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ゴーバスターズとシアターGロッソで僕と握手!

1年間楽しんでいたルパパトが終わった。私は東映特撮ファンクラブ(TTFC)を2月で解約するためにTTFC限定動画を見まくっている。

「東映特撮ファントーク特別版 スーパー戦隊!大!イエロー戦士祭り【PART3】」にて、マジイエロー兼ビートバスターの松本寛也さんが『特命戦隊ゴーバスターズ』と小林靖子にゃんについて語っていた。見られない人のために、以下概要を書き出す。

※ここから先は『特命戦隊ゴーバスターズ』のネタバレが含まれます。『ゴーバスターズ』見てない方は、全編視聴してから読んでください。※

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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「靖子にゃんはよくダークサイドに落ちるとか闇落ちとか言われてますけど、ぼくはそれはいいと思っていて、しっかり残さなきゃいけないものを入れられる人ってあんまりいない。」

――中略――

「僕が死ぬんです、最後。ゴーバスターズって。それって残酷じゃないですか。でもその死っていう体験だったりとか、――僕たちがやってたのは震災がモチーフって言われているんですけど――そういう後世に残さなければいけないもの、レガシーとか遺産は、しっかりと何かに刻んでいかなければいけない。僕はあのときゴーバスターズをやって、いろいろ言われましたよ、ゴーバスターズって。だけどそれはそれですごくいいと思います。議題にも出るし、子供たちが、もしかしたら大人になって見て、ああこういうお話だったんだって振り返れる。あのとき震災があって、だからこういう戦隊があって、だからあの人は死んで、この人たちは生きている。っていうものがしっかりと描ける脚本家さんってなかなかいないんじゃないかなって思います。だから僕は(靖子にゃんが)好きです。」

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私は動画を視聴しながら泣いていた。7年越しに陣さんがそう言ってくれて嬉しかった。

確かに私の周囲(当時子供と一緒に戦隊を見ていた親御さんたち)は、陣さんが帰ってこない最終回に驚いていた。でもそれは当時、確かに必要な描写だった。ゴーバスターズは震災で親や大切な人が「本当に」いなくなった子ども達のために作られた物語である。ここで陣さんやゴーバスターズの家族だけが帰ってきたら、それはあまりに「都合がよすぎる」。視聴者の子ども達が「自分と違いすぎる」「これは絵空事の物語だ」と思ってしまう。だって、津波で死んだ人たちは帰ってこないのだ。絶対に帰ってこないんだよ。帰ってこないのが、あれを見ていた当時の子ども達の、残酷で圧倒的で逃れられない現実だった。子ども達の大切な人は帰ってこないのに、陣さんだけが帰ってきたらおかしいでしょ。「大切な人は帰ってこないけど、それでも残された人間は今自分にできることをやり、周囲と助け合いながら生きていく。それしかないし、それでいいんだ」これがゴーバスターズという物語の全体を貫くメッセージであり、あの時代にそった正しい「希望」の物語だった。

ゴーバスターズの結末は賛否両論だったと松本さんは言う。おもちゃの売上が低かったこともあり、まるで子どもに人気がなかったかのように(ネットでは)揶揄もされた。そんなことはない、現実の子ども達に確認もしないで勝手なことを言うなよ。うちの子も周囲の子もがっつり最後まで見てたよ。最終回に驚いていたよ。私はあの誠実さが好きだったし、あの誠実さに救われていたよ。人は死ぬんだよ、突然死ぬんだよ。生き返りゃしないんだよ。医者をしててもその圧倒的な不条理に驚くことがあるよ。それでも残された人たちの人生は続くんだよ。忘れたり忘れなかったり時々思い出して泣いたりしながら生きていくんだよ。それは確かに、当時の子どもの現実だったんだよ。

あのころ東日本に住んでいたら、震災で死んだ人、財産や大切なものを失った人、これまでと同じ生活を続けられなくなった人が周囲に必ずいた。直接の知り合いにはいなくても、知り合いの知り合いならば被害にあった人が必ずいた。原発は爆発し、どうなるかわからなかった。そそくさと西日本へ旅立つ知人もいた。それでも私は今ここで、復興を目指して生きていくしかない。自分の仕事を続けるしかない。それはつらい日々だった。希望は少なかった。自分の行動が正しいかもわからなかった。でも、助け合って生きていくしかなかった。当時まだ東日本がどうなるかわからない状態で、それでも乳飲み子を抱えて東京で生きていくしかない状況の中で、私はあの物語の誠実さに救われていた。静かに森を守り続けるスタッグバスターの姿に自らを重ねた。

あれから7年経って、陣さん(の役者さん)があの結末を肯定してくれて本当によかった。ありがとう。嬉しかった。私は当時不勉強だったから、浅はかにも「この役者さんは死ぬことに納得していたんだろうか?」と思ってしまったんだ。最終回の後にゴーバスターズのシアターGロッソ素顔の戦士公演に行ったときも、死んだはずの陣さんが普通に出てきて「え?」と思ったし、陣さんも「なんか帰ってこれちゃった!」とか言っちゃって、エンディングのダンスも普通に踊ってて、「なんじゃこりゃ?」と思ってたんだ。「さすがに役者さんもやりにくいんじゃない?大丈夫?」と不安に感じていたんだ。ちなみに当時のGロッソは第5弾の本人公演でも当日券があった。後方席は埋まっていなかった。底抜けに明るく楽しいキョウリュウジャーの放送がすでに始まり、大人気を博していた。あの当時のGロッソは決して楽しいだけの空間ではなかったと思う。それでも私はゴーバスターズに勇気づけられていたし、彼らを長く見ていたかった。ルパンレンジャーVSパトレンジャーGロッソ第5弾素顔の戦士公演で満員の客席を見ながら、私はあのときの震災を引きずった乾いた空気を一人思い出していた。

イエローバスターちゃんが『ラブライブ!サンシャイン』声優として東京ドームに帰ってきて、満員の観客の前でGロッソに触れてくれたことも嬉しかったなぁ。心が温まる。二人ともありがとう。私は今でもゴーバスターズの誠実さが好きだよ。
(2019.3.22 結局TTFCは「ルパパトヒロイン旅」の後編が見たかったから解約できなかった。おのれ東映)

あ、ルパパト第5弾素顔の戦士公演は最高でした。以下覚書。

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■Gロッソ施設 覚え書き(2019/3/2現在)

・ポップコーンバケツは前回のやつを持っていけば中身だけ詰めてもらえる、300円
・ルパパトポップコーンバケツ完売、リュウソウ購入可能
・地下の遊び場(スーパー戦隊ランド)は3/10までルパパト、3/21からリュウソウジャー
・↑サプライズでパトレン1号(ガワ)が握手しに来てくれたよ!子供たち大喜び。
・隣のゲーセンのカードダスはまだルパパト。てれびくん4月号によるとリュウソウジャーデータカードダスは2019/3/14から稼働

