだんに盛り込まれている。竜巻と猛吹雪が吹き荒れるなか、パラセールで飛び回りながらこの曲を聴く。圧倒的な浮遊感 を感じる。空も飛べそうだ。後半戦になると転調して音階が上がるのもいい。テンション上がるね!
この曲を聴くためだけにフリザゲイラを倒しに行く。そのためにわざわざ地下にも行くくらい、この曲が好きだ。巨体なのに弱点さえ突けばリンゴ3つで倒せるところもいい。
ちなみに前作と共通の音楽の中では『モルドラジーク戦』が一番好きです。敵がダウンするとサビに入る展開が最高に盛り上がる(この動画の1:26)。
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4位 ヒロガリズム / 「ひろがるスカイ!プリキュア」エンディング主題歌
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『ひろがるスカイ!プリキュア』はとても面白かった。史上初のレギュラー男子プリキュア であるツバサくんと、史上初の成人プリキュア である18歳のあげはさんがよかった。
ツバサくんはプニバード族、つまり鳥 である。女児アニメに必須なマスコット要因、かつプリキュアだ。体格は第二次性徴前の小学生低学年くらいで、知能は主人公達と同じ中学2年生くらい。この年齢設定も絶妙である。生々しくないし、フリフリの衣装も着こなすことができる。生足を出しても違和感がない。会話のレベルもあわせられる。見た目と精神年齢が少し離れている(体型は幼いが精神年齢は思春期)が、元々人間じゃないのでそれも無理なく受け入れやすい。
始まる前は「男子プリキュアのレギュラーってどうなん?大丈夫なの?」と少し不安であったが、何の問題もなかった。私の子どもの男子たちはツバサ君を受け入れ、共感していた。きちんとツバサくんに自らを重ねながら見ていた。
そうだ、私もずっと戦隊の女性戦士に自分を重ねていた。「大きくなったらああなりたい」と思ったり、「これはダメだ、あんな大人にはならないぞ」と思ったり、可愛さにキュンとしたり強さに憧れていた。物語の中に自分と同じ属性の登場人物 が存在することは、子どもが物語の中で人生を疑似体験するために必要である。物語の中でいろいろな感情を疑似的に体験し、別れや恐怖も体験して、心の強度を強くする。それは子どもの脳が成長するのに必要不可欠な過程だ。ライダーでも戦隊でもプリキュアでもドラえもんでもクレヨンしんちゃんでも少年漫画でも少女漫画でも若草物語でも赤毛のアンでも偉い人の伝記でも、それは変わらない。
あげはさんが18歳の保育士さんで、ツバサくんを「少年」と呼んでかわいがっているのもよかった。それに対してツバサくんがむっとして「子ども扱いするな」とすねているのもいい。子どもっぽいとか、かわいいとか言われたくないところがいかにも思春期の少年でいい。生意気でかわいい。オネショタの味がする。大きなお友達も大満足である。
赤ちゃんのエルちゃんが「ツバサとけっこんする!」と騒いで「結婚ごっこ」をするのもよかった。結果的に全員と結婚することになってるのもいい。「ごっこ遊び」が大好きな女児、すげぇいっぱいいるもんね……。恋愛未満の愛情である「友愛」 があふれていて、その量も適切だったと思う。
ヒーローガールな宇宙人ソラ・ハレワタールが敬語をずっと使っているのも、ましろさんを大切にしているところも、ましろさんを危ない目に遭わせたくないところもよかった。肉体的に強くあろうとする 女子を真摯に描いたところが、とても好きだ。子どもの頃助けてもらった騎士団長の女性に強く憧れているところ、ロールモデルに近づきたくて頑張り続けるところ、その騎士団長を強さ的には追い抜いてしまうところ、彼女を守りたくても守り切れなかったところ。挫折も、それからの回復も描くところ。肉体的に強くあろうとして努力する女子の等身大の姿として、私は大いに共感した。
空手や剣道を習っている女子は多い。肉弾戦は初期プリキュアからのコンセプトだ。
「女の子だって暴れたい!」
プリキュアシリーズの初代プロデューサーが『ふたりはプリキュア』の企画書に記した名言である。強くあろうと鍛錬していれば必ず突き当たる壁を、女児アニメで表現したことを評価したい。
VIDEO M-1グランプリ × ひろがるスカイ!プリキュア【コラボPR②】
今年一番萌えた映像。「ましろさんが一番グランプリですよね!」「ちがうよ~」も最高。ソラちゃんはスカイランド人なので漫才なんて知らないのだ。ソラちゃんもましろさんも世界一可愛いよ!
5位 SPECIALZ / KING KNU
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アニメ『呪術廻戦』第2期「渋谷事変」のOP主題歌。「ゆあーまいすぺーしゃーる ううーうううー」という最初の5秒 で、もう優勝している。最初の5秒で勝ち。脳内でYUMEKIさんが「もう決めました」と言っている。
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アニメの出来も素晴らしかった。渋谷事変の不穏さ、東京の繁華街でいよいよ百鬼夜行が始まる絶望感がよく現れている。歌詞も原作の内容に沿っており、曲のクオリティも高い。最も幸福なかたちのアニメ・タイアップだと思う。
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6位 第ゼロ感 / 10-FEET
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こちらも幸福なアニメタイアップ曲。映画『THE FIRST SLAM DUNK』エンディング主題歌。監督兼原作である井上雄彦先生が好きなバンドとしてご指名された10-FEETのTAKUMAさんは、気合い入れて7~8曲作ったうえにストックの5曲をすべて井上先生に渡したら、全部ボツをくらったらしい。「じゃあ、新しい曲作ります。できるまで、ひまつぶしに聴いといてください」と言って、渡したボツ作の中にこの曲があった。そこでようやく「これだ!」と言ってもらえた、と言う。
ソース:https://mezamashi.media/articles/-/25955
作者が気合を入れて作った自信作よりも、息抜きで作った作品や気の抜けたお遊びがヒットする、という話はよく聞く。力が入りっぱなしのものよりも、緩急があって軽いパンチが一発だけ入ってるくらいの方が、消費にちょうどいいのだろうか?くどい味付けよりも、さっぱりした口当たりでカロリーが低いものの方が食べやすいということなんだろうか?よくわからない。実は漫画や文章でもよくある話なんだけど、作者がこれをコントロールするのはむずかしい。編集さんやアドバイザーが必要な所以である。
なお、私はオープニング主題歌『LOVE ROCKETS』を歌うバンド「The Birthday」のチバユウスケが好きだった。こちらも井上雄彦先生の御指名だという。しかし、チバさんは2023年12月に食道がんで亡くなってしまった。THEE MICHELLE GUN ELEPHANTのギター・アベフトシさんに続き、ボーカルのチバさんまで夭折してしまうとは。つらい。とてもつらい。
その1ヶ月後、10-FEETはこの曲の大ヒットを受けて紅白歌合戦に初出場する。TAKUMAさんは間奏で「スラムダンク、The Birthday、チバユウスケ!」と叫び、『LOVE ROCKETS』のサビのワンフレーズを歌った。ラブロケッツ、ラブロケッツ、ジェリーの魂を宿って、と。そして最後はピックを捨てて右手で空の盃を持ち、それを一口飲んで、盃を天に向かって掲げる。天国のチバさんと乾杯するかのように。
これらはリハーサルではまったくやっておらず、ぶっつけ本番でつい色々と叫んでしまったらしい。さすがライブハウスバンドである。なんか演奏もすげぇうまかったし。
実は私も訃報を聞いてからは、『第ゼロ感』を聴きながらもふとチバさんのことばかり考えてしまっていたのだ。自身のキャリア最大の晴れ舞台であろう紅白で、チバさんへの追悼を全力で叫びたくなってしまったTAKUMAさんの気持ち、わかる。その心意気に私の心は救われた。泣いちゃいました。
The Birthday – LOVE ROCKETS
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こんなことをロックン・ローラーに言ってはいけないのかもしれないけれど、ウエノコウジさんとキュウちゃんには長生きして音楽を続けてほしい。
以上です。
この先はハロプロ楽曲大賞と同じになりますのでそちらをご覧ください。(2024/6/1 文筆、2025/4/19 完成)
桃奈の新しい職場の展示会へ行く ME:Iはじめまし展(重ね型の駄洒落)
2024年5月。 日プ女子を駆け足で見終わった私は、桃奈の新しい職場の展示会に行った。「ME:Iはじめまし展」である。2024年4月16日(火)〜5月26日(日)、渋谷タワレコ6階で開催。会場は10代から20代の若いファンばかりだ。若い男女カップルもたくさんいました。たはー。もちろん私は一人。ヲタ友などおらぬ。
歯科衛生士をオマージュした衣装。違います。靴が特注でかわいい。
MOMONAのポストカード自引きしたぜ!やったあ!
渋谷タワレコと言えばハロープロジェクトのお膝元である。「ここならば桃奈の過去にふれても怒られないだろう……」と勝手に判断して素直な気持ちを書いてきた。隣に偶然うつったメッセージも昔の呼び名で彼女を呼んでいたので、きっとお仲間だろう。
渋谷タワレコがいつも力を入れて下さっているハロプロのコーナーも見に行った。嶺脇社長いつもありがとうございます。いろんなハロメンのサインやチェキやメッセージが飾ってあり、そのほとんどが「いつもお世話になっております」で始まっているのが印象的。そりゃそうよねー。わかるよー。
佳林ちゃんの衣装も飾ってあった。魔法少女アニメみたいでかわいい。
アンジュルム時代の桃奈が写ってるチェキと直筆コメントもありますので、お時間がありましたらYOU:MEの皆さんも是非お立ち寄り下さい。4階アニメアイドルフロアです。ちなみにME:Iのコーナーは5階K-POPフロアです。
4階アニメアイドルフロアで大好きなハロメンの直筆メッセージを光の反射が入らないよう必死で写真に収めていたら、周りが急にざわざわしはじめた。なんと、LiSAさんがゲリラ的に来店していたのだ。びっくりした。LiSAさんは自分の等身大POPと一緒に並んで写真を撮ったり、自分のCDコーナーの前でぬいぐるみとともにキャッキャと写真を撮っていらっしゃって、とても愛らしかった……。我々のような通りすがりの客にも笑顔で手を振ってくださる姿はまるで天使のようだった……。細くてかわいらしいショッキングピンク髪の天使。
他にもCrimsonCratClanという男性グループが自身の巨大ポスター前で撮影しており、チラシを配りながら「LiSAさんだ!」とはしゃいでいらっしゃった。こちらもかわいい。
いたる所にミュージシャンのサインがあり、ここでしかもらえない特典がたくさんあって、グッズも買える。巨大展示やポスターや直筆コメントなど、写真を撮りたい場所もいっぱいある。限定イベントも開催される。そして、ゲリラ的に本人登場 がある。そうまるでミッキーマウスのように 。ここはテーマパークなんだな。
渋谷タワレコは日本一の音楽テーマパークになった。 私たちは渋谷のタワレコに「音楽」を買いに来てるんじゃない、「体験」を買いに来ている。 ここでしかできない「体験」を求めてここに来るのだ。もっとはっきり言うと、ここでしか撮れない写真を撮りに来ている。そしてそれをSNSにアップして己を表現する。ロック生まれアイドル育ちの嶺脇社長が狙っていた「アーティストとユーザー、ユーザーとユーザーをつなぐハブになるリアルの場」とは、このことだったのか。嶺脇社長は10年かけて渋谷に黄色い音楽のテーマパークを作り上げた。すごい。戦略的に正しい。
「CDが売れなくなった」と言われて久しい。私の地元駅前のレコード屋やCDレンタル店はすべてつぶれた。そんなご時世でも、渋谷タワレコにはたくさんの人がいる。学校帰りの学生も音楽を求めてここに来ている。外国人観光客もたくさんいて、結束バンドのコーナーやアナログレコードに群がってる。こんなに活気があるレコード屋さんを見るのは本当に久しぶりだ。それも嬉しい。
一階で推し活グッズ売ってる。売れ筋なんだと思う
いまやCDはオタクにとって音楽を再生するものではなく「ファングッズ」の一つ になった。おそらく、紙の本も同じ運命をたどるのだろう。紙の本が生き残る道は「ファングッズ」としての価値を高めることであり、実店舗の本屋が生き残る道は「イベント」や「体験」をたくさん増やしていくことに違いない。しかし、人見知りで孤独なオタクの私、いや「森皆ねじ子」にそれができるのだろうか……?
とっくに引退した推しメンたちが笑顔で写っているチェキが色あせていくさまをながめながら、私はそんなことを考えていた。
さて、ここからは余談です。
ファントミラージュが大好きだったねじ子は「よし、Girls²のコーナーも見ていこう!地元じゃ絶対ガルガルのCD見つからないし!」と思った。石井蘭ちゃんがかっさーと同じオーディションにいてくれたの、めちゃくちゃ嬉しかったし。「私アンジュルム大好きなんですよ」って言ってくれたのも、めちゃくちゃ嬉しかったし。再デビューおめでとう!
