2017年 ねじ子のオレコンランキング
1位 ようこそジャパリパークへ / どうぶつビスケッツ×PPP
『けものフレンズ』1期アニメは素晴らしかった。オープニング映像も素晴らしかった。実はねじ子、アニメの主題歌を出演声優が歌うのってホントはあまり好きじゃない。単純に、本職歌手に比べるとどうしても下手な人が多いのでメロディもリズムも聴きとりにくくなるからだ。でもこの曲は、「出演声優がテーマ曲を歌う」という前提で作られた作品として考えられる限り最高の状態に仕上がっていると思う。日本にオタク文化が残る限り永久に歌い継がれるアニメソングになるだろう。
彼女らはこの曲をひっさげて2017年の歌番組に出まくった。フルで歌う機会も多く、その姿はハロヲタとしてうらやましいほどであった。新人女性声優さんばかりなのに、生放送の歌番組でも生歌で頑張っていた点も素晴らしかった。歌もダンスも台詞もどんどん上手くなり、場慣れしていく彼女たちは見ていてとてもほほえましかった。ベテランのかばんちゃんが真ん中に入ると、場がきゅっと引き締まるのもよかった。何もかもが信じられないくらいうまくいっていたのだ、たつき監督の降板騒動までは。
「けものフレンズは2期からたつき監督が外れます」という文言は私にとって「源氏物語は宇治十帖から紫式部が外れます」「ねじまき鳥クロニクルは第3部から村上春樹が外れます」と同義である。部外者の皆さんには何を言ってるのかよくわからないと思うが、作家性の高さで言えばそのくらいの愚挙に見える。「KADOKAWAの偉い人!よく考え直してくれ!」と思っていたのだが、どうやらもう、たつき監督はおろか制作会社のヤオヨロズごと2期から外されることは決定したらしい。あーあ。
大切なのは金の卵ではない。金の卵を産むガチョウなんじゃよ。イソップ大先生もそう言っておるではないか。欲の皮が突っ張ってガチョウの腹を割いてしまうと、二度と金の卵は手に入らないんじゃ。もちろん、ガチョウそのものも二度と手に入らない。当たり前じゃ。古来より言い伝えられる寓話だというのに、なぜみんなガチョウを殺してしまうんじゃ!たつき監督さえ残しておけば、オタクたちは円盤にも舞台にもグッズにも二期にもガンガンに金を使う予定であったろうに。彼らの財布はもう別のところに霧散してしまったよ。あぁ、もったいない。
観客はオタクだけではなかった。『けものフレンズ』はたしかに子どもたちにも届いていたのだ。おそらく、夏休みの早朝に再放送をやっていたのがよかったんだと思う。子供たちが毎日朝、遊びに行く前に、または学童に行く前に、30分間視聴するのにちょうどよかった。「おはスタ」のあと親子で見られる、ちょうどいい物語としてぴったりとはまっていた。このまま永遠にテレビ東京の朝の顔になれるクオリティを持っていたのだ、持っていたのに。
2017年9月の東京ゲームショウに、ねじ子は個人的に遊びに行っていた。子どもとその保護者しか入れないエリア(ファミリーゲームパーク)に最新の「太鼓の達人」アーケードゲームが置いてあり、子どもたちはみな行列して無料で遊んでいた。その子どもの実に8割近くが『ようこそジャパリパークへ』を選曲していたんだよ!!ちなみに残り2割の子どもたちは『前々前世』や『アナと雪の女王』や『シュガーソングとビターステップ』あたりね。あの会場にわざわざ入場料を払って入った大人が連れてきた子どもたちなんだから、オタクバイアスは多少かかっているだろう。それでも、行列中ずーっと『ようこそジャパリパークへ』が選ばれている光景を見て、私は涙腺が潤んでしまった。「よかったね、ヤオヨロズ寺井社長。つんく♂と一緒に上京してきた甲斐があったね。よかったね、たつき監督。よかったね、吉崎観音さん」と。