■Gロッソ第5弾 本編覚え書き こちらはうろ覚え(2019/03/02 10:20の回)

・OP完全再現のナレーション → 中央で振り返るアルセーヌ → OPに乗って乱闘しながら本人たち登場 → 一人ひとりスポットライト当たってポーダマン相手に生身アクション。最高。
・ギャングラーにほんの少しの憎しみの心を最大限に増幅されるコレクションを使われ、操られるノエル
・「人間が憎い!幼い僕に手を差し伸べてくれる人間などいなかった!」ノエル渾身の叫び
・ノエルの人生が丁寧に描写される初の機会である
・快盗の正体がバレた後の設定。快盗衣装と警察制服、ルパンレッドとパトレン1号で「魁利くん」「圭ちゃん」と呼び合う夢の世界
・「ほんとは快盗のこと恨んでるんだろ?」突然の魁利節が圭一郎に炸裂
・快盗への憎しみを増幅する攻撃を受ける圭一郎
・圭一郎が魁利くんを攻撃しだす → 「俺一人に集中攻撃かよ」 → サイクロンダイヤルファイターを魁利くんから奪う → ただ一人、瞬時に圭一郎があやつられている「ふりをしている」と理解する魁利くん → デストラを押さえつける魁利くん → 金庫を開ける圭一郎 → 最高
・圭一郎「恨むべきは快盗ではない、この状況を作ったギャングラーだ」と断言
・咲也が相変わらず初美花大好きで何より。透真「快盗だと知ってもですか」咲也「快盗だとしても、初美花ちゃんは普通の女の子」透真「それを聞いたら、初美花も…」ここで空気を読めないギャングラー襲来
・ザミーゴに凍らされ地面に落ちるギャングラーを見た咲也、「コレクション入ってないよね?」と透真に確認する。やさしい。
・「魁利くん、快盗をやめるつもりはないのか」「まーた説教かよ」「説教ではない、助言だ。……真っ当に生きたいとは思わないのか。人生はやり直せるんだ」←ここ好き。快盗だとわかっても魁利くんの将来を案じてあげる圭一郎えらい
・透真は初美花ちゃんが氷漬けにされたのを見て「よくも初美花までも!」と叫び、飛び出して氷漬けにされる。透真の父性描写すき。
・自らの気合と子ども達の声でザミーゴの氷を(ある程度)溶かす圭一郎
・ザミーゴ「ほんと暑苦しい男だぜ」魁利「ほんとにな、でもそれが時には希望の光になったりして」ん?まじで?
・凍らされてしまった仲間と警察を助けるために「みんなの力を貸してほしい!俺がせーの!って言ったら『がんばれ!』って叫んでくれ!!」と客席の子供に向かって叫ぶ魁利くん。ヒーローショーのお約束。舞台中央で叫ぶ姿はロックスターのようだ。君もやればできるんだね。
・そう思っていたらちゃんとザミーゴが突っ込んでくれる。いい脚本だ!ザミーゴに「寒いことすんなよ。お前はそんなやつじゃないだろ」と揶揄された魁利くん「暑苦しいのが近くにいるからな。俺の心も溶かしたのかもな」ん?今なんて言った?これは私の夢か?観客の妄想を具現化するコレクションか?
・子ども達の応援で氷が溶けたあと咲也と初美花が「いえーい!」といいながらハイタッチしてる!わー!これは私の夢だー!!いよいよ白昼夢が見られるようになったぞー!
・氷から解放された圭一郎が、魁利に手を差し伸べる。ちょっとためらった後にその手を取って階段を登る魁利。まさに「見たいもの見せましょう」状態。
・ザミーゴと乱闘中、階段落ちするルパンレッド。ちなみに中の人はTV本編と同じ浅井宏輔さんらしい。さすがの迫力。通路席の女性の肩を借りながらルパンレッドは立ち上がる。その女性客は悶絶のち昇天していて可愛かった。
・スーパールパンエックスのことはいつも少し複雑な気持ちで見ていたんだけど、ルパントリコロールとパトレンU号の間で一列に並んでいると、画面が締まってとてもいいな。強そう。
・「初美花ちゃん、快盗なんてもうやめようよ!」な咲也、素晴らしい。初美花を危険な目に合わせたくないんだね……。それに対して「ルパンコレクションを集め終わるまでは……ごめんなさい!」と答える初美花。
・ラストのノエルの描写が最高。「ノエル!お前快盗なんだから警察足止めしておけよ!」「ノエル!お前は警察なんだから我々に協力しろ!」と言いながら逃げる快盗、追う警察、舞台から去っていく6人→「オーララー、結局こうなっちゃうんだねぇ。でも僕は快盗と警察、どちらかなんて選べないよ。だって僕は、魁利くんたちも圭一郎くんたちも、どちらも大好きだからね。(高所にいるアルセーヌを見ながら)ね、アルセーヌ」ノエル「きみはどっちを応援する?」ノエル一礼、幕が閉じる。
・本編最終回で描かれなかったその後のノエルの心境を描いてくれてよかった。
・映像化希望。せめてオープニングだけでも!画質悪くてもYoutubeでもTTFCでもいいから!最終回のノエルの消化不良に困惑している視聴者のためにも!
・金子香緒里さんの脚本最高
・映像化が無理ならどこかの本に第5弾の脚本をそのまま収録して下さい。よろしくお願いします。あ、できれば第2弾の脚本もお願いします。これはただ個人的に私が見逃したから。

■Gロッソキャスト うろ覚え

・初美花とつかさの太もも黒タイツだけでチケット代は出る(最重要項目)
・第4弾で快盗の皆さんは仮面を付けており顔が見えない場面が多々あったのですが、第5弾は全員正体バレ後のため、顔出し快盗衣装で最高に美麗でした。魁利くんと透真くんと初美花ちゃんの美しいお顔がよく見えました。
・工藤は少し髪が伸びた、髪色も本編時より黒に近くなった
・魁利くんウィッグなんだろうけど違和感なし
・ノエルもちょっと髪色が暗くなったけど違和感なし
・圭一郎が小顔でスタイル良すぎてびびった
・ノエルのアクションには大人も子供も男も女も観客全員がきゃっきゃきゃっきゃと喜んでいた。ノエルが回るたびにみんな大騒ぎで拍手喝采。
・全員イケメンで全員かわいい
・ていうかみんな皮膚が発光して見えた。表面がつるつるで淡く光っていた。なぜ?皮膚にLEDが埋め込まれているの?
・最後にリュウソウレッドが来てくれた。魁利「今日はこのあと、素敵なゲストを招いています。(なんか圭一郎に横から言われる)あ、ゲストじゃなくて俺たちとともに戦う戦士です」からのリュウソウレッド登場。元気に飛びはねてた。レッド二人はそれを見ながら「元気ですね」「元気だね」といい花火回のラストのように微笑み合っていた。「ルパパトロスの皆さんもいると思いますが、まだまだルパパトもいろいろ続いていくんで。今後ともよろしくお願いします。」と魁利くんが言ってくれて、会場はやさしさに包まれた。
・ちなみに最終回放送直後の回も行ってました。客席のテンションがものすごい高かった。圭一郎「皆さん、最終回見てきましたか?見てきたひとー!(\はーい/)あれを見て、よく来られましたね!」魁利「帰ったらまた録画見てね!」工藤はちょっと泣いていた。