しかし。ガルガルのCD、全然見つからない。どこだ。4階女性アイドルコーナーにもない。3階J-POPアーティストのコーナーにもない。LDHの棚にもない(E-Girlsやi-screamはすみっこの方にあったのに)。もしかして、と思って念のため5階K-POPフロアのME:Iコーナー近くも念入りに見たけれど、ない(なおProduce 101 the GirlsのCDと本はあった)。20分ほど歩き回ったねじ子は疲れ果て、あきらめてインフォメーションへ向かった。「ガールズガールズっていう女性アイドルのCDを探してるんですけど、どこですか?」と質問された女性店員さんはすぐに案内してくれた、3階すみっこのキッズコーナーへと……。
そりゃないよ!見つかるはずないじゃん!
ガルガルのCDとDVDは『いないいいないばあ』の横、『おかあさんといっしょ』と『あんぱんまん』のCDの上の棚に置いてあった(2024年5月現在)。もう一度言うわ。そりゃあないよ!!
いや、わかってるんだ。Girls²は『ガールズ戦士シリーズ』に出演していた女の子達を集めて作った、企画ものの子供向けユニットであった。「ガールズ戦士シリーズ?なにそれ?」って思うでしょ?一応説明します。『ガールズ戦士シリーズ』っていうのは、日曜朝にテレビ東京系列で放送されていた実写特撮TVドラマです。三池崇史さん監督。LDH系列ダンススクールの(おそらく優等生だった)中学生女子を毎年5人くらい集めて、ドラマの中で魔法少女に変身して戦います。東映が近年まったく!やってくれなくなった!実写女子特撮です。東映不思議コメディーシリーズが大々大好きだった私は、なんだかんだ狂喜乱舞しながら見ていたのです。
変身シーンでソロダンスします。これが長い。とてつもなく長い。一人当たり1分くらいある。しかも一切カットせずに毎週、全員分流すので変身シーンだけで5分くらいかかる。変身始まってからトイレ行ってお湯を沸かして紅茶を入れて帰ってきても終わってない。完全にバンク映像であり一秒たりとも変化がないので、大人の私にはひどく退屈な時間なのですが、テレビの前の女児たちはこの時間が大々々好きでした。テレビの間で歌い踊り、おもちゃを持って戦士になりきって一緒に変身するのです。3歳から7歳くらいの子どもたちが物事を理解するために行う「ごっこ遊び」「見立て遊び」のまさに正しい姿といえます。
もちろんオープニング映像やエンディング映像でもガールズ戦士たちが歌って踊りますし、必殺技は「フィナーレダンス」なんでそりゃもう抜群に踊ります。テレビの前の女児もそのたびに踊ります。私が当時一番好きだった曲はmirage²の『じゃん☆けん☆ぽん』。エンディングで毎週流れ、最後は画面に向かってじゃんけんです。キッズアニメの定番。でも思惑通りにじゃんけんしちゃう!大好きになっちゃう!
リアル中学生が演じているため、撮影スケジュールにたっぷり余裕があります。おそらく長期休みの間にまとめ撮りし、放送開始時にはすでに撮影が終わってるのでしょう。番組の放送中は彼女たちが出演するリアルイベントが毎週開催されます。キャスト本人による歌と踊りのイベントが日本各地のショッピングモールで行われ、大盛況でおもちゃが飛ぶように売れたと聞きます。完璧な商売。
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(蘭ちゃんことファントミダイヤ登場は12:00から)
コロナの流行によってリアルイベントが打てなくなった『ガールズ戦士シリーズ』は、売上が芳しくなくなったのか先細りし、シリーズも終了してしまいます。2017年から2022年まで5年くらい、計5シリーズ(リズスタはガールズ戦士じゃないので除く)。貴重な実写女子特撮の枠がまた一つなくなりました。
その後、『ガールズ戦士シリーズ』の出演者を集めたGirls²とLucky²のメンバーがおはガールの枠を4年間独占 します。私はハロヲタなので、これは非常に!苦々しい気持ちで!見ておりました。だってこれじゃハロメンがおはガールになれないじゃんかよお!! むきー!蘭ちゃんはおはスタでけん玉を披露し(蘭ちゃんの1分PRで机の上にあったのは「おはガールふわわ」タイアップのバンダイ商品・ケンダマクロスでしたね)、おはガールとして木村昴兄さんと一緒にCDを出しました。このCDも渋谷タワレコに置いてありましたね。以上、昔話でした。
……こんな経緯だから、Girls²のCDがキッズコーナーに置かれているのは妥当なのである。間違いじゃない。わかる。それでも、それでも!「せめてLDHの巨大コーナーにも置いてあげられないの?」 と思わずにはいられない。部外者の私にはなぜそこに入れてもらえてなかったのかわからない。子ども向けの企画だからって、一過性のものとして扱われてない?スクール上がりだから一線引かれている感じ?成長した大人のアーティストとして本当に扱ってもらえていた?
そもそも、LDHは渋谷タワレコ3階の壁一面を占めるほど巨大なスペース を用意してもらっている。それなのに、女子グループはそのほんの片隅でしか扱われていない。それも悲しい。E-GirlsもFlowerも紅白に複数回出場した良いグループだったのに、もう存在していない。それも悲しい。
私はLDH界隈のことはよくわからない。けれど、当時の蘭ちゃんのGirls²内での扱いや先輩女子グループの行き詰まりを思い出してみても、蘭ちゃんがそこから飛び出して広い世界で挑戦してみたくなる気持ちはわかる。当時ファントミダイヤの変身ダンスに一目惚れした人間として、私は彼女の勇気と挑戦を大いに支持している。かっさーがハロプロを飛び出したとき「かっさーが卒業して世界に挑戦してみたくなるのも当然だよ……。上が詰まりすぎだもん……」と多くのハロヲタが思ったように。
ハロヲタとハロメンの多くが桃奈を支持してあふれるほどの応援と投票を桃奈に送ったように、蘭ちゃんと長い付き合いを持つメンバーやスタッフや古参ガルガルファンの皆さんが今の蘭ちゃんを応援してくれることを心から願っている。
そうだ!2019年にネットでファントミダイヤを叩いていた奴ら!私は忘れてないからな!お前ら全員に!今からでも言いたい!「てめえらの目は節穴だったな!お前らみんな、見る目なかった!ガハハハハハハハハハハハハハ!私の勝ちだ!」と。何に向かって勝利宣言しているのか自分でもよくわからないが、中学生の女子たちに無責任な中傷をしていた人間に私はどうしてもバーチャル・お礼参りがしたいのだ。セイラちゃんは当初一匹狼の孤高の怪盗で、なかなか既存キャラと仲間にならない無愛想なキャラ……という「設定」だったから、役と役者を混同しているような書き込みさえ散見されていたように思う。嫌になっちゃうよね。蘭ちゃん、桃奈と同じオーディション受けてくれてありがとね。(2024/05/30文筆)
2023年 ねじ子の楽曲ランキング(前編) ねじ子の俺コンランキング2023です。
2年遅れですが書きます。
1位 想像以上 / PRODUCE 101 JAPAN THE GIRLS
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2023年秋、ハロヲタに激震が走った。元アンジュルムのかっさーことももにゃこと笠原桃奈ちゃんが視聴者参加型オーディション番組に参戦したのだ。卒業時の宣言通り、K-POP系列のオーディションであった。
本当のことを言うと、当時私は番組を見ていなかった。なぜか。それは簡単である。視聴方法がわからなかった 。Leminoってなに?当然のように投票方法もわからなかった。dアカウントを持ってない、いや、自分がdアカウントを持っているのかどうかすらわからなかった のだ。
多くのハロヲタのレベルって実はこんなもんである。我々の腰の重さを舐めないで欲しい。 調べる、インストールする、その面倒くささを乗り越えるだけのモチベーションが沸かなかったのだ。
さらにもう一つ、ハロヲタらしい理由がある。「かっさーが帰ってきた!」とハロヲタが大騒ぎしているなか見たシグナルソング『LEAP HIGH!~明日へ、めいいっぱい~』のMVが、ユニゾンの口パク映像 であった。これは萎えた。ハンドマイクを持っていない。口とマイクの距離を一定にするそぶりもない。誰が欠けても問題がなく、誰がどの声なのかを考える必要もない。秋元グループを思わせる架空の制服衣装を身にまとっていることも、多人数で群舞しつつステージの段差によって序列が明白なのであろう演出も、まったく好きになれなかった。エンタメとしての面白さを感じることができなかったのだ。私個人で言えば「どうせかっさーは実力で受かる。かっさーが落ちるはずがない。あやちょとハロプロが育てた自慢の娘だからな!」と、たかをくくっていた面もある。
放送中に「ハロヲタの組織票が多すぎて迷惑だ!」という声がSNSで流れているのをよく目にした。それは完全に的外れ であることを私は知っていた。だってハロヲタって少ないから。そんな人数いないことは長年身にしみてわかってるから。しかも、自分の周囲のハロヲタは番組を見てさえいなかった。いやあ、年老いると新しい文化の扉を開くのがおっくうになっるのよ。我々の年寄りぶりを舐めないでほしい(2回目)。 私の体感では、番組を見ていたのは全ハロヲタのうち約半分。残りの半分は口パクのステージにまったく価値を感じない人種で、K-POP全般を(おそらく今のME:Iも)うっすら苦手で避けてるタイプ。そして番組を見ていた半分のハロヲタのうち、かっさーに投票し続けたのはおそらく半分くらい。つまり桃奈に熱心に投票していたハロヲタは全体の4分の1程度だと推測する。
そもそも「モーニング娘。」の「現役」メンバーにしか興味がないハロヲタは多い。想像以上に多い。ハロヲタの中で一番多い派閥だと思う。アンジュルムに興味がなく、さらにその卒メンである桃奈のことをほとんど知らない(正確には研修生実力診断テストの衣装しか知らない)ハロヲタも多いはずだ。
投票第2週において、桃奈は4位の票しか集められなかったという。妥当だ。以前から桃奈を知っているハロヲタが「決め打ち」した投票数として、そのくらいが現実的な数字だと思う。ハロヲタの数ってそんなもんだろ。我々に111万の投票力があるはずもない。ハロヲタがそんなにいるはずない。そんなこと我々が一番よくわかってる。そんなもんがあったらとっくにSSAも地方アリーナも東京ドームも埋められてるんだよ!!!!!
