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医師兼漫画家 森皆ねじ子

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ねじ子の2015年ハロプロ楽曲ランキング 鞘師のこともっと褒めて褒めて褒めまくってあげればよかった

1位 スカッと My Heart / モーニング娘。’15

さっき書いた。鞘師の歌。ねじ子、赤羽橋ファンクだいすっき。

鈴木香音ちゃんの卒業に関しては、もう言葉がない。17歳の女の子にあんな短期間で食事制限中心のダイエットをさせたら、リバウンドして以前より太るのは火を見るよりも明らかなことだ。マツコデラックスが鞘師卒業に際して叫んでいた「あの言葉」を私も叫びたい気持ちでいっぱいである。まぁつまり「この糞事務所がぁ!!」と思わずにはいられないってことだ。

モーニング娘。として笑顔を振りまき続けることが何よりの社会貢献であり、高齢化社会の日本において最も福祉的なお仕事だと思うんだけどな。今だって、我々みたいな悲惨な精神衛生状態の人間の面倒をしっかり見てくれてるじゃんか、ねぇ?うーん。うーん。「福祉の大学とかさぁ…なんだその唐突な理由、クジラックスかよ…」とか、「酒井法子かよ…」とか、いろいろと思うところはある。本気で福祉の仕事をするつもりなら、看護師さんの学校にいって看護師資格を取るのがいいと思う。でもね、我々のいる地獄の底を這うような血塗れの現場じゃなくてさ、彼女にはもっと広いメディアの世界でね、世界中の人たちを笑顔にする力があるわけよ。もったいないよ。看護師の資格をとったあかつきにはね、教員免許を取ったももち先輩のように、ぜひまたメディアの世界でね、啓蒙活動などのお仕事をしてほしいなぁと思うわけですよ。ある意味現場よりもずっと多くの命を救えるし、なによりそれは選ばれた人間にしかできないお仕事なんだよ、そして貴女はその選ばれた人間なんだよ!なのにどうして志半ばでこんな決断を、あー。あー!この糞事(以下ループ)

こうなると、一度はなんとか納得していた鞘師里保の電撃卒業も「やっぱり納得がいかない」という気持ちがむくむくと湧き上がってしまう。鞘師に会いたい。もう恥も外聞もなく、ステージの鞘師が見たいよお。わーん。若い9期二人の卒業は、私にとってあまりに性急であり、消化不良のまま時が過ぎている。りほかの(とその御家族)は、あの頃の落ち目だったモーニング娘。に人生を賭けてくれたんだよ。たった12歳で、小学六年生で上京する決断をしてくれたんだよ。その2人を、たった17歳で、こんな形で失ってしまうことが悔しい。これじゃまるで私たちが思春期の田舎の少女2人の心と体をボロボロにしてしまっただけみたいじゃないか。そんなの嫌だ。認めたくない。

モーニング娘。は鞘師の卒業でエースを失い、香音の卒業で最も個性があり知名度が高いメンバーを失う。そして、あまりに多い11人というメンバーを抱えながらも、さらにメンバーを増やそうとしている。こうなると、もう次の展開は歴史を顧みても一つしかない。ツアーごとの卒業と、少数精鋭の加入である。一人か二人リーダーになる人を残して、古参メンバーを順次卒業させていく。加入は随時、クオリティを落とさない程度の少数精鋭のみ行う。後藤真希卒業後の黄金期の収束もそうだったし、プラチナ期の終焉もそうであった。継承者として一人残されるメンバー(黄金期における吉澤・プラチナ期における道重)が誰になるのかはわからないけれど、ここからのモーニング娘。はしばらくのあいだ別れと喪失のステップが続くのだろう。それは『One・Two・Three』を代表とする、モーニング娘。再ブレイクを支えたピースが次々に失われていくということでもある。つらい。カラフル期についた大量の新規ファンは少なからず幻滅し、去っていくだろう。悲しいけれど、この喪失体験もモーニング娘。の繰り返される歴史の一つなんだよね。あーぁ。天を仰いで叫びたい気持ち。鞘師リーダー・香音サブリーダーのモーニング娘。が見たかった。見られると思っていた。思っていたのに。あー、この糞(以下無限ループ)

2位 愛おしくってごめんね / カントリー・ガールズ

この曲が良すぎたせいで、カントリー・ガールズはファンの間で旋風を巻き起こし、あっという間にデビューが決まり、結果としてセンター島村嬉唄ちゃんの早期脱退を引き起こした。嬉唄ちゃんは2014年のカウントダウンコンサートで突然現れ、その可愛さと初々しさでハロヲタを大いに揺るがしたのちに、たった半年でいなくなってしまった。脱退理由の詳細は語られなかったが、親御さんのご協力が得られなかったようだ。ねじ子は今でも、嬉唄ちゃんはつんく♂と道重とBerryz工房をいっぺんに失った我々ハロヲタを気の毒に思った神様が見せてくれた春の夢だと解釈している。混乱を自覚しているので安心してほしい。

この曲は冒頭でせりふを語るセンターの島村嬉唄ちゃんのための曲であり、彼女が脱退した後でさえも、彼女のための曲である。嬉唄ちゃんがいなくなった今聞くと、ますます嬉唄ちゃんそのものを表しているようだ。作詞家の児玉雨子さんはそんなこと予期してなかったはずである。「センターの子はすげぇ可愛いけど、きっとすぐに脱退するわ!」なんて予想していたはずはない。それなのに、この曲はまるで嬉唄ちゃんが一瞬でいなくなることを完全に見越していたような歌詞なのだ。「メールは返さないよ 返事よりも 会えない日を数えてほしい」「女の子の秘密を明かさないのが女の子 嘘をついてはいないの それが運命よ」「愛おしくて忘れられないでしょ 許してよ 愛ゆえに ごめんなさいね」ぜんぶ嬉唄ちゃん。彼女そのもの。古来より、達人のつむぐ詩はときに未来を予言し、魔法をひきおこす。

嬉唄ちゃんは、とても意識的な演出ができる子だった。ハニカミも素人臭さも決して彼女の本当の「素」ではなかったと思う。誰よりも上手に「素人臭さを演出する」ことができる子だった。だからこそ逸材だった。彼女にはピュアだけでない、いろんな種類の引き出しがあったはずだ。彼女自身はアイドル活動を非常に楽しんでいるように見えたし、辞めたそうにも見えなかった。学業優先にも見えなかった。惜しい。つくづく惜しい。彼女がご両親の影響下から抜けて、自分自身で進路を決められる年齢になったのちに、再びどこかで出会えることを願っている。

嬉唄ちゃんがいなくなってこの曲は封印された。コンサートでも披露されなくなった。確かに私も、この曲をきくたびに嬉唄ちゃんを思いだして悲しくなってし まうため、聴けなくなっていた。彼女の脱退以前は一晩中聞いていたのに。既存メンバーがパートを再分配して歌ったとしても、彼女の記憶が強すぎて違和感を 覚えただろう。

その後カントリー・ガールズは新メンバーを二人加えた。新メンバーは二人とも「完璧な子ども」である。10歳当時の嗣永桃子がそうであったように、完璧な子ども。子役っぽい完璧さとも言える。この曲は2015年のカウントダウンでようやく復帰した。嬉唄ちゃんの印象的なパートはすべて新メンバーが歌った。嬉唄ちゃんのハニカミ演技とは180°違う、圧倒的な子役演技であった。「できる子役」くさい劇画的でわかりやすい演技で、これはこれで面白い。名曲が息を吹き返す瞬間を見届けて、私はようやくまた明るい気分でこの曲を聴くことができるようになった。