2018年ハロプロ楽曲ランキング 私がどんなに傷ついてもハロプロは進む

ハロー!プロジェクトは「ハロメン」と「事務所」と「ハロヲタ」の三位一体によって作られている。突然だが私はずっとそう考えている。ちなみにつんく♂とまことはこの場合「ハロメン」にあたる。

「ハロメン」はたくさんいる。新しい子も次々入ってくる。でも、残念ながら、2018年は私が好きなハロメンが次々卒業を決めた。そういう時期なのだろう。

「事務所」についてはもうあえて何も言うまい。いろいろ事情もあるのだろうし頑張っているとは思うが、少なくとも今年は現状維持目的の活動が目立って新しいアイディアに乏しかった。つまり今年のハロプロは「ハロメン」と「事務所」に新要素が少なく、私はあまり楽しめなかった。

「ハロメン」と「事務所」が低調なとき、見ていて一番面白いのは3番目の要素「ハロヲタ」である。つまり客席が一番面白い。完全に本末転倒だけれど、「ステージよりも客席が面白い」という状況はハロプロにおいてしばしば発生する。

伝説の名曲『ロマンチック浮かれモード』など新しいヲタ芸を次々と生み出した時期もそうだった。そもそもヲタ芸は黄金期を終えたモーニング娘。の人気が急落し、大きい会場にもかかわらず後方席がガラガラでどうしようもないコンサートにおいて自然発生した鑑賞方法である。ステージが豆粒にしか見えない後方席が来ちゃった、どうしよう、周囲はガラガラで盛り上がりに欠け正直つまんない……という状況において、それでもコンサートを楽しむために作り出された応援方法なのだ。どうせステージは見えないから前方を見ない動きがたくさん入る(完全に横や後ろを向いたり、ぐるぐる回ったり)。周りに客がいないから振りが極端に大きい。手足も大きく動かす。ヲタ芸とはもともと、ステージが見えず音しか聞こえないガラガラの環境で楽しむためのいわば「ヤケクソの祭り」だったのだ。

だからモーニング娘。の人気が落ち着いて、来客数に見合った広さの会場でコンサートをするようになった(つまり狭い箱でライブをするようになった)ハロプロからヲタ芸は消えていった。そりゃそうだ、ステージが見えるならステージを見るに決まっている。あんなに動かれると隣の客に迷惑だし。ヲタ芸はハロプロから飛び出してアイドル声優や地下アイドル界隈へと流れていき、Youtubeやニコニコ動画に受け継がれ文化として花開いた。

青空期~プラチナ期の2003~2007年頃にハロプロの現場で成熟したオタク文化もそうであった。「推し」という概念や「推しメン」という言葉・誰でも大好き(DD)・箱推し・現場推し・サイリウム祭り・生誕祭・現場でのコール・振りコピ・踊ってみた・リリースイベント・握手会・チェキ2ショット撮影・そのためのCD大量購入・はがし・手のひら確認・カラーTシャツ・人気投票・年間楽曲大賞・匿名掲示板での活発な議論など、当時のハロプロの現場で成熟した文化は、その濃いファンたちが他の地下アイドルやAKBに流れていったことにより、まるでAKBグループにおいて生まれた文化であるかのように喧伝され世間で消費された。

それでも私たちハロヲタはどんな時期でも、自分たちがおたく文化の作り手の一部を担ってると過度に自負していた。握手会でアイドルを襲撃するAKBオタクが発生した年に、モーニング娘。のコンサートではなぜかアンコール中の誰もいない舞台に上がってピアニカを披露するオタクが爆誕した。アイドルが誰もいないステージに登って、ハロヲタの皆さんに自分の演奏を披露したい。これは確かに私たちハロヲタの一つの夢である。大きなコンサート会場では、終演後いつも場外で自作の紙芝居を披露しているオタクさんがいる。私もつい足を止めてしまう。「結局道重」というTシャツを着てブレイクしているロックバンドもいる。どれもこれもハロヲタらしいエピソードだ。ハロヲタの応援方法はいつも独自で特殊で、私はそれを見るのがとても好きだ。そして2018年、ハロヲタはTwitterでの宣伝力と現場の即興コールでDA PUMP再ブレイクのきっかけを作った。

たとえハロプロに面白みを感じられないときであっても、ハロヲタはいつだって優しくあたたかく変わらぬ姿でコンサート会場にあり続けている。中の一人一人は入れ替わっているはずなのに、なぜか寸分も変わらずそこにある。みんなを見てると心が躍る。重低音の聴いた地響きのようなコールを聴くと、私も元気が出る。私はいつもファミリー席で一人静かにペンライトを握っているただの暗い女オタクだけど、みんなのことを勝手に20年来の友人だと思っている。たとえ去年モーニング娘。が好きになったばかりの人でも、10代でも、ハロヲタであれば全員わたしの20年来の親友だ。私はずっとみんなに励まされている。

素知らぬ顔をしていたけど、ルパンレンジャーのGロッソにもきちんとハロヲタは来ていた。工藤に迷惑をかけないように、「ハロヲタのマナーが悪い」って言われないように、まるで大人の特撮オタクや母親や父親であるかのような顔をして、きちんと現場に来ていた。工藤の顔が映っているグッズを東京宝島で買い漁っている仲間をたくさん見た。私には同族がわかるのだ、だって私もそうだから。私達は名前も知らず顔も知らず、ただ現場やSNS空間で時折すれ違うだけの間柄だけど、魂の底でつながっている。

2018年の私はハロヲタとして散々であった。過去に10年間推していた吉澤ひとみちゃんが逮捕された。ハロプロの未来を今後10年間支えると確信していた梁川奈々美ちゃんが引退を決めた。大好きだった『HUNTER×HUNTER』には自分があまり得意ではないアイドルのネタばかり散見されるようになり、とても読みにくくなってしまった。

私のおたく心は負傷し、回復にしばらく時間がかかる。それでも他のハロヲタが、他のメンバーを推しているみんなが、ハロプロを支えてくれている。私がプラチナ期のモーニング娘。とベリキューを支えている間になんとか鞘師が来て、9期10期も入って、たくさんのドルヲタがハロプロに戻ってきたように、私も次の素敵な女の子がハロプロに入ってくるまで過去の名曲でも聴きながらゆっくり傷を癒やそうと思う。

1位  もう 我慢できないわ ~Love ice cream~ / モーニング娘。’17 (尾形春水、羽賀朱音、加賀楓、横山玲奈)

つんく♂の中にいる14歳少女に逢うために私はハロプロの曲を聴いている、そう改めて実感させてくれる一曲。つんく♀ちゃんかわいいいい!!会いたかったよ!!ずっとずっと君に会いたかった!!!