いろいろあって桃奈は圧倒的な差をつけて一位でデビューを勝ち取りグループのリーダーになったようだ。おめでとう。見事だよ。桃奈一人だけ、ここに来るまでにばらまいた伏線の量も長さも違うもんね。一人だけ違う「戦(いくさ)」をしてる。おそらく番組の中でも彼女は完璧な物語を描いたのだろう。周囲の人間は「ずるい」と思ったかもしれないが、そんなことはもういいのだ。「勝ったもん勝ちや!」って四天宝寺中学の皆さんも言ってるし。
……さて、ここまでが2023年末当時の私の記憶である。
私が日プ女子に、いやME:Iに始めて興味を持ったのはその4ヶ月後。ME:Iがデビュー曲『Click』をTVの歌番組でつぎつぎ披露し、その中で「生歌論争」が行われていることに気付いたときであった。大変申し訳ないことに、私はずっとME:Iは完全口パクであり、パフォーマンス時にいつも同じ音源を流していると思い込んでいた。でも違った。音源の上に生歌が乗っている、いわゆる「かぶせ」のようだ。ハロプロのコンサートでも曲によっては「かぶせ」をしている。
生歌もちゃんとやる意思があるのか。それに気付いた私は初めてME:Iに興味が沸いた。デビュー曲『Click』もわりと好みであった。ようやくグループ創世のオーディション番組である日プ女子を見る気持ちになった私は、2024年4月に「日プ女子 視聴方法 無料」と初めて検索した。Leminoなんてアプリは聞いたこともなかったし、視聴できる環境にたどり着くまで苦労した。新しい巨大なコンテンツにふれるための「私自身の」コンディションがようやく整った、とも言える。
日プを一話見てわかった。
なんだ、これASAYANじゃないか。
「カメラの入った公開合宿オーディション」がまずASAYANであり、モーニング娘。創世の歴史である。その中で行われる個性的なプロトレーナー陣による熱血指導。それによって泣く姿、努力するさま、協力する様子をカメラが逐一とらえて流す。一人一人のスキルが上昇していく、それが一番のエンタメになる。見ている方も感情移入しやすい。これはまさにASAYANが25年前にやっていたことである。モーニング娘。もそうやって作られたし、太陽とシスコムーンもそうだった(サンフランシスコで合宿審査したから太陽(サン)とシスコムーン)。デビュー前の一般人を残酷なほどはっきりと画面にさらし、見世物にし、メンバーをしっかり比較したうえで容赦なく切り捨てていく。ああ、これもASAYANだ。モーニング娘。も8期まではこれを放送していたのだ。このエンタメを地上波で供給できていた。
私が最初に食わず嫌いしていた「AKBっぽさ」は、制服衣装と視聴者投票システムだけだった。その視聴者投票システムだって、ASAYANのモーニング娘。6期オーディションの国民投票の方が先にやっていたことだし。どうしてやらなくなってしまったの?モーニング娘。だって昔はこれができていた。国民投票をまるで無視したメンバーを選んで視聴者の顰蹙をかったのがダメだった?しかもそのとき投票一位だった女性がアダルト業界へ行ってしまったから?それとも8期オーディションで落とした柏木さんと指原さんがAKBに入ってハロヲタをごっそりさらっていってしまったから?だからオーディションを公開するのやめたの?それともAbemaでハロプロ20周年オーディションを大々的に放送してもらったのに「合格者はゼロ!全員研修生に誘います!」というひどい不義理をやってハロヲタすらもドン引きさせたから?あれよく怒られなかったよね?いや怒られたのかな?私がAbemaならキレるけどな。
まとめると、①ASAYAN の合宿オーディションと個性的なプロトレーナーによる熱血指導の公開システムに、②AKBの視聴者投票 で決まった順位を公開放送するシステムを盛り込み、さらに③韓国の練習生組織 の中で行われている「定期的にグループを組ませ発表会して個人評価する」ステージを盛り込んで、お金をかけてショーアップしたのがPRODUCE101シリーズ(略して「プデュ」)なんだろう。なるほど、これは上手くできてる。 ハロヲタは夢中になるに決まっている。だってASAYANだから。私もASAYANロックヴォーカリストオーディションでモーニング娘。を(正確には福田明日香さんを)大好きになったクチだ。だからこういうの大好きよ。まんまとはまった私は、どんどん日プ女子を再生し始めた。
私がずっと前から好きだった女の子がもう一人いる。石井蘭ちゃんだ。ファントミダイヤだ!セイラちゃんだ! 当時ここ★ に書いたけど、私はファントミダイヤに鞘師の面影を見ていた。 ファントミラージュが放送されていたのは、ちょうど鞘師がステージにいない時期だったのだ。赤い衣装でひときわキレのいいダンスを踊って変身するファントミダイヤに私は鞘師の幻影を見ていた。失礼な話である。本当にすみません。極上のダンサー二人を比較したり、どちらかにどちらかの幻を見るのは両方にとって失礼だ。わかってる、ごめんなさい。本当に申し訳ない。ダンスを語る語彙を持っていない私にとって「鞘師に見える」というのは最大級の褒め言葉だったです。亡霊の戯言だと思って許してほしい。まぁとにかく私は紅羽セイラことファントミダイヤが大好きだった。あと『私がモテてどうすんだ』は2020年楽曲ランキング8位 にしてたね。
セイラちゃん、じゃなかった蘭ちゃんがいるじゃないか! しかも一話からアンジュルムを大好きだと言ってくれてるぞ!マジで!?ありがと蘭ちゃん!確かアンジュとガルガルって対バンしてたよね?(これ★ )蘭ちゃん最高!ガルガル辞めちゃったの知らなかったよ、結構最近までいたよね?と思いながら見たのがこれらである。
TOKYO GIRL
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蘭ちゃんのキリングパートと、蘭ちゃんを左右でシンメトリーに支える桃奈と恵子ちゃんが素晴らしい。
蘭ちゃんのダンスの実力はファントミダイヤの頃から折り紙付きであった。しかし、Girls2の中で蘭ちゃんはあまり推されていなかったよう思う。その境遇はどこか桃奈に似ていた。ハロプロとLDHという日本では「かなり大手」 の事務所に所属しながらも、その中で順番がまわって来ない。そもそも所属グループ自体があまり推されていない 。実力はあるのに、グループの露出量が極端に少ない。グループの中での役割も少なく、別の子がセンターとして推されている 。このまま順番をじっと待っていても、私がメディアに映る機会は来なそうだ。女性アイドルの寿命は短い。時間がない。チャンスを求めて外へ出よう!!!……そう思う気持ちはよくわかる。桃奈と蘭ちゃんは境遇が似ていた、と私は勝手に思っている。二人が同じオーディションに参加してよかった。蘭ちゃん、挑戦してくれてありがとう。蘭ちゃんに投票してくれた国民プロデューサーの皆さんもありがとう。
桃奈の話に戻ろう。桃奈と心ちゃんの最初のアクト、rebloomの『アイドル』において桃奈が(自分のA評価ではなく)心のA評価で泣き崩れたとき、そして第一回順位発表会で桃奈が唐突に「私は心ちゃんを愛しています」と宣言したとき、私は桃奈が一位になった理由をはっきりと理解した。
オーディション番組は上手くアングルを組むことができた人間が勝つ。物語を作った奴が勝つ 。そう決まっている。桃奈はこの時点ですでに優勝を決めていたのだ。
桃奈は自分の物語を作るのが上手い。流行の言葉でいえば「ナラティブ」ってやつだ。これが桃奈は昔から上手かった。アンジュルムを卒業して消息を完全に絶ち、一般人になってから韓国に単身レッスン留学に行って2年後にこのオーディションに参加するまで、桃奈は着々と物語を仕込んできた。そして彼女はここで自分が積み上げてきた長い物語をいったん捨てて、「心ちゃんが主役の物語を」「心ちゃんといっしょに」作ることに決めたのだ。
なんで彼女がそんな決断をしたのかわからない。
だって私は、出番前の桃奈が心ちゃんに「あなたのためのステージだよ」と言ったとき、「はぁ?何言ってんのよ!?桃奈のためのステージでしょーが!?私は!!あなたのためだけに!Leminoくんだりまで来てこの番組を見ているんだよ!?」と画面の前で叫んだのだ。でも、桃奈はそうじゃなかった。心ちゃんと組むことになって一緒に練習した短い間に、彼女は自分の物語を完全に捨てて心ちゃんの物語を作りあげることに決めていたのである。
そしてそれは完全に上手くいった。rebloomは完璧な再生の物語を見せた。心ちゃんも桃奈も泣きながらぎゅっと抱き合っているのをカメラが映しだす。
ああ、これは一位を取るわ。相変わらずだな、桃奈!この人たらしが! この感触はかみかさ(アンジュルムの上國料萌衣ちゃんと笠原桃奈ちゃんのペア)に似ている。かみかさもすごく魅力的だった。かみこはグループ一番下の末っ子かわいがられポジションを、早々に桃奈に取られた。かみこはそれに当初反発していた。しかしいつのまにか二人はいてても仲良しになって、最終的にはかみこから桃奈への愛の方がずっと重くなっていた。あのときと同じだ。やってんな桃奈!
……ちょっと昔話をしよう。アンジュルムで桃奈と一番仲のよかったかみこは、桃奈の卒業を「卒業を決めて次の夢について話している桃奈はすごくかっこいいなと思います」「桃奈から聞いてるその夢を桃奈と一緒に叶えたかったなって思ってた」と泣きながらも受け入れ、新しい挑戦を祝福した。それがあったから、ハロヲタは桃奈を心置きなく応援することができた。 日プ女子を見たハロヲタ全員が「かみこの言ってた桃奈の次の夢とは、このことか」 と一瞬で理解した。かみこが桃奈の卒業を受け入れてなかったら、私たちはここまで一丸となって桃奈を応援することはできなかったと思う。だってかみこが大切だから。彼女が傷ついたらいやだから。
ハロプロは桃奈に見限られた。 どんなにごまかそうとしても、それはそうなんだよ。「ハロプロの中で私はこれ以上の上がり目がない」と桃奈に判断された。そして悲しいことにその判断は正しい。 だから私たちは桃奈をまったく恨んでいない。ハロプロという組織は、桃奈の音楽性や発信力の高さやK-POP好きな一面をまるで尊重してこなかったのだから。
私はコロナ禍が始まったばかり、緊急事態宣言下の桃奈のこのブログを思い出す。
一気に遡る猿時代 笠原桃奈
しかし翌日、桃奈は「だめになった」とブログで報告した。音なしですら、IZ*ONE『Fiesta』のダンスを披露する許可が出なかった。なぜかはわからない。
いつもこういう顔 笠原桃奈
その2ヶ月後、同じ曲をモーニング娘。の加賀楓ちゃんがカバーし、音声なしで公開した。 なぜかこちらは世に出た。
投稿しました。 加賀楓
別に加賀ちゃんがえこひいきされていたとは思わない。これだけダンスカバー動画が日常にありふれている中で、「音声なしならOK」という判断が通るのも間が抜けていると思う。この出来事からわかることは、当時のかっさーのまわりに「緊急事態宣言下でも供給できるサービスを少しだけでもファンに提供したい」という、かっさーの真摯な思いをくんであげる大人が一人もいなかったということだけである。モーニング娘。には加賀ちゃんのために交渉してくれる大人が(一応)いた、ということでもある。くだらねー、まじでくだらねー。萎えるわ。なんでだめだったの?なんで急にOKになったの?どっちも意味が分からん。若いかっさーが自らの環境にがっかりしたことは、想像に難くない。
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ちなみに桃奈は2024年5月、KCON2024Japanの満員の客席の前でFiestaのダンスカバーを披露した。私は画面の前で泣いた。ああ桃奈、よかったね。ハロプロでこれをやらせてあげられなくて本当にごめんね。私が代わりに謝るよ。
これが桃奈の紡いできた物語(のごく一部)である。桃奈がハロプロを見限るのは当たり前だし、桃奈がハロプロを見限ったところまで含めて 私は彼女のことを愛している。彼女の先見の明と、勇気と度胸とチャレンジ精神を愛しているのだ。それでこそ自主性と多様性を重んじるアンジュルムが生んだ娘だと、誇らしくさえ思っている。
桃奈はハロプロを、アンジュルムを捨てたのにハロヲタに支持された。これは素晴らしいことである。これができる人間が他にどれだけいるだろう。「ハロプロの卒メンが次の投票制オーディションに出たら、またハロヲタ票で無双されてしまう」という意見もあるようだが、それは違う。ここまで長い時間をかけて丁寧に下地を作る人は他にいない。桃奈は若くしてそのような環境を育てることができる言葉使いとネゴシエーションの天才なのである。プロレスで言うならば「ブック」作りが天才的にうまい 。この特殊能力が披露されてしまったのだから桃奈は一位を取る。
……あとになって背景を知れば知るほど、rebloomで桃奈が自分を主役にせず、心ちゃんの物語を支える役割に回ったことは100%の「正解」 なのだ。J-POPアイドルの申し子である桃奈と、K-POPアイドルの申し子である心。ハロプロで5年活動し武道館で祝福されながら円満卒業した桃奈と、1年足らずで理由のわからない脱退を余儀なくされて深く傷ついている心。あえて強気を表に出す桃奈と、あえて不安を口に出す心。シュッとした表情が得意でいつも大人じみていると言われる桃奈と、笑顔が似合う甘い顔の心。何もかもが正反対の二人。投票の舞台はK-POPアイドルの土壌であるPRODUCE 101で、観客もスタッフもK-POPの影響を強く受けている。おそらく桃奈のおかれた立場はアウェイだ。傷ついた心ちゃんの復興の物語を支えるのが正しい。自分の物語を捨てて心ちゃんを支える決意に桃奈が短期間でたどり着いたことが、桃奈の一番の勝因だった。時がたてばたつほどそう思えてくる。それは戦略的に行ったことではなく、あくまで桃奈が自然な気持ちの動きのままに行動したらそうなったのだろう。結果的にそれがベストの戦略だっただけで。それを含めて「桃奈の読みがいい」と言うべきだ。二人の友情は美しい。
日プ女子の番組は後半になるにつれてよくわからないものになっていった。軸を作れずに迷走していたのかもしれない。あまりに多くなった投票数に困惑し、振り回されていたのかもしれない。桃奈と心ちゃんのライバルアングルは「愛しています」によって潰され、蘭ちゃんと美羽ちゃんのライバルアングルは本人たちがまったく乗り気じゃないことが明白だったから、なんとか他に注目メンバーを作りたかったのかもしれない。よくわからない。私はステージと楽曲が素晴らしいものであることにしか興味がないし、後追い視聴なので番組外の炎上情報は一切入ってこない。「どの子も可愛いなぁ、目移りしちゃう。この子(ぱるたん)とこの子(内山凜ちゃん)はハロプロに入ってほしいなぁ」などと、のんきに思うばかりであった。