もうジャパリパークの謎が明かされることはないのか。サンドスターとは何か、なぜ毎年火山から降り注ぐのか、セルリアンは何の目的でどこから来たのか、現実の日本とどう繋がるのか。あの世界にちりばめられた多くの謎と伏線は、永久にそのままになってしまうのだろうか。ひょっとしたら今後のシリーズにおいて「何らかの回答」は示されるのかもしれない。でもそれは他の人が考えた結論だ。私が知りたいのは、たつき監督が1期を作りながら考えていた結論なんだよ。それは永久に封印されることがもう決定してしまった。とても残念だ。
『仮面ライダーディケイド』でシリーズ脚本だった會川昇さんが最高の作品を作り続けていたにもかかわらずある日突然降板させられ、彼の考えていたであろう世界観の謎、つまり「ディケイドはいったい何者なのか」が不明瞭なまま作品だけが放映されつづけたのとよく似ている。伏線が回収されるのを、『仮面ライダーディケイド』がノベライズするまで私はずっと待っていたのに。いつか會川さんが帰ってきて、物語の謎が解き明かされるのを待っていたのに。結局すべての謎は投げ出され、放置されたまま、ディケイドの物語はポシャっとつぶれて終わった。まぁ当たり前か。それを考えた人がいなくなっちゃったんだもんね。『けものフレンズ』でもまたあのときと同じ気持ちを味わうのかな。いやだな。
火中の栗あらため、見えてる地雷となった『けものフレンズ』二期を引き受けざるをえない状況に追い込まれた気の毒な、いや勇敢なアニメ会社とアニメ監督に幸多からんことを心よりお祈り申し上げます。
2位 二時間だけのバカンス / 宇多田ヒカル
ヒカルちゃんおかえり。あなたのいないn年間はさみしかった。
いや、ヒカルちゃんが「人間活動のため休止する」ってニュースを聞いたときは「おう、休め。どんどん休め。休みたくなるのも当然だよ。これだけ私生活で苦労してさ、家族に振り回されてさ、音楽制作のプレッシャーも背負ってさ、プライバシーもまったくない生活を送ってたらさ、誰だっておかしくなるわい!ヒカルちゃんはよくやってるよ。えらい!好きなだけ休め!そしてもし、また歌いたいという気持ちになれたら、歌ったらいいよ。あなた自身の歌を聴かせに来ておくれ」としか思えなかった。休養、大賛成だった。
ところが、いざ彼女が帰ってきて次々に新作を発表してくれると、こんなにうれしいことはない。こんなに幸せなことは他にないのだ。高校生の頃、毎週月曜日にジャンプで『幽☆遊☆白書』の続きが読めることが至上の喜びだったように、毎月つんく♂の新曲が聴けた4年前までのハロプロのように、毎月のようにヒカルちゃんの新曲が聴けることがとてもうれしい。ヒカルちゃんという音楽家が同時代にいてくれて本当によかった。ヒカルちゃんがいない間、実はとてもさみしかった。私は鈍感で、体の末端への神経のめぐりがひどく粗雑だから、ヒカルちゃんが復帰してはじめてヒカルちゃんがいなくて実はとてもさびしかったことに気が付いた。
最愛にして最大の悩みの種であっただろう母親が死に、最愛の子供が生まれた彼女が、新しい境地にいたり、また音楽をやろうと思ってくれたことがうれしい。新曲を届けよう!と思ってくれたことがうれしい。
セールス的には、以前の方が上なのかもしれない。「『travelling』みたいな陽気でアッパーなR&B風歌謡曲をまた作ってよ!」と思うリスナーが世の中には多いのかもしれない。それでも今の彼女はもうそこにはいないのだ。私は今のヒカルちゃんの曲が一番好きだ。いや、常に最新の彼女が最高の彼女だ。彼女の歌詞と、歌に対する姿勢はきわめて純文学的である。彼女の作品は今の日本において最も大衆に届きやすい女流私小説だとねじ子は思っている。
『二時間だけのバカンス』は正確には2016年の復帰アルバムの中の曲だ。椎名林檎とのデュエットであり、MVでも共演している。
