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医師兼漫画家 森皆ねじ子

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いよいよパンデミックがあける

※2023年3月に書いた記事です。
※一定期間たったら、執筆時の時系列に記事を移動させます。

都営大江戸線の六本木駅で抱きしめて
君を深く深く深く深く深く深く深く深く深く愛しているのよ

都営大江戸線の六本木駅は深い。たくさんの地下鉄がすでに掘られた後に作った路線だから、奥深くにならざるをえなかったのだろう。

地の果てまで続きそうなエスカレータをひたすら降りて、そのあとひたすら登る。六本木駅は金色だ。黒の縁取りとまっキンキンの壁。都営大江戸線は駅によってデザインテーマがあり、壁の装飾が違う。当時の都知事である石原慎太郎氏の趣味なのだろうか?ねじ子の好きな大江戸線の過剰装飾は飯田橋駅の営団地下鉄への乗り換え階段の天井に巻き付いている緑色のパイプです。地下に無限に広がっていく竹の地下茎を思わせる造形。不気味で好き。

さて、六本木という縁遠い土地まで来た理由はこれである。

23年前のASAYAN放送時からずっと好きだった太陽とシスコムーンを、初めて生で見ることができた。感無量だ。コロナ禍の私の唯一の娯楽は、ハロプロの過去動画をくりかえし見ることだった。太陽とシスコムーンの楽曲は暗闇の中でつねに輝く光だった。小さいライブハウスで行われたであろう太シス10周年ライブを、私はくりかえし見ていた。次に太シスのライブがあるならば、必ず見に行こう。コロナが終わって次の機会がもしあるなら、万難を排して駆けつけよう。ずっとそう思っていた。だから信田さんの50歳のお誕生日記念ライブが行われると聞き、必死でチケットを取った。

期せずして、これは新型コロナパンデミック収束後私にとって初めての「声出し」可能現場になった。ハロプロのライブはまだ観客が声を出すことを解禁してない。

公式Twitterの告知を見たときから私は緊張していた。どんな現場になるんだろう?本当に声を出していいのか?いや、観客はマスクしているし、大丈夫だってことはわかってるよ。私自身は絶対にマスクを外さないつもりだし、この日のために防御率が高いけど見た目がいかつくないマスク(KN95)も用意した。周囲の医者には「N95つけて行ったら?」と勧められたんだけど、六本木のライブハウスにN95で参戦する勇気はない。さすがに浮く。そんな状況で私は本当に音楽を楽しめるのか?いろいろ考えて躊躇しちゃわない?そもそも私は声を、コールを出せるのか?

ワンドリンク制、食事一品オーダー義務。六本木クラップスさんは食事もドリンクもおいしくてリーズナブル、音響もよかった。さすが親愛なる歴戦のハロヲタの皆様は全員しっかりルールを守っており、一切不安を感じることなくライブを楽しむことができた。

私自身はこの三年の間にコール&レスポンスがすっかり体から抜けていて、『月と太陽』も『赤い日記帳』も『生まれたてのBabyLove』にも咄嗟に反応できなかった。それは周りのハロヲタも同じだったようだ。どう見ても歴戦の戦士たちばかりなのに、なかなか声が出ない。『Be My Love』でコミさんが丁寧に指示してくれたおかげでみんなようやく喉から声が出るようになって、アンコールの「Taiyo&Ciscomoon Let’s Start!」でやっといつものリズムに体が戻った感じ。ハロプロでコールが解禁になったら、昔の動画を見てコールを復習しなくちゃね。

女性アイドルの50歳のお誕生をファンのみんなでお祝いできるって、本当に素晴らしい。ぜひ還暦もお祝いさせてほしい。「還暦祝いのドレスコードは赤!」らしいので、私も赤い服を準備して待っています。以下、箇条書きの感想。

・全員歌唱力が高くハモリがきれい
・しのぴーもあっちゃんもいまだにめっちゃ踊れる
・熟練の大人三人のMCがまぁ面白い、とくにコミさんの進行が上手い
・あっちゃんが通るたびにいい匂いがする
・楽曲が素晴らしい、今さら私が言うまでもない
・本物のしのぴーがいる『赤い日記帳』が22年越しに聴けたよ!
・メロン記念日の村田めぐみさんがケーキを持って登場。みんなでハッピーバースデーを歌う
・村田さんの手を取り、熱く抱擁しながらプルシアンブルーの肖像のサビ「離さない」を熱唱するしのぴー。とまどう村田さん。場内爆笑
・生田えりぽんと石田あゆみんがVTRで出演。信田さんから「この二人は体が強い、ちょっと動けてもその後体が痛くなる子もいるけどこの二人は体が強い」とお褒めのコメント
・撮影可能タイムがある!やったーーー!自慢の一枚貼っちゃうよ!

・物販にメンバーがいて頭が真っ白になっちゃった。アイドル物販での接触とか、いつぶりだろうか。そんなことあると思ってなかったから、話すことぜんぜん用意してなくて頭が真っ白になっちゃったよ。ふわぁ~。まともな言葉を発せずアワアワした。私の口からとっさに出てきた言葉は「Endless Loveが大好きなんです!次のライブでぜひ歌ってください!」であった。もっとしっかり「ASAYANの『再起にかける芸能人』オーディションのときから見てました!」とか「体操女子日本代表のオリンピック中継見てました!」とか言えばよかった。反省。そして、こんな脳内反省会ができるのも幾年ぶりだろうか。感慨深いよ。

 

そしてその翌々日、私はJuice=Juice武道館振替公演へ行った。おとといは40代50代女性のファンクミュージック、今日は10代20代女性のファンクミュージックだ。こちらはまだ声出しが解禁されていないので、静かに座って観戦する。

この公演は、第8波でメンバーの大半がCOVID-19に感染し延期になってしまった2022年11月29日武道館の振替公演だった。ニュースを見て私は「あれだけ感染対策していたハロプロでさえも、大箱の公演が前日中止になってしまうのか…」という絶望感にさいなまれた。メンバー全員が揃った状態でいっぱいの客席で振替公演ができて、本当によかった。メンバーもファンもきちんと待ててよかった。当日、会場に行くまで本当にヒヤヒヤするよ。誰かメンバーが欠けるんじゃないとか、私自身も熱が出ちゃうんじゃないとか、家族が熱を出して行けなくなるんじゃないか、とか。いろいろ考えちゃう。

私は朋子のおたくなので『イジ抱き』のイントロが流れた瞬間に思わず息をのんだ。そこからの「私はローズクォーツ」三連発は里愛ちゃんで、これが本当に素晴らしかった。ソロフェス!で里愛ちゃんを心配になった朋子が、わざわざ近くまで来てモニター越しに鋭い目を送っていた、あの美しい横顔を思い出す。あれから3年近くがたち朋子は引退し、堂々と里愛ちゃんが「私はローズクォーツ」と歌っている。私の知らないところで素晴らしい引き継ぎが粛々と行われているんだなぁ。Juice=Juiceはこうやって続いていくグループになった。それを実感して私は泣いていた。うぅ。セトリの前半(6曲目)だし、そんなポイントで泣いているのは私だけであった。マスクの換えを持ってくるんだった。(2023/3/2執筆、2024/09/19up)