3位 CHOICE&CHANCE / Juice=Juice

カントリー・ガールズの突然の加速の裏で、上半期のJuice=Juiceは辛酸をなめてきた。そんなJuice=Juiceに突然の幸運が振ってわいた。オリコンシングルランキング1位獲得である。アニメ妖怪ウォッチのエンディングであるニャーKBと当時発売週のため他のライバルたちが避けていた週に、細々と2位狙いで『Wonderful World』を発売、蓋を開けてみたら1位だったのだ。無欲の勝利である。妖怪ウォッチのEDがDream5からニャーKBに変わった時に、ねじ子は随分と絶望したものだけれど(詳しくは昨年の俺コンを参照)、こうなったら一転して彼らに感謝したい。「握手券と投票券の付いてないCDにはビックリするほどお金を落とさないでくれて、どうもありがとね!」と。Juice=Juiceはもともと実力が高く、ルックスも抜群で、でも何かが足りない!もう一つフックが欲しい!という状態がしばらく続いていた。オリコン1位という肩書きにより、彼女らは一気に上昇気流に乗ることができたと思う。オリコンなんてもうランキングとしては何の価値もないと思っていたけれど、こうなるとまだまだ「きっかけの一つ」としては意味があるんだな。彼女らが主演するドラマ「武道館」だって、「J=Jはオリコンで一位を取ったグループなんですよ!」という一言が会議でプレゼンできるか否かによって、企画の通りやすさがずいぶん違ったはずだ。

かなとものことは早くて3カ月~長くても1年半くらい待ってあげて欲しい。ホルモンの治療は薬に慣れるまでどうしても時間がかかる。薬の副作用もちょこちょこ起きる。薬が効くか効かないか、手術に踏み切るか、治療法を決めるにもある程度の月経周期を見なきゃならない。どうしても時間が必要だ。早くて3カ月~長くても1年半くらい色々な治療を試してみれば、安定したコントロールが可能になる。腹痛や出血や薬の副作用など、子宮内膜症にまつわるさまざまなキツい症状も制御可能になるはずだ。動くのがキツイ時期が予測できるようになるし、その「キツさ」もいくらかマシになる。具体的にいうと「普通の女子にとっての生理痛」程度になる(つまり、日によって重い、寒い場所だときつい、2日目だけロキソニン内服、くらいのイメージ)。その後は他のメンバーと大差ない活動ができるはずだ。そのくらい待てるよね?私は待てるよ。だって彼女の声とキャラクターは唯一無二だから。ファンも事務所もメンバーも、そして何よりもかなとも自身が、体の回復を待ってあげてほしい。今、焦って何かを決めようとしてはいけない。あまりに時期尚早だ。誰にとってもいい結果を生み出さない。医者としては「子宮内膜症で仕事をやめるなんて、とんでもない!そんな必要ないよ!全く動けない状態が永久に続く病気じゃないんだからさ!半年から1年待ってれば、何とかなるから!後のことは、治療がひと段落してから考えよう!」という思いだ。かなとも自身は今とても辛いだろうし、己の体を呪うだろうけど、必ずコントロールできる日がくる。そしてそれは決して遠い話ではない。周りに何を言われようとも、気にするな。折れるな。あなた自身の野望をかなえてくれ。

病気を告白したのは誰にでもできることじゃない。勇気ある行動だよ。私は正しい選択だと思う。そもそもハロヲタの皆さんは屈指の名探偵揃いだから、何の前情報もなく婦人科通い(けっこう頻繁に通うことになる)が目撃されたら、あっという間に拡散されてしまうだろう。現在のSNS社会においてそれは避けられない。医療従事者は守秘義務があるので患者さんの情報を漏らすことはないけれど、患者さん同士にはそんな義務ないし、近所の人にも守秘義務はない。周りの人間の口には戸が立てられないのだ。あっという間に下衆な勘ぐりが広がる。それはますます彼女の心を傷つけるだろう。「産婦人科へ行く」=妊娠、性病、堕胎くらいしか思いつかない下衆で偏狭な人間は残念ながらこの世にとても多いのだ。公演を欠席するたびに、心無い中傷や下衆なヤジが発生して収集がつかない事態になっていただろう。今回の発表に対して「病気を売りにした売名行為だ」と感じた方もいたようだが、それはハロヲタの情報収集能力を知らない幸福な人の意見だと思う。

若い女性が婦人科系の病気を告白するのは大きな勇気がいる。かなともがそれを選んだのなら、私は大いに支持する。事務所も彼女を支えていくことに決めたのだろう。だって病名を公表した上でクビにしたら、叩かれるもん。一気に社会的な議題になってしまう。私も、子宮内膜症を理由に会社をクビになった患者さんがいたら、医者として強い憤りを感じるよ。大きい会社がそんな人事をあからさまに行ったなら、その会社を批判する。だって医者としてはそんな悪い前例を作られちゃ困るんだ。ただでさえ病気で苦しんでいる患者さんの首を、ますます絞める「悪しき前例」になってしまう。若い女子を使った商売を末長くやっていきたいと思うなら、婦人病というのは飲み込むべきリスクなのだ。

そして病名を公開したからには、かなともには同じ病気で苦しむたくさんの患者さんにとっての「希望の星」になってほしい。子宮内膜症という、原因のはっきりしない、他人にも言いづらい、同じ女性にも理解されにくい病気になっても夢をあきらめなくていい。仕事を辞めないでいい。アイドルにだってなれる!そう思わせてほしい。あなたがステージで輝く姿が、患者さんにとっての希望となる。「彼女も頑張ってるのだから、私も頑張る」という気持ちを、同じ病で苦しむ患者さんに届けてほしい。これは医者には決して与えることのできない光であり、未来への処方箋だ。あなたならできると信じている。

あ、この曲は名アルバム「First Squeeze!」から選びました。Juice=Juiceの高い歌唱力と表現力が遺憾なく発揮されています。MVでのみんなの顔芸、いや表情が素晴らしいです。

4位 ラーメン大好き小泉さん / こぶしファクトリー

こぶしファクトリーっていうネーミングセンス、最高だよな。ちょっと勝てないよ。ニュースを見た瞬間に爆笑できる団体名って、そうないと思うよ。単純な日本語なのに、他のどこともかぶらない唯一無二の単語の組み合わせ。一度聞いたら二度と忘れないインパクト。口に出すと楽しい語感。ベリーズ工房に引き続き何を作っているのかさっぱりわからない工場っぷり。狙いすぎてないくせに、ゲラゲラ笑える。どれも最高だ。聞いた瞬間は「こぶしって、拳?花?え、どっちも?こぶしの花って茶色くなって散り際が汚いけどいいの?フィストファクトリーって言われそうだけど、それもいいの?」などと考えたけれど、それらをぜんぶ吹っ飛ばせるほど馬鹿馬鹿しく、勢いがある名前だ。しかも彼女らのパフォーマンスを見るに、一番近い「こぶし」の意味は実は日本的歌唱テクニックの「こぶし」であった。そうだったのか、こぶしをきかせて歌うのが彼女たちの歌だったのか!ダブルミーニングどころかトリプルミーニングだ!すごいな!個人的には2016年最も笑った大喜利、いや違ったベストネーミング大賞でした。

話が逸れたよ。「ラーメン大好き小泉さんの歌」は純粋に曲がいい。ダンス☆マン渾身のアレンジもいい。MVも明るく楽しい。ラーメンがモチーフのふりつけも面白い。

ねじ子の一推しメンバーは藤丼だ。こぶしファクトリーの鍵は藤丼が握っている。と、俺は踏んでいる。彼女にはこのまま勉強を続けて、できる限りいい大学に入って欲しい。本当はもう東大とかに入って欲しい。ハロプロで東大。新しいよね?まぁさすがに東大は難しすぎるので、どこでもいいから、できるかぎりいい大学に入って欲しい。もちろんハロプロの先輩たちのように慶応大学(推薦や内部進学)もいいけど、がっつり大学受験するのも魅力的だよなぁ。

藤丼は賢くてかわいい。でも、このままテレビのバラエティー番組という戦場に行くには武器が足りない。道重だってももちだって、10年間ハロプロで蓄積した大量の資材をもってバラエティーに攻めこんだ。ももちに至っては「教員免許」という武器までしっかり担ぎあげて一人旅立っていった。藤丼はまだキャリア3年の上に、高校生である。バラエティという魑魅魍魎が跋扈する戦場に立つつもりならば、もう少し武器が欲しい。でないと返り討ちにあう。「名門大学」というのはTVショーで戦うための一つの武器として非常に有効である。何より彼女には、まだその武器を手に入れるチャンスがある。忙しくて大変だろうけど、頑張って両立してほしい。それは彼女のみならず、こぶしファクトリーにとってもひとつの売りになり、ブレイクのきっかけにさえなりうると思う。