一番の歌詞を見ると、これは小さい子供をもつ女性の物語だとわかる。子どもが生まれて、自分の時間もおしゃれをする余裕もまったくなくなった。子どもを幼稚園や小学校に送り出し、急いで家事を終えたあと、子どもが帰ってくる午後の1時か3時まで。そのたった数時間が、母親に与えられた唯一の自由時間である。子どもを産んだ女性の多くが共感できる状況だ。この不自由さに耐えられない女性は、子どもを育てられない。もちろん、たいていの社会において子どもを捨てることは許されていないから、みんな何とか現実と欲望の折り合いをつけて、矛盾を抱えながらも生きている。なるほど、確かにこれは子どもを持ったヒカルちゃんが新しく至った境地なんだろう。
ちなみにこの曲をモチーフに、30代ママ向けのファッション誌『VERY』において「二時間だけでも、ちょっとおしゃれをして集まってママ友同士の息抜きをしませんか?」という体裁で特集が組まれたらしい。そこでは「『二時バカ』症候群」という新名称も提案されていたとのこと。なるほど。
ところが二番まで聴くと、どうやら様相が変わってくる。「家族の為にがんばる 君を盗んでドライヴ 全ては僕のせいです わがままにつき合って」あれ?なんかほかの人間の影が出ててきたぞ?しかも相手にも家庭があるみたいだぞ?自分も子持ちで、相手も家族があって、あれ?これ不倫してね?「二時間だけのバカンス 渚の手前でランデブー」「ほら車飛ばして 一度きりの人生ですもの 砂の上で頭の奥が痺れるようなキスして」って、あれ?これわざわざ車で海まで行ってますよね?海沿いのラブホテルで二時間ご休憩してますよね?
さすがヒカルちゃん、一筋縄ではいかない。甘ったるい共感だけじゃないわ。さすがである。不倫が必要以上に社会的制裁を受けているこのご時世にあっぱれである。いや、こんなご時世だからこそ上手な暗喩を駆使して、こっそりと高らかに不倫を歌いあげたに違いない。「女性誌でママを集めて特集された」という事実は、ヒカルちゃんの暗喩がどんぴしゃにハマってすべてが上手くいったことのあらわれであり、その手腕に子気味よささえ感じる。
そうそう、特筆すべきはMVの映像だ。椎名林檎との共演。デビュー年も同じ、レコード会社も(当時)同じ、でも作風はずいぶん違う二人。お互いを認め合い、でも決して交わらず、20年間それぞれの道をそれぞれの方法で走ってきた二人の初めての合作だ。双子のようにおそろいの黒髪おかっぱで寄り添い、手をつなぐ二人。たまらない。今も『ヒカルの碁』をこよなく愛するおかっぱフェチのねじ子の性癖をこれでもかと押してくる映像だ。どうしたらいいのかわからない。あ、誰も私のフェチなんて聞いてませんね。すみませんでした。
一つのソファに座り、抱き合い、思わせぶりに互いをさわる二人。しかも監督は椎名林檎の現夫である児玉裕一さんである。そして歌詞はW不倫。しかも歌い出しが「クローゼットの奥」と来た。なんてメタファーにあふれているのか。
ひょっとしてヒカルちゃん、なにかをカミングアウトしようとしてる?NHKの歌番組「SONGS」出演時に「ストレートの同性に恋をしてしまった同性愛者の気持ちを唄った歌です」とヒカル自身が明言した『ともだち』といい、『二時間だけのバカンス』2番の歌詞といい、実はアルバム『Fantome』って宇多田ヒカル版『仮面の告白』なのでは……?そういえば紀里谷監督との結婚生活が破綻しそうな時期の、紀里谷さん以外が久しぶりに監督した『COLORS』のMVでも、女性同士が絡み合う映像を背景に「今日の私はあなたの知らない色」とか言ってたなぁ。うーむ。いや、全然問題ないし、なんならねじ子もぜひ一局お手合わせお願いしたいくらいなんだけど……。あれ?本当に?日本でのLGBT、とくにLが抱える苦労は現代日本の自覚なきミソジニーと中年独身女性の経済的困窮問題に深くつながっているから、とんでもなく重いよ……?ヒカルちゃんが生まれたニューヨークや、今住んでるロンドンとはわけがちがうよ?いや、だからこそ、なのか……?
