ねじ子の俺コンランキング2023です。
2年遅れですが書きます。
1位 想像以上 / PRODUCE 101 JAPAN THE GIRLS
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2023年秋、ハロヲタに激震が走った。元アンジュルムのかっさーことももにゃこと笠原桃奈ちゃんが視聴者参加型オーディション番組に参戦したのだ。卒業時の宣言通り、K-POP系列のオーディションであった。
本当のことを言うと、当時私は番組を見ていなかった。なぜか。それは簡単である。視聴方法がわからなかった 。Leminoってなに?当然のように投票方法もわからなかった。dアカウントを持ってない、いや、自分がdアカウントを持っているのかどうかすらわからなかった のだ。
多くのハロヲタのレベルって実はこんなもんである。我々の腰の重さを舐めないで欲しい。 調べる、インストールする、その面倒くささを乗り越えるだけのモチベーションが沸かなかったのだ。
さらにもう一つ、ハロヲタらしい理由がある。「かっさーが帰ってきた!」とハロヲタが大騒ぎしているなか見たシグナルソング『LEAP HIGH!~明日へ、めいいっぱい~』のMVが、ユニゾンの口パク映像 であった。これは萎えた。ハンドマイクを持っていない。口とマイクの距離を一定にするそぶりもない。誰が欠けても問題がなく、誰がどの声なのかを考える必要もない。秋元グループを思わせる架空の制服衣装を身にまとっていることも、多人数で群舞しつつステージの段差によって序列が明白なのであろう演出も、まったく好きになれなかった。エンタメとしての面白さを感じることができなかったのだ。私個人で言えば「どうせかっさーは実力で受かる。かっさーが落ちるはずがない。あやちょとハロプロが育てた自慢の娘だからな!」と、たかをくくっていた面もある。
放送中に「ハロヲタの組織票が多すぎて迷惑だ!」という声がSNSで流れているのをよく目にした。それは完全に的外れ であることを私は知っていた。だってハロヲタって少ないから。そんな人数いないことは長年身にしみてわかってるから。しかも、自分の周囲のハロヲタは番組を見てさえいなかった。いやあ、年老いると新しい文化の扉を開くのがおっくうになっるのよ。我々の年寄りぶりを舐めないでほしい(2回目)。 私の体感では、番組を見ていたのは全ハロヲタのうち約半分。残りの半分は口パクのステージにまったく価値を感じない人種で、K-POP全般を(おそらく今のME:Iも)うっすら苦手で避けてるタイプ。そして番組を見ていた半分のハロヲタのうち、かっさーに投票し続けたのはおそらく半分くらい。つまり桃奈に熱心に投票していたハロヲタは全体の4分の1程度だと推測する。
そもそも「モーニング娘。」の「現役」メンバーにしか興味がないハロヲタは多い。想像以上に多い。ハロヲタの中で一番多い派閥だと思う。アンジュルムに興味がなく、さらにその卒メンである桃奈のことをほとんど知らない(正確には研修生実力診断テストの衣装しか知らない)ハロヲタも多いはずだ。
投票第2週において、桃奈は4位の票しか集められなかったという。妥当だ。以前から桃奈を知っているハロヲタが「決め打ち」した投票数として、そのくらいが現実的な数字だと思う。ハロヲタの数ってそんなもんだろ。我々に111万の投票力があるはずもない。ハロヲタがそんなにいるはずない。そんなこと我々が一番よくわかってる。そんなもんがあったらとっくにSSAも地方アリーナも東京ドームも埋められてるんだよ!!!!!
いろいろあって桃奈は圧倒的な差をつけて一位でデビューを勝ち取りグループのリーダーになったようだ。おめでとう。見事だよ。桃奈一人だけ、ここに来るまでにばらまいた伏線の量も長さも違うもんね。一人だけ違う「戦(いくさ)」をしてる。おそらく番組の中でも彼女は完璧な物語を描いたのだろう。周囲の人間は「ずるい」と思ったかもしれないが、そんなことはもういいのだ。「勝ったもん勝ちや!」って四天宝寺中学の皆さんも言ってるし。
……さて、ここまでが2023年末当時の私の記憶である。
私が日プ女子に、いやME:Iに始めて興味を持ったのはその4ヶ月後。ME:Iがデビュー曲『Click』をTVの歌番組でつぎつぎ披露し、その中で「生歌論争」が行われていることに気付いたときであった。大変申し訳ないことに、私はずっとME:Iは完全口パクであり、パフォーマンス時にいつも同じ音源を流していると思い込んでいた。でも違った。音源の上に生歌が乗っている、いわゆる「かぶせ」のようだ。ハロプロのコンサートでも曲によっては「かぶせ」をしている。
生歌もちゃんとやる意思があるのか。それに気付いた私は初めてME:Iに興味が沸いた。デビュー曲『Click』もわりと好みであった。ようやくグループ創世のオーディション番組である日プ女子を見る気持ちになった私は、2024年4月に「日プ女子 視聴方法 無料」と初めて検索した。Leminoなんてアプリは聞いたこともなかったし、視聴できる環境にたどり着くまで苦労した。新しい巨大なコンテンツにふれるための「私自身の」コンディションがようやく整った、とも言える。
日プを一話見てわかった。
なんだ、これASAYANじゃないか。
「カメラの入った公開合宿オーディション」がまずASAYANであり、モーニング娘。創世の歴史である。その中で行われる個性的なプロトレーナー陣による熱血指導。それによって泣く姿、努力するさま、協力する様子をカメラが逐一とらえて流す。一人一人のスキルが上昇していく、それが一番のエンタメになる。見ている方も感情移入しやすい。これはまさにASAYANが25年前にやっていたことである。モーニング娘。もそうやって作られたし、太陽とシスコムーンもそうだった(サンフランシスコで合宿審査したから太陽(サン)とシスコムーン)。デビュー前の一般人を残酷なほどはっきりと画面にさらし、見世物にし、メンバーをしっかり比較したうえで容赦なく切り捨てていく。ああ、これもASAYANだ。モーニング娘。も8期まではこれを放送していたのだ。このエンタメを地上波で供給できていた。
私が最初に食わず嫌いしていた「AKBっぽさ」は、制服衣装と視聴者投票システムだけだった。その視聴者投票システムだって、ASAYANのモーニング娘。6期オーディションの国民投票の方が先にやっていたことだし。どうしてやらなくなってしまったの?モーニング娘。だって昔はこれができていた。国民投票をまるで無視したメンバーを選んで視聴者の顰蹙をかったのがダメだった?しかもそのとき投票一位だった女性がアダルト業界へ行ってしまったから?それとも8期オーディションで落とした柏木さんと指原さんがAKBに入ってハロヲタをごっそりさらっていってしまったから?だからオーディションを公開するのやめたの?それともAbemaでハロプロ20周年オーディションを大々的に放送してもらったのに「合格者はゼロ!全員研修生に誘います!」というひどい不義理をやってハロヲタすらもドン引きさせたから?あれよく怒られなかったよね?いや怒られたのかな?私がAbemaならキレるけどな。
まとめると、①ASAYAN の合宿オーディションと個性的なプロトレーナーによる熱血指導の公開システムに、②AKBの視聴者投票 で決まった順位を公開放送するシステムを盛り込み、さらに③韓国の練習生組織 の中で行われている「定期的にグループを組ませ発表会して個人評価する」ステージを盛り込んで、お金をかけてショーアップしたのがPRODUCE101シリーズ(略して「プデュ」)なんだろう。なるほど、これは上手くできてる。 ハロヲタは夢中になるに決まっている。だってASAYANだから。私もASAYANロックヴォーカリストオーディションでモーニング娘。を(正確には福田明日香さんを)大好きになったクチだ。だからこういうの大好きよ。まんまとはまった私は、どんどん日プ女子を再生し始めた。
