1位 Liberty & Gravity / くるり
まいりました。今までのくるりの要素すべてを詰め込んだ一曲。情報量がとにかく多い。多すぎる。トラックはなんと90もあるという。90トラック、つまり同時に演奏したら最低でも90人いないと再現できないということだ。オーケストラか。音楽博士の岸田君が古今東西の音楽を聴きまくって、日本の民族音楽の要素も入れて、ものすごい情報量を詰め込んで作り上げた密度の濃いトラックだ。メロディも、くるりらしい攻撃的ロックメロディと、チオビタドリンク的なせつないフレーズと、多種多様な民族音楽的メロディを交互に入れ込んでいる。くるりのすべてが入っててなんだか遊園地みたいだ。
MVの映像もこれまた要素がとんでもなく多くてエキセントリックである。きゃりーぱみゅぱみゅのMVを作り続けている映像作家の田向潤さん作とのことだ。三人の衣装はスコットランドと日本とチベットあたりの民族衣装をキメラさせた謎衣装だし、ダンスも謎に満ちてなおかつかわいらしい現代創作ダンスだし、演出もわけわからんし。でも「6分間でできる『映像芸術』を突きつめるだけ突きつめてぜんぶ詰め込みまくったよ!楽しかったー!」ってことだけはよく伝わってくる。こりゃすごいや。圧倒的熱量に勝てない。この曲のダンスは振りコピするととても楽しいので、ハロヲタのみんなと一緒にライブ会場で踊りたい。ハロプロとくるりが対バンするイベントないかなー!(※絶対にありません)
音楽不況を叫ばれて久しくCDがまったく売れない時代に、よくこれだけの予算と手間暇をかけたレコーディングとMV製作ができていると思う。それが何よりも素晴らしい。その信頼と実績こそ、くるりが20年かけて積み上げてきたものなんだろう。
2位 戦闘!ジムリーダー / ニンテンドー3DSポケモンX・Yスーパーミュージックコレクションより
齢37歳にしてポケモンマスターへの道を歩き始めたねじ子です、こんにちは。あれ?ポケモンマスターへの道、ご存じないですか?ほら、日本に生まれた男子なら一度は通る、あの有名な道ですよ。最近は大人でもまだまだ毎日全力でランニングしている人もいますよね。いやあ険しいですね、ポケモンマスターへの道というのは。なんせ目標が明確に設定されていませんから。ポケモンアニメのサトシも「ポケモンマスターとは何か」という問いにいまだに答えを出さないまま、「俺はポケモンマスターになる!!」と全力で宣言し続けてますからね。あいつ20年も一体何を目指しているんだ。
世の中的に2014年は妖怪ウォッチの年だったようだが、私にとってはポケモン一色の年だった。「ポケットモンスター」のゲームシリーズがこんなに面白いとは思ってもいなかった。ポケモン関連曲も聴きまくった。なんせ20年分の蓄積があるから、がさがさ掘ってじゃかじゃか聴くのがすげえ楽しい。日本のゲームミュージックってクオリティ高いね。日本における正しいクラシカル・オーケストラ・サウンドって、実はゲームの中で発生してるんじゃないだろうか。すぎやまこういちさんの曲を聴くと特にそう思う。あ、さむらごうちさん?の曲もきっとそうだったのかな?あれ、新垣さんだっけ?まあいいや。初代からずっとポケモンシリーズの作曲家兼ゲームディレクターをしている増田順一さんの仕事がとにかく素晴らしい。
今年発売されたポケモンゲーム新作のサウンド・トラックふたつ(『ニンテンドー3DSポケモンX・Yスーパーミュージックコレクション』『ニンテンドー3DSポケモン オメガルビー・アルファサファイヤ スーパーミュージックコンプリート』)はどちらもいいアルバムだった。特に戦闘曲がいい。繰り返しに耐えるループ構造だし、余分な歌詞がないし、なによりも心が戦闘モードになって気力が沸き上がるので作業用BGMに最適だ。曲の量があるので飽きたら別の戦闘曲にすればいい。落ち着きたい気分の時は街や道路のBGMにすればいい。ねじ子が今年書いた原稿はほぼポケモンのゲームミュージックとハロプロのおかげで出来上がっている。その中でも、今年一番再生回数の多かった曲がこの「戦闘!ジムリーダー」だった。イントロの「これから強いジムリーダーが出てくるぞー!」っていうワクワク感がたまらない。おそらく単純な楽曲の良さだけなら「戦闘!フラダリ」「カイナシティ」「オメガルビー チャンピオンロード」「戦闘!マツブサ・アオギリ」あたりが上だと思うけれども、今回はシンプルに再生回数だけで評価した。
