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医師兼漫画家 森皆ねじ子

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完璧手技第6回 包帯交換

華やかな手術の後に待っている朝の行事、それは包帯交換。略して「包交」。ホーコーです。手術後はもちろんのこと、リストカットしちまった縫い傷、火傷の あと、腐っちゃった足、果ては褥創(床ずれ)まで。キズというキズには包帯交換がつきまといます。綺麗に治ってゆく傷は見ていて気持ちがよいものです。逆 にぐちゃぐちゃになって異臭を放つ褥創などは目を覆いたくなります。でもでもそんなものも、きちんと処置していれば、ゆっくりと綺麗になってゆくのです。 そんな外科系の毎朝のお仕事、包交。最近は「毎日の消毒と包交はかえって創傷の治癒を遅らす」なんて報告が次々と出ておりますが、それでもまだまだ、根強 く残る儀式です。

これが外科系の命!包交車だ!!

ホーコーシャと呼びます。科や病院によって乗っているものが違います。「そこの科/外来/病棟で必要なもの」がすべて乗っています。いろんな道具が いっぺんに詰まっていて、病室まで運べて、とっても便利です。いちいちナースステーションまで取りに行くのは大変ですから。ねじ子は包交車を全速で暴走さ せ通路のカーブでドリフトしてケツ振って楽しんでま~す。

乗ってるもの・代表

これが清潔操作だ!

閑話休題・ガーゼのしくみ。

包帯の巻き方

多くの一般病院では包交などの処置をする時に看護師さんがついてくれますが、大学病院ではついてくれません(断言)。学生が道具出しのお手伝いをする機会も多いのではないでしょうか。そんな時のために、包交車とは仲良くなっておきましょう。

完璧手技第5回 採血

今回は初心に戻って、採血の巻です。どんなに「学生には何もやらせん!!」という大学であっても、さすがにこれぐらいはやらせてもらえるんじゃないでしょ うか。そんな、医療手技の基本であり、最も身近な検査であるところの採血。実際は、民間病院においては看護師さんや検査技師さんがザクザクと連日連夜採っ てますので、はっきりいって医者よりも格段に上手です。逆に大学病院では研修医が採血義務だったりするので、病院で一番採血が上手いのは、教授よりもナースよりもオーベンよりも、熟練の研修医だったりします。

駆血帯の締め方

皆さんゴムタイプ使ったことありますか?ワンタッチタイプしか知らなかったねじ子は、研修で某民間病院に派遣された際、ただのヒモでしかない駆血帯をどうにもできず、思わず蝶結びしてしまいました。その後2ヶ月間ナースステーションでのもの笑いの種にされていたそうでしゅ。トホ。

血はどのくらい採ればいいの?

我が施設での採取料はこんなもんです(大人)

血算(2ml)
生化学(3~6ml)
感染症(3~6ml)
凝固(2ml)
血沈(1ml)
血液型(7ml)

スピッツの頭の色によって、どれが何か見分けましょう。施設によって全く違うので、とりあえず自分の施設のことだけ覚えればOKです。必要量も書いてあります。足し算しましょう。ちなみにねじ子は宇宙の風に乗って空も飛べるはずなスピッツの大ファンです。

※TERUMOさんの針の色が変わりました。世界的なカラーコードであるISO規格に準じるようになりました。現在の針の色は上の表から一部、以下のように変更しています。

19G…クリーム色
24G…紫
25G…オレンジ
26G…濃茶

いろんな針

直針と翼状針、どちらかを使うことが多いです。真空採血なんていう変わり種もあります。

何事も前準備

これまでの完璧手技でも散々言っているように、まずなによりも下準備が大切!特に下手くそなうちはネ!