冷静に戻って分析すると、私はつんく♂の「性に目覚める前の女子」と「性に目覚め始めたばかりの女子」と「好きな人とセックスをする決意をした女子」の歌が好きなのである。その方向で一番大好きなのは『夢見る15歳』。次に好きなのは『愛しく苦しいこの夜に』。残念な方向で大好きなのは『大人の途中』。この観点において『もう 我慢できないわ ~Love ice cream~』は一粒で二度楽しめる貴重な良曲だ。

シンプルに歌詞を読めば、アイスクリームに偏狂する変わった女子のお話である。ただの食欲旺盛な女子だ。でも、性行為やオーガズムを知ったあとの女にとって、この歌の「アイスクリーム」は彼氏やセックスの暗喩になる。ふと気がつくと頭の中アイツのことでいっぱいになるんでしょ。暑い日は当然、寒い日も震えながらほしいんでしょ。寝る前も求めちゃうし寝起きからのガツンでしょ。普段は忘れているのにふとした瞬間に思い出したら、他のすべてが手につかないんでしょ。えっちだなぁ。直接的すぎてこちらが照れるほどだ。無邪気な少女時代には、この曲のタイトルはただのアイスクリーム・ラブなんだけど、恋を知ったあとはアイ・スクリーム・ラブになる。愛を叫んでいるんだよね。完璧なダブル・ミーニングだ。つんく♀ちゃんすげぇよ!

モーニング娘。に加入したばかりのまだ擦れていない新人女子を選んでこの曲を歌わせている点も素晴らしい。彼女らは前者の感覚、つまり「ただの食品の歌」と思ってこの曲を歌う。後者の意味に気が付く年齢の女子には決してこの曲をあてがわない。これがまた、たまらなく味わい深い。終盤の「初めからないならば諦めもつくけれど、知ったからはもうやめられない!」という歌詞には、歌い手がもう一つの意味を「知った」あとに、振り返って赤面することができる二重構造が仕込まれている。「そういうことだったのか!騙されたよ!何を考えているんだつんく♂さん!いや、確かに、知ったからにはもう元には戻れないな……」と思う瞬間が、彼女たちの人生にも必ず来る。素晴らしい。はーちんとあかねちんとカエディとよこやんは、この暗喩にいつ気付くのかな?もちろん気付かなくてもいいし、実は最初から気付いていてもいいよ。

はーちんがいる間にこの曲を生で聞くことができなかったことが私の2018年オタク活動最大の心残りである。この曲を聴くために私は武道館のはーちん卒業公演に行ったのに、セットリストに入ってなかった。はーちんの名台詞「この感動を共有したい」が聴ける『Oh my wish!』もなかった。なんでだよ!卒業コンサートだというのに、はーちんを活躍させるつもりがないでしょ!?嫌になっちゃうよ!そんなセットリスト組むようだから、はーちんという逸材に逃げられるんだよ!はーちんは最も道重さゆみに近い存在だったのに!(5位につづく)

2位  眼鏡の男の子 / BEYOOOOONDS

最高。こんなにトンチキな曲なのに、終始笑いをこらえながら見ていたのに、最後まで見たら突如、自らの青春の記憶ともう二度と戻ることのできない失われた時間がよみがえってきて私は泣いていた。不覚。星部ショウさんの現時点での最高傑作だと思う。聞くところによると、この曲は星部さんが一番最初に事務所に持ち込んだ作品らしい。マジかよ。これが星部さんの本当にやりたい事なんだよな…。すげえな。一番の自信作がこれってことでしょ。めずらしい感性の持ち主だ。間奏のバックに流れてるつぶやき「megane…niau… megane…suteki…」も好き。いい意味で頭がおかしい。一体何を考えてるんだ。

無駄に高い技術力(彼女らはおそらく生歌をテレビで披露するのも人生初のはず)、演劇仕立てのダンスと歌詞と奇妙な衣装(麻雀牌柄の洋服なんて初めて見たよ)、小芝居の始まりと終わり風のイントロとアウトロ、そのくせ丁寧に描かれる思春期の都会の少女達の日常風景描写。これらすべてが見事に融合して、笑えるけど泣ける群像劇ができあがっている。

BEYOOOOOOOOOOOOOOOONDSの「小劇団をテーマにしたアイドル」というコンセプトを最初に聞いた時は「もー、事務所ってばまた変なことを言いだしたよ!いつまで変化球を投げるつもりなの?ハロプロでは普通に歌って踊える可愛いアイドルグループを絶対に作りたくないの!?」と大いに失望したのだけれど、この曲を聴いて評価が180°変わった。こんな曲があってこの曲でデビューするなら、小劇団アイドルは大正解だ。必要以上に芸達者な子役である桃々姫(女弁士役)と、地方アイドル上がりのくるみとみぃみと、電車好きのハロプロ研修生と、どこからか突然現れたお嬢様高校生・島倉りかと、圧倒的センターオーラのゆはねちんを同時に使うには、むしろこのくらいどぎついパッケージじゃないとダメだったんだろう。

ところがこの曲の続編である『文化祭実行委員長の恋』になると、私はとたんに恥ずかしい。共感性羞恥を発動して聴いていられなくなってしまう。なぜだ?「文化祭実行委員長が地味な男子に無理やり女装させる」「そこで彼のかっこよさに気付く」「彼女になる」という展開が、まるで現実味がない絵空事に見えるからか?もともと可愛い女の子の前田こころちゃんを男子役にした上で女装させるというねじれた行為に残酷さを感じてしまうからか?(普通に直球で可愛い女の子をやらせてあげなくていいの?)それともサビのパンチライン「彼は美人な男の子」が、古くより耽美小説やBL漫画で常用されている「使い古された文言」だからか?とにかく恥ずかしい。見ていられない。この違いは一体何なんだろうね。

3位  今夜だけ浮かれたかった / つばきファクトリー

児玉雨子さん珠玉の作詞。先ほどは「つんく♀が作る、好きな人とセックスする決意をした女子の歌が好き」と書いたけど、この曲はまさに好きな人とセックスをする決意をした女子の歌である。「ねえ わたし ほんとうを言うとこのまま帰るの いや、いや」「今夜だけ浮かれたかった 真面目心がじゃまをした」「口を滑らすはずだった」「誰にでも話せるような 思い出作りはしたくない」あたり、勇気を出して誘いたいけど誘いきれない思春期の少女の迷える心情がきれいに描写されている。雨子最高。歌詞から夏の夜風と火薬の匂いがするよ!