3位 プリンセス・マーガレット / 舞台『LILIUM-少女純血歌劇-』より
【ニコニコ動画】プリンセス・マーガレット
ねじ子の2014年ハロプロ楽曲大賞曲。まずはモーニング娘。’14とスマイレージによる舞台『LILIUM-少女純血歌劇-』が素晴らしかった。ミュージカルとして完成度が高く、劇中曲も最高だった。白と黒のゴシックロリータ衣装+キャストは女のみ(男性役は男装)+バンパイア+サナトリウム、という、少女漫画でも今時許されないコテコテの中二病世界観の中で、これまた完璧に中二病な展開の脚本がよくできていた。本物の思春期まっただ中にいる、かつ歌もダンスも上手なキャストがそれを演じることでさらなる化学反応が見られる。中二病もゴスロリもサナトリウムも吸血鬼の永久の命も思春期の焦燥感も、行き着くところまで行けばいっそ清々しい気持ちで見られるもんだな。
この作品の中では、思春期の焦燥や気の迷いをすべてまとめて「繭期」と言う。繭期のヴァンパイアを集めた、たえず雨が降る森の中のサナトリウム(もうこれだけでゲップが出るくらい萩尾望都)が舞台で、テーマはヴァンパイアらしく不老不死。いかにもでしょ。でも面白い。同じ脚本家が描いた、この話の前日譚である『TRUMP』(こちらは若手男性俳優だけの舞台)との関連性も、絶望に彩られてよくできている。末満さんにはぜひ仮面ライダーの脚本を書いてほしい。きっと武部プロデューサーが大好きなイケメンゴシックホラーによく似合うお話を作ってくれると思う。
さて、『プリンセス・マーガレット』を歌う女の子(マーガレット)は本物のプリンセスなどではなく、そこらへんの一般人、いや一般ヴァンパイアである。だけど「繭期をこじらせて」自分のことをどこかのお姫様だと勘違いしちゃっている、という設定だ。「自らをお姫様と思いこむ」気持ちは確かに当時の私たちの中にあった。それを表に出してしまう子も、確かに学年に一人くらいいた。そんなマーガレットに心酔した後輩女子が三人いて、マーガレットの取り巻きとして一緒に行動している。「エキセントリックな先輩女子への過剰な心酔」というのもこれまた思春期女子によくある症状だ。彼女たちもおそらく繭期をこじらせている。そして「自らをお姫様と思いこむ」気持ちを過剰に外に出してしまう女子に対して、他の女子は極端に冷たい。LILIUMの中でも、他の女生徒たちは強烈に醒めた目でマーガレットたちを見ている。これもよくあることである。
プリンセス・マーガレットことモーニング娘。の佐藤優樹ちゃんは激しく踊りながらも決してぶれることなく、きゅるるんボイスで完璧に歌いきっている。しかも公演中はアドリブで末尾の音程を上げたり、毎回いろいろアレンジを勝手に加えていたという。ここだけ見てるとまるでメアリー・ポピンズみたいだ。まーちゃんは道を踏み外さなければジョリー・アンドリュースになれる逸材だと思う。道を踏み外さなければ。道を踏み外さなければ。
他のハロプロ曲に関してはハロプロ俺コンランキングを近いうちに書きます。
4位 怪盗ミラクル少年ボーイ / アルカライダー
突然だが、ねじ子が思う「いいアニメソングの条件」「いい主題歌の条件」は以下のようなものだ。
1)きちんとタイトルを連呼 2)きちんと決めぜりふor必殺技をシャウト 3)ある程度内容に言及した歌詞。教訓的だとなおよし。 4)子供が一緒に歌える歌詞のわかりやすさと舌節のよさ 5)熱ければ熱いほどいい 6)頼むから音痴だけはやめてくれ。子供の耳の音程が狂う。音痴で許されるのは「風の谷のナウシカ」の安田成美だけだ。なんのゆかりもない音痴の有名人が歌うのがいちばん最悪。
この条件を満たすアニメソングを私は心底愛している。ゆえに歴史上で一番好きな理想のアニメソングはこれだ!
『目指せポケモンマスター』
ちなみに一番好きな理想の特撮ソングはこれだ!
