デジタル絵描きのための色紙の描き方
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さて、今回ピュアナースさんのために色紙を書きました。心が荒んだときは池袋ジュンク堂の地下へ行き、小畑健先生の『ヒカルの碁』の色紙の前で30分ほど立ち尽くしてハピネスチャージするねじ子のこと、「よし、今回は色紙にカラーイラスト描く!複数キャラ描いちゃうゾ!うふ!」と無駄に意気込んでおりました。しかし、これが思ったより大変。デジタルにすっかり飼い慣らされている人間には、アナログカラーしかも色紙に一発書きは、非常に骨の折れる作業でした。以下、デジタル絵描きのための色紙の描き方(カラー編)を記しておきます。
ねじ子は普段、サインペンでペン入れするので、下描きを消しゴムで消すことができません。消しゴムで主線が薄くなってしまうからです。そもそも「消しゴムかけ」という作業が大の苦手で、紙をクシャクシャにしてしまうこともあり、消しゴムを使わずにすむ方法をいつも考えています。
普段は、漫画用原稿用紙に水色シャープペンシルで下書き → ペン入れ → 下書きを消さずにスキャン → Photoshopで青を飛ばす、という処理をしています。
熱で消えるカラーペン(フリクションカラーズ)を下描きに使って、ドライヤーで一気に消すこともあります。
しかし、色紙においてこれらの技術は使えません。下書きは必ず!消さなくてはいけません。だって現物をそのまま飾られてしまうから。ここで、これまで培っていた技術がまったく通用しないことに気付きました。水色シャーペンが使えない!フリクションも使えない!フリクションは10℃以下になったら浮き出て来ちゃう!真冬になったら終了する!
では、次に「普通の黒鉛筆で下描きして、消しゴムで消そう…」と思いました。やってみました。しかし!サイン用のよくある「色紙」は、非常に摩擦に弱く、消しゴムを普通にかけると毛羽立って汚くなってしまうのです!なんてデリケートな紙だ!恐ろしい!普通の黒鉛筆すらも満足に使えません。いやー、参りました。
試行錯誤の結果、色紙表面のダメージを最小限にするためには
①黒鉛筆で、できるだけ薄く下描きを描く
②ねり消しゴムを優しく叩きつけることによって消す
という手順が一番いいという結論に至りました。すげぇ面倒くさい!!
おそらく、色紙というのは本来下書きなど一切ナシで、一発で美麗な線を描くためにある画材なんでしょう。しかし私の画力で一発書きなどしようものなら、構図もデッサンも崩れまくって、書店に飾るにはあまりにもお目汚しな作品ができあがってしまいます。小畑先生は筆ペン一本でびっくりするほど美麗な佐為とヒカルを描いていらっしゃいましたが、そんなのは神の所業です。凡人が憧れると怪我します。
1)まずはデザイン決め。
ファミレスのナプキンとかカレンダーの裏とかに、ある程度のデザインを決めます。落書きで結構です。これをやっておかないと、下描きで迷い線が多くなりすぎて消しゴムがけで死にます。
2)下描き。
色紙はとにかく消しゴムに弱い紙質なので、筆圧を低くして、できれば4Bや6Bの太い鉛筆で下描きをします。
3)次にペン入れ。
もともとねじ子はPROCKEYというサインペンの愛用者なので、比較的やりやすいです。でも修正は一切できません。完全・一発書きです。アナログですから、undoもctrl+zも存在しないのはもちろんのこと、現品をそのまま飾られてしまうので、修正液やホワイトすらも、おいそれと使えません。こんな恐ろしいことがこの世にあるでしょうか!!あぁ、跡形もなく消えるデジタルの消しゴムが恋しい!おのれがどれだけデジタル機器に依存しているかを実感します。震える手で失敗の許されないペン入れをします。
4)消しゴムかけ
前述のように、ねり消しゴムをやさしく叩きつけます。細かい作業です。
5)ベタ塗り
デジタルであればベタ塗りはクリック一発ですが、アナログではそうもいきません。マジックでしこしこと、はみ出さないように塗ります。パンダは思ったよりもベタが多く、パンダを選んだことを後悔したりもします。あぁ、Photoshopの選択範囲にクリック一発のバケツが恋しい。
6)色付け
アナログ画材を引っぱり出し、色付けをします。捨てずにもっててよかったコピック。
7)チーク (※これは私だけ)
頬に紅色を入れます。キャラクターの頬に紅を入れるのがねじ子は大好きです。気合いが入ります。リアルの化粧ではチークなんてここ10年くらい使っていませんが、イラストでは一番真剣になる場面です。赤鉛筆をカッターで削って、粉末を綿棒につけ、円を描くようにこすりつけます。つけ過ぎた!と思ったら、薄くします。これもリアル化粧と同じです。先程と同様にねり消しゴムをやさしく叩きつければオッケーです。
8)判子を押して完成。
最近のマンガ原稿の主流はもう「下描きからデジタル」ですね。アナログ漫画を製作する技術はどんどん失われていくのだろう、と思っていました。画材屋さんのアナログマンガ用品売場も、日に日に狭くなってます。寂しいけれどもそれが時代の流れなんだと思っていました。しかしこんなところにまだまだ、アナログ全開の作業が残っていたんですね!青い鳥はこんなところにいたんだね!まだまだアナログ画材、捨てられないよ!
ワード・プロセッサがいくら普及しても鉛筆と原稿用紙が完全に無くなることはないように、アナログ漫画技術が完全に不要になることも決してないんだろうなーと実感したねじ子でした。(2013/11/30)