3位 ずーっといっしょ~20周年記念バージョン~ / いないいないばぁっ!
つんく♂最高。正確には2016年の曲だけど、モーニング娘。20周年を迎える今だからこそ!この曲を推します。Eテレの赤ちゃん向け番組『いないいないばぁ!』20周年記念で作られた曲。すべての歴代お姉さんたちが集まり、ワンコーラスずつ歌うリレーボーカル形式だ。おねえさんたちのそれぞれのソロパートの歌詞には、当時の代表曲のタイトルがきっちりと組み込まれている。さらにDVDの特典映像では、彼女たちのレコーディング風景まで見られる。最高だ!
今年はモーニング娘。20周年らしい。本当は2017年が20周年だったと思うけど、大人の事情で2018年が20周年ということになったらしい。まぁ、そこはいい。それより!モーニング娘。でも同じようなことやってくれますよねえ!!!?『いないいないばぁ!』にできたことが、つんく♂の分身といってもいいモーニング娘。でできないはずないですよねぇ!!??Eテレがやれたことが、音楽事務所であるアップフロントさんにやれないはずがないよねえ!!???頼みますよ!!加護ちゃんもいちーちゃんもマコも小春も呼んでね!!!!!もちろん、つんく♂さんが作詞作曲ディレクションですよぉ!!!事務所の指示でできあがった他者の合作はいりませんよお!!?たとえそれがどんなに良曲であっても、いりませんよぉぉ!!!??
『いないいないばぁ!』のつんく♂曲は、作曲のみで作詞を別の人がやっていることが多い。三浦徳子さんとかね。作詞までつんく♂が手がけた2017年の新曲『のりものステーション』も最高だった。私の曇った目にはもう、ゆきちゃんが鞘師に見えてる。赤い服だし。一人でセンター張ってるし。で、わんわんが香音ね。緑だから。ずっしりしてあたたかそうな体格も、きゅっとひきしまった目の大きい顔も、ほら香音ちゃんでしょ。間奏で二人並んで踊るところとかそのまんま、りほかのだよ!ほら!9期!9期だ!赤いきつねと緑のたぬきだ!わーい!わーい!あぁわたしつんく♂不足で頭おかしくなっちゃったかも。ハロプロハーブが切れて幻覚が見えてきたのかな。禁!断!症!状!あ、医者は離脱症状って言わなくちゃね。
4位 『ゼルダの伝説ブレスオブザワイルド』メインテーマ
今年のねじ子のオタク大賞はNintendo Switchの据え置きゲーム『ゼルダの伝説ブレスオブザワイルド』がゲットしました。『ゼルダの伝説』は小学生の頃友人の家で初代作をやっただけの(もちろんあまりの難易度にさじを投げた)ねじ子は、今年はじめて『ゼルダの伝説』の深い世界観に触れ、どっぷりとはまったのでした。
まずは、新しいハードにのせる新しいゲームとして最高。新ハードでできるすべての性能を完璧にプレゼンしているゲームだ。オープンワールドな操作感も楽しい。山のどこへでも、海のどこへでも、草原のどこへでも、自由に行ける。行けない場所がない。どんな方法でクリアしてもいい。いや、クリアなどしなくてもよい。ハイリアの大地で好きに生き、好きに食べ、好きに狩り、好きに労働し、好きに着替え、好きに寝ればいい。崖を見たら登ればよい。その先の景色が見たかったら、さらにその先に行けばよい。リンクである私は自由だ。ゼルダなんて知らない、どちらさまで?という状態で、のうのうと魚を捕り果物を取り米を刈って暮らし続けてもいい。もちろんすべての誘導を無視して開始15分でボスを倒しに行ってもいい。
ゲームミュージックはゲームの中での体験に大きく左右されてしまう。私はこの曲を聴くともう、ハイラルの大地に吹く風、突然の雨の冷たさ、崖ですべる手、回想の中のゼルダの冷たいまなざし、どこからか迫ってくる野生のけものの荒々しいにおいを感じてしまう。ゲームをやっていない人がこの曲を聴いて同じ気配を感じることができるかどうか、私にはわからない。だってもう私はゲームをプレイしてしまったから。まっさらの状態に戻れない。未プレイの皆さんにもこのテーマ曲からある種の壮大さだけは伝わると信じている。