『宇宙刑事ギャバン』
どちらも最高。先ほど上げた「いい主題歌の条件」をパーフェクトに満たしている。
そして月刊コロコロで連載中の謎解き漫画をアニメ化した『怪盗ジョーカー』のオープニング曲がとても素晴らしい。とくに4)子供と一緒に歌えるところがいい。「怪盗ジョーカー」にふさわしく、歌詞の中に謎解きが含まれている点も面白い。歌っているアルカライダーという人たちはこの曲がデビュー曲らしいのだが、ネットでいくら調べても何者なのかよくわかんなかった。「なんだか今時っぽい人たちだな」ってことしかわからん。
5位 ようかい体操第一 / Dream5
6位 ゲラゲラポーのうた / キング・クリームソーダ
もう何も言うまい。私が今更紹介する必要も、もうあるまい。Dream5のことをそんなふうに語れるようになったことは素直にうれしい。2012年の東京おもちゃショーで静かな数人の子供客相手に「たまごっち」の歌を必死に歌っていた彼らがやっと報われた。当時から彼らは生歌が上手く、全力で踊っていた。でも、私が2012年の俺コングランプリで抱いていた願い(このまま飼い殺しにされないでほしい)が果たして叶えられるのかどうかは、まだわからない。とりあえず年明けからアニメのエンディング曲がニャーKBに変更されるというニュースを聞いて、ねじ子は絶望にうちひしがられている。あーあ。どうしてそういう愛がないことをするかなAvexは。いや電通か?誰であろうとけしからん。売れた瞬間に取り上げるなんて、ひどいよ。なんでそういうことするかな。ねじ子なら向こう5年間はDream5を使い続けるよ!キング・クリムソーダはいいんだよ、あいつら大人だろ。粋も甘いもかみ分けてんだろ。でもことりちゃんとあきらきゅんは、まだ高校生なんだよ!あんまりあこぎなことしてやるなよ!彼女らの未来に幸多きことを心より願う。
7位 クロスマイハート / おはガールふわわ
ももち目当てで見始めた「おはスタ」で案の定おはガールにはまった。
今年のおはガールのテーマは「けん玉をがんばること」である。それはつまり番組の一番のスポンサーであるバンダイが発売中のけん玉「KDX」の宣伝とイコールなのだが、まあ非常にがんばっている。生放送中にけん玉を披露するコーナーが毎日のようにあり、時に失敗して、気の強そうなおはガールが泣いちゃったりするわけである。泣きながらも気丈に次のコーナーをやったりするわけである。ねじ子はそれを見てすぐにキュンとなっちゃうわけである。ダメな人。ねじ子は目標に向かって真摯に努力している女の子にひどく弱い。
この曲をショッピングモールなどのイベントで披露するときは、間奏の間に客席のちびっ子と一緒にリズミカルにけん玉をやる。そのリズムが大変心地よい。この曲を聴くときは是非一緒にけん玉をやりたい。あ、これバンダイの戦術の通りだわ。ちくしょう。それにしても、おはガールは昔からいい曲をもらってるな。 おはガール メープル with スマイレージ 『マイ・スクール・マーチ』
8位 EARNEST DRIVE / 松岡充
今年はニチアサが不作だった。女児向けアニメも不作だった。あんなに好きだった「プリキュア」も「ジュエルペット」も途中で脱落してしまった。うー、4月まで長い。妖怪ウォッチの大々的ヒットは、そこらへんの低年齢女児向けおもちゃに流れるべきだった財布をゲットできたことも一因にあると思う。
さて、そんな中9月から始まった「仮面ライダードライブ」のオープニングは久しぶりにいい。好き。先ほどあげた項目のうち4)子供が一緒に歌うのだけは難しいかもしれないけど、それ以外は完璧だ。仮面ライダー・エターナルこと松岡充さんの熱い巻き舌歌唱も素晴らしい。エターナルとしてまた映画にも出てください。
次はハロプロ俺コンランキングでお会いしましょう。
実は俺コン・ハロプロ楽曲ランキングは2008年からやっている。
2008年はこれ↓ 1位リゾナントブルー、2位パパンケーキ、3位恋愛ライダー、4位雨の降らない星では愛せないだろう?、5位こんにちぱ(これは 正確には2007年か。)
2009年 はこれ↓ ①流星ボーイ(Berryz工房)②はぴ☆はぴサンデー!(月島きらり)③はじめての経験(真野恵里菜)④ぁまのじゃく(S/mileage)⑤私の魅力に気付かない鈍感な人(光井愛佳)