私がずっと前から好きだった女の子がもう一人いる。石井蘭ちゃんだ。ファントミダイヤだ!セイラちゃんだ! 当時ここ★ に書いたけど、私はファントミダイヤに鞘師の面影を見ていた。 ファントミラージュが放送されていたのは、ちょうど鞘師がステージにいない時期だったのだ。赤い衣装でひときわキレのいいダンスを踊って変身するファントミダイヤに私は鞘師の幻影を見ていた。失礼な話である。本当にすみません。極上のダンサー二人を比較したり、どちらかにどちらかの幻を見るのは両方にとって失礼だ。わかってる、ごめんなさい。本当に申し訳ない。ダンスを語る語彙を持っていない私にとって「鞘師に見える」というのは最大級の褒め言葉だったです。亡霊の戯言だと思って許してほしい。まぁとにかく私は紅羽セイラことファントミダイヤが大好きだった。あと『私がモテてどうすんだ』は2020年楽曲ランキング8位 にしてたね。
セイラちゃん、じゃなかった蘭ちゃんがいるじゃないか! しかも一話からアンジュルムを大好きだと言ってくれてるぞ!マジで!?ありがと蘭ちゃん!確かアンジュとガルガルって対バンしてたよね?(これ★ )蘭ちゃん最高!ガルガル辞めちゃったの知らなかったよ、結構最近までいたよね?と思いながら見たのがこれらである。
TOKYO GIRL
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蘭ちゃんのキリングパートと、蘭ちゃんを左右でシンメトリーに支える桃奈と恵子ちゃんが素晴らしい。
蘭ちゃんのダンスの実力はファントミダイヤの頃から折り紙付きであった。しかし、Girls2の中で蘭ちゃんはあまり推されていなかったよう思う。その境遇はどこか桃奈に似ていた。ハロプロとLDHという日本では「かなり大手」 の事務所に所属しながらも、その中で順番がまわって来ない。そもそも所属グループ自体があまり推されていない 。実力はあるのに、グループの露出量が極端に少ない。グループの中での役割も少なく、別の子がセンターとして推されている 。このまま順番をじっと待っていても、私がメディアに映る機会は来なそうだ。女性アイドルの寿命は短い。時間がない。チャンスを求めて外へ出よう!!!……そう思う気持ちはよくわかる。桃奈と蘭ちゃんは境遇が似ていた、と私は勝手に思っている。二人が同じオーディションに参加してよかった。蘭ちゃん、挑戦してくれてありがとう。蘭ちゃんに投票してくれた国民プロデューサーの皆さんもありがとう。
桃奈の話に戻ろう。桃奈と心ちゃんの最初のアクト、rebloomの『アイドル』において桃奈が(自分のA評価ではなく)心のA評価で泣き崩れたとき、そして第一回順位発表会で桃奈が唐突に「私は心ちゃんを愛しています」と宣言したとき、私は桃奈が一位になった理由をはっきりと理解した。
オーディション番組は上手くアングルを組むことができた人間が勝つ。物語を作った奴が勝つ 。そう決まっている。桃奈はこの時点ですでに優勝を決めていたのだ。
桃奈は自分の物語を作るのが上手い。流行の言葉でいえば「ナラティブ」ってやつだ。これが桃奈は昔から上手かった。アンジュルムを卒業して消息を完全に絶ち、一般人になってから韓国に単身レッスン留学に行って2年後にこのオーディションに参加するまで、桃奈は着々と物語を仕込んできた。そして彼女はここで自分が積み上げてきた長い物語をいったん捨てて、「心ちゃんが主役の物語を」「心ちゃんといっしょに」作ることに決めたのだ。
なんで彼女がそんな決断をしたのかわからない。
だって私は、出番前の桃奈が心ちゃんに「あなたのためのステージだよ」と言ったとき、「はぁ?何言ってんのよ!?桃奈のためのステージでしょーが!?私は!!あなたのためだけに!Leminoくんだりまで来てこの番組を見ているんだよ!?」と画面の前で叫んだのだ。でも、桃奈はそうじゃなかった。心ちゃんと組むことになって一緒に練習した短い間に、彼女は自分の物語を完全に捨てて心ちゃんの物語を作りあげることに決めていたのである。
そしてそれは完全に上手くいった。rebloomは完璧な再生の物語を見せた。心ちゃんも桃奈も泣きながらぎゅっと抱き合っているのをカメラが映しだす。
ああ、これは一位を取るわ。相変わらずだな、桃奈!この人たらしが! この感触はかみかさ(アンジュルムの上國料萌衣ちゃんと笠原桃奈ちゃんのペア)に似ている。かみかさもすごく魅力的だった。かみこはグループ一番下の末っ子かわいがられポジションを、早々に桃奈に取られた。かみこはそれに当初反発していた。しかしいつのまにか二人はいてても仲良しになって、最終的にはかみこから桃奈への愛の方がずっと重くなっていた。あのときと同じだ。やってんな桃奈!
……ちょっと昔話をしよう。アンジュルムで桃奈と一番仲のよかったかみこは、桃奈の卒業を「卒業を決めて次の夢について話している桃奈はすごくかっこいいなと思います」「桃奈から聞いてるその夢を桃奈と一緒に叶えたかったなって思ってた」と泣きながらも受け入れ、新しい挑戦を祝福した。それがあったから、ハロヲタは桃奈を心置きなく応援することができた。 日プ女子を見たハロヲタ全員が「かみこの言ってた桃奈の次の夢とは、このことか」 と一瞬で理解した。かみこが桃奈の卒業を受け入れてなかったら、私たちはここまで一丸となって桃奈を応援することはできなかったと思う。だってかみこが大切だから。彼女が傷ついたらいやだから。
ハロプロは桃奈に見限られた。 どんなにごまかそうとしても、それはそうなんだよ。「ハロプロの中で私はこれ以上の上がり目がない」と桃奈に判断された。そして悲しいことにその判断は正しい。 だから私たちは桃奈をまったく恨んでいない。ハロプロという組織は、桃奈の音楽性や発信力の高さやK-POP好きな一面をまるで尊重してこなかったのだから。
私はコロナ禍が始まったばかり、緊急事態宣言下の桃奈のこのブログを思い出す。
一気に遡る猿時代 笠原桃奈
しかし翌日、桃奈は「だめになった」とブログで報告した。音なしですら、IZ*ONE『Fiesta』のダンスを披露する許可が出なかった。なぜかはわからない。
いつもこういう顔 笠原桃奈
その2ヶ月後、同じ曲をモーニング娘。の加賀楓ちゃんがカバーし、音声なしで公開した。 なぜかこちらは世に出た。
投稿しました。 加賀楓
別に加賀ちゃんがえこひいきされていたとは思わない。これだけダンスカバー動画が日常にありふれている中で、「音声なしならOK」という判断が通るのも間が抜けていると思う。この出来事からわかることは、当時のかっさーのまわりに「緊急事態宣言下でも供給できるサービスを少しだけでもファンに提供したい」という、かっさーの真摯な思いをくんであげる大人が一人もいなかったということだけである。モーニング娘。には加賀ちゃんのために交渉してくれる大人が(一応)いた、ということでもある。くだらねー、まじでくだらねー。萎えるわ。なんでだめだったの?なんで急にOKになったの?どっちも意味が分からん。若いかっさーが自らの環境にがっかりしたことは、想像に難くない。
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ちなみに桃奈は2024年5月、KCON2024Japanの満員の客席の前でFiestaのダンスカバーを披露した。私は画面の前で泣いた。ああ桃奈、よかったね。ハロプロでこれをやらせてあげられなくて本当にごめんね。私が代わりに謝るよ。
これが桃奈の紡いできた物語(のごく一部)である。桃奈がハロプロを見限るのは当たり前だし、桃奈がハロプロを見限ったところまで含めて 私は彼女のことを愛している。彼女の先見の明と、勇気と度胸とチャレンジ精神を愛しているのだ。それでこそ自主性と多様性を重んじるアンジュルムが生んだ娘だと、誇らしくさえ思っている。
桃奈はハロプロを、アンジュルムを捨てたのにハロヲタに支持された。これは素晴らしいことである。これができる人間が他にどれだけいるだろう。「ハロプロの卒メンが次の投票制オーディションに出たら、またハロヲタ票で無双されてしまう」という意見もあるようだが、それは違う。ここまで長い時間をかけて丁寧に下地を作る人は他にいない。桃奈は若くしてそのような環境を育てることができる言葉使いとネゴシエーションの天才なのである。プロレスで言うならば「ブック」作りが天才的にうまい 。この特殊能力が披露されてしまったのだから桃奈は一位を取る。