この曲の真骨頂はCメロの「浴衣を着なかった理由 まぶたをさす髪の毛 どしたら輝けるの 泣きたいわ」である。メンバー全員が浴衣を着たMVにもかかわらず、この曲の主人公は浴衣を着てないんだよ!最後まで聴くとそれが判明するんだよ!「浴衣を着なかった理由」それはもちろん、途中で脱ぐつもりだったんだよ!意中の相手とどこかの屋内で、裸になるつもりだったんだよ!自分で着られる服にしたんだよ!

でも、できなかったんだよね。少しの勇気を出すことができず、浮かれることもできず、彼女は玉砕する。グループで花火を見に行って精一杯頑張ったのに、決定的な一言を言えなかったんだよね。駅のロータリーで解散するんだよね。「なんでもないよ さようなら」と言って電車に乗るんだよね。帰り道、星空を見ながら「今夜だけわがまま言えば 星空を見なくてすんだ」と回想してるんだよね。うわー!最高の描写!甘酸っぱい!ほんの少し勇気を出して誘い文句を言うはずだったのに、言えなかったんだよね~!わかる!わかるよ!私も小野田さおりんに片思いされる少年になりたい!または、そんなさおりんの横顔を心配そうに見つめる女友達になりたいよ!

4位  素直に甘えて / Juice=Juice

Juice=Juice 2ndアルバムの一曲。朋子の声とボサノヴァサウンドが最高にマッチしている。かなともの歌声が好きだからこの曲が好き。自分でも属人的な選曲だと思う。この曲はかなとものための曲だよね。アルバム曲と言うこともあって、Juice=Juice不動のセンターである佳林ちゃんの出番は少ないけど、この曲の大人の女性の誘惑描写は佳林ちゃんには合わないので、これでいいと思う。

段原瑠々の「今時なフリだけは一丁前」、かなともの間奏あけの「男のくせにおしゃべりが過ぎるわ 愛してみたいのなら本音を晒して」(※とても好きなパートだけど、あまりにジェンダーバイアスの強い歌詞でどうかと思う)、稲場まなかんの終始クネクネした動き、すべてが大人。幼い少年を誘惑する大人の女性を演出している。そして最後の最後に、最年少の梁川奈々美ちゃんによる「覚えて~cherry~♪」。ここで我々ハロヲタは盛大にずっこける。まさにハロプロ。このミスマッチこそハロプロの真骨頂である。やなみんはきっとcherryの意味を「さくらんぼ」しか知らないはずだ。それがいい。「さくらんぼだと思ってるなー」って歌い方しかできないやなみんが、cherryの意味を完全に把握した大人の女性になったのちに、またこの曲を歌う。歌い方もきっと変わる。その時が来るまで10年間、この曲とやなみんの成長を見守るのがハロプロの醍醐味だ。それなのに!やなみんは卒業してしまう。いやだ!そんなのいやだよ!

やなみんがいなくなってしまうことを私はまだ信じ切れていない。卒業するコンサートの箱がとても小さいことも悲しい。絶対に入れないじゃん、誰だよ会場決めたやつ。もっと大きいところでやれよ。武道館でやれよ。ひなフェスでやれよ。できたはずだよ。

他の人のことは知らない。少なくとも「私にとって」2016年に行われた新体制は失策であった。私が好きだったグループはどんどん形を変え、好きだったメンバーはどんどんアイドルに見切りをつけて辞めていく。それでもこの計画を主導した人たちは決して責任をとらない。決して失敗とは認めないし、計画の変更もしないし、損切りもしない。損切りをさせられているのは人生をかけている若い女子たちである。カントリーがあんなことになっていなければ、やなみんはまだ辞めなくてすんだはずだ。

そもそも現在のハロプロは誰が責任者なのかさっぱりわからない。作品をプロデュースするにあたり顔も名前も出さないでいいんだから、責任なんて取れるわけがないし取る必要もない。そりゃそうだ。でも、それって、芸術作品と言えるのかな?作品を作るという行為は、その作品が生み出す良い影響も悪い影響もすべて自分の名の下に責任を取る覚悟があるからこそ、許されるのだ。コミケや同人誌やpixivでさえ、奥付に作者名のない作品など許されない。

首謀者の顔も名前もわからないまま、ハロプロはきっと今後も続いていく。どんな失策をしても何のダメージもなく、のうのうと同じ場所に同じ首謀者たちが座り続けるのだろう。それは何より私の心を萎えさせる。つんく♂の「責任者がないならば組織である意味がない」という歌詞はシンプルに今のハロプロを指していると私は思う。SNSでは日大ラグビー部のタックル問題を予言しているといわれていたけど。

4位   自由な国だから / モーニング娘。’18

決して好きなメロディではない。制服の衣装も好きじゃない。でも、私のための歌詞だから。「この曲は私のためにある!この歌詞は私のために書かれた!」と感じる瞬間が今まで何度もあった。2018年ハロプロ歌詞だけランキングでは堂々1位である。

この曲はとにかくサビだ。「自由な国だから 私が選ぶよ」このワンフレーズだけが私の脳内で何度も反復される。特に去年の夏はそれが顕著で、医学部受験の女性差別のニュースを見るたびに、そのニュースを受けて自分の身を守るためのポジショントークしかできない現役医師たちを見るたびに、外野から物知り顔で意見を述べているつもりで実はただ自分の中の差別意識を露呈している状態の人を見るたびに、この曲のサビが何度も脳内で再生された。

つんく♂さんは「自由な国だから 私が選ぶよ」って言ってくれるけど、この国は自由な国じゃなかった。私たちは、ちっとも選んでなんかいなかった。私が自分で選んでいるかのように、とりつくろわれているだけだった。

私は医者になることを自分で選んだ。そのつもりだった。でも、そうじゃなかった。自分で選んでいる「つもりに」させられているだけだった。私たちはだまされていた。男も女も現役生も多浪生も、医学部受験生はみんなだまされていた。公開されていない条件で競わされていたんだから、受験生はみんなだまされていたのだ。

「自由な国だから」を聴くたびに、私は強い悲しみにとらわれているだろう当事者の女子を思って泣いてしまう。今も「自由な国だから」を聴くと涙腺が緩む。「つんくさんはそう言ってくれるけど、日本はちっとも自由な国じゃなかった!選ばせてもらえなかった女の子たちがたくさん、たくさんいるんだ!私の後輩になって、私の仕事を楽にしてくれるはずだった女の子たちだよ!」と叫んでしまう。