あ、ちなみに本当はこぶしファクトリーの鍵はたぐれなが握っている。と、ねじ子は踏んでいる。彼女らのアホ可愛さが一皮むける瞬間が、こぶしの真の躍進の時だと思う。それが何年後かはわからないけど、今から楽しみだ。

5位 臥薪嘗胆 / アンジュルム

アンジュルムはスマイレージから完全に曲調を変え、生まれ変わった。方向性を決定的にしたのはファーストシングル『大器晩成』だろう。今の彼女たちは『大器晩成』で受けた路線、つまり這い上がる系の歌詞とロック歌謡路線で突き進むことに決めているようだ。私はあまりそのジャンルが好みではなく、ファンキーな『臥薪嘗胆』が一番好きってくらい流行に乗り遅れているのだけれど、アニソン的和製ロックが大好きな若いファンは多いのでこのまま突き進んでほしい。

アンジュルムっていうネーミングは聞いた瞬間に「同人イベントに初めてサークル参加する女子高生が付けがちなサークル名みたい。スタジオYOUのイベントの島中にいそう」と思っていたら、本当に現役女子高生の中西香菜ちゃんがつけた名前だった。うーん、フランス語を入れてみたり、横文字なうえに造語だったりするのは、一見カッコよくても実はありがちで覚えにくく、あまりよくないサークル名だと(こちらの世界では)言われているんだけどなー。あ、同人サークル名と女性アイドルを一緒にしちゃいけませんね!すみませんでした!しかし私には何回見ても「Anger Me」に見えてしまうんだよ。「私を怒らせるもの」。そしてある意味、それはとてもあやちょらしい名前だと思う。彼女の周りにあふれている数々の理不尽、屈辱、同胞との別れ、事務所やファンに対する怒りは、ますます彼女の美しさを増し、魅力を引き上げる要因になっていると思う。彼女は、怒りによって自らを洗練させ、芸を磨くタイプの芸術家なのだ。怒りによって悟りに近づくその姿は、彼女の大好きな仏像で例えるなら如来や菩薩というより、明王に近い。不動明王とか愛染明王とか。いつも9人組を保つアンジュルムは、まろが抜けてますます「不動明王あやちょと八大童子たち」感が強くなってきている。

出典:http://photozou.jp/photo/photo_only/197391/25120187

6位 イマココカラ / モーニング娘。’15

『映画プリキュアオールスターズ 春のカーニバル♪』のタイアップ曲。私の大好きなモーニング娘。が、私の大好きなプリキュアとコラボしたよ!いい曲。小田さくらセンターという新しい試み。「私達は普通の女の子」と歌い出すおださくがまったく普通の女の子っぽくない、顔から妖艶さが滲み出ているのが最大の見所。モーニング娘。15’が声優もやるとの情報を聞き、ルンルンで映画館に足を運んだねじ子であるが、この私をもってしても!彼女らがどこで出演していたのか!さっぱり!わからなかったヨ!清々しいほどのモブっぷり。オリエンタルラジオの二人が出ずっぱりのキャラだったのとは対照的な扱いであった。

そして個人的には、プリキュアのピンチの場面で「映画を見ているみんなー!ミラクルライトを振って応援してほしいクル~!」という、画面のこっち側の観客全員でプリキュアを応援するというプリキュア映画お約束展開(そのために入場特典はいつもペンライトだった)が、今回からなくなってしまったのが非常に残念だった。なんだよ!私はプリキュアを応援するためにここに来てるんだよ!詐欺だ!ミラクルライト振らせてよ!プリキュアを応援できないんだったら、私は何のために高い金を払って恥ずかしい思いをしながら幼女に紛れて映画館へ足を運んでいるのか、わからなくなっちゃうよ!あ、モーニング娘。15’を見るために来たんだった。てへ。すっかり忘れてたよ。エンディングで日本各地の幼女たちが躍る「イマココカラ」の動画を挟みつつ歌い躍るモーニング娘。はとても良かったです。MVそのまんまで、オリジナル映像は見受けられませんでしたけど。衣装はもっと可愛くてフリフリの、変身後プリキュアみたいにしてほしかったけど。それでも、「プリキュアとモーニング娘。のコラボ」というずっと夢見ていた景色を見られて嬉しかった。

7位 Shooting Star / Juice=Juice

Juice=Juiceの舞台『恋するハローキティ』劇中歌。作曲は和田俊輔さん。和田さん最高だな。ステーシーズ再演はよ!LILIUM再演はよ!鞘師が帰ってきたらLILIUMの続編もはよ!鞘師って実はとてもいい役者だし!リリー(鞘師)が失望の果ての放浪の旅から帰ってきたら、仲間はみなクラン(ハロプロ)からいなくなっていた。でも私はなぜかこの世界に生き残っている――という状況は、実は数年後の鞘師にぴったりなんじゃないだろうか?

以上です。また来年。2016年のハロプロ楽曲ランキングは今のところ『チョット愚直に!猪突猛進』と『押忍!こぶし魂』が熱いデッドヒートをくりひろげる予定です。

2015年 ねじ子の俺コンランキング・楽曲編

1位 該当なし

今年はヒット曲のない年だった。興味が細分化し、皆で共有できる音楽がなくなったと言われて久しい。もう、全世代が同じ音楽を耳にするという概念自体が旧世代のものなのだろう。2015年はその状況が極限まで極まった年だと思う。そうは言ってもこれまでは、ニコニコならニコニコ、ボカロならボカロ、アニソンならアニソン、キッズアニメなら子供、アイドルならアイドルヲタの世界の中で小流行した曲くらいはあったと思うんだ。今年はそれすらも、なかった。一発屋も見あたらず、歌番組は昔の曲ばかり。ヒットどころか犠牲フライや送りバンドすらもなかったんじゃないだろうか。完全試合達成だ。強いて言えばμ’sが今年のヒットなのかもしれないが、μ’sの曲のほとんどは(正確には)2014年以前のものだし、そもそもオタクの贔屓目を持ってしても、μ’sが若い男女全員に共有されているとは思いがたい。これが私の年のせいで、実はしっかりと若い世代の共感を呼んでいる曲があり、ただ私の音楽のアンテナの感度が鈍くなっているだけであることを願っている。

結局、音楽業界はインターネットの普及によって音楽が「タダ」になってしまったことにいまだ有効な手を打ち出せていないのだと思う。Youtubeがサービスを開始した2005年頃からずっと言われ続けている課題だが、いまだ解決策が見あたらない。音楽家の個人個人は、すごくがんばっている。自分たちが食べていけるように、「マネタイズ」の方法を日々模索している。それはわかっている。でも、もうとっくに崩れている既存の音楽業界の仕組みに自らが死ぬまでしがみついていたい人たち(おそらく彼らは10年以内に引退して「勝ち逃げ」するので、その後のことなんて考えなくていいのだ)の恒常性バイアスに、若い人たちはとても太刀打ちできていないように見える。組織の上の方にいる人たちは、現状を維持することによって利益を確保しているのだから、変わる必要はない。後のことを考える必要もない。誰だって自分の取り分が減るのはイヤなのだ。当たり前である。これは現在日本において、どの業界にもみられる構造だと思う。

団塊の世代は人口が多いので、多数決の民主主義社会では勝ち続ける。そして日本は民主主義だから、下の世代は何をやっても勝てない。彼らがごそっといなくなるまで、我々は犬死にしないように必死で耐え、近い将来やってくる★超絶★格差社会に向けてエネルギーを蓄え、切磋琢磨しなければいけない。医療業界もそう、出版業界もそう。SMAPですら、そう。かくいう私もそうである。きついなぁ。馬鹿馬鹿しさの真っ只中で犬死にしないようにしたい。

2位 シオカラ節 / シオカラーズ(Splatoonサウンドトラック)

2015年現在における自由な音楽制作の形の一つは、ゲーム音楽にあると思う。ねじ子の今年のベストアルバムはSplatoonサウンドトラック、その名も「Splatune(スプラチューン)」。遊び心満載で、細部までよくできたアルバムだった。