……あとになって背景を知れば知るほど、rebloomで桃奈が自分を主役にせず、心ちゃんの物語を支える役割に回ったことは100%の「正解」 なのだ。J-POPアイドルの申し子である桃奈と、K-POPアイドルの申し子である心。ハロプロで5年活動し武道館で祝福されながら円満卒業した桃奈と、1年足らずで理由のわからない脱退を余儀なくされて深く傷ついている心。あえて強気を表に出す桃奈と、あえて不安を口に出す心。シュッとした表情が得意でいつも大人じみていると言われる桃奈と、笑顔が似合う甘い顔の心。何もかもが正反対の二人。投票の舞台はK-POPアイドルの土壌であるPRODUCE 101で、観客もスタッフもK-POPの影響を強く受けている。おそらく桃奈のおかれた立場はアウェイだ。傷ついた心ちゃんの復興の物語を支えるのが正しい。自分の物語を捨てて心ちゃんを支える決意に桃奈が短期間でたどり着いたことが、桃奈の一番の勝因だった。時がたてばたつほどそう思えてくる。それは戦略的に行ったことではなく、あくまで桃奈が自然な気持ちの動きのままに行動したらそうなったのだろう。結果的にそれがベストの戦略だっただけで。それを含めて「桃奈の読みがいい」と言うべきだ。二人の友情は美しい。
日プ女子の番組は後半になるにつれてよくわからないものになっていった。軸を作れずに迷走していたのかもしれない。あまりに多くなった投票数に困惑し、振り回されていたのかもしれない。桃奈と心ちゃんのライバルアングルは「愛しています」によって潰され、蘭ちゃんと美羽ちゃんのライバルアングルは本人たちがまったく乗り気じゃないことが明白だったから、なんとか他に注目メンバーを作りたかったのかもしれない。よくわからない。私はステージと楽曲が素晴らしいものであることにしか興味がないし、後追い視聴なので番組外の炎上情報は一切入ってこない。「どの子も可愛いなぁ、目移りしちゃう。この子(ぱるたん)とこの子(内山凜ちゃん)はハロプロに入ってほしいなぁ」などと、のんきに思うばかりであった。
桃奈のラップはトレーナー陣の評価が渋かった。しかし「賞賛も批判も愛してるわ」という歌詞の持つ力が、そのすべてに勝っていた。あの状況の彼女から生まれた「賞賛も批判も愛してるわ」というパンチラインが持つ力を下げることは誰にもできなかったのだろう。桃奈が一位になった理由を、ここでまたひとつ理解した。
K-POPに強いこだわりを持つ完璧で冷たい氷の女王かのような印象だったシグナルセンターの櫻井美羽ちゃんが、いつのまにか桃奈と仲良しになっていたのにも驚いた。運動会で一緒に風船を割る姿を見たとき、その派生で白雪姫衣装で林檎を派手に飛ばす桃奈に爆笑する美羽ちゃんを見たとき、私は体が震えるのを感じた。いつの間に仲良しになってんだよお前ら!やってんな!(二回目)この人たらしが!(二回目) 桃奈が圧倒的な票数で一位になった理由を、ここでまたひとつ理解した。美羽ちゃんってばこんなに面白い人だったのか。私の大好きな、こつこつ時間かけて上達するマイペースな職人タイプ(コミュニケーションは少し不得手)じゃん!以前から知ってる桃奈と蘭ちゃんがいなかったら、私は美羽ちゃんに投票してたな。
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そしてここらへんで、Lemino再生中に頻繁に挟まれるDocomoのCMが完全なネタバレになることに、私は気が付いた。これは非常に困った。当初は桃奈しか見分けが付かなかった(そして桃奈が合格することは知っていた)ために何の問題もなかったのに、こちらの解像度がだんだん上がってきてしまった。やばい、誰がどの子かわかるようになってきてしまったぞ!これは大いなるネタバレだ!いかん!見ちゃダメだ!しかもLeminoさんってばCM飛ばせないのよ。それどころか、ちょっと早送りしたりちょっと巻き戻したりするだけでも頻繁にCMを挟み込んでくる!不便だ!あんまり使い勝手よろしくない!どうしよう!……そこからは、CMの間は耳をふさぎ、薄目で画面をなるべく見ないように遠くを見ながらの視聴になった。こんな私でも、最後に誰が選ばれるかは知りたくない。
そして最終回。最終順位発表だ。TikTokで女子中高生に圧倒的人気のりんりん姫が二位になり、桃奈が一位になる。すげえなTikTok。今の世界で楽曲が流行するのにTikTokは不可欠なんだな。ハロヲタはTikTokに全然生息してないから守備範囲外だったよ。勉強になった。そして最後に11位で心ちゃんが選ばれ、1位の桃奈が侍泣きをするアップで番組は終わる。
……なんだこれ。おかしいだろ。あまりにもできすぎている。 完璧じゃないか。 桃奈だけじゃなく、rebloomとしても完成された物語 だ。これはエンタメだ。現実なのに最高のエンタメだ。誰が脚本を書いたんだ?桃奈か。ここで私は、桃奈が投票中だけでなくデビュー後も高い人気を保っている理由を知った。
桃奈は昔から伏線を張るのがうまかった。長い時間をかけて自分の物語を作るのが抜群にうまい。あとスピーチもうまい。11歳のハロプロ研修生発表会のときから そうだった。
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もう10年近く前、彼女は小学5年生でハロプロ研修生になった。すぐに行われた研修生発表会ではモーニング娘。の『春ビューティフルエブリデイ』を歌った。まず選曲がいい。すでに引退から数年たっていた亀井絵里ちゃんメインの隠れた名曲だ。音程はえらいことになっていたけど、そんなの些細なことだ。だってこのときすでに桃奈は翌年への伏線を張っていたのだから。
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一年後、桃奈は再び研修生発表会に表れた。選曲はこれまた亀井絵里メインの隠れた名曲『愛しく苦しいこの夜に』。渋い。渋すぎる。「小学生にしてえりりんのオタクとは!すげえ!大人びてる!」と多くのハロヲタがうなった。一年前の伏線回収 であり、えりりん亡霊の心を一気に奪った。衣装もすごかった。おへそが見える白いノースリーブニットにホットパンツでロングの黒髪をサイドに寄せ、12歳とは思えないほど体幹が成長している姿は見るものの度肝を抜いた。ハロヲタを席巻しただけでなく、ハロプロ外でも話題になった。アニメやゲームの話題をする掲示板でこのときの桃奈の写真が貼られているのを私は何度も見たことがある。ロリコン紳士達の大騒ぎにもしょっちゅう巻き込まれていた。そこでは決まって「この逸材を生かせないハロプロはだめだな」と言われていた。ぐうの音も出ません。
二年続けてえりりんメイン曲という「通」な選曲、小学生の突然の成長、それを上品に見せる衣装とヘアメイクで桃奈は堂々ベストパフォーマンス賞を取る。これは中野サンプラザに集まったオタクによる現場投票だけで決まる。プデュでいう「現場票」だ。思えばこの頃から桃奈は長い時間をかけて伏線を張り、自分の物語を作るのが上手かった。現場でファンをつかみ取るパワーもあった。突然振られたときのスピーチも当時から抜群にうまい(この画像の31:46)。小6とは思えん受賞コメントである。桃奈はおおいに注目され、画像がネットを駈けめぐり、半年後にアンジュルムに昇格した。
桃奈は日プ女子というコンテンツの中でも初回(レベル分け発表回)に完璧な伏線を張り、最終回でそれを最も美しい形で回収した。ブック作りの名人 と言わざるを得ない。分量を減らされても、自慢のスピーチ力で順位発表会の短い尺の中で印象を残した。三週間足らずで日プ女子動画のすべてを見終わった私は、桃奈がハロヲタ以外からもたくさんの票を集めて一位になったことに納得した。なるほど、こりゃ一位になるわ。
最後にもう一度言う。
ハロヲタが111万もの組織票を集められるはずがねーだろ!