採血は多くの場合、誰も手を貸してくれず、一人でやります。全てを手の届くところに準備してからやりましょう。

血管選び

大抵は、ちゅうか(肘の内側)に良い血管が見つかります。でも最初はどれが良い血管なのかもよくわからないよネ!「さわって触れる」のが良い血管です。決して「紫に浮いて見えるもの」ではありません。勿論ベストは「さわって触れて、かつ色が付いている」血管ですが、実際はそう上手くは行かないのが現実。血管選びは採血や点滴がサクっとはいるための最も重要な要素なので、じっくり時間をかけて選びましょう。

手技はいたって簡単。

ちく。すすめる。逆血が来た。ちゅーーーーーー。これだけ。
しかしこれが難しいのよね、最初のうちは。

固定が大切

最初は上手く血が引けてたのに、途中から手がぶれちゃって、突然血が引けなくなること、ありますよね。 どこか一点を支点にすると、手のブレや震えがなくなります。逆に宙に浮かした状態で持っていると、自分では絶対に動かしたつもりもなく、どんなに力をかけていても、必ず動きます。それはどんな手技でも格闘技でもゲーセンのジョイスティックでも同じです。

失敗の典型

・血管に逃げられた!! → 皮膚にテンションをかけることが大事。
・血管破っちゃった!! → 針を入れすぎですな。大抵腫れてきちゃうので、あきらめてもう一回やり直し
・引いても引けない・・・ →
1途中で針先がずれた(一点で支えるテクを身につけましょう)
2実は血管内がすげぇ脱水(駆血帯を結びなおしたり、患者さんの手を揉んでみたり、あきらめて別の所から採り直したりしましょう)
3時間かけすぎて凝血した(これまた初心者にありがちな失敗。やり直しましょう)

ビギナーほど「一発で決めなきゃ!患者さんに悪いし!!」とか思って焦ってしまいますが、実際は、一発で取れなくてもいいんです。採血は最も副作用が少ない手技なんですから。友人同士でも良いから、いっぱい失敗して、上手になりましょう。

完璧手技第4回 気管内挿管

今回の完璧手技はいよいよ!救命救急士や学生や新米研修医のあこがれの対象・気管内挿管です。皆さんも救急での実習や、ACLSの講義で、「気管内挿管用 モデル」のお人形さん相手に練習をしたことがあるでしょう。入りましたか?難しいですよね~アレ。ねじ子は先日久しぶりにお人形さんに挿管したら、見事、 4本ほど歯を折ってしまいました。ありゃ~実際の人間より難しい。だってシリコン製ですげぇ固いんだもん!口が開かない!首もなかなか後屈しない!視野が なかなか確保できない!しょうがない、力ずくでいくか!バキッ。あ、歯が折れた……というわけで、すげぇやりにくいです、アレ。実際の人間の方がずっと簡単です。

でもでも、そんなこと言われてもチャンスがなければ、本物の人間サマではとてもできませんね。そんなチャンスは、麻酔科や救急にローテーションしたり、た またま患者さんの急変時に居合わせてない限り、なかなかありません。機会に恵まれず、医者になっても気管内挿管ができない人は星の数ほどいます。医療が細 分化され専門医傾向がどんどん強くなっている昨今、それはそれで悪いことではないのかもしれません。しかし!皆さんはこれからのスーパーローテート時代を 生きぬいてゆくべきニュータイプです。将来何科に行くとしても!チャンスがあったらどんどん挿管しましょう。そうすれば、イザという時の急変に対応するクソ度胸もついてくるというものです。

どんな手技をやるにしても最も大事なのはまず!下準備。

挿管に必要な7つ道具はこれです。 他にも酸素や吸引、アンビューバック、そしてそんな急変時に最も大切なのは!人を呼ぶことです。万全の体制を整えてからモノにかかりましょう。

姿勢が大切!技術は二の次!!

挿管の極意は1。よく後屈すること、2。よく口を開くことにあります。声帯が見えさえすれば、そこにチューブをつっこむだけなのですから、実は点滴をとるよりも「簡単」なはずなのです。口から、声帯までの間に、一直線の道ができればバッチリです。

喉頭鏡は持ち上げる、けっしてこじらない

見えさえすれば、あとは入れるだけ

実際は、ものすごく簡単な人もいれば、気管支ファイバーでも使わなければ全然見えないし全然入らない、ものすご~く難しい人もいます。それはおいおい慣れ てゆくことにしましょう。あとは経験数をかせいでゆくのみ!失敗できるのも若いうちです。怖がらずに、機会があったらどんどんチャレンジしていきましょ う。