Splatoonというゲームは、イカ人間の皆さんが鉄砲やブラシでペンキをぶちまけながら、地面に塗ったインクの色で陣取り合戦をするシューティングゲームである。このCDアルバムはもちろんゲームのサウンド・トラックなのだが、「ゲームの中のイカ人間の世界で発売された音楽アルバム」という体を取っている。音楽性の異なる6組のイカバンドやイカシンガーがリリースした楽曲を集めたオムニバスアルバム、という設定だ。その設定に乗っ取ったCDジャケットワークがすばらしい。一曲ごとに、音楽レビュー雑誌風の熱いライナーノーツが付いている。たとえば、一番有名なCMにも使われている戦闘音楽「Splattack!」のライナーノーツはこれ。

Squid1

この曲を演奏している(という設定の)バンド名は「Squid Squad」。ボーカル、ギター、ベース、ドラムの4人組。いや、4イカ組。大ヒットしたデビュー曲「Splattack!」の次に彼らが出した二枚目のシングルがこれだ。

「バンドにとって”ヒット曲の次の曲”がイカに難しイカは、想像に難くない。だが、僕らがアゲまくったハードルをカラストンビにも掛けず、彼らはスーパージャンプさながらこの曲で飛び越えていった。」で始まるライナーノーツがついている。終始こんな感じで、実にイカしている。ちなみに彼らは私が今年もっともよく聴いたロックンロール・バンドであった。

今回取り上げたシオカラ節は、ゲーム内のアイドルキャラクターであり、イカ世界のトップアイドルである二人組・シオカラーズが歌っている。

shiokara

歌詞がさっぱりわからない。これはイカの世界の言語、つまりイカ語である。こういうわけわかんない音声にしておけば、世界各地で発売するときに各国語に吹き替えしないですむという大人の事情を逆手に取った手法だ。「これでやっとシオカラ節を歌える!」と歌詞カードをウキウキで開いたねじ子はひっくり返ったよ。

 

siokaraliner2

こちらにもアイドル批評ライナーノーツが付いている。クイックジャパン風でとてもいい。
さらにこの曲は元ネタがある(という設定になっている)。なんとシオカラ地方に伝わる伝統民謡である。その名も「元祖正調塩辛節」。シオカラーズは、子供の頃にこの曲を民謡選手権で歌い、優勝したことがデビューのきっかけとなった(という以下略)。こちらもすごくいい曲だ。

これだけ作り込んだ世界観を一つのアルバムに丁寧にパッケージできていることが素晴らしい。

3位 スカッと My Heart / モーニング娘。’15

つんく♂にしか作れない、アイドル・ファンクの真骨頂。鞘師のビートの利いた低い声がよく似合う。マイケル・ジャクソンの群舞を彷彿とさせるダンスも素晴らしい。センターでバキバキに踊る鞘師はまさにマイケルのようである。衣装もかわいい。歌詞も、鞘師のことをそっくりとうつしとったような歌詞だ。この曲は鞘師だよ鞘師。鞘師の曲だよ。2015年の大晦日に突然卒業した鞘師のための歌詞で、メロディで、ダンスだよ。

鞘師は求道者である。我々には彼女のダンスはこれ以上ないほどの理想型に見えるのに、鞘師本人はライブDVDやテレビで自分が歌い踊っている映像を見るたびに、絶望に打ちのめされていたという。鞘師の脳内には完璧なダンスのスタイルがあって、今の自分はまだそこに達していないとずっと感じていたらしい。鞘師が自分で未熟だと思っている「今の自分の表現」も、他人から見れば十分にハイレベルで、誰も真似できないのだが、そんなことは彼女には関係ないのだ。鞘師は天才であるがゆえに、自分のダンスの「あら」が見えるのだろう。そしてその「あら」に耐えられないのだ。だから彼女は「ダンスを勉強しなおす」と言って、海外に留学しようとしている。鞘師は、脳内の理想型に少しでも到達するためにさらなる高みを目指すのだろう。彼女の脳内にある「完璧なダンス」は、我々凡人には想像もできない。彼女の脳内にしか、それはない。レオナルド・ダ・ヴィンチがモナリザの完成形を求め、死ぬまで筆を入れ続けたように、鞘師は芸事に求道し続けていないと心が死んでいってしまうのだろう。だから、鞘師が「完璧を追求したい」と言い出したら、もう誰もそれを邪魔することはできない。それを止めたら、泳ぎを止めたマグロのように彼女の心は衰えていってしまう。実際、2015年の春から夏頃の鞘師には迷いと戸惑いが透けて見えていたように感じる。モーニング娘。卒業を決めた後の彼女は、一転してとてもすがすがしく、新しい目標に向けてのびのびしていた。そしてとても魅力的だった。これが私の鞘師評である。

鞘師がモーニング娘。に加入したとき、そんなストロング・スタイルの女性アイドルは絶無だった。異性に媚び、業界の偉い人に媚び、握手会で太い客に媚びる。歌は口パク、踊りは盆踊り。それが女性アイドルの圧倒的なスタイルとして旋風を巻き起こしていた。彼女はそんな世間の風はどこ吹く風、といった涼しい顔でモーニング娘。に入ってきた。当時のモーニング娘。は人気も地の底であり、スキャンダルまみれで、どこにいっても「まだ続いているの?解散すればいいのに」「AKBに完全に負けたよね」と言われる状況だったけれど、そんなことはまったく意に介さず、堂々と「幼稚園のころからずっとモーニング娘。に憧れていました。私の夢が叶いました」と語っていた。そしてびっくりするほど上手に舞い踊った。広島の、たった12歳の子供が。

彼女がどれだけ私たちの希望だったか、はかりしれない。9期は、鞘師は、私達にとって明けの明星だったんだよ。こんなにも有望な子が、娘。に入ってくれただけで嬉しかった。5歳の頃から娘。に入るために広島でレッスンしてきたという話を聞いて、心揺さぶられずにはいられなかった。今でこそ「プラチナ期」とか言われて崇められてるけどさ、当時は新しい展開が長い間何一つなくて、新メンバー募集すらなくて、モーニング娘。は閉塞感 に覆われていた。「娘。はこのまま店じまいするのかもしれない」と本気で疑う状態だった。彼女のおかげで、ハロプロは首の皮が一枚つながったのだ。

彼女の実力至上主義は幅広く伝わり、ハロプロに新しい風を吹き込んだ。他のアイドルとの差別化に成功し、多くの女性ファンの共感を呼んだ。大量の女子がハロプロにまた入ってきてくれた。モーニング娘。の現場はいよいよ半数近くが女性ファンになってきている。信じられない。これは確実に鞘師(と9期10期11期とスマ2期)の功績である。鞘師最後の武道館で「マジですかスカ!」が始まった時、モーニング娘。に9期が入ってくれた時の喜びがぶわっと蘇ってきて、ねじ子は泣いてしまったよ。

正直に言うと、鞘師卒業の一報を聞いたときは、そのあまりの性急ぶりと、夏頃の休養(朝布団から立ち上がれなくなった)の記憶からなんらかの精神疾患の可能性が頭をよぎった。精神疾患の患者さんは、症状が激しい時期に大きい決断をしようとしがちである。そんな時はとりあえず決断を先延ばしにさせる。精神科の教科書にも載っている定石だ。「それなのに鞘師は、精神が落ち込んでいるときに重大な決断をしてしまったのではないだろうか?それは悪手だよ!周りが守ってあげなくちゃ!」と一瞬思ってしまった。私の心も絶望で塗りつぶされた。でも、武道館で鞘師の晴れ晴れとした姿を見たら「そんなの私の勝手な杞憂だ」ってわかったよ。鞘師はちゃんと考えて結論を出した。周囲と喧嘩したわけでもなかった。本当によかった。私は、鞘師ならモーニング娘。に帰ってきてもいいと思ってる。2年後だってまだ19歳だ。アイドルとしても、表現者としても、まだまだこれからという時期である。彼女の帰還を楽しみにしている。

4位 ラブ♡ボクシング / 清竜人25

何も言わずにMVを見てほしい。真ん中のアフロの男性がすばらしい。彼の名前は清竜人くん。シンガーソングライター。ちなみに一人の時はこんな音楽をやっていた。全然違う。宇宙人のジギー・スターダストがリーゼントてかてかにしてレッツ・ダンスするヤング・アメリカンになるくらい違う。ずいぶんと吹っ切れたもんだ。