2010年 はこれ↓ 1位 Independent Girl~独立女子であるために(Buono!) 2位 ○○がんばらなくてもええねんで!(スマイレージ) 3位 ダンスでバコーン!(℃-ute) 4位 会いたいロンリークリスマス(℃-ute) 5位 友達は友達なんだ!(Berryz工房) 6位 シャイニングパワー(Berryz工房)
2011年 はこれ↓ 1位 プリーズ!ミニスカポストウーマン(スマイレージ) 2位 君の友達(Berryz工房) 3位 ブスにならない哲学(モベキマス) 4位 ダレニモイワナイデ(真野ちゃん) 5位 この地球の平和を本気で願ってるんだよ!(モーニング娘。) 6位 彼と一緒にお店がしたい!(モーニング娘。) 7位 堕天使エリー(真野ちゃん) 8位 好きだな君が(モーニング娘。というかさゆみずき) 9位 もしも…(モベキマス)
2012年 はこれ↓ 1位 One・Two・Three / モーニング娘。 2位 The 摩天楼ショー / モーニング娘。 3位 大好き100万点 / モーニング娘。(譜久村聖・石田亜佑美) 4位 悲しきヘブン / ℃-ute 5位 Be 元気 <成せば成るっ!> / Berryz工房 6位 ピョコピョコ ウルトラ / モーニング娘。
全然ハロプロなんかに興味がない、私の本の善良な読者さん(主に医療従事者)に少しでもハロプロの宣伝がしたい! というくだらない一心だけで、ここまで続けてきたのである。「モーニング娘。ってまだ存在してるんだ」と思ってもらえるだけで、よかった。ダサイと思われても、キモヲタ丸出しとドン引きされても、「えっ、ねじ子ってちょっと頭おかしい……?」と思われても、ハロプロの宣伝ができるのならそれでよかった。ねじ子は本当は、ハロプロが好きなことはあまり公にしたくないんだ。心の奥に大切にしまっておきたいんだ。だけど、ハロプロはあまりに虐げられていて、心無い人たちに踏み潰されてぺしゃんこになってしまいそうだったから、私一人でも声をあげたかったんだ。
当時、楽曲のランキング企画をやっている人は少なかった。(ハロプロ楽曲大賞や宇多丸さんのマブ論はもちろんあったけれども。)2013年になって、ハロプロも多少復興したようで、今年はいろんなところで楽曲ランキング企画が見られる。タワレコの社長も、大森靖子さんも、うすた京介さんも、ナカGさんも、南波一波さんも、スマイレージの女の子達すらも「2013年私のハロプロベスト5」を発表してくれた。すると、私のような音楽素人がランク付けすることにあまり意味がなくなってくる。「では、次に私がハロプロのためにできることはなんだろう? 私の得意分野ってなんだろう?」と思うと、まずはこの駄文である。というわけで、今回はハロプロの「歌詞のみ」に注目したランキングを作ってみた。
というわけで突然ですが、ここから2013年ハロプロ「歌詞だけ」ランキング を始めます。あくまでも歌詞だけ、です。他の要素には完全に目をつぶっています。
※ここに書かれているのはあくまでねじ子個人の解釈です。「俺の解釈と違う!」と感じることもあるでしょう。歌詞の解釈は人それぞれです。むしろ100人が読めば100通りの読み方ができるのが素晴らしい詩というものであり、素晴らしい芸術作品だと思います。
第1位 君さえ居れば何も要らない / モーニング娘。
つんく♂の歌詞は、ほとんどがつまらない。単純な単語の羅列だったり、語感はいいけれども意味が分からない言葉の繰り返しだったり、寒い駄洒落だったり、すぐに廃れそうな流行語だったり、説教臭かったり、無駄にスケールが大きくて閉口したりする。待つ子ミジメックスって何だよ。地球が泣いているって何だよ。そもそもラブマシーンって何だよ。あ、矢口のことか。確かに奴はラブ・マシーンでセクシー・ビームだったな。14年かけて伏線が回収されたな。
しかし一年に5つくらい、「すごくいい」のがある。私はそれを味わうために、つんく♂とハロプロを見続けてると言ってもいい。「すんごくいい」のにあたると、私の感情は底が抜けたように流れ、フレーズが頭を離れず、何をしていても脳内に鳴り響きつづけ、果ては座右の銘になるほどの影響を受けてしまう。過去の例で言えば「どこにもないものならば 作りましょう」や「誰もが知らないならば 研究しよう」や「ミニミニサイズでも幸せマキシマム ミニミニサイズでも大きな夢がある」や「迷うな セクシーなのキュートなの どっちがタイプよ?」や「1年なら我慢できる 夢あるならとことん目指せ お風呂のとき寝る前とか ちょっとは電話して」や「やんやん 年とりたくない やんやん このままがいい」や「自由で何が悪いというの?好きなようにしていいじゃない」や「かぼちゃの馬車を正面に回して!」や「ガラスの靴はこの手の中にある」などだ。