自分で選んだわけでもない「性別」のみによって明確に差別されたこと。いくら努力をしてもすべてを無にされること。そのくらいの圧倒的な差別を受けること。その差別を平然と、悪びれもなく、正当化する人たちがかなりの数でいること。そんな人たちが複数の大学の医学部の上層部に居座っていること。すべてが苦しくて、すべてが悲しい。

「あの時のセリフとニュアンス全然違うね 恥ずかしくないのが不思議だよ」という歌詞も、差別発覚後の医大側の対応に寄り添う歌詞だった。順天堂大学が出してきた、面接での男女差別を「(男子と比べ)女子のコミュニケーション能力が高いから」としたいいわけ、それを保証する根拠として米国の論文を出してきたのを見たとき、私は笑ってしまった。まさに「恥ずかしくないのが不思議だよ」。それ以外の感想を持てない。そんないいわけして恥ずかしくないのが本当に不思議だよ。

(もちろん論文の作者であるアメリカの学者・米国のテキサス大のローレンス・コーン教授は反論している。自分の論文を差別の根拠に使われてはたまったもんじゃない。当たり前だ。そんなことをされたら学者生命の危機だ。優生学の発展に寄与したナチス・ドイツの学者と同じ道を歩みたい学者など、どこにもいないのだ。)

私の後輩女医になるはずだった賢い女子学生達を苦しめることは絶対に許さない。少なくとも社会学的には「2018年当時の日本には明確な女性差別があった」例として、この事件は永久に教科書に載ることが決定している。その点では東京医科大学と順天堂大学と北里大学と聖マリアンナ医科大学(反論中)は歴史に名を残した。決して医学的業績ではないけれど。

ニュースを見るたびに私は怒りでどうにかなりそうだった。あまりに心が傷付き、目に入る何もかもを暴力的な言論でねじ伏せてやろうか、という衝動が沸くほどであった。私たちが「1928年のイギリスでは女性一人で図書館に入ろうとすると断られた」というヴァージニア・ウルフの文言を見て「うわー、当時のヨーロッパは野蛮な差別社会だったんだね……」と冷笑さえ浮かべるように、「2018年の日本では女性が医学部入試で減点されていた」という事実は、未来人にとって、2018年現在の日本があまりに野蛮で差別的な失笑ものの時代であることの証左となる。これはもう決定事項だ。だから私が個人的に憤る必要はない。わかっている。正しくない衝動だって自分でもわかっている。それなのに、ニュースを見るたびに怒りの業火が私を包んでしまう。

でも、つんく♂さんが私の代わりに怒ってくれてるから。「自由な国だから」って高らかに宣言してくれているから。だから私が大声をあげて抗議しないですんでいる。きっとそうだ。ありがとうつんく♂さん。これからも、憤りが私を支配するたびに『自由な国だから』を聴くよ。そしてこの世の残酷さを思って泣くよ。そしてこれからも「私が選ぶよ」。自由な国だからね。朝どの靴をはいていくかも、化粧をするかしないかも、スカートをはくかズボンをはくかも、タンポンにするかナプキンにするかも、コンドームと低用量ピルのどちらで避妊するかも、ドトールのミラノサンドをAにするかBにするかCにするかも、住む場所も、もちろん職業も、この文章を上げることさえも、すべて私が選ぶよ。私の選ぶ権利を迫害する存在には全力で立ち向かっていくよ。

5位  Are you Happy? / モーニング娘。’18

この曲を聴いていると脳がしびれる。頭蓋骨がゆれる。とんでもない熱量と圧を感じて一歩引いてしまう。「ここから出して!」の連呼と「すごい好きだから すごい寂しい」「一緒にいた後は 不安しかない」での主人公女子の意識のゆらぎにつられて、私の心も揺さぶられるんだろうな。

(1位から続く)はーちんは可愛かったなぁ。はーちんがいなくなって私はかなしい。量産型でない個性的な顔立ちなのにとびきり可愛く、一発で顔が覚えられる子だった。声質も可愛かった。頭もよかった。根性もあり、それを表に出さずにスイスイと動ける子だった。彼女に足りないのは歌唱力だけで、それ以外は何もかもを持っていた。それなのに彼女はいなくなってしまった。今のモーニング娘。は、はーちんがのびのびと長期間いられる環境ではないのだ。その事実が悲しい。

この曲ははーちんの卒業曲であり、はーちんの歌だと私は思っている。「ここから出して!」も「来年の誕生日の分 先に愛してね」も、そのままはーちん。モーニング娘。を辞めて名門大学を目指す関西上流階級出身の女子の歌だ。

おそらくはーちんの家族、はーちんの住んでいる世界において、彼女がモーニング娘。であることにそこまで高い価値はない。我々おたくにとってみれば「この世のすべて」と言ってもいいほど高い価値をもつモーニング娘。だけど、おそらく関西名門私立高校出身、フィギュアスケートをたしなむ御家庭において、モーニング娘。であることにそこまで価値はない。大学卒という学歴の方が家庭内での価値がよっぽど高いのではないだろうか。いや、ひょっとしたら「大学に行ってない人間など親戚じゅう見渡しても一人もいない」レベルかもしれない。大学に行かないこと自体があり得ない、考えられない環境なのかもしれない。

はーちんはきっと人一倍苦労しただろう。さまざまな大人の意見に挟まれて、自分が何者で何をしたらいいかわからなくなったのではないか。なんで自分がモーニング娘。に選ばれたのかも、よくわかっていなかったかもしれない。彼女は唯一無二の存在だから選ばれて当然なんだけど。その美貌と上品さと頭の良さ、自己主張の少なさ、すぐに溶けてしまう春の薄氷のような儚さは、彼女のイメージカラーである水色と相まって他の誰にもない魅力を醸し出していたのに。

2番のはーちん唯一のソロパート「努力してるでしょ わたし 幸せになりたい」のはーちんのアップが映るところで、私はいつも悲しい気持ちになる。そうだよ、はーちんは努力していたよ。誰よりも人一倍努力していたよ。はーちんが10年間いられるような、10年後に立派な花を咲かせるような、そんなモーニング娘。であってほしかったよ。

はーちんは道重さゆみと入れ替わるようにモーニング娘。に入ってきた。はーちんは誰よりも道重さゆみに近い存在だったと私は思う。さゆに憧れて芸能界に入ったアイドルは山ほどいる。でもその誰よりも、はーちんは道重さゆみに近かった。さゆのことを全く意識していないはーちんこそが、10年後に道重さゆみになれる。最初は歌もダンスも下手、西日本の名家のお嬢様、とびきりかわいくて個性的な外見、かわいい声質、頭が良くトーク力が高い、ファンサービスの上手さ、画像加工能力の高さ、人知れず努力できる根性。当時のさゆにそっくりである。はーちんが10年間モーニング娘。にいられたら、彼女は道重さゆみになれたはずだと私は今でも思っている。