周りの6人の女性はみんな彼の妻(という設定)。メンバーは「第○夫人 清●●」という名前で呼ばれる。結婚しているから、女の子たちの名字はみな「清」。清竜人25は、清竜人というフロントマンと、その6人の夫人で構成された一夫多妻(という設定の)ユニットなのだ。

こうなるともう、誰も恋愛禁止とか言わない。だってみんな清竜人の妻だから。アイドルが異性のからむ仕事をすると、ファンの間には必ず「誰かメンバーに手を出しているんじゃないか」という疑念が出る。相手がプロデューサーでも監督でも作詞作曲でもバックバンドでも、そう。それゆえに男女混成ユニットは人気が爆発しにくいとも聞く。でも、そんな疑念も発生しやしない。だってすでにみんな妻だし。むしろ、ここまでいくとメンバーの誰にも手を着けていないんじゃないかって思えてくる。よく考えられた仕組みだよ。

ちなみに第5夫人の清菜月ちゃんは先日活動休止を発表した。卒業理由はなんと「ご懐妊」である。マジかよ。こうなると、なぜか清竜人の子供とはみじんも思わないんだから人間って不思議である。まったく、よくできた設定だ。ご懐妊おめでとう。

そしてなにより、抜群に曲がいい。先ほど「アイドル・ファンクはつんく♂にしか作れない」と書いたけれども、清竜人はつんく♂の後を一人猛追している音楽家だと思う。新しい形の和製アイドル・ファンクだ。ファンク歌謡が大好きなねじ子は狂喜乱舞しております。ちなみに清竜人25のアルバム「PROPOSE」初回限定版amazon販売ページの「この商品を買った人はこんな商品も買っています」には、ずらりと岡村靖幸が並んでいた。そうだよねぇ。みんな和製ファンク・ミュージックに飢えているんだなぁ。わかる、わかるよ。私もそうだよ!

5位 STAR TRAIN / Perfume

今年の女性アイドル市場はさんざんだった。ハロプロのみならず、ほかの女性アイドルものきなみ売り上げを落とし、動員を落とし、解散やメンバーの脱退が相次いだ。膨れ上がったアイドルバブルは徐々に終息に向かっているのだろう。まあハロプロは何も変わらずに続いていくのだろうけれど、市場全体が冷え込むのは望ましいことではない。

そんな中でPerfumeは唯一、その魅力をさらに増した女性アイドルグループだった。Perfumeがブレイクして幾星霜、あまたのエピゴーネンが生まれ、握手アイドルの台頭があり、そのついでに口パクだと叩かれ、きゃりーぱみゅぱみゅの流行があり、数々のお祭り騒ぎが起こっても、そのすべてを素通りしてPerfumeは地道に音楽をやり続けている。その姿は美しい。結局、誠実に作品を作り続けているところは順当に生き残るんだな。希望のもてる結末だ。この曲のサビの「I don’t want anything」「Music is everything」は、彼女たちの誠実なたたずまいを象徴するすてきな歌詞だと思う。

6位 Vanguard / JAM Project

私が今年一番たくさん聴いて、一番口ずさんだアニメソング。JAM PROJECT最高。影山ヒロノブ最高。歌詞もいいし、曲も文句なく熱い。歌唱力も一級品だ。でも2011年なんだよね。再放送で見た『カードファイト!! ヴァンガード』アニメの第1期シリーズも面白かった。

7位 マジカル☆チェンジ / マジカル☆どりーみん

女性アイドル関連で2015年私がもっとも衝撃を受けたのは、ドロシーリトルハッピーの分裂劇であった。ドロシーはもともと、メインのお姉さん2人と、若い3人の合計5人で構成された仙台ローカルアイドルである。まさにその名の通り、小さな幸せを届ける田舎の純朴な少女たちそのものという上品な立ち振る舞いで、歌唱力もあり、惹かれることも多かった。

今年の初旬から、若い3人が「グループ内ユニット」としてcallmeというユニットを始めた。そこまではいい。ある日突然、callmeのイベントで3人が上京し、独立・分裂することが発表されたのだ。同じ日に、違う場所で、残された2人も泣きながら分裂を発表した。この時点で、平和に話し合いが行われたとは到底思えない展開である。しかも、分裂するまではあと3ヶ月もあり、その間シングルリリースもコンサートも行うというのだ。どんな顔をしてそれを見ればいいのだ。大人の事情の臭いしかしない。

この分裂劇を、誰がどんな目的で仕掛けたのかはわからない。でも、提供された結論はクソ。どうしようもないほどクソな結末としか言いようがない。ジュエルペットのオープニングとエンディングという大きなタイアップ中にそんなことをしでかしたエイベックスの大人たちには猛省してほしい。「ジュエルペットと一緒にたまプラーザでリリースイベントやるよね!ドロシーちゃんなら見に行きたいな!」とウキウキして発売週を待っていたねじ子の純粋な気持ちを返してほしい。分裂させるつもりなら、アニメのタイアップなんか取るなよ!ジュエルペットに失礼だろ!放送開始日からわずか24日で分裂発表しやがって!さらに、実際の分裂はけっこう先で、エンディング曲発売日の2ヶ月後っていうね!当然、ジュエルペットのアニメの間に流れるCMでは5人とも映っているっていうね!こいつら半分以上いなくなるんだよ!?どういう気持ちで見ればいいのさ!?とてもCDを買う気になんかなれないよ!当然のようにシングル発売のイベントはいっさい開催されず、売上も散々であった。

極めつけは、5人体勢最後のコンサートでの最後の挨拶だ。出ていく方のグループのメンバーが不安を口にして次々と泣きだし、果ては残る方のリーダーの挨拶中に、出ていく方のリーダーがガチの口喧嘩をふっかけ、言い争いをはじめたのである。もう笑っちゃうよね。笑うしかないよ。小さな幸せを届ける田舎の純粋な少女たちが連れていってくれた魔法の国は、いったいどこへ行ったんだ?もうこうなってしまったからには、ドロシーリトルハッピーの2人もcallmeの3人にも頑張ってほしいけど、エイベックスの大人たちには「客を舐めるのもほどほどにしてね☆」という言葉を送りたい。……と、ここまで書いたところで、SMAPがさらに下をいく醜悪な展開で解散騒動に巻き込まれていた。いやー、ドロシーの分裂劇のほうが、本音が聞けたぶんだけ、まだマシだったな!よっぽど面白かった!SMAPについては企業のメンタルヘルス管理的に看過できない状態なので、また改めて書きます。

話がそれた。で、この曲はオープニング曲。ドロシーリトルハッピーとGEMとX21(すべてエイベックス所属)という3組のアイドルグループから2人ずつ選抜された、計6人の選抜ユニットである。ドロシーリトルハッピーから選抜された2人は、違うグループに分裂しちゃいましたとさ。ちゃんちゃん。そんなことやってるからアニメのジュエルペットが終わっちゃうんだよ!いや、ジュエルペットが終わることにエイベックスは関係なかったな。すまない。「SNS向け銀魂」であるところの「おそ松さん」があれだけ受けているのに、「女児向け銀魂」ともいえる「ジュエルペット」シリーズが終わってしまうとは、ねじ子の厭世感も増すばかりである。「本物の銀魂」こと、週刊少年ジャンプの銀魂の連載も最終章に突入するらしいしなぁ。はぁ。

8位 Friend List / スプラトゥーンサウンドトラックより


2位と同様、スプラトゥーンのサントラより。ロックンロールの楽曲が大衆に影響を与えなくなって久しい。そもそも、ロックンロールはきちんと現代の若者の心にも鳴り響いているのだろうか?アメリカではもうロックなんてGeekしか聴かない音楽になっていると聞くし。TVでもアニメのOPとEDでしかロックンルロール・ミュージックが流れないし。ギターとベースとドラムの三重奏が生み出すグルーブを何よりも愛しているねじ子はとっても心配です。そして確かに、私の心の中でも新しいロックンロール・ミュージックが鳴り響く機会が減ってきました。そんなねじ子が今年もっとも聴いたロックンロール・ミュージックはスプラトゥーンです。これでいいのでしょうか。

9位 Firework / Czecho No Republic(チェコ・ノー・リパブリック)