そして『君さえ居れば何も要らない』は歌詞がいい。歌詞だけがダントツにいい。もう泣けて泣けてしかたない。個人的には、ハロプロの歴史の中でも三本の指に入る歌詞だと思っている。
と言っても、この歌詞は決して多くの人の心には響かないだろう。100人に1人くらいがぐっとくれば、いい方ではないか。そして私はまさにその「1人」なのである。
つんく♂は、ラブソングに心理描写や情景描写やシチュエーション表現を多用する。その反面、女性的な身体表現や体の接触表現をあまりしない(胸のふくらみとか、スカートの下とか、バナナの皮とか、秋本康が頻用するアレね)。結果、明らかに思春期女子の恋を歌っているはずなのに、主人公が男でも女でも大人でも子供でも大丈夫だし、その愛する相手が男でも女でも大人でも子供でも問題がない世界観になる。だからこそ、つんく♂の歌はセクシュアルマイノリティからの絶大な支持を得ているのだと思う。世界中の「踊ってみた」「歌ってみた」動画を見ていると、日本でもタイでもフランスでもアメリカでもメキシコでも、世界中のオカマちゃんたちがハロプロを好んでカバーしている。国境を越えて通じるものがあるようだ。なんだかほほえましい。
『君さえ居れば何も要らない』は、つんく♂にしては珍しい男性目線の歌詞である。少し引用しよう。
「目をキラキラさせて僕に語った君の将来図は ただ聞いているだけで胸が熱くなり泣きそうになった 君さえ居たなら何も居らない 僕らの将来は誰も決められない」つんく♂はこの曲を、息子の寝顔を見ながら書いたという。モーニング娘。が歌うのだから女子の恋愛の歌詞ってことにしようとしているけれど、実際は違う。そもそも思春期の女子にこの状況は生じにくい。この曲は自立した大人が、まだ自立しきっていない他者を愛し、支えようとしている歌である。ここまでは家族愛と言ってもいい。
でも「時代が変わっても僕は変わんない」「年齢を重ねても愛は変わんない」という部分から、この二人は確固たる社会的契約・血縁的確証を得ていない不安定な関係だということに気付く。ガチガチに戸籍や血縁で縛られている夫婦や親子や家族では、このような言葉を言う必要があまりないからだ。それを踏まえると、歌い出しの「僕たちは自由だろ なのに窮屈だ」というのも、「あんなに怯えてたあの日のことを忘れてしまうの 心から誓った真夜中二人強く抱き合った」という歌詞も、意味がはっきり見えてくる。「二人の現実が真実となるように」というのも、二人の関係が「真実」とは認められていない社会の存在を暗に表している。
さらに最後の「太陽が今日もまた美しく顔を出す まるで僕たちを祝福してるように」というのは明らかにセックスの後の朝であり、太陽以外は僕たちを祝福してくれていない状況であることの比喩になっている。つまり周囲から祝福されない、でもお互いを思い、必死で支えあっていて、すでに何年か肉体関係のある二人の歌なのである。不倫でも年の差でも身分差でも、ロリでもペドでもゲイでもレズビアンでも近親相姦でも、教師と生徒でもロミオとジュリエットでもブロークバック・マウンテンでも何でもいい。とにかく世間から祝福されない二人が、それでも強く惹かれ合い、セックスし、その関係が何年も続き、周囲から隔絶したかのような密室で夜を過ごした翌日の朝の歌なのだ。それでも「今日もまたI LOVE YOUをやさしくささやい」て、いつか「二人の現実が真実となるように」願ってるんだよ。泣けてくるね。
歌詞に直接的な表現は何一つないのに、シンプルな言葉選びだけでこれだけの状況を伝えてくるのだからつんく♂はすごいと思う。たぶん新宿二丁目のハロヲタの皆さんもこの曲には震えているはず。しかし、これをあの竹のように真っすぐ生きている侍の申し子・鞘師に歌わせるのは似合わない。ていうか、今のハロプロメンバーの誰にとっても、この歌詞は背伸びしすぎている。強いて言えば、小田さくらちゃんのための曲なのだろうか?言いたかないけど、たぶん今一番この曲を上手に歌えるのは矢口だな!
