ねじ子の勝手に2013年日本オタク大賞
第1位 ダンボール戦記W
最高に面白かった。「子供のおもちゃを使って世界征服をたくらむ大の大人 VS それを阻む子供たち(絶対正義)」という古典的コロコロコミック展開でありながら、全然トンデモじゃなく、非常にしっかりした脚本のSFロボットアニメだった。『ダンボール戦記』シリーズはタイトルで非常に損をしている。ダンボールはほとんど本筋に関係ない。純粋なロボットアニメだ。初代の『ダンボール戦記』は完成度でいったらそれはもう初代ガンダムに匹敵するほどの出来だった。「なんでこれをガンダムAGEでやれなかったんだレベルファイブさんよ?あぁん?」と言いたくなるほどの名作だ。『ダンボール戦記W』はその文脈で言えばZガンダムで、Zガンダム同様にとてもよくできた続編だった。
第2位 帰ってきた特命戦隊ゴーバスターズvs動物戦隊ゴーバスターズ
『特命戦隊ゴーバスターズ』はコンピュータの暴走によって研究センターが施設ごと「どこかに」飛ばされ、その跡地に取り残された孤児たちがヒーローになって戦う物語である。しかも彼らは新エネルギー「エネトロン」を守るために戦っている。明らかに、震災で親が死んだり原発事故で生活が一変してしまった、リアルな子供たちのための物語だ。『ゴーバスターズ』のTV本編は、これまでの戦隊シリーズの「お約束」――派手な変身ポーズや名乗りやタイトル連呼や敵の唐突な巨大化など――を徹底的に排除したシリアスな作品だった。今回取り上げる『帰ってきた特命戦隊ゴーバスターズvs動物戦隊ゴーバスターズ』は本編完結後のVシネマである。要するにおまけね。「暴走事故がなかった」場合の、パラレル・ワールドが舞台だ。
パラレル・ワールドには「動物戦隊ゴーバスターズ」という名前の戦隊がいる。彼らの物語『動物戦隊ゴーバスターズ』は、これまでの我慢を爆発させるかのようにベタな伝統的様式美が立て続けに披露される。これが短い時間ながら、非常によく出来ている。メタ・フィクションも盛りだくさんだ。ひょっとしたら『特命戦隊ゴーバスターズ』のシリアスな描写すべてが、このVシネマで大胆にベタとギャグをやるための伏線だったのかもしれないと思うほどである。
『特命戦隊ゴーバスターズ』は震災で親がいなくなった子供たちの物語であるがゆえに、終始シビアで現実的だった。行方不明になった家族は全員帰って来ず、死者は決して生き返らず、新エネルギーは非常に価値が高く、常に敵に狙われ奪われ続ける。孤児である主人公たちは、生き残った仲間とともに日常を守ることを決意しながら物語は終わる。それに対して『動物戦隊ゴーバスターズ』は、地震と津波が起こらなかった場合の未来、エネルギー問題を抱えこまないですんでいたはずの日本の子供たちの脳天気で明るい未来の姿なのである。お約束通りの日常が続いていたはずの、3年前の3月11日に私たちの前から消え去った未来なのである。そう思うと一段深く考えることができる物語であり、恐ろしいまでの対比である。
まぁそんなことはつゆ知らず、ちゃんと明るいお祭り映画になっているところがまたよい。脚本の下山健人さんは最近戦隊シリーズで名前を見ないと思ったら、週刊少年ジャンプで新しいサッカー漫画の原作をやっていた。頑張って下さい。
第3位 仮面ライダー×仮面ライダーMOVIE大戦アルティメイタム
坂本監督最高。浦沢脚本最高。ポワトリン最高。真野ちゃん最高。KABAちゃん最高。弦太郎が生身でくり出すパルクール、変身前の役者をふんだんに使ったアクション、ぶっとんだギャグを織り交ぜながらも心に響く浦沢脚本。文句なしだ。
なによりポワトリンだよポワトリン。最近の仮面ライダー・戦隊ものの映画は、父親世代を取り込むために昔のヒーローをじゃんじゃん出してくる。そしてついに母親世代をも狙ってきた。そう、ポワトリンである。ねじ子は『美少女仮面ポワトリン』の直球世代なのだ。『美少女戦士セーラームーン』のアニメが始まったときに「ポワトリンをパクるんじゃねぇよ!ちくしょう!」と子供らしく憤ったくらい直球世代である(もちろんそんなことを言いながら後にセーラームーンにもきっちりはまった)。
冴えないOLの女の子・上村優が、妄想の中だけでも街中の人に愛される強いヒロインになりたいと願い、アンダーワールドを作りだしてポワトリンに変身する。そんな彼女の目を覚ますために、彼女のアンダーワールドに仮面ライダーウィザードがやってくる。そしてこんなことを言う。
上村優「アンダーワールドで世界を守るヒーローになりたいって思って、何が悪いのよ!」
ウィザード「大切なのは現実なんだ」
なんてこと言うのよウィザード!そりゃあんたは現実に帰っても、押しも押されぬヒーロー様だろうけどね!私はしがないおばちゃんでしかないのよ!目覚めてもいいことなんかひとつもないの!キー!