あ、これはロックだな!中島早貴ちゃん目当てで見始めたテレビ東京系コント番組「SICS」のエンディングで知った曲。「SICKS」は非常に面白かった。最初は、ネットで散見される極端な人たち(腐女子・処女厨・既婚女性・ハメ撮り流出など)の特徴を拾い集めて揶揄しているだけの、ありがちなコント番組だと思っていた。ところが実はすべてのコントに伏線がはりめぐらされていて、回を重ねるごとに着々と謎が解かれていき、最後にはすべてのコントがつながって一つの大きなバイオサスペンスドラマになっていった。SFでもあり、銃撃戦もあり、アクションもあり。その中で、女性向け同人作家であるリコポン(中島早貴ちゃん)は、相方のマユ吉先生とともに世界を救うヒロインになっていく。

私自身がオタク女であるがゆえに、当初は「はーん。ネットで必死に集めた情報から、現実にはありえない腐女子像を勝手に作り上げられて、笑いの対象にするやつね!」というありがちな憤慨を覚え、斜にかまえて見ていた。映画『ティファニーで朝食を』のステレオタイプで戯画的な日本人「ユニオシ」を白人俳優が演じて笑いを取っているのを見るような、白けた気持ち。でも、回を重ねていくとそんなのどうでもよくなるくらい脚本が面白かった。

「nkskにはオタクっぽい要素なんてないのに、どうしてこんな役にキャスティングされたんだろう?」という疑問は、その後、彼女が「騙されやすいアイドル(略してサレドル)」になった瞬間に吹き飛んだ。これは確かにはまり役だ。nkskちゃんってば日本一・大人に言われたことそのままやっちゃいそうなアイドルなんだよ。彼女の巻き込まれ力は異常だよ。嬉唄ちゃんの脱退を皮肉った寸劇をやらされたりとかさ、よろセ(以下自主規制によりカット)とかさ。

10位 シャクシャイン / 水曜日のカンパネラ

水曜日のカンパネラを初めて聴いたときのねじ子の勝手な感想は「ニコニコ動画系・ピチカートファイブ」。ピチカートは渋谷系、つまり東急鉄道沿線の雰囲気を漂わせたハッピーでキャッチーなお洒落ソングだったけど、これはネットカルチャーの雰囲気が充満した、ダウナーで、けだるくもグルーヴィーなお洒落ソングである。

私は音楽に疎いので、彼らの音楽のジャンルはわからない。あえて言えばヒップホップなのかな?ファッションアイコンとして完璧な女性・コムアイのボーカルと、打ち込み音楽家ケンモチヒデフミとの幸福な出会い。その結果生まれる音楽。その化学反応ぶりが、ピチカートファイブの野宮真貴さんと小西康陽さんによく似ているのだ。

歌詞にはぶつ切りの単語とダジャレと語呂合わせが多用されている。でも決してバラバラではなく、きちんとつながった言葉が散りばめられている。イメージからさらにイメージを引き起こしていくかのような歌詞だ。早口言葉っぽいとも、Wikipediaっぽいとも言える。音楽とリズムが何よりも大切で、音符に乗りやすい単語を順番に乗せていくとこんな風になるのだろうか?私は好きだけど、好みの分かれる歌詞だと思う。ライブだとこんな感じ。ディス・イズ・サブカルチャー。


以上です。次回はハロプロ楽曲ランキングでお会いしましょう。

2014年ハロプロ「歌詞だけ」ランキング

2014年ハロプロ「歌詞だけ」ランキングです。あくまでも歌詞だけ、他の要素には完全に目をつぶっています。つんく♂さんハロプロ総合プロデューサー卒業の発表の日に、あえて上げます。

※ここに書かれているのはあくまでねじ子個人の解釈です。「俺の解釈と違う!」と感じることもあるでしょう。歌詞の解釈は人それぞれです。むしろ100人が読めば100通りの読み方ができるのが素晴らしい詩というものであり、素晴らしい芸術作品だと思います。

1位 普通、アイドル10年やってらんないでしょ!? / Berryz工房

個人的な共感で1位(共感の詳細は2014年ハロプロ楽曲ランキングで書きました)。共感要素がなかったら「1億3千万総ダイエット王国」が1位だと思う。

ハロプロのアイドルにはルーティンワークが多い。毎年1~2月にハロコンがあり、3月にひなフェスがあり、春と秋に長い全国ツアーがあり、夏休みと冬休みにハロコンがあり、年末にカウントダウンがある。この周期からぶれることがない。いったんハロプロに就職してしまえば、その女の子には(よほどのことがない限り)半永久的に仕事と給与が与えられる。福利厚生が手厚い。そんな環境の良さから、ハロプロはよく「アイドル界の公務員」と揶揄される。

でも、その仕事は決して楽ではない。小中学生のうちから自由を制限される。プライベートで水着を着られない。プールも温泉も公衆浴場も入れない。買い物もお食事も部活も勉強もまともにはできない。土日と放課後はすべてつぶれる。もちろん、学校では周囲から浮く。浮くくらいならまだいい、いじめられることも多いときく。デビュー前と同じ学校にはいられなくなってしまうことも多い。

歌や踊りが上手ければ順風満帆、と言うわけでもない。顔が可愛ければいいわけでもない。普通の人間でも、思春期には自分と世界との居心地のいい距離感をさぐって右往左往するものだ。魑魅魍魎が跋扈する芸能の世界の中で、それをやっていかなければいけない。他にもたくさんの女性アイドルがいる中で、どう個性を出していくか。どう立ち位置を確保するか。自分の頭で考えて、自分だけの幸福をつかみ取っていかなければならない。辻加護加入以降の「ハロープロジェクト」という組織は、まだ何者でもない10代の女の子たちが10年かけて自分のキャラクターと進路を確定していく過程を、屋根瓦のように積み重ねて客に提供していく重層構造になっている。

10年後の最終的な結論が「芸能界引退」でもよし。学芸員とアイドルの両立でもよし。結婚出産ママドルでもよし。モデルや女優を目指してもよし。何でもいいから全力で自分の道を決めて、全力で突き進んでくれればいいのだ。ハロヲタは何でも受け入れる。自立に向けてあがく姿こそが思春期の美しさであり、ハロプロの面白さである。Berryz工房は12年かけて確かに完全に自立した。自立したからこそ、ハロプロという「優しい檻」からは出ていく時期なのだと思う。

私だって本当はいつまでもBerryz工房を見ていたかった。活動停止なんて認めたくなかった。久しぶりに会った知人に「Berryz工房活動停止なんですね!ニュースを見てまっさきにねじ子さんの顔が浮かびましたよ!大丈夫でしたか?」と心配された上に、「あー、大丈夫ではありませんでした……。一週間くらい自分を失ってましたかね……。はは……」と、ふらふらと目を泳がせながら答えている有様である。Crazy完全にダメな大人。

2位 1億3千万総ダイエット王国 / Berryz工房

平成の東京に住む20代前半の女子が、朝起きて家を出て、満員電車に乗って、仕事して、ご飯を食べて、家に帰る。決まった恋人はいない。昨日と何も変わらない一日が、また始まる。その道すがら、一人で歩きながら頭の中で適当に巡らせている意識をすべて文字にしたかのような歌詞である。主人公の女の子に去来する思念を、切れ目なく直接的に映し出していく文体だ。これはジェイムス・ジョイスが名著「ユリシーズ」の中で実践していた「意識の流れ」とまったく同じ手法である。「ユリシーズ」は20世紀初頭のダブリンのとある1日の物語だが、「1億3千万総ダイエット王国」は21世紀初頭の東京のとある2日間の物語である。つんく♂はこの歌で、平成の東京の女の子限定でジョイスに並んだ!とねじ子は勝手に確信している。

「朝起きてすぐメイクでユラユラの通勤がキツイ」「昨晩のビュッフェディナー胃もたれ」「天に誓う今日からのダイエット」よくある朝のOLの出勤風景である。ビュッフェディナーに出かけられるのだから、そこまで貧乏ではない。多少はお金を稼いでいる。

そして唐突に「恋したい」と来る。つまり、今は恋をしていない。

仕事でいろんな人に会う。若い女性に会った人間は、まず外見でこちらのことを評価する。「どいつもこいつも美人好き」である。最初から私の中身を見てくれる人間なんて、ほとんどいやしない。若い女性であればあるほど、人の評価基準における「外見」の占める割合が大きくなる。腹が立つ。外見を磨く努力をどうしても(ある程度は)しなくちゃいけない。ダイエットに励まざるをえない。めんどくさい。本当はただ楽しく過ごしていたい。外見なんか関係なく誰かを愛したいし、愛してほしい。でも、そんな相手もまだいない。