桃奈のラップはトレーナー陣の評価が渋かった。しかし「賞賛も批判も愛してるわ」という歌詞の持つ力が、そのすべてに勝っていた。あの状況の彼女から生まれた「賞賛も批判も愛してるわ」というパンチラインが持つ力を下げることは誰にもできなかったのだろう。桃奈が一位になった理由を、ここでまたひとつ理解した。
K-POPに強いこだわりを持つ完璧で冷たい氷の女王かのような印象だったシグナルセンターの櫻井美羽ちゃんが、いつのまにか桃奈と仲良しになっていたのにも驚いた。運動会で一緒に風船を割る姿を見たとき、その派生で白雪姫衣装で林檎を派手に飛ばす桃奈に爆笑する美羽ちゃんを見たとき、私は体が震えるのを感じた。いつの間に仲良しになってんだよお前ら!やってんな!(二回目)この人たらしが!(二回目) 桃奈が圧倒的な票数で一位になった理由を、ここでまたひとつ理解した。美羽ちゃんってばこんなに面白い人だったのか。私の大好きな、こつこつ時間かけて上達するマイペースな職人タイプ(コミュニケーションは少し不得手)じゃん!以前から知ってる桃奈と蘭ちゃんがいなかったら、私は美羽ちゃんに投票してたな。
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そしてここらへんで、Lemino再生中に頻繁に挟まれるDocomoのCMが完全なネタバレになることに、私は気が付いた。これは非常に困った。当初は桃奈しか見分けが付かなかった(そして桃奈が合格することは知っていた)ために何の問題もなかったのに、こちらの解像度がだんだん上がってきてしまった。やばい、誰がどの子かわかるようになってきてしまったぞ!これは大いなるネタバレだ!いかん!見ちゃダメだ!しかもLeminoさんってばCM飛ばせないのよ。それどころか、ちょっと早送りしたりちょっと巻き戻したりするだけでも頻繁にCMを挟み込んでくる!不便だ!あんまり使い勝手よろしくない!どうしよう!……そこからは、CMの間は耳をふさぎ、薄目で画面をなるべく見ないように遠くを見ながらの視聴になった。こんな私でも、最後に誰が選ばれるかは知りたくない。
そして最終回。最終順位発表だ。TikTokで女子中高生に圧倒的人気のりんりん姫が二位になり、桃奈が一位になる。すげえなTikTok。今の世界で楽曲が流行するのにTikTokは不可欠なんだな。ハロヲタはTikTokに全然生息してないから守備範囲外だったよ。勉強になった。そして最後に11位で心ちゃんが選ばれ、1位の桃奈が侍泣きをするアップで番組は終わる。
……なんだこれ。おかしいだろ。あまりにもできすぎている。 完璧じゃないか。 桃奈だけじゃなく、rebloomとしても完成された物語 だ。これはエンタメだ。現実なのに最高のエンタメだ。誰が脚本を書いたんだ?桃奈か。ここで私は、桃奈が投票中だけでなくデビュー後も高い人気を保っている理由を知った。
桃奈は昔から伏線を張るのがうまかった。長い時間をかけて自分の物語を作るのが抜群にうまい。あとスピーチもうまい。11歳のハロプロ研修生発表会のときから そうだった。
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もう10年近く前、彼女は小学5年生でハロプロ研修生になった。すぐに行われた研修生発表会ではモーニング娘。の『春ビューティフルエブリデイ』を歌った。まず選曲がいい。すでに引退から数年たっていた亀井絵里ちゃんメインの隠れた名曲だ。音程はえらいことになっていたけど、そんなの些細なことだ。だってこのときすでに桃奈は翌年への伏線を張っていたのだから。
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一年後、桃奈は再び研修生発表会に表れた。選曲はこれまた亀井絵里メインの隠れた名曲『愛しく苦しいこの夜に』。渋い。渋すぎる。「小学生にしてえりりんのオタクとは!すげえ!大人びてる!」と多くのハロヲタがうなった。一年前の伏線回収 であり、えりりん亡霊の心を一気に奪った。衣装もすごかった。おへそが見える白いノースリーブニットにホットパンツでロングの黒髪をサイドに寄せ、12歳とは思えないほど体幹が成長している姿は見るものの度肝を抜いた。ハロヲタを席巻しただけでなく、ハロプロ外でも話題になった。アニメやゲームの話題をする掲示板でこのときの桃奈の写真が貼られているのを私は何度も見たことがある。ロリコン紳士達の大騒ぎにもしょっちゅう巻き込まれていた。そこでは決まって「この逸材を生かせないハロプロはだめだな」と言われていた。ぐうの音も出ません。
二年続けてえりりんメイン曲という「通」な選曲、小学生の突然の成長、それを上品に見せる衣装とヘアメイクで桃奈は堂々ベストパフォーマンス賞を取る。これは中野サンプラザに集まったオタクによる現場投票だけで決まる。プデュでいう「現場票」だ。思えばこの頃から桃奈は長い時間をかけて伏線を張り、自分の物語を作るのが上手かった。現場でファンをつかみ取るパワーもあった。突然振られたときのスピーチも当時から抜群にうまい(この画像の31:46)。小6とは思えん受賞コメントである。桃奈はおおいに注目され、画像がネットを駈けめぐり、半年後にアンジュルムに昇格した。
桃奈は日プ女子というコンテンツの中でも初回(レベル分け発表回)に完璧な伏線を張り、最終回でそれを最も美しい形で回収した。ブック作りの名人 と言わざるを得ない。分量を減らされても、自慢のスピーチ力で順位発表会の短い尺の中で印象を残した。三週間足らずで日プ女子動画のすべてを見終わった私は、桃奈がハロヲタ以外からもたくさんの票を集めて一位になったことに納得した。なるほど、こりゃ一位になるわ。
最後にもう一度言う。
ハロヲタが111万もの組織票を集められるはずがねーだろ!
そんなにいるはずがねーわ! 目を覚ませ!現実を見ろ!!ガラガラの地方公演から目をそらすな!!!!
そんな人数と熱意があったらYoutubeの新曲MV再生回数があんな数字のはずがないんだよ!
さっきも書いただろ、番組を見ていたのはハロヲタの半分。そのうち、かっさーに投票し続けたのはおそらく半分くらいしかいないね。つまり桃奈に熱心に投票していたハロヲタは全体の4分の1程度しかいないんだよ。そう私は確信する。残りの4分の1は、文寧かしーちゃんかぱるたんか内山凜ちゃんに流れたと見るね。それがハロヲタ好みのど真ん中でしょ(断言)。 私たち所詮ドルオタなんだから、自分の欲望に正直に決まってるのよ。111万はなぁ、桃奈が自力で外から勝ちとってきた数字なんだよ!
表題に戻ります。一位に選んだ『想像以上』は、私の再生回数が最も多い曲です。オーディション最後の課題曲であり、デビューできるかどうかわからない極限状態のメンバーが鬼気迫るパフォーマンスをしていて最高です。髙畠さんのセンターが非常にいい。彼女の「イマッジネー」が好き。ハスキーな歌声も大好き。髙畠さん、今からでも遅くないからハロプロに入りませんか?今さらハロなんていやだ?そりゃそうか。すいません。ちゃんみなの方がいいよね。私もそう思うよ。
以下後編へ続く。(2024/6/1 文筆、2025/3/10 完成)
桃奈を紅白で見られるの?期待しちゃっていい? 桃奈を紅白で見られるの?期待しちゃっていい?この夏just for you!? and MEEEEEEEEEEEEE!!!!!!!!!!
冗談はさておきME:Iはマジで小学生に人気があります。Z世代どころかその下のα世代です。私の持ってるソースは三つ。
一つ目。ちゃお2024年10月号『ちゃおっ娘の好きなものランキング2024』好きなアーティスト部門において、ME:Iは堂々3位でした。1位スタート社、2位YOASOBIだったので女性アイドルとしては堂々トップです。
二つ目。息子の小学校の給食の時間に『Click』が頻繁に流れるらしい。高学年の放送委員の中に、おそらくユーミーがいる。
三つ目。それを聴きながら息子は周囲の女の子と「この曲、お母さんがよく聴いてる!」「俺んちも」という会話をしているらしい。なにっ 私以外にもお母さんユーミーがいるぞ!お友達になりましょう!
ちゃお発売日のおはスタでは毎月ちゃおが紹介される。ME:I特集号では「スバにぃはRAN推しだよ」と言ってくれたり(6月号)、「今月の特集はME:Iです!蘭ちゃーん!」と表紙を見ながら叫んでくれたり(10月号)して、本当にありがたい。
これだけ子どもたちに浸透してれば、キッズ人気があると言っていいと思う。
今の小中学生は紅白歌合戦を知らない。番組自体を見たこともないし、番組名を聞いたこともない。そんな世代に一回だけでもいいから番組を見てほしい。YoutubeとTiktokから、少しだけでもこちらに目を向けて欲しい。ME:Iにはそのきっかけになって欲しい。NHKはきっとそう思ったのだろう。その気持はよく分かるし、正しい。私だって桃奈が出るのなら、紅白を見るのだから。里田まいが出場した2008以来実に16年ぶりに紅白を見るし、我が家の子どもはそれに巻き込まれる。
突然だが、ME:Iのキッズ人気には蘭ちゃんが大いに貢献していると私は思っている。
今の小中学生女子は「ひみつ×戦士 ファントミラージュ!」の直撃世代だ。幼稚園/保育園~小学低学年でファントミと一緒に踊って、毎朝おはスタでおはガールやってる蘭ちゃんを見てから小学校に通った世代である。昔から知ってる女の子が、美しい大人の女性になって帰ってきた。煌びやかな音楽番組でダンスブレイクをセンターでゴリゴリに踊ってる。これは嬉しい。たまらなく憧れもするだろう。
我々ハロヲタが、研修生発表会から見守ってきた桃奈の飛躍を見て喜んでるのと同じだ。「長い時間をかけた軌跡がもたらす感動」を、わずか十数年しか生きていない現役小中学生女子たちが蘭ちゃんから味わっている。無名だった頃から見守っていた才能が世の中に認められ、人気になっていくのを見るのは本当に楽しい。成り上がり過程をつぶさに見せてもらえることは大きな応援モチベーションにもなる。おそらくCherry Bulletから見ていた心ちゃんのファンも、Nizi Projectから美羽ちゃんを見ていたファンも同じ感動を噛み締めているのだろう。ME:Iの年上4人はそれぞれ長く多彩な歴史を持ち、その経験がグループを下支えしている。
先日初めて生でME:Iを見たロッキン・オン・ジャパンでも、その強さを感じた。大舞台でも臆さず前に出る度胸とパワーが桃奈と蘭ちゃんにはある。だから二人に目が行く。これは二人のこれまでの経験と場数の賜物だと私は思う。きっと二人は長い間シミュレーションしていたのだ、もし自分が大規模ロックフェスに出られたら、もしCDTVに出られたら、もしミュージックステーションに出られたら……と。先輩グループにすらもたまにしか回ってこない大舞台をじっと見ながら、頭の中で戦略を立てていたのだ。彼女たちはそれを今まさに実行し、夢をかなえている。韓国での仕事のときは、おそらくその役割を心ちゃんと美羽ちゃんが担っているのだろう。
そして年下組・未経験組は、そんなお姉様方に支えられてすくすくと育っている。来年以降はきっと年下組の成長と爆発がステージ上で見られるだろう。焦らずゆっくり個性を出していってほしいし、いろんなメンバーにそれぞれの個性にあった見せ場が与えられることを願う。みんな好きだ。もちろん鼓も大好き。ゆっくり自分のペースで過ごしてほしい。あなたは自分の中に軸がある天才だから何が起ころうとも、外野に何を言われようとも、なんの関係もない。周囲に何を言われようとあなたの価値は少しも揺らがない。何を言われようと私があなたを守る。私ごときに一体何ができるんだって話だが、本気でそう思っている。(2024/12/9)
2022年 ねじ子の楽曲ランキング ※今さら2022年の記事です。新型感染症流行に免じて許してほしい。
※一定期間たったら、執筆時の時系列に記事を移動させます。
1位 KICK BACK / 米津玄師
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アニメ『チェンソーマン』オープニング曲。モーニング娘。往年の名曲『そうだ!We’re ALIVE』からの引用フレーズ「努力 未来 A BEAUTIFUL STAR」が多用されている。
チェンソーマン第一部は、モーニング娘。黄金期の1999年頃の物語である。モー娘。が流行している華やかな世相をよそに、貧乏から抜け出すためだけに戦っている少年のやけくそじみた焦燥感がよく表れている。ごろつき状態で生きるためだけにデビルハンターになった何もない少年・デンジの乾いた孤独感がむき出しで、すごくいい。米津さんが自ら描いたジャケットの絵も最高。
当時を知るハロヲタとしても、このオマージュには大満足だ。満足しかない。しやわせになりたい。ハッピー。ラッキー。こんにちはベイベー。良い子でいたい。そりゃつまらない。努力、未来、A BEAUTIFUL STAR。なんかすごいいい感じ。めっちゃハロプロだ。ハロプロへのオマージュを強く感じる。「しあわせ」を「しやわせ」と歌うのがつんくさんなのだ。「幸せ」はひらがなで「しあわせ」と書くけれど、口に出すとき確かに我々は「しやわせ」と発音している。そんなの考えたこともなかったけど、つんくさんだけは歌に乗せるときにそういうことを考えている。 そして米津さんはそれをきちんと踏襲する。米津さんの「原作理解度の高さ」はこんなところにも現れている。
本家の『そうだ!We’re ALIVE』は「幸せになりたい あなたを守ってあげたい 平凡な私にだってできるはず」と続く。等身大の女子が自分の平凡さを自覚しながらも、幸福に生きる方法を模索する素晴らしい歌詞だ。でも『KICK BACK』では「幸せになりたい 楽して生きてたい 全部めちゃくちゃにしたい 何もかも消し去りたい あなたのその胸の中」になってしまう。とてもデンジくんっぽい。
男子中高生の子ども達は「努力 未来 A BEAUTIFUL STAR」と歌いながらゲームをし、オンライン通話をしていた。これを見るのは私にとって無情の喜びだった。つんく♂さんの珠玉のリリックが当代最高のミュージシャンによって加工され、蘇り、焦燥感あふれる若者達がくりかえし叫ぶネットミームになっている。こんなに嬉しいことはない。元ネタの歌詞が「努力 前進 A BEAUTIFUL STAR」「努力 平和 A BEAUTIFUL STAR」だから、デンジくんが「なんか忘れちゃって」んのは、前進と平和だろうか?