5位「新幹線変形ロボ シンカリオン」テーマソング「チェンジ!シンカリオン」 / 山寺宏一
シンカリオンはタカラトミーとJRのタイアップで、もう何年も前から変形合体おもちゃが先行して販売されていた。このテーマ曲もずいぶん前からyoutubeにアップロードされ、鉄道大好きな子どもたち(いわゆる子鉄)に絶大な支持を得ていた。2018年始の段階ですでに約500万回も再生されている。あ、そのうち150回くらいは私のiPadです。歌とナレーションは安心安全の山ちゃん。山ちゃんすげぇよ、何やらせても一流だよ。シンカリオンがアニメ化しても、OPはぜひ!この曲を使ってほしかった。土曜の朝から山ちゃんが熱唱してくれると信じていた。ナレーションも山ちゃんの声で聴けると信じていた。信じていたのに。
なぜだ!なぜ変えた!
いや、商売上、OPやEDの曲のタイアップが必要なことはわかっている。ボイメンだって嫌いじゃない。仮面ライダーバロンことバナナ嫌いのゆーちゃむが順調に出世しているのも嬉しい。わかってる、わかってるんだ、でも。これだけの名曲をお蔵入りさせてしまうのはもったいないよ!アニメでもどこかで流してくれ!
そして1月から満を持して始まった地上波アニメは最高である。正しいロボットアニメだ。ねじ子の中では『ポプテピピック』と並んで今期の覇権争いを繰り広げまくっている。今のところは「家族仲がよく、コンプライアンスのしっかりしたエヴァンゲリオン」といった体。今後どこへ向かうのか楽しみだ。シリーズ脚本の下山さんにも、また会えて嬉しい。ジャンプの打ち切りサッカー漫画とニンニンジャーはともかく、『銀魂』と『帰ってきた特命戦隊ゴーバスターズVS動物戦隊ゴーバスターズ』は最高に好きだったから、続きを楽しみにしている。
オタク母世代としては、緑川と杉田の声が聴けることも嬉しい。どうせ毎週何度も(子どもにつきあって)見させられるのだから、声がいい方がいいに決まっている。子どもたちが録画再生に夢中になっている間に我々は家事をすることになるのだ。画面は見られず、音声だけを何度も聴くことになる。だから好きな声が耳に入ることはシンプルにありがたい。自らロボットに乗っていた緑川と杉田も、いつのまにかロボットに乗る少年の父親世代の役をやるようになったのだなぁ。感慨深いぜ。
6位 EXCITE / 三浦大知
三浦大知さんは1997年頃にそこそこ売れた子どもユニットFolderのセンターだった男の子だ。沖縄アクターズスクール出身。Folderは明らかにジャクソン5を意識したグループであり、センターの彼のボーイソプラノが最大の武器だった。つまり三浦大知はマイケル・ジャクソンとして沖縄から連れてこられたわけだ。変声期と成長期を迎えた彼はあっという間にグループからいなくなった。女子だけの5人組になったグループはFolder5と名を変え、女性アイドルとして少し活動したあとあっけなく解散した(そのうちの一人が満島ひかりcで、女優として大成している)。
当時の私は「センターの超!歌の上手い男子が放逐されちゃった!ひどいよ!女子だけになったらFolderの魅力は半減だよ!」と思っていたのだが、実際は違っていた。彼はダンスで身を立ることを決意し、いったん芸能活動を休止して単身ニューヨークに渡り、虎視眈々と腕を磨いてきたのだ。ジャニーズ以外の男性アイドルはTV番組に出られない状況の中で、「このままでは自分は立ちゆかなくなってしまう」という認識が本人にもあったのかもしれない。