ちなみに洗車モップみたいな衣装と、低予算丸出しのMVは良くも悪くもいつものハロプロクオリティです。どうかと思います。
第2位 大人の途中 / スマイレージ
非常に残念な処女喪失の歌。そこそこ可愛い、ちょっと調子に乗った女の子が、年上の不良の男子に憧れて、「いい感じになってきた!彼女になれるかも~!」なんて浮かれている間に、気付いたらどこぞに連れ込まれて、気付いたら陰茎が挿入されていた、という何とも残念なエピソードである。「頭ん中 真っ白け 手足バタバタしてるだけ」「大好きな人 確かに憧れの人なのよ 声をかけたの それも私なんだな」「Oh my god 夢見てた 感動的な場面なの No そうじゃないよ 感動しないもん」「私が馬鹿なの アーメン」どれも秀逸。確かに高校の頃クラスに一人くらい、こういう痛い目にあっている女の子はいたよね。女子高生の間ではわりとありふれたエピソードだよね。たぶん主人公の女の子は、処女だけ取られてこの後ヤリ捨てられちゃうんだろうなぁ。ちょっとヤンチャな男に憧れていた女の子も、こうやって大人になって「真面目で誠実な男が一番」という価値観に変わってゆくのですね。
真っ赤な照明も意味深。
第3位 おへその国からこんにちは / ハロプロ研修生
タイトルだけで今年一番笑った。どんな国だよ。何がこんにちはしてるんだよ。臍ヘルニアか。
もちろん三波春夫の『世界の国からこんにちは』のオマージュだってことはわかっている。そんな御託はどうでもいいんだ。一番の問題は「世界」のかわりに「おへそ」を持ってくるセンス なんだ。しかも、入りの台詞が「なあみんな、へそんとこよろしく!」 である。どう冷静に考えても頭がおかしい。へそを指さしまくって腹をパンパンするダンスを、へそ出し衣装で舞い踊る、下は11歳から上は16歳の女の子たち。狂気である。このタイトルを「よし」 としてゴーサインを出す企画会議がこの世に存在するというだけで、人類の多様性に恐れおののき五体投地したい気分だ。ちょっと低め内角を狙いすぎなんじゃないかい?これデッドボールぎりぎりだろ?
ちなみに「おへその国からこんにちは」連呼と、「なあみんな!へそんとこよろしく!」以外の歌詞はいたって普通である。大事なことを言っているようで実は特に何も言っていない、でも底抜けにポジティブだから弱っている時には心にスッと入り込んでくる、いつものつんく♂の歌詞である。つまりこの曲で言いたいことは「おへその国からこんにちは」だけ。 さらに突き詰めてしまえば「女子中学生のおへそが集まっている国がここにあるよ!」ということであり、「女子中学生のおへそが好きな人はこの国においで!ハロプロ研修生っていうんだよ!」ということである。もう何も言うまい。そのまま世界中の好事家を集めればいい。つんく♂がメンバーに絶対に手を出さないタイプであることに私は心底ほっとしている。もう諦めたよ、あくまで「おへその国」であって、おへその下の国じゃないだけマシだと思うことにしたよ。むしろ、これに耐えられる柔軟性をもった女の子だけが生き残れる国 なんだろ?まったく人の世はアフリカのサバンナよりも過酷だよ。
海外でハロプロは確かに人気がある。YoutubeのMVに字幕を付けるのも大賛成だ。海外のファンも喜んでいる。でも、この曲にだけは字幕を付けちゃダメだ。こんなものに字幕を付けて外国の人に見せちゃぜったいにらめぇぇぇぇぇ!!ヲタとつんく♂のみならず、事務所ぐるみでロリコンだってことがばれちゃううぅぅぅ!!かっこつけてクールジャパンぶってるんだから、やめてあげてえぇぇぇ!!