米津さん自ら出演するMVもおもしろかった。思わせぶりで考察しがいのあるMVだ。なぜギャグみたいな肉じゅばんを着てムキムキになってるんだ?そしてすぐ脱ぐんかい!?なんで車にひかれる?東映特撮で頻繁に使われる「例の海沿いのコンテナヤード」でパルクールが突然始まるのはなぜ?「いつもの採石場」こと埼玉県寄居町の大英興業を通って、あれこれ岩舟山だよね?なんで徒競走始まってんの?岩舟山で大運動会するのって、確かに日本の特撮で育った男子共通のロマンなのかもしれないが。ロケハン中の米津さんが突然乱入して先頭走者を突き飛ばし、一位をとった!見事勝利!なんで?すげぇ面白いけど、なんで???そして急にトレーニングジムに戻る。あれ、ここまですべて幻想だった?一緒に体を鍛えていた友人すら消えるってことは、あれイマジナリーフレンドだった?すべてが謎。金と手間がかかっていて、思わせぶりで、勢いがあって、演者も楽しそう。何度見ても満足感がある。
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コロナ禍に無料でオンライン中継されたライブもすごくいい。チェンソーマンのモブ敵(悪魔)みたいなダンサーさんたちの群舞が最高です。
2位 Don’t Boo! ドンブラザーズ / 森崎ウィン
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「暴太郎戦隊ドンブラザーズ」のエンディング主題歌。森崎ウィン氏、歌うめー。田村芽実ちゃんのウェスト・サイド・ストーリーのときはハロオタがうるさくてすいませんでした。
さて、私は井上敏樹氏の脚本が好きだ。私がニチアサを見るようになったのは井上御大のおかげである。
私と井上脚本との出会いは深夜の大人の女性特撮テレビドラマ『キューティーハニー THE LIVE』であった。ハロプロのカラオケ番組『歌ドキッ!』のあとに実況しながらついでに見ていた『キューティーハニー THE LIVE』が非常に面白かった。キューティーハニー THE LIVE最終回、番組が終わってしまったことをハロオタが集まる匿名掲示板上で残念がっていたら、「だったら同じ井上脚本の仮面ライダーキバを見たら」と教えてもらったのだ。ありがとう、あのときの見知らぬハロオタの御方。ミュージカル・テニスの王子様で三代目菊丸をやっていた瀬戸康史君(当時は瀬戸丸と呼ばれていた)が主役ということもあり、「じゃあ仮面ライダーキバを見てみるか!」と思ったのが私のニチアサ視聴のきっかけである。だから私はキバが大好きだし、キバにやたらとしゃしゃり出てくる電王という一個上の先輩のことを疎ましく思っていた(その後きちんと電王も見て、電王も大好きになった)。
『暴太郎戦隊ドンブラザーズ』で久々に井上敏樹先生が帰ってきた。井上先生が通年でシリーズ脚本をするのはキバ以来である。子ども達は井上脚本を知らない。正確に言うとジオウのマンホールしか知らない。井上脚本の登場人物のキャラ立ちの早さ、繰り返される情報伝達不足からのすれ違い、精一杯生きる人間同士が対立する群像劇。ふんだんに盛り込まれるキザったらしい台詞。毎週のように浴びせられる、むせかえるほどの井上節。おいしそうな料理と食事シーン。「このあとどうなるんだよ!?」と毎週思う強い引き。だんだんと恋に落ち、だんだんと引かれあう登場人物たち。対立する中でも少しずつ共闘する理由が描かれ、最後は納得する落ちを迎えること。ヒーローであっても人を殺したものは罰を受け、怪物であっても人を殺していないものは生きのびて市井で暮らす、勧善懲悪のさじ加減。子ども達はすべて初めて見るのだ。きちんと毎週見ていたし、はまっていた。ロボがとにかく巨大で、ロボ戦になっても誰が乗ってるかわかりやすいのもよかった。
ただ、大人である私が見ると納得がいかない点も多かった。キャラ立ちの上手さとキザったらしいポエムはもう100点満点の井上脚本だ。大満足だ。大満足なんだけど、夏美とみほちゃんはまったくの別人だよね?それでいいの雉野?犬塚の人生もそんなんでいいのか?それほんとにハッピーエンド?設定を細かく考えることを放棄しているかのようなドンキラーキラーやムラサメまわりの適当さなど、ところどころ唐突な展開に見えてしまった。過去の井上脚本にある「後半になるにつれて前半の謎が晴れ、だんだん辻褄があっていく気持ちよい爽快感」や「後半になるにつれて決裂が決定的になっていく仲のよい二人の絶望感」が足りなかった。私の中の井上脚本特撮基準で採点すると、キューティーハニー THE LIVEが200点、ゴーカイジャーのジェットマン回が150点、仮面ライダーキバが140点、仮面ライダー555が120点、ドンブラザーズは80点。近年のスーパー戦隊シリーズとしては文句なしで100点満点なんだけど、井上敏樹脚本としては私の中で80点。贅沢を言っていることはわかってる。忘れてくれ。
さて、このエンディング曲は物語の最後に、ドラマにかぶせるように流れはじめる。「どんぶらこ どんぶらこ どんぶらゆらり揺れて 目指すはどんなハッピーエンド?」という歌詞が、どうなるかわからないトンチキな引きにかぶさって毎週流れるのだ。それが非常によかった。確かに毎週、いい意味でも悪い意味でもドラマは大きく揺れていた。どんな絶望的な展開でも「ハッピーエンドを目指す」と明言された歌詞が流れるのは非常に心地よく、来週まで待つための希望になった。すべての登場人物が、自分にとって精一杯のハッピーエンドを目指す。それぞれのキャラが生きているって結局そういうことだと思う。キャラクターが書き割りではなく、物語のための駒でもなく、それぞれに「生きている」ならばそれぞれ幸福を目指すのは当然のことなのだ。
井上敏樹先生はSPAのインタビューで「正義とはなにか」という質問に「あえていうなら、それぞれが一生懸命生きるってことじゃないかな」と答えた という。そうだ、それがヒーローだ。仮面ライダーオーズ続編で「主人公を殺す」というオチ──おそらく上層部によってあらかじめ決められたゴミみたいな落ち──のためだけに、ヒーローであったはずの登場人物が全員、最善を尽くさない無気力で無能な人間に改悪されたことにひどく気付いた私の心に、井上先生の言葉は深く染みわたった。
3位 俺こそオンリーワン / 森崎ウィン
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上に同じ、暴太郎戦隊ドンブラザーズ主題歌。これはオープニングの方。歌詞が聴き取りやすい。男子一人でも歌える。大声で番組タイトルを叫び、終始テンションが高いオープニング主題歌。最高だ。特撮主題歌として必要な条件をすべてかね備えている。文句なし。「どんどんどんどんどんどんどん!いぇぇぇぇえええええええええい!」と力いっぱい叫んで踊りたくなる勢いが、この曲にはある。
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OP映像はキャストによるダンスがついている。ドラマに使える時間を確保するためにエンディングの時間を節約して、オープニングにダンスを入れるという手法は『ゼンカイジャー』で確立した。子どもはダンス主題歌が大好きだからとてもありがたい。毎年きちんと踊ってほしいし、毎週きちんと踊ってほしい。レクチャー動画が無料でYoutubeで見られるのも嬉しい。
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4位 戦闘!カシオペア / 『ポケットモンスタースカーレット・バイオレット』より
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久方ぶりのポケモン本編『ポケットモンスタースカーレット・バイオレット』は素晴らしかった。なんといってもストーリーがいい。なんとシナリオ三本同時進行である。オープンワールドで自由度が高く、ある程度好きなやり方で進めるシナリオが三本あり、同時平行で進む。どこからはじめてもいい。三つの物語にはそれぞれ中心人物がいて、友達になる。物語は最後に一つにまとまって、主人公(私)と友達三人が集まり、全員で未踏の奥地に進みラスボスを倒す。オープンワールド・ゲームなのによく練られた物語構成で、素晴らしかった。
ポケモンはここ何作か「ポケモンらしい物語」と「時代に追いついた最新のゲーム性=オープンワールド」をどう両立するか、を模索していたと思う。『ソード・シールド』では「ワイルドエリア」というごく一部の地域だけをオープンワールドにすることで対応した。『ダイヤモンド・パール』のリメイクではオープンワールドをあきらめ、旧作をそのまま3Dリメイクした『ブリリアントダイヤモンド・ダイヤモンドパール』と、完全新作オープンワールドの『ポケモンレジェンヅアルセウス』のふたつにゲームを分けた(結果、『ブリリアントダイヤモンド・ダイヤモンドパール』は旧来のファンから非常に不評であった)。
そして最新作『ポケットモンスタースカーレット・バイオレット』において、おもしろい物語とオープンワールドが見事に両立した。しかも三本の本筋(①ジムバトルからチャンピオンになる・②秘伝技を手に入れつつ伝説のポケモンを探す・③悪の組織を倒す)の並列。最後に三つが収束して世界の謎が明かされる。すばらしいと思う。ここまで物語が練れているのなら、オープンワールドのグラフィックがガタガタでも許す。全部許す。ミライドンが壁に埋まっているくらいご愛敬である。
『戦闘!カシオペア』は三つの物語の中の③いわゆる「悪の組織」のラスボス曲だ。ジャンルはハードコアテクノ。曲全体で響く低音のリズムはガバキックというらしい。勉強になる。
ポケモンの戦闘曲って、考えてもいなかったジャンルの曲が突然飛びこんでくるんだよね。おそらく敵のキャラクターに合わせて、いろんなジャンルの楽曲を意図的に持ってくるようにしてるんだと思う。私はそれを聴くのがすごく好き。いろんなジャンルの勢いのいい楽曲が流れてくるから、聴いていて楽しい。飽きない。戦っていて楽しいし、やる気が出る。歌詞のないリフレイン構造なので作業用BGMにもぴったりだ。
この曲がハードコアテクノというジャンルなことも、キャラに合っている。「学校に反抗したいじめられっ子」のボス・カシオペアの性質がよく表れているのだ。機械に詳しくて、コミニケーションが苦手で、引きこもりがちだけど内なる攻撃性を秘めていて、趣味はめっちゃファンシーで、ぬいぐるみみたいなリュック背負ってて、出すポケモンはブイズ統一。可愛いものが大好きな引きこもり病み系女子で赤髪丸眼鏡でBGMはハードコアテクノ。最高じゃね?好きだ。
5位 戦闘!ゼロラボ / Toby Fox
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上と同じ、ポケモン本編の戦闘曲。『UNDERTALE』で『MEGALOVANIA』を作ったToby Fox氏の曲である。Tobyさんがポケモンにたくさん曲を提供してくれて嬉しい。これはラストバトルの曲である。チャンピオン戦の後も物語が続くのはこれまでのポケモンの常識をくつがえしており、新鮮だった。ライバル達と雑談しながら力を合わせて未知の世界を探索するのも遠足みたいで楽しかった。『龍が如く7』のサブクエストみたいでワクワクした。重要なネタバレになるのでどこまで書くか悩ましいけれど、世界を作った人物とその子どもの成長物語が最後に見られたのも、とてもよかった。
6位 クマさんからのおねがい / 『スプラトゥーン3』より
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Nintendo Switchのシューティングゲーム『スプラトゥーン3』ストーリーモード最後の一曲。
『スプラトゥーン3』のストーリーは、なんと『スプラトゥーン2』の途中から加わったミニゲーム「クマさん商店」の謎のバイトの正体が解明される話であった。驚いた。当時、「なんで突然木彫りのクマに命令されるの?」「哺乳類は絶滅したはずだから、木彫りのクマに意志だけが残った状態なのか?」という疑問は確かにあった。でも、それはそれ。「ゲームなんだから面白ければよかろう。細かいことは気にしない」と思っていた点が、すべて解明されたのだ。
バイトのミニゲームは面白かったし、ゲーム内ミニゲームが追加コンテンツとして加わることはマンネリを防ぐ意味でもよかった。つまりは大歓迎だった。伏線が仕込まれてるなんて思ってもいなかった。いやあ、そうきたか。私はテンタクルズの謎(敵対していたタコであるイイダさんの紆余曲折)が解明されると思っていたんだけど、まさかクマさんとは。びっくりした。すごくよかった!もちろん、テンタクルズのその後が見られるであろう追加コンテンツも楽しみにしています。
クマさんがだんだん壊れていく不協和音が最高です。敵にガンガン攻撃されながら聴くと、生命の危機を感じながら宇宙空間を飛んでいる浮遊感と恐怖を味わえます。100年後の人類ならば日常的に感じる不安感なのかしら。未来を疑似体験。
7位 蛮殻ミックスモダン / すりみ連合 スプラトゥーン3
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スプラトゥーン1のメイン・パーソナリティはイカの女の子二人組のシオカラーズであった。スプラトゥーン2はのイカ女とタコ女の二人組テンタクルズ。そして今回、スプラトゥーン3はサメ使いのタコ女とウツボ使いのイカ女とマンタ男の三人組・すりみ連合である。サメもエイもウツボも「すり身」の原料だからすりみ連合なんだね。なるほど。いや次は男子入るよな。「男子二人組だとスプラのイントロ特有のハイテンション感がなくなっちゃうかな、どうなるかな」と思っていたのだが、女子二人・男子一人の三人組か。なるほどいいね。私の好みは京都弁だけど上品というよりはヤカラっぽいフウカちゃんです。