そんなにいるはずがねーわ! 目を覚ませ!現実を見ろ!!ガラガラの地方公演から目をそらすな!!!!
そんな人数と熱意があったらYoutubeの新曲MV再生回数があんな数字のはずがないんだよ!
さっきも書いただろ、番組を見ていたのはハロヲタの半分。そのうち、かっさーに投票し続けたのはおそらく半分くらいしかいないね。つまり桃奈に熱心に投票していたハロヲタは全体の4分の1程度しかいないんだよ。そう私は確信する。残りの4分の1は、文寧かしーちゃんかぱるたんか内山凜ちゃんに流れたと見るね。それがハロヲタ好みのど真ん中でしょ(断言)。 私たち所詮ドルオタなんだから、自分の欲望に正直に決まってるのよ。111万はなぁ、桃奈が自力で外から勝ちとってきた数字なんだよ!
表題に戻ります。一位に選んだ『想像以上』は、私の再生回数が最も多い曲です。オーディション最後の課題曲であり、デビューできるかどうかわからない極限状態のメンバーが鬼気迫るパフォーマンスをしていて最高です。髙畠さんのセンターが非常にいい。彼女の「イマッジネー」が好き。ハスキーな歌声も大好き。髙畠さん、今からでも遅くないからハロプロに入りませんか?今さらハロなんていやだ?そりゃそうか。すいません。ちゃんみなの方がいいよね。私もそう思うよ。
以下後編へ続く。
※今さら2022年の記事です。新型感染症流行に免じて許してほしい。
※一定期間たったら、執筆時の時系列に記事を移動させます。
1位 KICK BACK / 米津玄師
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アニメ『チェンソーマン』オープニング曲。モーニング娘。往年の名曲『そうだ!We’re ALIVE』からの引用フレーズ「努力 未来 A BEAUTIFUL STAR」が多用されている。
チェンソーマン第一部は、モーニング娘。黄金期の1999年頃の物語である。モー娘。が流行している華やかな世相をよそに、貧乏から抜け出すためだけに戦っている少年のやけくそじみた焦燥感がよく表れている。ごろつき状態で生きるためだけにデビルハンターになった何もない少年・デンジの乾いた孤独感がむき出しで、すごくいい。米津さんが自ら描いたジャケットの絵も最高。
当時を知るハロヲタとしても、このオマージュには大満足だ。満足しかない。しやわせになりたい。ハッピー。ラッキー。こんにちはベイベー。良い子でいたい。そりゃつまらない。努力、未来、A BEAUTIFUL STAR。なんかすごいいい感じ。めっちゃハロプロだ。ハロプロへのオマージュを強く感じる。「しあわせ」を「しやわせ」と歌うのがつんくさんなのだ。「幸せ」はひらがなで「しあわせ」と書くけれど、口に出すとき確かに我々は「しやわせ」と発音している。そんなの考えたこともなかったけど、つんくさんだけは歌に乗せるときにそういうことを考えている。 そして米津さんはそれをきちんと踏襲する。米津さんの「原作理解度の高さ」はこんなところにも現れている。
本家の『そうだ!We’re ALIVE』は「幸せになりたい あなたを守ってあげたい 平凡な私にだってできるはず」と続く。等身大の女子が自分の平凡さを自覚しながらも、幸福に生きる方法を模索する素晴らしい歌詞だ。でも『KICK BACK』では「幸せになりたい 楽して生きてたい 全部めちゃくちゃにしたい 何もかも消し去りたい あなたのその胸の中」になってしまう。とてもデンジくんっぽい。
男子中高生の子ども達は「努力 未来 A BEAUTIFUL STAR」と歌いながらゲームをし、オンライン通話をしていた。これを見るのは私にとって無情の喜びだった。つんく♂さんの珠玉のリリックが当代最高のミュージシャンによって加工され、蘇り、焦燥感あふれる若者達がくりかえし叫ぶネットミームになっている。こんなに嬉しいことはない。元ネタの歌詞が「努力 前進 A BEAUTIFUL STAR」「努力 平和 A BEAUTIFUL STAR」だから、デンジくんが「なんか忘れちゃって」んのは、前進と平和だろうか?
米津さん自ら出演するMVもおもしろかった。思わせぶりで考察しがいのあるMVだ。なぜギャグみたいな肉じゅばんを着てムキムキになってるんだ?そしてすぐ脱ぐんかい!?なんで車にひかれる?東映特撮で頻繁に使われる「例の海沿いのコンテナヤード」でパルクールが突然始まるのはなぜ?「いつもの採石場」こと埼玉県寄居町の大英興業を通って、あれこれ岩舟山だよね?なんで徒競走始まってんの?岩舟山で大運動会するのって、確かに日本の特撮で育った男子共通のロマンなのかもしれないが。ロケハン中の米津さんが突然乱入して先頭走者を突き飛ばし、一位をとった!見事勝利!なんで?すげぇ面白いけど、なんで???そして急にトレーニングジムに戻る。あれ、ここまですべて幻想だった?一緒に体を鍛えていた友人すら消えるってことは、あれイマジナリーフレンドだった?すべてが謎。金と手間がかかっていて、思わせぶりで、勢いがあって、演者も楽しそう。何度見ても満足感がある。
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コロナ禍に無料でオンライン中継されたライブもすごくいい。チェンソーマンのモブ敵(悪魔)みたいなダンサーさんたちの群舞が最高です。
2位 Don’t Boo! ドンブラザーズ / 森崎ウィン
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「暴太郎戦隊ドンブラザーズ」のエンディング主題歌。森崎ウィン氏、歌うめー。田村芽実ちゃんのウェスト・サイド・ストーリーのときはハロオタがうるさくてすいませんでした。
さて、私は井上敏樹氏の脚本が好きだ。私がニチアサを見るようになったのは井上御大のおかげである。
私と井上脚本との出会いは深夜の大人の女性特撮テレビドラマ『キューティーハニー THE LIVE』であった。ハロプロのカラオケ番組『歌ドキッ!』のあとに実況しながらついでに見ていた『キューティーハニー THE LIVE』が非常に面白かった。キューティーハニー THE LIVE最終回、番組が終わってしまったことをハロオタが集まる匿名掲示板上で残念がっていたら、「だったら同じ井上脚本の仮面ライダーキバを見たら」と教えてもらったのだ。ありがとう、あのときの見知らぬハロオタの御方。ミュージカル・テニスの王子様で三代目菊丸をやっていた瀬戸康史君(当時は瀬戸丸と呼ばれていた)が主役ということもあり、「じゃあ仮面ライダーキバを見てみるか!」と思ったのが私のニチアサ視聴のきっかけである。だから私はキバが大好きだし、キバにやたらとしゃしゃり出てくる電王という一個上の先輩のことを疎ましく思っていた(その後きちんと電王も見て、電王も大好きになった)。
『暴太郎戦隊ドンブラザーズ』で久々に井上敏樹先生が帰ってきた。井上先生が通年でシリーズ脚本をするのはキバ以来である。子ども達は井上脚本を知らない。正確に言うとジオウのマンホールしか知らない。井上脚本の登場人物のキャラ立ちの早さ、繰り返される情報伝達不足からのすれ違い、精一杯生きる人間同士が対立する群像劇。ふんだんに盛り込まれるキザったらしい台詞。毎週のように浴びせられる、むせかえるほどの井上節。おいしそうな料理と食事シーン。「このあとどうなるんだよ!?」と毎週思う強い引き。だんだんと恋に落ち、だんだんと引かれあう登場人物たち。対立する中でも少しずつ共闘する理由が描かれ、最後は納得する落ちを迎えること。ヒーローであっても人を殺したものは罰を受け、怪物であっても人を殺していないものは生きのびて市井で暮らす、勧善懲悪のさじ加減。子ども達はすべて初めて見るのだ。きちんと毎週見ていたし、はまっていた。ロボがとにかく巨大で、ロボ戦になっても誰が乗ってるかわかりやすいのもよかった。