ねじ子も小学生のころは本気でポワトリンになれると思っていたよ。中学生のころはセーラーマーズになれると信じていた。高校は湘北高校に入って流川楓親衛隊になるはずだった。浪人生のころは医学部に入りたいと願い、医学部に入ってからは医者と物書きになることを夢みていた。そして本当に医者と物書きになった現在の私の夢、それはモーニング娘。に加入することであり、プリキュアになることであり、ポケモンマスターになることである。どうだ、30年かけてきれいに一周しただろう?初心忘るるべからずである。ちょっと違うか。
ねじ子もアンダーワールドの中で毎日モーニング娘。になってるよ。それがいけないことなの?なんで現実に帰らなくちゃいけないの?現実を見ろってみんな言うけどさ、虚構の中にいるままで死ぬのも一つの理想だよね?太宰治だって三島由紀夫だってそうだったじゃない。ウィザードに説教されてねじ子、映画館でちょっと泣いちゃったよ。最後に明かされるポワトリンの正体もよかった。
第4位 劇場版銀魂 完結篇 万事屋よ永遠なれ
公開当時にここの記事で紹介した。以下再録。
バック・トゥ・ザ・フューチャーの1・2・3をまとめて見たような、または小林靖子が得意とするタイム・パラドックスを用いた仮面ライダーのオールスター映画を見ているような、そんな充実感だった。
①人気のキャラをすべて出し、見せ場も作る
②でも主要キャラは誰も死なせない、なぜなら
③本筋のストーリーに決定的な影響を及ぼす展開は御法度だから。
④でもハラハラドキドキするストーリーと派手なバトルは必須で、
⑤(ヒットした場合に備えて)必ず続編を作れるようにしておく。
以上の要素を娯楽映画が満たそうとすると、どんな作品もオールライダー映画の如くならざるを得ないのだろう。
それでも目を引く要素はいっぱいあった。歴史を変えるために未来からやって来たキャラクター達が戦ってタイム・パラドックスにより消滅する、という設定自体はよく見るが、あんな消え方は初めて見たこと。『完結篇』と銘打ちながら、前日譚としても解釈できること。この映画のキーワードは三位一体で、入場者特典も三位一体フィルムだ。万事屋は銀時と新八と神楽で三位一体、真撰組は近藤と土方と沖田で三位一体、攘夷は桂と高杉と坂本で三位一体。その万事屋と真撰組と攘夷も、拮抗組織として三位一体。そして銀魂そのものもギャグとSFとチャンバラ・アクションの三位一体で、どれが欠けてもダメなこと。非常によくできているなぁ。まぁねじ子の隣で見ていた見ず知らずの男子高校生は映画が終わった瞬間に「完結してねぇじゃねえか!ふざけんなよ!だまされた!」と憤っていたけれど。そんなことはもういいのさ。
あ、一言だけ言わせてくれ。変な病気にかかったと思ったら、5年間も一人で放浪してないでさっさと病院に来てね!たとえ現代医学では治らない病気だとわかっていても、絶対に来てね!「どっからその病気もらってきた!この疫病神!」とか言ったりしないからさ!感染症において「最初の一人」「最初の患者」ってすげぇ貴重な情報なのよ。よろしくお願いします。
第5位 ジュエルペットハッピネスでした。新番組『レディ ジュエルペット』も楽しみにしています。オープニングとエンディングの曲が新しい曲でさえあれば、それ以上はもう何も文句は言いません。(2014.3.13)