天才子役としてもてはやされたローティーンの栄光からいかに脱却するか。これは古今東西の名子役が悩む難しい問題のようだ。かのマイケル・ジャクソンもそうだった。マイケルのように歌とダンスの実力を磨くことを決意し、折れずに努力し続けてきた三浦大知くんの覚悟はすばらしい。誰も口に出してはいないが、元モーニング娘。鞘師にも、「三浦大知のようになりたい」という考えがあると思う。そしてそんな彼をちゃんと20年間支えてきたエイベックスも素晴らしい。エイベックスは今年、何十年にもわたって独占しているいわば「お抱えの仕事」である仮面ライダーOP曲を、彼に与えた。一気に知名度を得た彼は、Folderから苦節20年ようやく再ブレイクしたのだ。よかった。
どこを取っても、往年の「正しい」エイベックスらしい素晴らしい仕事である。あまり売れなくても、なかなか切らない。かんたんには人を見捨てない。一回売れた人には長期的に仁義を尽くす。ある種「やくざ的」で「ヤンキー的」で「仁義を切ってばかり」とも言われる、古くて正しいエイベックスの人事力学である。エイベックスがエイベックスらしく正しい仕事をしたのを、わたしは本当に久しぶりに見ることができた。近年ずっと見ることのできなかった「いい方のエイベックス」である。とっても嬉しい。
ちなみに「よくない方のエイベックス」の2018年最も顕著な例がこれ。↓
えーっと、私はソウル・フラワー・ユニオンが大好きです。ニューエスト・モデルとメスカリン・ドライブだったころから好きです。ソウル・フラワー・モノノケ・サミットも大好きです。もちろん奥野真哉さんのキーボードも大好きです。奥野さんがこんなにメジャーな仕事で作曲をする、と知ったときは感無量でした。奥野さんが作曲してるから、長年の盟友である中川敬さんが歌唱に参加している点も最高です。こんなにメジャーな仕事は受けたくなかっただろうに!奥野さんのためだけに!MVにまで出演して!「シェー!」のポーズまでやってあげているそのお姿!涙なしには見られません。「あの歌う活動家・中川敬が!究極のアナキスト・中川不敬が!アニメのタイアップで、シェー!を!シェーをやるとは!うわー!……」という、わけがわからない気持ちの高まりはありました。確かにありました。ありました、が、あえて言いましょう。
ひどいタイアップだな!
なにがたくさんの大物ミュージシャンとタイアップだ!おたく的には、こっちのほうがよっぽど大物タイアップなんだよ!↓
アニメ「おそ松さん」の円盤と関連商品が思った以上に売れたから、権力のある大人たちが「予算がたくさんつくわぁ!いっちょかみしたろ!」って魂胆丸出しで全力で後乗りしてるのが見え見えじゃんか!萎えるわ!!客の方をまったく見ていない。いや、ここまで行くと「客の方を見ていない」と口に出して言うのも馬鹿馬鹿しいな。だって、需要がないことなんて百も承知で、それでも50代のおっさんたちに富を再分配したかったんだろうからさ。ミュージシャンはもちろん誰も悪くない。きちんと細部まで作ってある良曲だと思う。それでも、萎える気持ちをどうしても止められない。池袋でたくさん見たあの女の子たちは、自分の父親より年上の名前も知らない男性ミュージシャンを養うためにアクリルキーホルダーと缶バッチを大量に購入して身につけていたわけではないと思いますよ。
今年は以上です。7位以下は、ハロプロ楽曲ランキングと同じになってしまうので省略します。
ちなみに2018年の俺コンランキングは今のところ『POP TEAM EPIC/上坂すみれ』と『恋するポプテピピック/古川ポプ子と千葉ピピ美』が強烈なトップ争いを行う予定です。「ポプテピピック」は第2話だけをもう32回はリピートしています。お絵かき作業用BGVに最適。キングレコードの本気を感じる。(2017/1/25)