ただ、大人である私が見ると納得がいかない点も多かった。キャラ立ちの上手さとキザったらしいポエムはもう100点満点の井上脚本だ。大満足だ。大満足なんだけど、夏美とみほちゃんはまったくの別人だよね?それでいいの雉野?犬塚の人生もそんなんでいいのか?それほんとにハッピーエンド?設定を細かく考えることを放棄しているかのようなドンキラーキラーやムラサメまわりの適当さなど、ところどころ唐突な展開に見えてしまった。過去の井上脚本にある「後半になるにつれて前半の謎が晴れ、だんだん辻褄があっていく気持ちよい爽快感」や「後半になるにつれて決裂が決定的になっていく仲のよい二人の絶望感」が足りなかった。私の中の井上脚本特撮基準で採点すると、キューティーハニー THE LIVEが200点、ゴーカイジャーのジェットマン回が150点、仮面ライダーキバが140点、仮面ライダー555が120点、ドンブラザーズは80点。近年のスーパー戦隊シリーズとしては文句なしで100点満点なんだけど、井上敏樹脚本としては私の中で80点。贅沢を言っていることはわかってる。忘れてくれ。
さて、このエンディング曲は物語の最後に、ドラマにかぶせるように流れはじめる。「どんぶらこ どんぶらこ どんぶらゆらり揺れて 目指すはどんなハッピーエンド?」という歌詞が、どうなるかわからないトンチキな引きにかぶさって毎週流れるのだ。それが非常によかった。確かに毎週、いい意味でも悪い意味でもドラマは大きく揺れていた。どんな絶望的な展開でも「ハッピーエンドを目指す」と明言された歌詞が流れるのは非常に心地よく、来週まで待つための希望になった。すべての登場人物が、自分にとって精一杯のハッピーエンドを目指す。それぞれのキャラが生きているって結局そういうことだと思う。キャラクターが書き割りではなく、物語のための駒でもなく、それぞれに「生きている」ならばそれぞれ幸福を目指すのは当然のことなのだ。
井上敏樹先生はSPAのインタビューで「正義とはなにか」という質問に「あえていうなら、それぞれが一生懸命生きるってことじゃないかな」と答えた という。そうだ、それがヒーローだ。仮面ライダーオーズ続編で「主人公を殺す」というオチ──おそらく上層部によってあらかじめ決められたゴミみたいな落ち──のためだけに、ヒーローであったはずの登場人物が全員、最善を尽くさない無気力で無能な人間に改悪されたことにひどく気付いた私の心に、井上先生の言葉は深く染みわたった。
3位 俺こそオンリーワン / 森崎ウィン
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上に同じ、暴太郎戦隊ドンブラザーズ主題歌。これはオープニングの方。歌詞が聴き取りやすい。男子一人でも歌える。大声で番組タイトルを叫び、終始テンションが高いオープニング主題歌。最高だ。特撮主題歌として必要な条件をすべてかね備えている。文句なし。「どんどんどんどんどんどんどん!いぇぇぇぇえええええええええい!」と力いっぱい叫んで踊りたくなる勢いが、この曲にはある。
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OP映像はキャストによるダンスがついている。ドラマに使える時間を確保するためにエンディングの時間を節約して、オープニングにダンスを入れるという手法は『ゼンカイジャー』で確立した。子どもはダンス主題歌が大好きだからとてもありがたい。毎年きちんと踊ってほしいし、毎週きちんと踊ってほしい。レクチャー動画が無料でYoutubeで見られるのも嬉しい。
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4位 戦闘!カシオペア / 『ポケットモンスタースカーレット・バイオレット』より
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久方ぶりのポケモン本編『ポケットモンスタースカーレット・バイオレット』は素晴らしかった。なんといってもストーリーがいい。なんとシナリオ三本同時進行である。オープンワールドで自由度が高く、ある程度好きなやり方で進めるシナリオが三本あり、同時平行で進む。どこからはじめてもいい。三つの物語にはそれぞれ中心人物がいて、友達になる。物語は最後に一つにまとまって、主人公(私)と友達三人が集まり、全員で未踏の奥地に進みラスボスを倒す。オープンワールド・ゲームなのによく練られた物語構成で、素晴らしかった。
ポケモンはここ何作か「ポケモンらしい物語」と「時代に追いついた最新のゲーム性=オープンワールド」をどう両立するか、を模索していたと思う。『ソード・シールド』では「ワイルドエリア」というごく一部の地域だけをオープンワールドにすることで対応した。『ダイヤモンド・パール』のリメイクではオープンワールドをあきらめ、旧作をそのまま3Dリメイクした『ブリリアントダイヤモンド・ダイヤモンドパール』と、完全新作オープンワールドの『ポケモンレジェンヅアルセウス』のふたつにゲームを分けた(結果、『ブリリアントダイヤモンド・ダイヤモンドパール』は旧来のファンから非常に不評であった)。
そして最新作『ポケットモンスタースカーレット・バイオレット』において、おもしろい物語とオープンワールドが見事に両立した。しかも三本の本筋(①ジムバトルからチャンピオンになる・②秘伝技を手に入れつつ伝説のポケモンを探す・③悪の組織を倒す)の並列。最後に三つが収束して世界の謎が明かされる。すばらしいと思う。ここまで物語が練れているのなら、オープンワールドのグラフィックがガタガタでも許す。全部許す。ミライドンが壁に埋まっているくらいご愛敬である。
『戦闘!カシオペア』は三つの物語の中の③いわゆる「悪の組織」のラスボス曲だ。ジャンルはハードコアテクノ。曲全体で響く低音のリズムはガバキックというらしい。勉強になる。
ポケモンの戦闘曲って、考えてもいなかったジャンルの曲が突然飛びこんでくるんだよね。おそらく敵のキャラクターに合わせて、いろんなジャンルの楽曲を意図的に持ってくるようにしてるんだと思う。私はそれを聴くのがすごく好き。いろんなジャンルの勢いのいい楽曲が流れてくるから、聴いていて楽しい。飽きない。戦っていて楽しいし、やる気が出る。歌詞のないリフレイン構造なので作業用BGMにもぴったりだ。
この曲がハードコアテクノというジャンルなことも、キャラに合っている。「学校に反抗したいじめられっ子」のボス・カシオペアの性質がよく表れているのだ。機械に詳しくて、コミニケーションが苦手で、引きこもりがちだけど内なる攻撃性を秘めていて、趣味はめっちゃファンシーで、ぬいぐるみみたいなリュック背負ってて、出すポケモンはブイズ統一。可愛いものが大好きな引きこもり病み系女子で赤髪丸眼鏡でBGMはハードコアテクノ。最高じゃね?好きだ。
5位 戦闘!ゼロラボ / Toby Fox
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上と同じ、ポケモン本編の戦闘曲。『UNDERTALE』で『MEGALOVANIA』を作ったToby Fox氏の曲である。Tobyさんがポケモンにたくさん曲を提供してくれて嬉しい。これはラストバトルの曲である。チャンピオン戦の後も物語が続くのはこれまでのポケモンの常識をくつがえしており、新鮮だった。ライバル達と雑談しながら力を合わせて未知の世界を探索するのも遠足みたいで楽しかった。『龍が如く7』のサブクエストみたいでワクワクした。重要なネタバレになるのでどこまで書くか悩ましいけれど、世界を作った人物とその子どもの成長物語が最後に見られたのも、とてもよかった。
6位 クマさんからのおねがい / 『スプラトゥーン3』より
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Nintendo Switchのシューティングゲーム『スプラトゥーン3』ストーリーモード最後の一曲。