ダイエットを決意していても夜ご飯に誘われる。もちろん行く。最初から「割り勘だし元とろう」と宣言しているから、相手はおそらく恋の対象ではない。同性の友人か仕事仲間あたりである。ご飯はおいしい。とてもおいしい。食べることは生きることである。

そして唐突に「生きている意味が知りたい」と来る。この導入が秀逸である。都会に生きる女性にとって、食べることは唯一の「生命の根元に繋がる」行為なのだ。食べることで大地につながり、生命につながり、自分が動物として生きていることを実感する。自然と隔絶した都会の中でサービス業に従事する女性にとって、「食べること」しか生きていることを実感する手段はないのだ。次に来るのは「愛する意味を知りたい」つまり主人公はまだ恋愛を知らない。彼氏ができれば、恋愛やセックスの要素が人生に加わり、「生きている意味」や「生命の根元」をその身に実感できるのだろう。でもまだ、それもない。食べることだけが唯一の生命維持活動となる。

そしてさらに唐突に「優しい人になりたい」「この世の為になりたい」と発展する。食べること以外に生命を実感する行為がない、と断言しながらも、誰だってただの「うんこ製造器」にはなりたくないのである。誰かの役に立ちたいし、世の中の役に立ちたいし、「私の本当の意味を知りたい」のだ。

さらに不幸なことに、彼女にはそんな焦燥感を相談する相手もいない。思春期女子の歌だったら、2番のBメロあたりで唐突にママや姉貴や大切な親友あたりが登場してアドバイスをくれるのがつんく♂の定石なのだが、20代社会人にもなると、もう家族にも友達にもなかなか人生相談ってしにくいんだよね。だからこの曲は、どこの誰にに向けているのかすらさっぱりわからない「お願い」の連呼で終わる。漠然と、そこらへんにふわふわと漂っている八百万の神様に、「お願い」と連呼するしかないのだ。そんな孤独も、都会で働く20代女性の歌として大いに共感できる。私も20代前半はずっとずっとこんなことを考えていたよ。

ちなみにこの曲は医学的にも正しい。昔で言う拒食症、正確な診断名でいう「神経性食思不振症」は女性に多く、周囲から見たら病的なまでに痩せやせていても、本人は「まだ太っている」と思いこんでしまう。この思いこみはなかなか外れない。人間が最も長寿を保つのはBMI(体重kg÷身長m÷身長m)=22とされている。メディアでもてはやされている若い女性の体型はおそらくBMI=17くらいで、これは明らかにやせすぎである。本当は、そこまでやせているとかえって健康的ではない。でも、メディアによって幼い頃から「美しい女性の理想はこれだ!」と洗脳されてしまっているんだから、どうしようもない。すべての人間が「もっと痩せる」ことを目標にせざるをえなくなり、結果として「日本国中 年がら年中ダイエット中」になってしまう。そして神経性食思不振症は、完治が非常に難しい病気で、致死率も高い。どんなに痩せても、「私はまだ太っている」という思いこみをなかなか消すことができず、結果として栄養失調で死んでしまうのだ。医学的にはいい迷惑である。女性アイドルを体型のことで叩く心ない人たちは、その女の子の一生を台無しにする可能性を秘めた鬼畜の所行を自らが行っていることをよく自覚してほしい。

3位 TIKIBUN / モーニング娘。’14

TIKIBUNって何のことかと思ったら、「チッ」気分、つまり「舌打ち気分」ってことなのね。「笑顔の君は太陽さ」は2013年にモーニング娘。が紅白に出場できなかった悔しさを歌詞にした曲だった。今回の「TIKIBUN」は2014年にモーニング娘。が紅白に出場できなくてムカムカしている気分を歌った曲である。つんく♂にしてはめずらしくネガティブな情景描写の後に「TIKIBUN」というフレーズが繰り返される。「寝不足は寝るしかない」というフレーズがいい。そして特に素晴らしいのはサビの歌詞だ。

「Here we go!炎上したってなんも恐れない その全部にウソがないなら良い 君が創造(うみだ)したんだし
Here we go!チャチャ入ったって何も動じない 自分信じて突き進めば良い 君の全てなんだから」

SNS全盛の現代日本において少しでも何かを表現しようとしている人間すべてが共感できる歌詞だと思う。全員が賛成する意見など、この世に存在しない。何かを言えば、必ず誰かが異を唱える。賛成の意見が10000人中9999人で、たった1人だけが反対しているという状態なのに、その1人が発言者に対して強烈な攻撃を加え続ける、という状態が各所で勃発することになる。

そもそも、全員が賛成する無難な意見には新鮮味や面白味がないから、発信する意義に欠ける。なにか面白いこと、人目を引く意見を言おうとすれば、そこにはどうしても「批判」「炎上」「賛否両論」のリスクがつきまとうのだ。昔はそのリスクを負うのは限られた文筆業・出演者の人間だけだった。ところがソーシャルメディアが盛んになった今は、インターネットにふれるすべての人間に「発言」の機会が与えられ、結果として「炎上」のリスクがすべての人間に広がっている。

アイドル含む表現者たちは、その中で何としても生き残っていかなければならない。ブログもツイッターも上手に使い、テレビや雑誌やコンサート会場で生の発言をすることでセルフ・イメージを上手にコントロールしなければいけない。無難なことしか言わないのも、それはそれで人気が上がらない。少しでも言い過ぎた表現を使えば、とたんに叩かれる。どこに正解があるのか、誰にもわからない。そんな中で発信し続けるのは非常に骨が折れることだろう。

それでも、ねじ子がハロプロの女子たちに一番求めるのは「自分の言葉で語ること」である。自分の言葉がまだ出てこない若い子たちはまぁしばらく静かにしていればいい。でも自分の言葉がある子たちは、率先して前に出て、言いたいことを言ってほしい。ブログも好きに書けばいい。Twitterもやればいい。Twitterを取り上げたくせにろくに出演番組の告知もしないのは言語道断である(あ、これはBerryz工房とスマイレージの当時のスタッフに対する明確な批判です)。思うことを思うようにやってほしい。「従順なお人形さん」が見たい人たちは、とっくに二次元や他のアイドルに移動したよ。言いたいことを言えばいいし、やりたいようにやればいいのだ。恐怖で萎縮しているのが一番つまらない。

だから私は、成人式に参加できず「一生恨みます」とブログで不満を爆発させたあやちょのことを大いに評価している。彼女には、賛否両論どちらの意見も受け止める覚悟がきちんとあっただろう。言論とはそういうものである。なにより彼女の心の叫びを聞けたことが嬉しかった。

P.S. 松島みどり先生に衣装監修をお願いするのはもうこれきりにしてください。

どうせ当時発足した第2次安倍改造内閣に便乗して「女性が最も多い組閣人事だ!よし!これからは女性が輝く時代!女性管理職をもっと増やせって諸外国からも圧力かかってるし!」ってノリで、キャリアウーマンのビジネススーツ風にしたんだろうけどさぁ。でも第2次安倍改造内閣、すぐにつぶれちゃったね。残念。ビジネススーツにだって、もっといろいろあると思うよ。

・・・と思っていたら今度はJuice=Juiceが社民党にヘアメイクおよび衣装監修をお願いしてた。いやーん、もうやめてぇ。

4位 愛はいつも君の中に / Berryz工房

2014年のベリの曲はすべていい。散り際が最も美しい桜のようであった。

世の中には愛の言葉があふれている。「アイラブユー」という歌詞を入れると、流行歌の売り上げは格段に上がるという。でも、声高に愛を歌っても、コンサート現場で「ちなみー!俺だー!結婚してくれー!」と叫んでも、Twitterで愛の文字列をつぶやいても、ブログに熱い文章を投げつけて全世界に愛を叫んでも、それ自体は何も生み出さないし、何の意味もない。