ちなみに同じハロプロ研修生の『彼女になりたいっ!』も最高のロリコン賛美ソングで、頭を抱えてしまう秀作に仕上がっている。
第4位 愛の軍団 / モーニング娘。
鞘師がメインになったモーニング娘。の歌詞の特徴、それは「逆境からの挑戦」 である。
鞘師がセンターになった最初の曲『One・Two・Three』の「あぁこの夢には ねぇどれくらいの可能性があるというのか さぁ全部認め 未来を信じよう」という歌詞を見たとき、ねじ子は驚いた。モーニング娘。の歌詞が大きく変わった瞬間だった。それまでモーニング娘。は逆境を認めていなかった。国民的アイドル面をいまだにしていた、とも言える。モーニング娘。が全然売れなくなったことも、テレビに呼ばれなくなったことも、知名度がないことも、オワコンと馬鹿にされていることも、他の女性アイドルグループに大差で負けていることも、すべて認める。かつ未来を信じる。正しい現状認識 が初めて確認できたのだ。そしてEDMとフォーメーションダンス という「次のステップ」 を初めて示した。結果として『One・Two・Three』はよく売れ、今のモーニング娘。を象徴する曲になった。
以降ずっと、モーニング娘。の鞘師メイン曲は「認められるために(もっと言えば売れるために)努力し、挑戦しつづける女の子」 の歌だ。鞘師はまるでサムライのように芸事に一生懸命で真っすぐである。「姫路城下の刀の鞘を作る一族」の苗字にふさわしい姿だ。そして、その決意を上手に言葉にすることもできる。鞘師がセンターにいる一番大きな理由は、顔でもダンスでも歌でもない。一生懸命に歌とダンスに励む「真摯さ」 を最もわかりやすく具現化している存在だからである。その愚直さ、目標に向かうひたむきさとガッツ、色気や邪心のなさはフィギュアスケートの浅田真央選手に近い。日本人が一番好きなタイプのアスリート だと思う。「アスリートかよ!アイドルじゃないんかい!」と言われてしまうと非常に耳が痛いが、鞘師ならなんとかしてくれると信じてる。
『愛の軍団』は音源を聞くと、明らかに「ワイの軍団」と歌っている。これは「つんく♂の軍団」であり、「我々の軍団」でもある。つんく♂やメンバーやスタッフやファンも含めた「我が軍」 とも言える。確かに、今のモーニング娘。は逆境や偏見や過去のモーニング娘。と戦っていると思う。「大きな力に飲み込まれない」そうである。「大きな力」がいったい何を指すのかはよくわからないが、折れずに頑張ってほしい。
第5位 ヤッタルチャン / スマイレージ
一番の落ちこぼれだった関西出身の中西香菜ちゃんをセンターに抜擢して作った、関西弁のコミックソング。「昔はよかったなんて言わせない 未来の方が楽しいって思わなきゃ損」という歌詞も含めて、前田憂佳という巨大なエースが抜けた後のスマイレージの新しい方向性を示すことができた曲だ。
さらに加筆するとすれば、1番のAメロ部分の歌詞がいい。
「一日じゃ足んないよ」なんて 言っちゃって 甘えちゃって たぶん1年間あったって 限界まで 遊んじゃって 君は いつだって「ない ない ない」 そして いつだって「ヤバイ ヤバイ ヤバイ」 どんな時もデキナイチャンだもんね ね ねねね
身につまされる……。締切前のすべての文筆家・漫画家・同人作家にこの歌詞を捧げたい。ねじ子もどんな時もデキナイチャンだもんね……。ね。ねねね。
第6位 私が言う前に抱きしめなきゃね / Juice=Juice
さっきも書いた。「覚悟とかないならバイバイ」「足震えちゃってる子バイバイ」「本物の覚悟が今日も星となる」「社会はCOOLで 流行りはもう古い 星空が今夜も眩しい」という歌詞が、デビュー曲らしい悲壮な覚悟と決意に満ちている。それも含めて、デビュー直前に脱退してしまった大塚愛菜ちゃんのための曲だったと思う。(2013/12/29)
第1位 イジワルしないで 抱きしめてよ / Juice=Juice
さっき書いた。
そうそう、ダンスショットの石田亜佑美ちゃんヴァージョンには笑わせていただきました。動きはキレキレなんだけど、石田亜佑美ちゃん特有の東北っぽいもっさりした感じ、独特のダサさが炸裂していてたいへん結構です。
第2位 わがまま 気のまま 愛のジョーク / モーニング娘。
今年のモーニング娘。は快進撃をかましてくれた。楽曲も非常に興味深いものが多かったし、ダンスもどんどん上手くなってる。パフォーマンスレベルが上昇しすぎて、なんだかもうこれまで見たことがない珍妙なもの になってきた。売上が上がるのも当然である。だって、こんなの見たことないもん。 新曲のダンスを見るたびに「なんだこれ」と思う。異次元に突入してるぞ。しかもまだ全員が若い。彼女たちはこれから一体どうなっちゃうんだろう。楽しみでもあるし、なんだか恐ろしくもある。
『Help me!』『A B C D E-cha E-chaしたい』『Happy大作戦』『愛の軍団』『わがまま 気のまま 愛のジョーク』どの曲もよかった。クオリティは横一線で、どれを選ぶかはもう好みの問題だ。悩んだすえに「踊ってみた」動画で繰り返し見たこの曲にした。