『スプラトゥーン3』のストーリーは、なんと『スプラトゥーン2』の途中から加わったミニゲーム「クマさん商店」の謎のバイトの正体が解明される話であった。驚いた。当時、「なんで突然木彫りのクマに命令されるの?」「哺乳類は絶滅したはずだから、木彫りのクマに意志だけが残った状態なのか?」という疑問は確かにあった。でも、それはそれ。「ゲームなんだから面白ければよかろう。細かいことは気にしない」と思っていた点が、すべて解明されたのだ。
バイトのミニゲームは面白かったし、ゲーム内ミニゲームが追加コンテンツとして加わることはマンネリを防ぐ意味でもよかった。つまりは大歓迎だった。伏線が仕込まれてるなんて思ってもいなかった。いやあ、そうきたか。私はテンタクルズの謎(敵対していたタコであるイイダさんの紆余曲折)が解明されると思っていたんだけど、まさかクマさんとは。びっくりした。すごくよかった!もちろん、テンタクルズのその後が見られるであろう追加コンテンツも楽しみにしています。
クマさんがだんだん壊れていく不協和音が最高です。敵にガンガン攻撃されながら聴くと、生命の危機を感じながら宇宙空間を飛んでいる浮遊感と恐怖を味わえます。100年後の人類ならば日常的に感じる不安感なのかしら。未来を疑似体験。
7位 蛮殻ミックスモダン / すりみ連合 スプラトゥーン3
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スプラトゥーン1のメイン・パーソナリティはイカの女の子二人組のシオカラーズであった。スプラトゥーン2はのイカ女とタコ女の二人組テンタクルズ。そして今回、スプラトゥーン3はサメ使いのタコ女とウツボ使いのイカ女とマンタ男の三人組・すりみ連合である。サメもエイもウツボも「すり身」の原料だからすりみ連合なんだね。なるほど。いや次は男子入るよな。「男子二人組だとスプラのイントロ特有のハイテンション感がなくなっちゃうかな、どうなるかな」と思っていたのだが、女子二人・男子一人の三人組か。なるほどいいね。私の好みは京都弁だけど上品というよりはヤカラっぽいフウカちゃんです。
この曲はフェス中に広場でわんさか流れる。三台の大きな山車が出て、音楽に合わせてすり身連合の三人がそれぞれの山車の上でソロで歌い舞い踊る。京都女フウカは和風、ウツホちゃんは中東風、マンタローはサンバ風、と時間帯にあわせてアレンジも変わる。フェス後半の2日目は、3人が一台の神輿に乗ってEDMミックスされた曲(マンタローがミックスしたという設定)を歌い上げる。とても凝っている。もともとの曲調自体も多国籍で、混沌が支配するバンカラシティにふさわしい。
ライブも最高。下の動画の35:00 から
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スプラ3戦闘曲の中では「張拳(ハリケーン)ゴーアヘッド」が一番好き。この動画で6:27から。ゲーム・ミュージックなのに、しかもバトル中の曲なのに、メロディアスなサビをもつ曲を私は結局一番好きになっちゃうんだなぁ。J-POPで育った人間なのでしかたない。
7位 CHAINSAW BLOOD / Vaundy
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アニメ『チェンソーマン』のエンディング曲。チェンソーマンのエンディングは一話ごとに変わる超!ぜいたくな仕様であった。曲も映像も変わる。豪華。豪華すぎる。しかもどれも名だたる歌手が力を入れて作った名曲で、チェンソーマンの物語展開と曲のコンセプトが完全一致しているのだ。すごい。ソニーの本気を感じる。アニメタイアップをつけることがいまや最も日本中、いや世界中に歌を聴いてもらうために有効な方法である。アニメは世界中で再生される。そのついでに曲も流れる。そして一定数の耳に届く。これだけ音楽コンテンツがあふれている昨今、新しい楽曲をなんとしてもリスナーの耳に、くりかえし流し込む方法として、最も効果的なのはアニメの前後に毎回曲を流すことなのだ。実はここで最も重要なのは「くりかえし」である。そう、くりかえし。
チェンソーマンの一回で終わっちゃうエンディングはこの「くりかえし」がない。一回限りで変わっちゃうから。チェンソーマン第二話を見た私の感想は「えっVaundyさんじゃないの!?」であった。Vaundyさんが聴きたいんだよ。くりかえし、何度も、毎回ききたいんだよ。映像コンテンツのエンディング曲は、凄惨な物語から現実の日常に帰るための「儀式」としての役割がある。Vaundyさんの「CHAINSAW BLOOD」は、グロテスクな物語から日常へ戻るためのスイッチとして、一話の時点ですでに私の中に組み込まれていた。同じ曲が同じように流れるという反復は、「物語はめちゃくちゃで思いもよらない方向に進んでいくけれど、私の世界はいつもと変わらない」「この物語を見終えた私はいつもの日常に帰っていく」という気持ちの切り替えポイントなのだ。だから同じものが同じように流れる必要がある。その時間にトイレにだって行けるし、お茶を入れに立つこともできる。エンディングで毎回違うものが流れたら、気が抜けない。日常からの変異がまだまだ続いていると脳がとらえてしまう。結果として、耳に曲が残るまで至らない。物語と曲が一体化して、曲とともにアニメ視聴当時の思い出がよみがえってくる、という「タイアップ曲だけが持てる魔法」も薄れてしまう。もっとCHAINSAW BLOODが聴きたかった。残念だ。毎回CHAINSAW BLOODでよかった。もちろん「ちゅ、多様性」も好きだしマキシムザホルモンさんの曲も好きだ。どれも単品で好き。これだけ名曲のストックがあるなら、この後も続くであろうチェンソーマン映画や二期にまわしたってよかったと思う。もったいない。
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6位 M八七 / 米津玄師
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映画『シン・ウルトラマン』主題歌。もう完璧。
『シン・ウルトラマン』の映画自体は、『シン・ゴジラ』にくらべると一見さんに伝わりにくい内容だったと思う。いや私はウルトラマンの初代TVシリーズをすでに全話見てしまっているので「なるほど!メフィラスはこう処理したか!さすがだ!」「ゼットンはこうきたかーなるほどー」といちいち全肯定のうなりをあげることが多かったのだが、ウルトラマンまったく知らない人たちは果たしてどうだったんだろう。大丈夫なのか?理解できたのか?なんだこれ?のオンパレードにならなかったか?ゼットンってなに?え、ウルトラマン死ぬの?ゾフィーって誰だよ?唐突じゃね?と首をかしげるばかりにならなかっただろうか。不安である。
しかしそんな不安を全部吹っ飛ばすのが、『M八七』米津玄師。さすだがだよ。ぜんぶぶっ飛んだもん。ゼットンが来るの唐突じゃね?とか山ちゃんボイスのゾフィーって何?とかそもそも斎藤工なんでウルトラマンになってるの?みたいな疑問やモヤモヤや唐突な終わり(すべて原作ママ)を全部ふっとばす歌声とメロディ。圧倒的説得力。ぶつ切りのように突然エンディングが流れ始めたら、ぶつ切りのように突然だったはずなのに「そっか、ウルトラマンってば人間を大好きになっちゃったんだね。じゃあしかたないね」「地球を守ったんだね、身を挺して人間を守ったんだね、BIG LOVEだね」という感情がなぜかこみ上げてきちゃうんだもん。こんな私でも泣けてきちゃうんだからすごい。説明不足(原作ママ)などどうでもいいと思わせる、すべてを吹っ飛ばす歌声であった。この曲を十全に味わうために映画を2時間見たと言ってもいい。
ちなみにサブスクに降りてきてから子どもと一緒にもう一度『シン・ウルトラマン』を見た。長男(中学生・ウルトラマンゼロ世代)の感想は「面白かった」、次男(小学校低学年・ウルトラマンZ世代)の感想は「いつ終わるのこれ。長いよー」であった。是非もなし。