現実の恋愛だってそうだ。憧れている男子の部活動を校舎のすみからそっと覗いていても、二人で花火を見た後に柳の葉のかげでそっとキスをしても、布団の中で愛の言葉を照れくさそうにささやいても、それはすべてほんの一瞬の出来事である。何かの結果を生み出すものではないし、何かを期待しても無駄である。期待した通りの結果など得られない。たとえそれが家族や恋人であったとしても、自分の思うままに他者を操ることなどできない。誰かを愛するってことは、いつだって自分の心の中だけのきわめて個人的な事象である。誰かを愛しいと思うことで、自分の心が一瞬でも満たされ、癒されればそれで十分なのだ。それ以上いったい何を望むというのか。「愛はいつも君の中で光る」ってのはそういうことだと思う。「愛おしいという感情はいつだって個人的なものである。外の世界に過度の期待をするな」と。それをたった一言「愛はいつも君の中で光る」という言葉に集約し、リフレインさせるつんく♂はたいした詩人だと思う。

軍歌のような曲調はおそらく日本が集団的自衛権を認めた時期の楽曲であることが背景にあるのだろう。アメリカB級映画のセクシーポリスみたいなみやびちゃんがおもしろい。明らかにやりすぎ(誉めている)。りさこの金髪ボンバーな髪型もやりすぎ(誉めている)。

5位 伊達じゃないようちの人生は / Juice=Juice

これぞ金澤朋子の曲。「そりゃたまに誰かと食事もするでしょう 繋がりもこれだけ生きてりゃあるでしょう そのへんを逐一説明するなんて 暇じゃないようちの人生は」もう、完全にかなとも。

かなともは高校2年生からアイドルの道に入った。私はちょうどいい時期だと思う。でも、一番金を出す男性アイドルファンに言わせると、アイドルになるには「遅すぎる」らしい。ハロヲタのロリコン紳士たちにとっては、高校生からアイドルになるようではもう遅いのだ。「それまでの間に彼氏がいたのではないか」「素行不良があったのではないか」」「それが将来暴露されるのではないか」と不安になり、心おきなく推すことができないらしい。うーん。まぁ確かに世の中にはリベンジ・ポルノを仕掛けてくる馬鹿な元彼もいるし、嫉妬に狂った同級生女子による下らない暴露(嘘含む)もあるし、そんなもろもろをタッチ一つで簡単にできるご時世でもある。たとえ嘘八百であったとしても、その情報は真偽不明のまま永遠にインターネット上に残り、タレント・イメージを傷付けるには十分な武器になったりする。いやな時代だ。繊細な男性ファンの懸念も、わからんでもない。

でもなー、そんな文言を見るたびにねじ子は芥川龍之介先生の言葉を思い出すんだよ。

「勿論処女らしさ崇拝は処女崇拝以外のものである。この二つを同義語とするものはおそらく女人の俳優的才能を余りに軽々に見ているものであろう。」 芥川龍之介『侏儒の言葉』より

人材の幅を狭めるのはよくないよ。人妻も子持ちも、スナック勤めの経験者も、元オリンピック選手も、ヤンキー上がりも、外国人も、茶髪も金髪もアフロも、チビものっぽもデブも貧乳も巨乳もいてこそのハロプロではないか。私はかなとものこれからをとても楽しみにしているよ。「レッスンは続くよ どんなときも」だよ。いま真摯にレッスンしてどんどん上手になっているんだから、それでいいじゃないか。かなともには歌詞の通り、もっともっと開き直ってほしいし、夢も恋も両方手に入れてほしい。

2番の「もたれかかる君の肩 せまってくる月曜 Yes 現実はそろそろ 帰らなけりゃ」って歌詞もいい。月曜から仕事なんだよねぇ。日曜にデートできる時間って、働く女子にとって貴重なんだよねぇ。別に月曜からの仕事が、嫌ってわけじゃないんだよ、いやむしろやる気まんまんなんだ。仕事も、彼氏との時間も、どっちもうまくやりたい。金も名声もすてきな彼氏も、どれもこれも全部欲しいんだよ。まさに「夢も恋も両方手に入れたい」のさ。この強欲さは、全能感に満ちあふれた社会人1~3年目くらいの、美人女性によくある症状である。幸運を祈る。

6位 I miss you /℃-ute

ファミコン音源みたいな三重奏の曲。とても変わった試みで面白い。℃-uteちゃんたちの歌唱テクニックがここぞとばかりに見せつけられている。歌詞はよくある、ひっかかりのない流れである。「大人だし」という歌詞と、まったく大人っぽくないクネクネした動きをする舞美がとても面白い。舞美に色っぽさを求めるのはいいかげんやめていただきたい。

この曲の歌詞の真骨頂はCメロの愛理ソロ「カフェで一人 お茶してる 深夜過ぎ 誰にも会いたくない時もあるよ」である。深夜過ぎまで開いているカフェという時点で、かなり都会でアンニュイにふけっていると予想される。ほぼ100パーセントの確率でスターバックス・コーヒーである。愛理の地元である千葉県のベッドタウンの駅前にあるドトール・コーヒーでは決してないし、24時間営業のマクドナルドで100円コーヒー片手に5時間ねばっているわけでもあるまい。もっともっと、「おしゃれ」を気取った場所に決まっている。愛理ほどの美しい女性が、一人で都会のカフェで深夜にアンニュイを気取っているのだ。この一文だけで面白い。いろいろなことが想像できる。

まずは、日本って治安がいいよねってこと。そして、子供だった愛理が今時の若者らしい「意識の高い女子大生」に成長したことを見事に表現している。

愛理は昔から自意識が高かった。自己演出も上手だった。今はそれを「セルフ・ブランディング」って言うらしいね。知らなかったよ。歌やダンスに対する努力も人一倍重ねてきた。その努力は実り、℃-uteのセンターになり、ハロプロ全体でも一番人気になり、慶応ガールになり、今がある。素晴らしい。どこにも間違いはない。完璧な人生設計である。

しかし、これらはすべてソーシャル・メディアで散見される「意識の高い女子大学生」の定型にぴったりと重なってしまうのである。これが彼女の不幸である。彼女自身は10年前から変わっていないのに、ソーシャルな世界の成り立ちの方が変質して、彼女に寄り添ってきてしまった。世の中にあふれる「意識の高い女子大生」は、本人はいまだ何も成し遂げていないにも関わらず、言葉だけはやたらと上から目線で高圧的だから、見ている側の笑いを誘うのである。現実と理想の乖離が面白いのだ。でも、愛理はたくさんの仕事をすでに成し遂げた立派な社会人でもあるんだから、現実と理想の乖離なんてどこにもないはずである。少なくとも歌とダンスとアイドルの世界に関してなら、彼女は何を言ってもいいはずだ。

結局のところ、愛理は何も変わっておらず、彼女を見る「周囲の目」の方が変わってしまったのだと思う。そもそも、自分より学歴が高い女性を好む男性は(残念ながら)少ない。さらにその中でも、「意識が高い」女子は男性には好まれない。いや男性だけでなく、女性にも苦手とする人は多いかもしれない。私自身は「愛理は今が一番おもしろいぞ!慶応大学卒業後は、いったいどうなっちゃうんだろう!ワクワクする!」と思っているが、これはおそらく私が傍観者だからである。

そんな彼女に勧める方法はただ一つ。気にするな。好きなようにやれ。我が道を進め。どんどん貪欲にステータスを上げていってほしい。意欲的に戦う20代女性に道は2つしかないのである。進むか、今の場所にとどまるか。愛理は「進む」と決めているのだろう。ならば進め。貴女自身の努力で手に入れたステータスを、誰にも手が届かないレベルまでどんどん積み上げていってほしい。とりあえず、ファッション雑誌「Ray」の専属モデルのお仕事が順調なようでなによりである。

あまりに違う次元にいった人間には、文句をいう人も減ってくる。嫉妬する人間もだんだん少なくなっていく。その高みにまで突き進んでほしい。目的地に行くまでは外野からいろいろ言われもするだろうが、気にするな。それこそが人生だ。まぁ今の愛理がいったい何を人生の目標にしているのか、私にはよくわからないんだけどね!彼女の人生の目標が決まった時が、℃-uteの将来が決まる時なんだろう。

アイドルとしての℃-uteに残された時間は、おそらくあと2~3年程度だと思う。その2年でどんな展開を見せるか、そしてその後どうなるのか、とても楽しみにしている。(2015/9/9)