彼らはニコニコ動画では有名な「踊り手」 で非常に人気が高いらしく、最近はmorning musumen。というユニット名でオリジナル曲を作ったりライブをしている、らしい。中学生の間での知名度は下手するとモーニング娘。そのものよりも高いのかもしれない。リーダーの白服さんは鈴木香音ちゃん推しが高じてmorning musumen。を結成したという。これは新しい応援のかたちだなぁ。同じ香音好きとして素直に尊敬する。彼らがモーニング娘。に若い女性ファンを連れてきてくれてるのも実感する。今までいなかったファンをこちらに連れてきてくれて、どうもありがとう。アップフロントがmorning musumen。を拾っちゃえばいいのに、ってわりと本気で思ってる。
ハロプロも16年、ねじ子のハロヲタ歴ももう16年だけれど、いまだに新しい形の応援方法を作り出すファンが続々と生まれてくるんだから面白い。ハロヲタは、ときにハロプロそのものよりも面白い。
第3位 私が言う前に抱きしめなきゃね / Juice=Juice
イントロのサックスと、歌いだしの大塚愛菜ちゃんが最高。「覚悟とかないならバイバイ」「足震えちゃってる子バイバイ」「本物の覚悟が今日も星となる」「社会はCOOLで 流行りはもう古い 星空が今夜も眩しい」という歌詞が、デビュー曲らしい悲壮な覚悟と決意 に満ちあふれていてシビれる。この曲の大塚愛菜ちゃんは本当に良かったなぁ。脱退してしまって非常に残念だ。つかぽんには(またはつかぽんの御家族には)この曲に歌われているような「本物の覚悟」 が足りなかったのだろうか?よくわからない。そんなことを考えてちょっと切なくなるインディーズデビュー曲。
第4位 ロマンスの途中 / Juice=Juice
大塚愛菜の脱退、センターの宮本佳林の足の骨折と不幸が続き、どうなることかと思ったJuice=Juiceのメジャーデビュー曲。しかし楽曲さえよければそんなマイナス要素はすべて吹き飛ぶってことがよくわかった。ドラゴンボールのOP『摩訶不思議アドベンチャー』と少女革命ウテナのED『Truth』を足して、割らずに、ファンクの粉末をどばっとふりかけたような曲だ。ドラゴンボールもウテナもファンクも大好きなねじ子には、生きているご褒美を与えられたようである。Bメロ、さゆべぇの鼻にかかった謎のパート「んのな~い」 (この動画で1:05)と、大サビのカリンの「すごおぉい!ヤヴアァァイ!!」 (この動画で4:33)が最大の聴きどころ。ヤヴァイのはカリンちゃん、あなたの顔芸です。画面から気合いがはみ出ています。収まりきっていません。ゆきずりの恋愛を肯定する歌詞も、気合いの入ったハイティーン女子特有の高飛車な高揚感がよく表現されていて好きだ。
第5位 ええか!? / スマイレージ
スマイレージは今年が一番きつかっただろうなぁ、と思う。でもすごく良い曲が続いている。スマイレージの置かれている状況は、℃-uteの『Danceでバコーン!』→『会いたいロンリークリスマス』→『Kiss me 愛してる』の時期によく似ていると思う。ファンはまったく増えないし、むしろ目に見えて減ってるし、メンバーもスタッフも迷走を自覚していただろう。でも、海の底にゆっくりと砂が堆積していくように、スマイレージという海には今年静かに良曲がたまっていった。今はそういう時期だ。メンバーの実力は折り紙つきなのだから、あと3年踏ん張ることができれば状況は好転すると思う。そこまで頑張ってほしい。
『ヤッタルチャン』は、ゆうかりんという巨大なエースが抜けた後のスマイレージの方向性を初めて示すことができた曲だった。そういう意味でも℃-uteの『Danceでバコーン!』にどこか似ている。そしてその次の『ええか!?』は他に類のない冒険的なラップソングで、聴いていてとても楽しかった。二期メンバーもみんな可愛いよ。
第6位 Help me! / モーニング娘。
今年の快進撃の最初の一撃となった曲。ここからずっとシングルオリコン1位が続く。久しぶりに1位が取れてとても嬉しかったなあ。モーニング娘。がフォーメーションダンスを強く意識して前面に押し出してきた のも、たぶんここからだと思う。
ニコニコ動画でモーション・キャプチャーされたMMDが流行しているのも微笑ましい。モーション・キャプチャーでキャラクターたちが踊っているのを見ると、確かにこの踊りは妙にシュールで笑える。異質で、なにより斬新だ。
【ニコニコ動画】【進撃のMMD】Help Me!!【団長の憂鬱】
皆さん楽しそうでなによりです。
今年は以上。あとのランキングはずっとモーニング娘。の曲が続くので割愛します。なんと!Berryz工房と℃-uteがない!Berryz工房は『アジアンセレブレイション』、℃-uteは『Crazy完全な大人』『あったかい腕で包んで』が良かったと思います。でも今年はどちらのユニットも決定打と呼べるものがなかったなぁ。引き続き来年に期待しています。(2013/12/26)