責任をとるとはどういうことか
福島第一原発内で現在作業されている方々は、発表されている放射線量と、距離と、滞在時間を考えると、長期的視野において健康上かなりヤバイ段階であることは想像に難くありません。総勢何人で、どのような環境で防護され、何交代制なのかなど、具体的なことが発表されていないので詳細はわかりませんが。(何故発表しないのか不思議です。彼らの健康問題は原発の今後のコントロールに直結した問題でしょうに。)
彼らが命を懸けて頑張っている理由の一つは、関係ない人たち(地域住民)を逃がす時間を稼ぐことです。原発はもう使いものにならず、放射性物質の量と半減期を考えれば、半径何十kmが何百年間と人の入れない土地になることは、もう決定しています。それでも、彼らは命を懸けて時間を稼いでくれているのです。自衛隊や消防隊員もそうです。頭が下がります。貴重な時間です。なぜ、その間に避難範囲を広げないのでしょうか。海外の避難範囲と日本の避難範囲が違う根拠が、何も発表されていません。根拠があるならそれを開示してください。ただ大丈夫と言っているだけでは、誰も納得しません。放射線被爆は、「距離」と濃度の濃い場所にいた「滞在時間」が最も重要です。過大評価なら過大評価で、いいじゃありませんか。健康と安全に関しては過剰防衛くらいの方が良いのです。諸外国が言っているように80kmではなくても、何故せめて30kmを40kmにしない?50kmにしない?何故?まさか訴訟に備えているのか?そしてなぜ保安院の天下りの皆さんはとっとと50km離れたところにいるのか?自分たちの表明が正しく、諸外国が間違っているというのなら、20km地点の「屋内」にいるべきなのに。大いなる疑問です。単純に離れるだけで、何の罪もない地域住民の「発癌の危険性が減る」ことは明らかなのに。
現場作業員が命を懸けて作ってくれている、貴重な時間を無駄にしてはいけません。私の患者さんで、半径50km圏内に居住していて、妊婦さんまたは小さい子供のいる方がいらっしゃったら、私は医者として「逃げられるのならば50km圏内から逃げて下さい」「短期的には問題ありませんが、長期的にはお子さんの発癌リスクが上がります」と伝えます。東京の患者さんなら、「逃げる必要は現段階ではありません。安心して下さい」と言います。それが私の医者としての責任です。(2011/3/20)
(追記 2011/3/20)
海外(アメリカ)の避難範囲が80km(50mile)というのは、大前先生の説明(http://www.youtube.com/watch?v=8GqwgVy9iN0&feature=youtu.be)
によると、ガイドラインによるものだ、と。日本の避難範囲は、状況を分析した結果だ、とのことです。ありがとうございます大前先生、やっと話がわかりました!基準が二つあったら、「どちらかが正しくてどちらかが間違い」みたいな話になってしまいますが、そうではないのですね。それならば、日本の避難範囲は「現時点においては」妥当であるという、東大の放射線チームの分析も、海外の諸機関のコメントも、納得できるものになります。
しかし屋内待避には限界はあります。屋内待避の人には援助物資もろくに届かず、病院には援軍もなく(屋内待避の指示が出ているような地域への援軍の希望者はいないでしょう)孤立していきます。そんな状態でいつまで屋内待避していればいいの?数日?数週間?数ヶ月?数年?食料も尽きるでしょうし、子どもは飽きるでしょう。屋内待避の地域の皆さん、いや、やはり「私の家族」「私の患者」なら、50km圏内の妊婦さんと子供には、その圏内からの脱出を勧めちゃうなー。自分の患者さんなら、「現時点では大丈夫」ではなくて、「起こりうる最大の被害」を考えてあげたいから。もちろん、今すぐ慌てて着の身着のまま逃げる必要はなく、したがってパニックになる必要はありません。大事なものをまとめる時間は十分にあります。そのことは「屋内待避」という勧告が証明してくれています。