来年に続く。ようやく時代に追いつけそうだ!やったね。PRODUCE 101 JAPAN THE GIRLSの曲をハロプロ楽曲に入れようか入れまいか、ちょっと悩んでいます。うーん、入れない方がいいんだろうな。(2024/06/11)
※今さら2022年の記事です。新型感染症流行に免じて許してほしい。
※一定期間たったら、執筆時の時系列に記事を移動させます。
2022年はハロプロから少し遠ざかった一年になった。理由は四つ。
一つ目。 私は自由恋愛でクビになるメンバーが出ると、ハロプロという組織への関心が途端に落ちる。歌が好き(声質や歌唱力が好き)なメンバーでそれをやられると、さらに萎える。私がなぜハロプロを見続けているかって、「歌が聴きたい」からだ。「上手な生歌が聴きたい」という絶大な欲求の前には、メンバーの恋愛事情などささいなことである。それなのに、後者のせいで前者がつぶれる状況を見ると応援する気が失せる。
二つ目。 新型コロナウィルス感染症流行のせいで自分自身の予定が立たない。チケットの転売がオリンピックによって規制され、東京都内で1000~2000人規模のコンサートができる箱が減り、ソーシャル・ディスタンスの確保や座席数制限のために公式のチケット数も少なくなった。すいている公演に当日ふらっと入ることもできなくなった。
そのかわり、オンラインサービスが格段によくなった。コンサートやイベントの配信も増え、時間を気にせずお茶の間で消費できるコンテンツが増えた。結果として、映画館のライブビューイングや配信でコンサートを見る機会が多くなった。
三つ目。 コロナのせいで新曲が出るペースが落ち、新しい曲があまり出なかった。これはもうしかたのないことだ。つんくさん♂の提供楽曲も少なかった。もっとくれ。毎年これを書いてる気がするけど、つんくさんの曲はなんぼあってもいいですからね。たぶんこれからも言い続ける。
四つ目。 一番好きだった金澤朋子ちゃんが引退し、二番目に好きだった高木紗友希ちゃんは理不尽に更迭され、三番目に好きだった佐藤優樹ちゃんが娘。から卒業した今、どうやってモチベーションを保てばいいのかわからない。これは非常に個人的で普遍性がなく、でもアイドルを応援するには一番要なモチベーションの問題である。
2022正月ハロコン の記事で私は「2022年は一推しを探す行程の旅路になる」 と書いた。その通りだった。私はいま「推してるメンバー」略して「推しメン」がいない。いわゆるDD、誰でも大好き である。今の私のペンライトは、卒業コンサートでは卒業メンバーの色になり、そのときステージ上でMCしてるメンバーの色になり、そのとき「いいな」と思ったメンバーの色になる。ゆるやかに地元のスポーツチームを応援しているような、おだやかで凪た心持ちだ。感情に凹凸がない。心が揺れない。「チケットが取れたら、空いた時間にふらっと試合(コンサート)を見に行こうかな。会場近くでついでにおいしい定食でも食べよう」くらいの感覚だ。
以上四つにより、2022年の私は多くの時間を「お茶の間」のオタクとしてすごした。OCHA NORMAのオタクでもあるけれど、お茶の間のオタク。こたつに入ってモニターの前でお茶を飲みながら、または布団の中でスマホ片手にニヤニヤしている、それが私だ。私はすっかりゆるやかに過ごしている。
新型コロナウィルス感染症はこれからきっと、ありふれた一般的な病気になっていくだろう。コンサートもだんだん元のかたちに戻っていく。そんな中で、医療従事者である私がコンサート現場に戻ることはできるのだろうか?マスクなしの狭い会場で、たくさんの人に囲まれた状態で全力でコールできるのだろうか?声出し可のコンサートを、心から安心して楽しむことができるのだろうか?未来のことはわからない。わからないなりに、これからも私はおだやかにハロプロ好きとして過ごしていこうと思う。
1位 Hello! 生まれた意味がきっとある / HELLO KITTY
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つんく♂さん最高。キティちゃん最高。さすが世界のアイドル・ハローキティだ。50年近くも「かわいい」で世界を背負って立ってるだけある。ハロプロの尻の青い十代の小娘たちが、キティさんにかなうはずもない。年季の入ったアイドル性をきらきらと周囲にまき散らしている。あまりにも華やか、あまりにも堂々としている。
しかもキティちゃんってば、めっちゃ歌がうまい。リズムも完璧、音程も完璧。その上でしっかりキティちゃんを演じる声。それをハロプロ歌唱でやってのけてる!ハロプロ独特の語尾上げやしゃくりが、随所に埋め込まれているぞ!なんだこれ。林原めぐみさんまじですごい!
そして、この曲はなんと言っても歌詞である。歌詞だよ。まじでつんく♂そのものの、ハロプロそのものの歌詞なんだよ。
タイトルは『Hello! 生まれた意味がきっとある』。重い。やたら重い。私の隣で聴いていた息子(中学生)はタイトルを見てすぐに「重いな」と言い、「生まれた意味が『きっと』あるって、これ、現状では生まれた意味を感じてないってことだよね……?」とつぶやいていた。うーん、そうなっちゃうよね。私もそう思う。
楽曲を聴いている間にも彼は「きっと?きっと?」「転んでも再チャレンジ?恨んでもしょうがない?いや、重いよこの歌」とつぶやいていた。私は笑顔でこう返した。
「え?なに言ってんの?めっちゃくちゃ明るくてかわいい希望に満ちたアイドルソングじゃないか。ほら見てよ!キティちゃんだよ!世界一かわいい!世界一輝いてる!フレッシュな十代女子たちを後ろに従えて、堂々とセンターで踊ってるじゃん。『かわいい』しかない世界だよ?明るく何回も『いえーい!』って叫んでるし!ほら、つんく♂さんのラーナーノーツ 見て!『キティちゃんといっしょに歌ってくれるちびっ子のみんなもお父さんもお母さんも一つになれるようなそんな曲をイメージして作りました。 』って書いてあるよ!」
「いやいやいや。『生まれたからは そう“きっと” 意味があるんだよ』って、いま生きてる意味を失ってる人からしか出てこない言葉だよね……?」
「いやだなぁ、気のせいだよ!深読みしすぎじゃない?」
「いやいやいや」
「……本当のこと言うと、この重さこそがつんく♂さんなんだと思う」という会話をした。
その後Youtubeが勝手に続けて再生した『ザ・ピース!』キティちゃんバージョンにも、彼は「いやこの曲もちょいちょい重いな」とつぶやいていた。ばれたか。
ザ☆ピ~ス! / HELLO KITTY
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つんく♂さんのライナーノーツ
※キティちゃんの中の人の声が変わってしまって悲しい。キティちゃんさんの『LOVEマシーン』『ザ・ピース!』歌ってみた動画も非公開になっていた。悲しい。これからの若い観客がこれを聴くことができないなんて大いなる文化的損失だ。
2位 プラトニック・プラネット / Juice=Juice(Ultimete Juice Version)
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2019年の代々木コンサートで初披露された名曲。なかなか音源化されず、ファンはずっとやきもきしていた。その間に多くのメンバーがグループを去っていった。この曲の輝きはもう失われてしまうのだろうかと危惧していたが、なんと!Ultimete Juice Versionという名義でほぼ初期と同じパート割でアルバムに収録されることになった。よかった。やはりこの曲は佳林ちゃんのクリスタルボイスの「ちょっぴりいい感じなんじゃないの?」がないと始まらないよ。あと落ちサビの朋子「絶対あなたじゃなきゃヤだよ」→ 紗友希「飛び出してプラトニック・プラネット」も不可欠だね!