この曲はフェス中に広場でわんさか流れる。三台の大きな山車が出て、音楽に合わせてすり身連合の三人がそれぞれの山車の上でソロで歌い舞い踊る。京都女フウカは和風、ウツホちゃんは中東風、マンタローはサンバ風、と時間帯にあわせてアレンジも変わる。フェス後半の2日目は、3人が一台の神輿に乗ってEDMミックスされた曲(マンタローがミックスしたという設定)を歌い上げる。とても凝っている。もともとの曲調自体も多国籍で、混沌が支配するバンカラシティにふさわしい。
ライブも最高。下の動画の35:00 から
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スプラ3戦闘曲の中では「張拳(ハリケーン)ゴーアヘッド」が一番好き。この動画で6:27から。ゲーム・ミュージックなのに、しかもバトル中の曲なのに、メロディアスなサビをもつ曲を私は結局一番好きになっちゃうんだなぁ。J-POPで育った人間なのでしかたない。
7位 CHAINSAW BLOOD / Vaundy
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アニメ『チェンソーマン』のエンディング曲。チェンソーマンのエンディングは一話ごとに変わる超!ぜいたくな仕様であった。曲も映像も変わる。豪華。豪華すぎる。しかもどれも名だたる歌手が力を入れて作った名曲で、チェンソーマンの物語展開と曲のコンセプトが完全一致しているのだ。すごい。ソニーの本気を感じる。アニメタイアップをつけることがいまや最も日本中、いや世界中に歌を聴いてもらうために有効な方法である。アニメは世界中で再生される。そのついでに曲も流れる。そして一定数の耳に届く。これだけ音楽コンテンツがあふれている昨今、新しい楽曲をなんとしてもリスナーの耳に、くりかえし流し込む方法として、最も効果的なのはアニメの前後に毎回曲を流すことなのだ。実はここで最も重要なのは「くりかえし」である。そう、くりかえし。
チェンソーマンの一回で終わっちゃうエンディングはこの「くりかえし」がない。一回限りで変わっちゃうから。チェンソーマン第二話を見た私の感想は「えっVaundyさんじゃないの!?」であった。Vaundyさんが聴きたいんだよ。くりかえし、何度も、毎回ききたいんだよ。映像コンテンツのエンディング曲は、凄惨な物語から現実の日常に帰るための「儀式」としての役割がある。Vaundyさんの「CHAINSAW BLOOD」は、グロテスクな物語から日常へ戻るためのスイッチとして、一話の時点ですでに私の中に組み込まれていた。同じ曲が同じように流れるという反復は、「物語はめちゃくちゃで思いもよらない方向に進んでいくけれど、私の世界はいつもと変わらない」「この物語を見終えた私はいつもの日常に帰っていく」という気持ちの切り替えポイントなのだ。だから同じものが同じように流れる必要がある。その時間にトイレにだって行けるし、お茶を入れに立つこともできる。エンディングで毎回違うものが流れたら、気が抜けない。日常からの変異がまだまだ続いていると脳がとらえてしまう。結果として、耳に曲が残るまで至らない。物語と曲が一体化して、曲とともにアニメ視聴当時の思い出がよみがえってくる、という「タイアップ曲だけが持てる魔法」も薄れてしまう。もっとCHAINSAW BLOODが聴きたかった。残念だ。毎回CHAINSAW BLOODでよかった。もちろん「ちゅ、多様性」も好きだしマキシムザホルモンさんの曲も好きだ。どれも単品で好き。これだけ名曲のストックがあるなら、この後も続くであろうチェンソーマン映画や二期にまわしたってよかったと思う。もったいない。
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6位 M八七 / 米津玄師
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映画『シン・ウルトラマン』主題歌。もう完璧。
『シン・ウルトラマン』の映画自体は、『シン・ゴジラ』にくらべると一見さんに伝わりにくい内容だったと思う。いや私はウルトラマンの初代TVシリーズをすでに全話見てしまっているので「なるほど!メフィラスはこう処理したか!さすがだ!」「ゼットンはこうきたかーなるほどー」といちいち全肯定のうなりをあげることが多かったのだが、ウルトラマンまったく知らない人たちは果たしてどうだったんだろう。大丈夫なのか?理解できたのか?なんだこれ?のオンパレードにならなかったか?ゼットンってなに?え、ウルトラマン死ぬの?ゾフィーって誰だよ?唐突じゃね?と首をかしげるばかりにならなかっただろうか。不安である。
しかしそんな不安を全部吹っ飛ばすのが、『M八七』米津玄師。さすだがだよ。ぜんぶぶっ飛んだもん。ゼットンが来るの唐突じゃね?とか山ちゃんボイスのゾフィーって何?とかそもそも斎藤工なんでウルトラマンになってるの?みたいな疑問やモヤモヤや唐突な終わり(すべて原作ママ)を全部ふっとばす歌声とメロディ。圧倒的説得力。ぶつ切りのように突然エンディングが流れ始めたら、ぶつ切りのように突然だったはずなのに「そっか、ウルトラマンってば人間を大好きになっちゃったんだね。じゃあしかたないね」「地球を守ったんだね、身を挺して人間を守ったんだね、BIG LOVEだね」という感情がなぜかこみ上げてきちゃうんだもん。こんな私でも泣けてきちゃうんだからすごい。説明不足(原作ママ)などどうでもいいと思わせる、すべてを吹っ飛ばす歌声であった。この曲を十全に味わうために映画を2時間見たと言ってもいい。
ちなみにサブスクに降りてきてから子どもと一緒にもう一度『シン・ウルトラマン』を見た。長男(中学生・ウルトラマンゼロ世代)の感想は「面白かった」、次男(小学校低学年・ウルトラマンZ世代)の感想は「いつ終わるのこれ。長いよー」であった。是非もなし。
来年に続く。ようやく時代に追いつけそうだ!やったね。PRODUCE 101 JAPAN THE GIRLSの曲をハロプロ楽曲に入れようか入れまいか、ちょっと悩んでいます。うーん、入れない方がいいんだろうな。(2024/06/11)
2022年ハロプロ楽曲ランキング ※今さら2022年の記事です。新型感染症流行に免じて許してほしい。
※一定期間たったら、執筆時の時系列に記事を移動させます。
2022年はハロプロから少し遠ざかった一年になった。理由は四つ。
一つ目。 私は自由恋愛でクビになるメンバーが出ると、ハロプロという組織への関心が途端に落ちる。歌が好き(声質や歌唱力が好き)なメンバーでそれをやられると、さらに萎える。私がなぜハロプロを見続けているかって、「歌が聴きたい」からだ。「上手な生歌が聴きたい」という絶大な欲求の前には、メンバーの恋愛事情などささいなことである。それなのに、後者のせいで前者がつぶれる状況を見ると応援する気が失せる。
二つ目。 新型コロナウィルス感染症流行のせいで自分自身の予定が立たない。チケットの転売がオリンピックによって規制され、東京都内で1000~2000人規模のコンサートができる箱が減り、ソーシャル・ディスタンスの確保や座席数制限のために公式のチケット数も少なくなった。すいている公演に当日ふらっと入ることもできなくなった。
そのかわり、オンラインサービスが格段によくなった。コンサートやイベントの配信も増え、時間を気にせずお茶の間で消費できるコンテンツが増えた。結果として、映画館のライブビューイングや配信でコンサートを見る機会が多くなった。
三つ目。 コロナのせいで新曲が出るペースが落ち、新しい曲があまり出なかった。これはもうしかたのないことだ。つんくさん♂の提供楽曲も少なかった。もっとくれ。毎年これを書いてる気がするけど、つんくさんの曲はなんぼあってもいいですからね。たぶんこれからも言い続ける。
四つ目。 一番好きだった金澤朋子ちゃんが引退し、二番目に好きだった高木紗友希ちゃんは理不尽に更迭され、三番目に好きだった佐藤優樹ちゃんが娘。から卒業した今、どうやってモチベーションを保てばいいのかわからない。これは非常に個人的で普遍性がなく、でもアイドルを応援するには一番要なモチベーションの問題である。
2022正月ハロコン の記事で私は「2022年は一推しを探す行程の旅路になる」 と書いた。その通りだった。私はいま「推してるメンバー」略して「推しメン」がいない。いわゆるDD、誰でも大好き である。今の私のペンライトは、卒業コンサートでは卒業メンバーの色になり、そのときステージ上でMCしてるメンバーの色になり、そのとき「いいな」と思ったメンバーの色になる。ゆるやかに地元のスポーツチームを応援しているような、おだやかで凪た心持ちだ。感情に凹凸がない。心が揺れない。「チケットが取れたら、空いた時間にふらっと試合(コンサート)を見に行こうかな。会場近くでついでにおいしい定食でも食べよう」くらいの感覚だ。
以上四つにより、2022年の私は多くの時間を「お茶の間」のオタクとしてすごした。OCHA NORMAのオタクでもあるけれど、お茶の間のオタク。こたつに入ってモニターの前でお茶を飲みながら、または布団の中でスマホ片手にニヤニヤしている、それが私だ。私はすっかりゆるやかに過ごしている。
新型コロナウィルス感染症はこれからきっと、ありふれた一般的な病気になっていくだろう。コンサートもだんだん元のかたちに戻っていく。そんな中で、医療従事者である私がコンサート現場に戻ることはできるのだろうか?マスクなしの狭い会場で、たくさんの人に囲まれた状態で全力でコールできるのだろうか?声出し可のコンサートを、心から安心して楽しむことができるのだろうか?未来のことはわからない。わからないなりに、これからも私はおだやかにハロプロ好きとして過ごしていこうと思う。
1位 Hello! 生まれた意味がきっとある / HELLO KITTY
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つんく♂さん最高。キティちゃん最高。さすが世界のアイドル・ハローキティだ。50年近くも「かわいい」で世界を背負って立ってるだけある。ハロプロの尻の青い十代の小娘たちが、キティさんにかなうはずもない。年季の入ったアイドル性をきらきらと周囲にまき散らしている。あまりにも華やか、あまりにも堂々としている。
しかもキティちゃんってば、めっちゃ歌がうまい。リズムも完璧、音程も完璧。その上でしっかりキティちゃんを演じる声。それをハロプロ歌唱でやってのけてる!ハロプロ独特の語尾上げやしゃくりが、随所に埋め込まれているぞ!なんだこれ。林原めぐみさんまじですごい!
そして、この曲はなんと言っても歌詞である。歌詞だよ。まじでつんく♂そのものの、ハロプロそのものの歌詞なんだよ。
タイトルは『Hello! 生まれた意味がきっとある』。重い。やたら重い。私の隣で聴いていた息子(中学生)はタイトルを見てすぐに「重いな」と言い、「生まれた意味が『きっと』あるって、これ、現状では生まれた意味を感じてないってことだよね……?」とつぶやいていた。うーん、そうなっちゃうよね。私もそう思う。
楽曲を聴いている間にも彼は「きっと?きっと?」「転んでも再チャレンジ?恨んでもしょうがない?いや、重いよこの歌」とつぶやいていた。私は笑顔でこう返した。
「え?なに言ってんの?めっちゃくちゃ明るくてかわいい希望に満ちたアイドルソングじゃないか。ほら見てよ!キティちゃんだよ!世界一かわいい!世界一輝いてる!フレッシュな十代女子たちを後ろに従えて、堂々とセンターで踊ってるじゃん。『かわいい』しかない世界だよ?明るく何回も『いえーい!』って叫んでるし!ほら、つんく♂さんのラーナーノーツ 見て!『キティちゃんといっしょに歌ってくれるちびっ子のみんなもお父さんもお母さんも一つになれるようなそんな曲をイメージして作りました。 』って書いてあるよ!」
「いやいやいや。『生まれたからは そう“きっと” 意味があるんだよ』って、いま生きてる意味を失ってる人からしか出てこない言葉だよね……?」
「いやだなぁ、気のせいだよ!深読みしすぎじゃない?」
「いやいやいや」
「……本当のこと言うと、この重さこそがつんく♂さんなんだと思う」という会話をした。
その後Youtubeが勝手に続けて再生した『ザ・ピース!』キティちゃんバージョンにも、彼は「いやこの曲もちょいちょい重いな」とつぶやいていた。ばれたか。
ザ☆ピ~ス! / HELLO KITTY
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つんく♂さんのライナーノーツ
※キティちゃんの中の人の声が変わってしまって悲しい。キティちゃんさんの『LOVEマシーン』『ザ・ピース!』歌ってみた動画も非公開になっていた。悲しい。これからの若い観客がこれを聴くことができないなんて大いなる文化的損失だ。
2位 プラトニック・プラネット / Juice=Juice(Ultimete Juice Version)
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2019年の代々木コンサートで初披露された名曲。なかなか音源化されず、ファンはずっとやきもきしていた。その間に多くのメンバーがグループを去っていった。この曲の輝きはもう失われてしまうのだろうかと危惧していたが、なんと!Ultimete Juice Versionという名義でほぼ初期と同じパート割でアルバムに収録されることになった。よかった。やはりこの曲は佳林ちゃんのクリスタルボイスの「ちょっぴりいい感じなんじゃないの?」がないと始まらないよ。あと落ちサビの朋子「絶対あなたじゃなきゃヤだよ」→ 紗友希「飛び出してプラトニック・プラネット」も不可欠だね!