でも、当時と今は時代が違う。モーニング娘。はもうそこまで人気がない。将来の保証もない。はーちんを引き留められるだけの満足感と充実感を彼女に与えることは、我々にはできなかった。はーちんは芸能の世界に見切りをつけ、自分の家族の世界に帰って行く。

はーちんは頭が良すぎたんだ。はーちんも、ももちも、やなみんも、藤丼も、たぶんよこやんも、みんな頭が良すぎたんだ。だから「ハロプロに長くいても意味がない」って気が付いちゃうんだ。気付いた瞬間にもうアイドルなんてやってられなくなるんだ。わかるよ、そりゃそうだよ。だって今どき、満足に大学にも行かせてもらえないくせに、25歳で追い出されるんだよ!そりゃないよ!現在の20代子女は、大学新卒就職がうまくいかなかったら将来飢え死にする危機感をもって就活に挑んでるんだよ!寿退社とか25歳定年とかあまりに非現実なんだよ!子供が生まれたって仕事は続けるんだよ!片方の親だけじゃ収入が足りないから!給料は上がらないから!高度経済成長時代のおじいちゃんたちと価値観がまるで違うんだよ!

こんなにハロプロが好きな私も、自らがハロプロに入ろうとは思わない(※もちろん見た目的にも年齢的にもまったく!入れるはずない!ってことはわかってます※)。私から「学問の自由」と「表現の自由」を奪う団体に私は所属できない。ハロプロ大好きだけど、その中に入ってたった一度の人生をかけることは絶対にできない。だからこそ、ハロプロでアイドルに人生をかける決意をした女子のことは全力で応援する。はーちんは彼女の魅力が詰まった儚く素晴らしい卒業コンサートをした。はーちんが大学に行きたいと思うのは当然の欲求である。「学問の自由」は憲法で保証されている。自分にしかないやり方で幸せになって欲しい。

6位   フラリ銀座 / モーニング娘。’18

フラリ銀座好き。つんく♀ちゃんの恋する乙女の歌がモーニング娘。のシングルで炸裂するのは久しぶりである。うれしい。

銀座から日本橋まで思ったより近いんだな、という現実感と、「腕組んでると二人 星まで行けそう」と感じる、時空を超越した高揚感。この2つが同居している歌詞の世界観がたまらなくつんく♀。好きだ。いつものつんく♀ちゃんの発情ソングだ。

そしてこの曲は石田亜佑美の曲だな。仙台の可愛い田舎娘が、あの!噂で聞く都会の街!銀座に!行くから!すごく頑張って!はしゃいじゃっている!様子がとてもよく出ている。ワクワクが手に取るように伝わる。自分なりに頑張った(結果的にレトロになってしまった)服で、初めて銀座に行く!しかも彼氏と歩く!その高揚感(星まで行けそう)と身近な現実感(銀座から日本橋まで思ったより近い、飯もうまい、という実際に街を歩いてみたときに心に浮かぶ意識の流れ)の両立が素晴らしい。ダンスのセンターをあゆみんが張ってるのは当然だと思う。

7位    46億年LOVE / アンジュルム

往年のSMAPの名曲を作っていた林田健司さんの曲。ハロプロ提供はこれが初めて。ファンキーでとてもいい曲だ。むしろなぜこの曲を男性アイドルに提供しなかったんだろう?ジャニーズの男性アイドル達が歌っていれば、かなりのヒット曲になったのでは?そっちの方が林田さんのもらえる印税額も多かったのでは?こんなにいい曲をもらえて、我々ハロヲタとしては本当に嬉しいしありがたいのだけれど、純粋に不思議です。

アンジュルムはこれまでいろいろな路線を模索してきた。その中でも私はファンク路線が好き。『臥薪嘗胆』が好き。『うまく言えない』が好き。男性ボーカル加工された『臥薪嘗胆』がとても好き。

こういう男性ファンクボーカルっていま、岡村ちゃん以外あんまりいませんよね。当時のSMAPや一時期の関ジャニ∞が担っていた役割。誰か来てくれ!和製ファンクで女性ファンを魅了してくれ!待ってます。

8位    ハロー! ヒストリー / ハロプロ・オールスターズ

ヒャダインさんがとても丁寧な仕事をしてくれている。ありがたい。ヒャダインさんはハロプロ全グループをよく見てるなぁ。もっといろんな場面でこの曲を歌って欲しい。

ドラマ主題歌になった『蓼食う虫も like it!』より、『ハロー! ヒストリー』がずっとずっと好きだ。ていうかどうしてドラマタイアップが『蓼食う虫も like it!』なの?ハロプロ楽曲大賞を取った『46億年LOVE』がB面扱いなのはなんで?

もちろんヒャダインが悪いわけではない。だってヒャダインの作った他の曲、『ハロー!ヒストリー』も『WE ARE LEADERS! ~リーダーってつらいもの~』もすごくいいのだから。どうしてハロプロは、良い商品ほど奥に隠して陳列するんだろう?どうして?客として純粋に不思議。結局のところ、ハロプロという組織はたくさんの大人の声が入れば入るほど楽曲がダメになっていく場所なのだと思う。なぜかは知らない。

9位   雑煮でケンカしてんじゃねーよ / 宮崎由加(Juice=Juice)、牧野真莉愛(モーニング娘。’17)、川村文乃(アンジュルム)

これから正月のたびに脳内でこの曲が流れる。確実に毎年流れる。私の灰色の脳細胞はそういうしくみになっている。雑煮でケンカなんか誰もしないわ。でも「雑煮」を話のネタにさまざまな食卓で自分の生家の風習について語らなければいけない場面は、私のこれからの人生においてきっとたくさんある。毎年ある。そのたびに私の脳内には「雑煮でケンカしてんじゃねーよ♥」という宮崎さんの少し外れた可愛い歌声が流れ続けるのだ。彼女が卒業した後も、歳をとった後も、ずっとずっと。こんなに恐ろしいことはない。渡部チェルさん恐るべし。

以上です。2018年は豊作の年でした。つばきファクトリーの曲ぜんぶ、「Never Never Surrender」「銀色のテレパシー」「春恋歌」「青春シンフォニー」「夜中 動画ばかり見てる…」「マナーモード」「Uraha=Lover」もよかったですが、特記すべきことが少ないので割愛しました。