当時のJuice=Juiceのメンバーが揃った歌割が聴けて私はすっかり恵比寿顔である。嬉しい。こういうところに、アップフロントがアイドル事務所ではなく音楽事務所であるという強い矜持を感じる。音楽という芸術の前には、しがらみなど簡単に捨てる。人間関係のもつれやプライドを軽く投げ捨てて、「いい音楽を作る」ことに真摯であり続けている。その姿勢が好きだ。佳林も紗友希も朋子も声の使用を許諾してくれてありがとう。
「プラトニック・プラネット」や「銀色のテレパシー」のアレンジは宇宙感が強い。この二曲をライブで聴いていると、コンサート会場が宇宙空間のように思えてくる。ペンライトは暗闇に浮かぶ無数の星だ。中野サンプラザや武道館にいるはずなのに、真空でまっくらな宇宙の中に放り出されたような浮遊感に引き込まれていく。おそらくこの没入感は彼女たちの歌唱力の高さによって引き出されたものであり、当時のJuice=Juiceのライブでしか感じることのできなかった魅惑的空間であった。
3位 よしよししてほしいの / モーニング娘。’21
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リリース自体は2021年末の楽曲。佐藤優樹ちゃんによく似合う歌詞とメロディとリズムの曲だ。一番の「本音を話すとみんな眉をひそめて問題児扱いするじゃん」「今夜の終わりが来たなら眠る 今夜の終わりがいつだかわからない」という歌詞がいい。まさに佐藤優樹の歌詞。二番の導入の「笑顔が私の防御ですから 返事がいいのも防御ですから 優等生なのも防御ですから みんなそれぞれに防御があるんでしょうが」もいい。まさに小田さくらの歌詞。最高だ。間奏で広がる宇宙感が強いアレンジもいい。これぞつんく♂さん、これぞ大久保薫さんだ。
今のモーニング娘。には変化が少なすぎる。退屈だ。退屈すぎて涅槃像よ~(たけちゃんが肘をついて寝転がりながら)。
2022年末、リーダーであるふくちゃんの卒業発表があった。しかしその内容から、2023年の一年間は体制に何の変化もないことが示唆されてしまった。2023年はふくちゃん卒業一色の一年になると、2022年のうちにほぼ決まってしまったのだ。これは長い。さすがに長い。ふくちゃんとさくらのことは大好きだが、あまりに変化を感じない。最近その二人も音程や歌の入りが安定しなくなってきてしまった。それも悲しい。新しい声が聴きたい。新しい歌割が見たい。せめてアンジュルムやJuice=Juiceのように、既存の歌割であってもツアーごとに容赦なく変えていってほしかった。新人にどんどん歌割をあたえていってほしかった。私がモーニング娘。に求めているのは常に変化と成長なのだ。
4位 ノクチルカ / Juice=Juice
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金澤朋子卒業後すぐ、植村あかりリーダー体勢にて発売されたサードアルバム『terzo』収録の一曲。東京女子流でおなじみの松井寛さんの作曲・編曲。まさに松井さんの得意とする、都会的でおしゃれなハロプロファンクだ。ああー大好き!最高!『terzo』収録曲の『ノクチルカ』と『G・O・A・T』が素晴らしかったから、私はJuice=Juiceのファンを続けられている。かなともとさゆきがいなくなったあとも。
この二曲を聴くために稲場まなかんの卒業コンサートのライブビューイングにも行った。とてもいい、予定通りの、秩序だった卒業コンサートだった。まなかんがソロで『もしも…』を歌ってくれたことで「カントリー・ガールズのまなかん」と当時きちんとお別れできなかったことの困惑と悲しみが、私の中で浄化されたように思う。『もしも…』の間はまなかんコールがしたくてしたくて、たまらなかったよ。全力でコールしたかった。武道館のオタクの皆さんはよく我慢したと思う。偉い。マジで偉いよ。
もう少し、もう少しのはずだから、武道館で全力でコールができるその日までなんとか生きのびていこう。ハロヲタの皆さん。もちろん私も。
さてここからは極めて個人的なお話である。ハロオタの皆さんは読まないでいいです。
******ここから******
まなかん卒業ライブビューイングを見たのは、某仮面ライダーオーズの忌まわしき続編映画(もう作品名すら口に出したくないほど嫌い)を3か月前に見た映画館であった。コンサート中のなんでもない時間に、何の前ぶれもなく突然、血の気が引いた。「あの映画」を見た後の怒りと悲しみとやるせなさが突如私を襲ったのだ。2月中旬の乾いた空気、上映直後の観客のため息、泣き声、じっと動かずただ前方を呆然と見ている隣の席の女性客、席にうずくまって動けないでいる人、文句を言いながら出口に向かうカップルの姿が、私の中に瞬時に蘇ってきた。血の気が引いた。
これはいわゆる「フラッシュバック」である。
「オーケー、わかってる。これはフラッシュバックだ。いま私がいるのは、まなかんのコンサートだ。彼女は予定通り、みんなに祝福されながら卒業する。予定外のことなど一切おこらない。スクリーン画面から卑劣なふいうちを受けることはない。誰も不幸になったりしない、不幸な出来事は一切おこらない。あれは過去だ。今の私を脅かすことはない。」私は自分にそう言いきかせ、周囲の落ち着いたハロヲタを見渡した。流れる良質な音楽にひたって深呼吸することで、私は自分を取り戻し「いま」の時間に帰ってくることができた。
それ以来私はその映画館のチケットを取るのをやめた。
******ここまで******
5位 素肌は熱帯夜 / OCHA NORMA
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2022年11月30日、私はひとり池袋サンシャインにいた。OCHA NORMA(オチャノーマとよむ)という新人女子アイドルグループを見るためである。コロナ禍により画面越しでしか見ることができなかった彼女たちを、初めて生で、とても近くで見られるチャンスだ。やった!よっしゃいくぞ池袋!まだ声出しはできないけれど、よっしゃいくぞー!
池袋サンシャインに久しぶりにハロプロが帰ってきた。嬉しい。池袋サンシャイン噴水広場は改修工事があり、しばらくイベントができなかった。そうこうしているうちに新型コロナウィルスが大流行してしまった。だからハロプロの噴水広場でのリリースイベント自体が、とても久しぶりなのだ。
ちなみにその前の月(2022年10月27日)にはこちらへ参加したよ。好きな女が池袋に来てくれるっていうんだから、そりゃ会いに行くよね!池袋を過ぎたってこの愛は永遠!小片さんも元気そうでよかった。
リリースイベントはすいていた。それはそうだろう。平日だし、まだコロナは猛威を振るっているし、東京都外のオタクが来るのは無理だろうし、イベント自体の告知もそこまで大がかりではなかった。リリースイベントを開催できただけでも御の字だ。おかげさまで私はゆっくりと快適に視界をさえぎられることなくイベントを眺めることができた。n年ぶりに生のアイドルに直接ペンライトを振ることができて、嬉しかった。以前と変わらぬファンが、同じ場所に集まっている。ハロヲタのみんなも元気に生きてる!よかった!以前と変わらぬ日常が存在していることを実感できて嬉しかった。
そのリリースイベントのセットリストの中で、一番いいな!と思った曲がこの『素顔は熱帯夜』である。ろこちゃん!かわいい!ももも!最高!『Hello!生きている意味がきっとある』も歌ってくれて生歌最高だったけど、すでに一位に書いたので割愛します。
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『お祭りデビューだぜ!』の最後のハモりも非常によかった。『お祭りデビューだぜ!』は歌詞と曲調がハロプロの「いつもの手癖」のお祭りソングであることに落胆していたが、ライブで見たら一気に好きになった。ろこちゃん低音、まどぴ高音で「デビューは祭りだっぜ~!」と叫ぶようにハモリを重ねるラストが好き。ようやくデビューできたリーダーのまどぴが力の限り歌い上げるのが好き。魂の叫びだ。その隣でろこちゃんが年齢にそぐわぬ落ち着きで低音を支えているのも好き。このパートのためだけにライブ会場に行く価値があると思う。今しか使えない歌詞に見えるが、何食わぬ顔で末長くやり続けてほしいな。
以上です。2023年に続く。(文筆2023/02/28、アップロード2024/01/26)
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