当時のJuice=Juiceのメンバーが揃った歌割が聴けて私はすっかり恵比寿顔である。嬉しい。こういうところに、アップフロントがアイドル事務所ではなく音楽事務所であるという強い矜持を感じる。音楽という芸術の前には、しがらみなど簡単に捨てる。人間関係のもつれやプライドを軽く投げ捨てて、「いい音楽を作る」ことに真摯であり続けている。その姿勢が好きだ。佳林も紗友希も朋子も声の使用を許諾してくれてありがとう。
「プラトニック・プラネット」や「銀色のテレパシー」のアレンジは宇宙感が強い。この二曲をライブで聴いていると、コンサート会場が宇宙空間のように思えてくる。ペンライトは暗闇に浮かぶ無数の星だ。中野サンプラザや武道館にいるはずなのに、真空でまっくらな宇宙の中に放り出されたような浮遊感に引き込まれていく。おそらくこの没入感は彼女たちの歌唱力の高さによって引き出されたものであり、当時のJuice=Juiceのライブでしか感じることのできなかった魅惑的空間であった。
3位 よしよししてほしいの / モーニング娘。’21
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リリース自体は2021年末の楽曲。佐藤優樹ちゃんによく似合う歌詞とメロディとリズムの曲だ。一番の「本音を話すとみんな眉をひそめて問題児扱いするじゃん」「今夜の終わりが来たなら眠る 今夜の終わりがいつだかわからない」という歌詞がいい。まさに佐藤優樹の歌詞。二番の導入の「笑顔が私の防御ですから 返事がいいのも防御ですから 優等生なのも防御ですから みんなそれぞれに防御があるんでしょうが」もいい。まさに小田さくらの歌詞。最高だ。間奏で広がる宇宙感が強いアレンジもいい。これぞつんく♂さん、これぞ大久保薫さんだ。
今のモーニング娘。には変化が少なすぎる。退屈だ。退屈すぎて涅槃像よ~(たけちゃんが肘をついて寝転がりながら)。
2022年末、リーダーであるふくちゃんの卒業発表があった。しかしその内容から、2023年の一年間は体制に何の変化もないことが示唆されてしまった。2023年はふくちゃん卒業一色の一年になると、2022年のうちにほぼ決まってしまったのだ。これは長い。さすがに長い。ふくちゃんとさくらのことは大好きだが、あまりに変化を感じない。最近その二人も音程や歌の入りが安定しなくなってきてしまった。それも悲しい。新しい声が聴きたい。新しい歌割が見たい。せめてアンジュルムやJuice=Juiceのように、既存の歌割であってもツアーごとに容赦なく変えていってほしかった。新人にどんどん歌割をあたえていってほしかった。私がモーニング娘。に求めているのは常に変化と成長なのだ。
4位 ノクチルカ / Juice=Juice
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金澤朋子卒業後すぐ、植村あかりリーダー体勢にて発売されたサードアルバム『terzo』収録の一曲。東京女子流でおなじみの松井寛さんの作曲・編曲。まさに松井さんの得意とする、都会的でおしゃれなハロプロファンクだ。ああー大好き!最高!『terzo』収録曲の『ノクチルカ』と『G・O・A・T』が素晴らしかったから、私はJuice=Juiceのファンを続けられている。かなともとさゆきがいなくなったあとも。
この二曲を聴くために稲場まなかんの卒業コンサートのライブビューイングにも行った。とてもいい、予定通りの、秩序だった卒業コンサートだった。まなかんがソロで『もしも…』を歌ってくれたことで「カントリー・ガールズのまなかん」と当時きちんとお別れできなかったことの困惑と悲しみが、私の中で浄化されたように思う。『もしも…』の間はまなかんコールがしたくてしたくて、たまらなかったよ。全力でコールしたかった。武道館のオタクの皆さんはよく我慢したと思う。偉い。マジで偉いよ。
もう少し、もう少しのはずだから、武道館で全力でコールができるその日までなんとか生きのびていこう。ハロヲタの皆さん。もちろん私も。
さてここからは極めて個人的なお話である。ハロオタの皆さんは読まないでいいです。
******ここから******
まなかん卒業ライブビューイングを見たのは、某仮面ライダーオーズの忌まわしき続編映画(もう作品名すら口に出したくないほど嫌い)を3か月前に見た映画館であった。コンサート中のなんでもない時間に、何の前ぶれもなく突然、血の気が引いた。「あの映画」を見た後の怒りと悲しみとやるせなさが突如私を襲ったのだ。2月中旬の乾いた空気、上映直後の観客のため息、泣き声、じっと動かずただ前方を呆然と見ている隣の席の女性客、席にうずくまって動けないでいる人、文句を言いながら出口に向かうカップルの姿が、私の中に瞬時に蘇ってきた。血の気が引いた。
これはいわゆる「フラッシュバック」である。
「オーケー、わかってる。これはフラッシュバックだ。いま私がいるのは、まなかんのコンサートだ。彼女は予定通り、みんなに祝福されながら卒業する。予定外のことなど一切おこらない。スクリーン画面から卑劣なふいうちを受けることはない。誰も不幸になったりしない、不幸な出来事は一切おこらない。あれは過去だ。今の私を脅かすことはない。」私は自分にそう言いきかせ、周囲の落ち着いたハロヲタを見渡した。流れる良質な音楽にひたって深呼吸することで、私は自分を取り戻し「いま」の時間に帰ってくることができた。
それ以来私はその映画館のチケットを取るのをやめた。
******ここまで******
5位 素肌は熱帯夜 / OCHA NORMA
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2022年11月30日、私はひとり池袋サンシャインにいた。OCHA NORMA(オチャノーマとよむ)という新人女子アイドルグループを見るためである。コロナ禍により画面越しでしか見ることができなかった彼女たちを、初めて生で、とても近くで見られるチャンスだ。やった!よっしゃいくぞ池袋!まだ声出しはできないけれど、よっしゃいくぞー!
池袋サンシャインに久しぶりにハロプロが帰ってきた。嬉しい。池袋サンシャイン噴水広場は改修工事があり、しばらくイベントができなかった。そうこうしているうちに新型コロナウィルスが大流行してしまった。だからハロプロの噴水広場でのリリースイベント自体が、とても久しぶりなのだ。
ちなみにその前の月(2022年10月27日)にはこちらへ参加したよ。好きな女が池袋に来てくれるっていうんだから、そりゃ会いに行くよね!池袋を過ぎたってこの愛は永遠!小片さんも元気そうでよかった。
リリースイベントはすいていた。それはそうだろう。平日だし、まだコロナは猛威を振るっているし、東京都外のオタクが来るのは無理だろうし、イベント自体の告知もそこまで大がかりではなかった。リリースイベントを開催できただけでも御の字だ。おかげさまで私はゆっくりと快適に視界をさえぎられることなくイベントを眺めることができた。n年ぶりに生のアイドルに直接ペンライトを振ることができて、嬉しかった。以前と変わらぬファンが、同じ場所に集まっている。ハロヲタのみんなも元気に生きてる!よかった!以前と変わらぬ日常が存在していることを実感できて嬉しかった。
そのリリースイベントのセットリストの中で、一番いいな!と思った曲がこの『素顔は熱帯夜』である。ろこちゃん!かわいい!ももも!最高!『Hello!生きている意味がきっとある』も歌ってくれて生歌最高だったけど、すでに一位に書いたので割愛します。
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『お祭りデビューだぜ!』の最後のハモりも非常によかった。『お祭りデビューだぜ!』は歌詞と曲調がハロプロの「いつもの手癖」のお祭りソングであることに落胆していたが、ライブで見たら一気に好きになった。ろこちゃん低音、まどぴ高音で「デビューは祭りだっぜ~!」と叫ぶようにハモリを重ねるラストが好き。ようやくデビューできたリーダーのまどぴが力の限り歌い上げるのが好き。魂の叫びだ。その隣でろこちゃんが年齢にそぐわぬ落ち着きで低音を支えているのも好き。このパートのためだけにライブ会場に行く価値があると思う。今しか使えない歌詞に見えるが、何食わぬ顔で末長くやり続けてほしいな。
以上です。2023年に続く。(文筆2023/02/28、アップロード2024/01/26)
BEYOOOOONDS夏公演と立川ステージガーデン
BEYOOOOONDS夏のコンサートツアー「NEO BEYO」ENCORE千秋楽に行ってきた。ビヨのホールコンは完成度が高い!と聞き、ぜひ一度見てみたかったのだ。
今週末、2023年9月2日・3日はすべてのハロプログループ(モーニング娘。・アンジュルム・Juice=Juice・つばきファクトリー・BEYOOOOONDS)が立川ステージガーデンでコンサートを開催した。そのすべてで当日券が購入できる状態だった。
立川ステージガーデンに私は今日初めて来た。その座席配置は、確かに「インターネットで読んだことはぜんぶ本当だったんだね……」 と感じるものであった。座席番号を確認せずにこの会場のチケットを買うことは、私にはできそうもない。
しかしここまで来たからには、何があろうと全力で楽しむのだ。「楽しむことは人間の義務なんだよ」ってつんく♂さんも言ってるし。よし。立川ステージガーデンは、人気グループの千秋楽公演でも直前までチケットが買える ところがいいね!だから私も今日来られた!あとモノレールに乗れる!奥武蔵の美しい山々が見えるよ!このまま多摩動物園まで行っちゃおうかな!?たーのしー!!天気がいいとモノレールから富士山も見られるよ!あとあと、隣のIKEAでおいしいアイス(50円)とホットドッグ(100円)が食べられる!有料トッピング(+50円)でピクルスとフライドオニオンをたっぷりかけると、さらにおいしい!暑くても寒くても雨が降っていても、IKEAという快適な環境で退屈せずに時間をつぶせるのもいいね!
立川ステージガーデンの好きなところ:
・人気グループの千秋楽でも直前までチケットが買える
・当日券が出やすい
・新しくてトイレや設備がとてもきれい。トイレが一方通行なのもよし
・ロビーが広々としてソファーが多い
・ロビーに自動販売機が多い。自動販売機のドリンクの値段も高くない。
・会場内のピクトグラムがかわいい。エレベーターの乗客もトイレの男も女も車椅子の方もみんな拳を突き上げて盛り上がってる。かわいい。
おむつ替えスペースのピクトグラム。 赤ちゃんも拳を上げて盛り上がってる。
・周辺の飲食店が豊富
・周辺で買い物や休憩やひまつぶしができる店舗が豊富。コトブキヤは店内に入るだけで楽しい。
・周辺に緑も多く、天気がよければピクニックできる
・休憩時間にIKEAで買い物ができる
・休憩時間にIKEAでごはんが食べられる
・休憩時間にIKEAの50円アイスが食べられる。おいしい
・休憩時間にIKEAの100円ホットドッグが食べられる。おいしい。私のおすすめはプラス50円して有料トッピングのピクルスとフライドオニオンをたっぷりかけること。
・IKEAで買い物する口実ができる
・モノレールに乗れる。楽しい(東京の西側の一部の住民限定)
・夜になると周辺の建物のライトアップが美しい
・スピッツの名曲『夜を駆ける』は再開発された立川駅北口で夜に遊ぶ子どもをモデルに描かれた歌なので、夜公演が終わった後に立川駅へ歩いて帰ると『夜を駆ける』の世界を疑似体験できる
立川ステージガーデンのあまり好きじゃないところ:
・一部の座席からの視界が悪い。上記の利点すべてを上回るほどに悪い。
・上記の座席ガチャを乗り越えたうえで、さらに前の人の身長/座高ガチャがある。前の人の頭が視界にかぶる席が、あまりに多いのだ。
・客が私一人ならばどの席からも十全に見えるのかもしれないが、そんな公演は存在しない。
・サイド席の場合は、隣の人の体格ガチャになる。舞台に近い側の隣の人の恰幅がよいと、視界に被ってきて手前側の舞台が見えない。ペンライトを振られるとそれが視界に入る。ハロプロでペンライトを振るな!と言うのは野暮なので、絶対に言いたくない。
・サイド席が舞台に90度の椅子、しかも固いのでステージを見ていると首や腰が痛くなる
・椅子の背中があたるクッション部分に座席番号が書かれているため、人が着席している状態で座席番号が見えない。遅く入るとどこが自分の席かわからん。
・立川駅から遠い。15分くらい歩く。雨や酷暑など、天候が荒れているときにはきつい距離だ。帰り道はとくにこの距離が長く感じる。IKEAでいろいろ買い物していると、なおつらい。(コンサート帰りなのにそんなに買うなよ……と自分でも思うが、たまにしかIKEAに行けないのでついいろいろストックを買ってしまうのだ)
・モノレールの駅ですら駅前ではない
・そもそも立川駅自体が都心から遠い。東京都民であっても遠い。東京駅も羽田空港も遠いため、遠征組にとっては相当きつい場所だと思う。日帰りができなそう。
……さて、ここからはコンサートの内容を書く。
声出し可能なホールコンサートに生で入るのは、実に4年ぶりであった。もう、ウリャオイが生で聴けるだけで嬉しい。重低音のウリャオイが好き。大好き。コロナ禍で発売した新しい曲にもコールが入っているのが嬉しい。コロナ前の定番コールがちゃんと復活しているのも嬉しい。桃々姫の元気な姿が見られたのも嬉しい。心配してたのよ!『求めよ…運命の旅人算』→『Hey!ビヨンダ』→『英雄~笑ってショパン先輩~』という新曲の流れとコールと生歌にすっかり満足して、最初の三曲だけで私は満足していた。桃々姫のトークボックスとDJみいみによる三曲の「つなぎ」のジャンクション、間奏の即興ダンスも最高だった。BEYOOOOONDSの近未来的なイメージと卓越した技術がバッチリはまっている。まんぷくだー。
写真は子どもの保育園のお道具箱から借りてきたカスタネット。ビヨのコンサートには必須らしいので、持ってきてみた。BEYOOOOONDS公式のカスタネットもある模様。
中盤でカスタネットを使ったリズムゲームが突然始まったことにも驚いた。一曲目『アツイ!』は客が自由にリズムを取っていい方式(メンバーのカスタネットに合わせるルールはあるのかな?)で、「パラッパラッパー」形式のリズムゲームであった。一転して二曲目『涙のカスタネット』は打つ場所がバッチリ指示されている「太鼓の達人」形式の目押し音ハメリズムゲーである。モニターの右から左へカスタネットのイラストが流れていき、判定枠に重なった瞬間に叩くやつだ。「太鼓の達人」じゃねえか!しかもかなり長い連打があるぞ!楽しい!なるほどこれはマイ・カスタネットあった方がいいね。もっとやりたい!
随所に入る小演劇、生ピアノ、トークボックス、ヒューマンビートボックス、みいみDJなど、他のハロではみられない要素が次々とお出しされてくる構成はめまぐるしくも充実していて、とても楽しかった。歌も上手く、ダンスも上手く、小ネタがよく作り込まれている。個々のスキルも高い。メンバーのコンビネーションもよく、ダンスも完璧に揃っている。非常によく練習されていてコンサート全体の完成度が高い。 大満足だ!!!!
「これは完成形だ!」という思いとともに、完成しているがゆえに、ここから新しい要素をどんどん入れ続けていくのは大変だろうな……という気持ちも生まれた。私はBEYOOOOONDSの単独ホールコンサート初見なので非常に満足度が高かったが、繰り返し見ている人たちは、きっとどこかで飽きてしまう。同じメニューが続くと、たとえそれが高級食材で完璧に作り上げられた料理だとしても飽きる。または「一度でいい」と思ってしまう。お客さんが「新しい要素が欲しい」と思う時期が、そろそろ来る。
新しいアイディアを練り続けるのはとても骨が折れる作業だろう。でも、スタッフの皆さんには頑張って欲しい。ドルヲタってのは常に新しい刺激を求める罪深い生き物だから。
BEYOOOOONDSはあて書きの曲が多いため、「このメンバーじゃなくちゃ絶対ダメ!」というイメージが非常に強いグループだ。でも実は、ごく少数のメンバー卒業・加入(というか入れ替わり)によってBEYOOOOONDSはさらに魅力的になり得るんじゃねーかな?という印象を私は受けた。メンバー自身および、彼女らを支えるガチオタの皆さんはどうお考えなんだろうか?
三階サイド席で首を90度にひねりながら、私はそんなことをつらつらと考えていた。ああ、首と腰が痛い。正面が向きたい。なるほど、これが噂に聞く立川サイド席か。武道館のようにセンターステージや花道を作ってくれるならば、この椅子の向きも耐えられる。真ん中にリングを置いてバスケットボールをしてくれたら最高だ。でも、そうじゃない。ステージは私の90度左方にある。ステージの方を向いてない椅子を作りながら、少しは違和感を感じなかったのだろうか?人が座っていると座席番号が見えず迷子になることといい、前や横の観客が視界にかぶることといい、全席にお客さんがいる状態を本当に想定したのか?と疑いたくもなる。リリース前にテストプレイをせずデバック不足でバグだらけのゲームをやっている気分だ。客から金を取ってテストプレイさせるのはやめてほしい。
どうやらメンバーたちは会場の評判を知っているようで、観客をていねいに気遣ってくれていた。MCで高瀬くるみちゃんは「ちょっと不思議な形だから、見えにくかったりするかな?私たちからは皆さんのこと、全員、見えてますからね!」と言っていた。ありがたい。とてもありがたいが、そういう問題ではない。私はライブを見に来たのだ。「自分の顔」をメンバーに見てもらうために来たのではない。その二つはまったく等価交換ではない。 むしろ、オタクの出席確認なんてどうでもいいんだ。そんなもんは二の次なんだよ。ライブが見えなかったら、なんのお話にも!ならないんだよ……。ごめんね、くるみん。
少なくとも
・一階席をフラットにせず段差を出す
・視界が見切れる席は売らない、または注釈をつけて売る(なんなら少し安めの値段にする)
・一階後ろやサイド席に客席降臨する
・花道を作るか、出島を作るか、センターステージにする
これらを徹底することによって、少なくともハロプロの客の不満は「そこそこ」減らせると思う。今後も立川ステージガーデンを使うつもりならば、ぜひ一考してほしい。
正直に言うと、今回のハロプロ夏ツアー大千秋楽祭のすべての公演において「一階がフラット」であったことに、私はとてもがっかりした。「客席からの視界が悪い」と主催者側が把握しているのに、それを解消するための努力をしていない 。あまつさえメンバーに言い訳をさせている。これはよくない。次に立川ステージガーデンの公演チケットを予約するとき、大きな心理的足かせになる。 残念ながらオタクからの信頼度は大きく下がってしまった。見えにくいことがわかっているのなら、主催者は観客を楽しませるための工夫をできる限りすべてやってほしい。メンバーに言い訳させるのは、その次だと思う。よろしくお願いします。
(2023/09/04 文筆、2024/1/20アップロード)
いよいよパンデミックがあける ※2023年3月に書いた記事です。
※一定期間たったら、執筆時の時系列に記事を移動させます。
都営大江戸線の六本木駅で抱きしめて
君を深く深く深く深く深く深く深く深く深く愛しているのよ
都営大江戸線の六本木駅は深い。たくさんの地下鉄がすでに掘られた後に作った路線だから、奥深くにならざるをえなかったのだろう。
地の果てまで続きそうなエスカレータをひたすら降りて、そのあとひたすら登る。六本木駅は金色だ。黒の縁取りとまっキンキンの壁。都営大江戸線は駅によってデザインテーマがあり、壁の装飾が違う。当時の都知事である石原慎太郎氏の趣味なのだろうか?ねじ子の好きな大江戸線の過剰装飾は飯田橋駅の営団地下鉄への乗り換え階段の天井に巻き付いている緑色のパイプです。地下に無限に広がっていく竹の地下茎を思わせる造形。不気味で好き。
さて、六本木という縁遠い土地まで来た理由はこれである。
23年前のASAYAN放送時からずっと好きだった太陽とシスコムーンを、初めて生で見ることができた。感無量だ。コロナ禍の私の唯一の娯楽は、ハロプロの過去動画をくりかえし見ることだった。太陽とシスコムーンの楽曲は暗闇の中でつねに輝く光だった。小さいライブハウスで行われたであろう太シス10周年ライブを、私はくりかえし見ていた。次に太シスのライブがあるならば、必ず見に行こう。コロナが終わって次の機会がもしあるなら、万難を排して駆けつけよう。ずっとそう思っていた。だから信田さんの50歳のお誕生日記念ライブが行われると聞き、必死でチケットを取った。
期せずして、これは新型コロナパンデミック収束後私にとって初めての「声出し」可能現場になった。ハロプロのライブはまだ観客が声を出すことを解禁してない。
公式Twitterの告知を見たときから私は緊張していた。どんな現場になるんだろう?本当に声を出していいのか?いや、観客はマスクしているし、大丈夫だってことはわかってるよ。私自身は絶対にマスクを外さないつもりだし、この日のために防御率が高いけど見た目がいかつくないマスク(KN95)も用意した。周囲の医者には「N95つけて行ったら?」と勧められたんだけど、六本木のライブハウスにN95で参戦する勇気はない。さすがに浮く。そんな状況で私は本当に音楽を楽しめるのか?いろいろ考えて躊躇しちゃわない?そもそも私は声を、コールを出せるのか?
ワンドリンク制、食事一品オーダー義務。六本木クラップスさんは食事もドリンクもおいしくてリーズナブル、音響もよかった。さすが親愛なる歴戦のハロヲタの皆様は全員しっかりルールを守っており、一切不安を感じることなくライブを楽しむことができた。
私自身はこの三年の間にコール&レスポンスがすっかり体から抜けていて、『月と太陽』も『赤い日記帳』も『生まれたてのBabyLove』にも咄嗟に反応できなかった。それは周りのハロヲタも同じだったようだ。どう見ても歴戦の戦士たちばかりなのに、なかなか声が出ない。『Be My Love』でコミさんが丁寧に指示してくれたおかげでみんなようやく喉から声が出るようになって、アンコールの「Taiyo&Ciscomoon Let’s Start!」でやっといつものリズムに体が戻った感じ。ハロプロでコールが解禁になったら、昔の動画を見てコールを復習しなくちゃね。
女性アイドルの50歳のお誕生をファンのみんなでお祝いできるって、本当に素晴らしい。ぜひ還暦もお祝いさせてほしい。「還暦祝いのドレスコードは赤!」らしいので、私も赤い服を準備して待っています。以下、箇条書きの感想。
・全員歌唱力が高くハモリがきれい
・しのぴーもあっちゃんもいまだにめっちゃ踊れる
・熟練の大人三人のMCがまぁ面白い、とくにコミさんの進行が上手い
・あっちゃんが通るたびにいい匂いがする
・楽曲が素晴らしい、今さら私が言うまでもない
・本物のしのぴーがいる『赤い日記帳』が22年越しに聴けたよ!
・メロン記念日の村田めぐみさんがケーキを持って登場。みんなでハッピーバースデーを歌う
・村田さんの手を取り、熱く抱擁しながらプルシアンブルーの肖像のサビ「離さない」を熱唱するしのぴー。とまどう村田さん。場内爆笑
・生田えりぽんと石田あゆみんがVTRで出演。信田さんから「この二人は体が強い、ちょっと動けてもその後体が痛くなる子もいるけどこの二人は体が強い」とお褒めのコメント
・撮影可能タイムがある!やったーーー!自慢の一枚貼っちゃうよ!
・物販にメンバーがいて頭が真っ白になっちゃった。アイドル物販での接触とか、いつぶりだろうか。そんなことあると思ってなかったから、話すことぜんぜん用意してなくて頭が真っ白になっちゃったよ。ふわぁ~。まともな言葉を発せずアワアワした。私の口からとっさに出てきた言葉は「Endless Loveが大好きなんです!次のライブでぜひ歌ってください!」であった。もっとしっかり「ASAYANの『再起にかける芸能人』オーディションのときから見てました!」とか「体操女子日本代表のオリンピック中継見てました!」とか言えばよかった。反省。そして、こんな脳内反省会ができるのも幾年ぶりだろうか。感慨深いよ。
そしてその翌々日、私はJuice=Juice武道館振替公演へ行った。おとといは40代50代女性のファンクミュージック、今日は10代20代女性のファンクミュージックだ。こちらはまだ声出しが解禁されていないので、静かに座って観戦する。
この公演は、第8波でメンバーの大半がCOVID-19に感染し延期になってしまった2022年11月29日武道館の振替公演だった。ニュースを見て私は「あれだけ感染対策していたハロプロでさえも、大箱の公演が前日中止になってしまうのか…」という絶望感にさいなまれた。メンバー全員が揃った状態でいっぱいの客席で振替公演ができて、本当によかった。メンバーもファンもきちんと待ててよかった。当日、会場に行くまで本当にヒヤヒヤするよ。誰かメンバーが欠けるんじゃないとか、私自身も熱が出ちゃうんじゃないとか、家族が熱を出して行けなくなるんじゃないか、とか。いろいろ考えちゃう。
私は朋子のおたくなので『イジ抱き』のイントロが流れた瞬間に思わず息をのんだ。そこからの「私はローズクォーツ」三連発は里愛ちゃんで、これが本当に素晴らしかった。ソロフェス!で里愛ちゃんを心配になった朋子が、わざわざ近くまで来てモニター越しに鋭い目を送っていた、あの美しい横顔を思い出す。あれから3年近くがたち朋子は引退し、堂々と里愛ちゃんが「私はローズクォーツ」と歌っている。私の知らないところで素晴らしい引き継ぎが粛々と行われているんだなぁ。Juice=Juiceはこうやって続いていくグループになった。それを実感して私は泣いていた。うぅ。セトリの前半(6曲目)だし、そんなポイントで泣いているのは私だけであった。マスクの換えを持ってくるんだった。(2023/3/2執筆、2024/09/19up)
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