2019年は術後5年を迎えるつんく♂さんの復活と、BEYOOOOOOOOOOONDSの展開に期待しています。奇妙奇天烈だけど現実味がある(ここ大事)小劇場をお願いします。(2018/3/20)

ルパパトのおもちゃが売れてないらしい

『快盗戦隊ルパンレンジャーVS警察戦隊パトレンジャー』のおもちゃが売れていない。特撮好きの大きいお友達の間では「ルパパトは脚本も面白いし、役者も人気だし、Twitterのトレンドにいつも入っているのに、どうしておもちゃが売れなかったんだ!!」という議論が真剣になされている。その議論をしているお友達一人一人がその時間を使ってAmazonを開きビークルの一台でもクリックしてくれればいいのだが、決してそうはならない。まあそれはしかたがない。

脚本とストーリーは戦隊モノとして近年稀に見る面白さである。この面白さはデカレンジャーやマジレンジャーやシンケンジャーやゴーカイジャーやキョウリュウジャーに匹敵すると私は思っている。つまり、戦隊ものとして破格の面白さである。パトレンジャー側の年長者である朝加圭一郎とつかさ先輩のキャラクターは非常によくできているし、現代的で正しいヒーロー像である。特に朝加圭一郎というキャラクターは昔からある熱血真面目主人公に見せかけて、きちんと他人の事情を思いやり現実に即した結論を瞬時に導き出す柔軟さをもあわせもった新しい形のヒーローである。理想的な上司と言ってもいい。対するルパンレンジャーは、ダークヒーローとして今の子供向けテレビで表現できるギリギリのラインをついた「やんちゃ」をきちんと表現している。彼らは現在の法制度では決して救済されない犯罪被害者家族なのだ。誰も助けてくれないからこそ、自らの手を汚してでも大切な人を取り戻そうとして戦っている。しかも3人のうち2人は未成年だ。どちらの集団にも理がある。だからこそ悩み、互いを疎ましく思いながらも互いに引かれ合うのだ。その対立をきちんと手を抜かず表現しているし、子供にも理解できるちょうどいい複雑さだと思う。「いつものVS戦隊の映画は開始10分で共闘してるし、今回も夏にはもう一緒に戦うでしょ!」というこちらの予想を覆して、終盤まで対立した信念をもってそれぞれの敵と戦っている。その中でキャラもきちんと成長している。関係性の変化も丁寧に描かれている。ギャグも多くクオリティが高い。適齢期の息子たちもストーリーとキャラクターに惹きつけられながら、楽しんで見ている。ガワのデザインも美しい。快盗衣装と国際警察の制服もかっこいい。「工藤はとんでもない当たり戦隊を引いたな!さすが工藤!もっている女だ!」と上半期は強く思っていたし、今でも思っている。

しかし、保育園で息子の周囲の戦隊モノの適正年齢(3~5歳)男子を見渡してみても、ルパパトのおもちゃを持っている子はいない。番組を見ている子すら、あまりいない(時間が遅くなったのは大打撃だ。日曜朝に10時まで家に縛られるのはつらい、早ければ早いほどいいのに)。変形合体おもちゃが好きな男子はほぼ全員、シンカリオンのおもちゃに夢中である。シンカリオンを何台も所有し、かつ、ことあるごとに買い足してもらっている。かくいう我が家も、シンカリオンはすでに4台あるしクリスマスでさらに増えた。ルパパトは合体ロボとしての魅力においてシンカリオンに完敗している。実際私は、子供たちがそこまで欲しがっていなかったルパパトのおもちゃを私自身のために買っていた。

なお「なりきりおもちゃ」を好きな男子は、みな仮面ライダーに夢中である。ビルドであってもジオウであっても、仮面ライダーのベルトやコレクションアイテムを集めまくっている男児は多い。残念ながら、VSチェンジャーを持っている子供は私の周囲に見当たらない。

要するにルパパトのおもちゃの敗因は、まず第一にシンカリオンであると思う。タカラトミーが一枚上手だった。

シンカリオンのおもちゃ自体は、何年も前(2015年3月)からほそぼそと存在していた。そしてそれは一部の子鉄と、その家族にしか知られていなかった。戦隊ロボットのライバルではなかったのだ。バンダイもおそらく当初はそこまで危機感を抱いていなかったと思う。

2018年の1月からシンカリオンのTVアニメが始まった。とてもよくできた面白いアニメだ。これによってシンカリオンの知名度が爆発的に上がった。お年玉の使い道としてちょうどいい時期だったこともあり、シンカリオンのおもちゃの人気に火が付いた。それまで普通に買えていたシンカリオンは突如、品切れ続出となった。もともと新幹線やプラレールは3~5歳男子に絶大な人気を誇る安定したコンテンツである。合体変形ギミックもよくできていて、組み立てが楽しい。電池もいらない。元に戻せばプラレールとしても使える。つまりプレイバリューが高い。しかもシンカリオンは非常に安価だ。4000円以下でとりあえず合体変形して完成した一体のロボットになる。4000円で合体ロボット一式、これは戦隊に比べると格段に安い。主役のマシンである「はやぶさ」をまず最初に買えばいいから、親も子もわかりやすい。「最初の一台」として迷わず買える。①安い、②変形がかっこいい、③一箱で完成する、④わかりやすい。後述するがこれらはすべて今年の戦隊おもちゃから失われた要素であった。

シンカリオンのアニメ1・2話がいつでもYoutubeで見られる仕様もよかった。最新話がYoutubeで一週間無料で見られるのもよかった。Amazonプライムで過去の全話が見られるのもすごくいい。なんといっても楽だ。途中からでも入りやすい。今の子どもたちはテレビなんて不便なものを見ないのだ。親のiPadを勝手に借りてYoutubeざんまいである。関連動画からどんどん勝手に見る。YoutubeのAIが視聴者を幼稚園男児だと見抜いた瞬間に、ずばっと関連動画でシンカリオンの最新話が出てくる。あまりに訴求力が高い。宣伝効果が違いすぎる。東映特撮ファンクラブのユーザーインターフェイスの煩雑さとは比べものにならない。

保育園前の親同士の会話で「今年の戦隊は2つあるらしいですね?」「そうなんですよー、ルパン3世と銭形警部みたいな感じでね、快盗と警察が対立しつつも共闘したりするんです!」「へー。見てないや。でも、見ている人の評判はいいですね」「そうなんですよー!話はすごく面白いんです!!ぜひ見てみてください!」と宣伝しても、彼らに見せる方法がない。最新話まで追いつく方法がないのだ。東映特撮ファンクラブに入会するしかないんだよね。さすがにそれは敷居が高い。シンカリオンの追いつきやすさ(Amazonプライム会員の親御さんは多い。初年度無料だし、定期便でオムツ届けてもらうと楽だから)とは比べものにならない。東映特撮ファンクラブってば、なんであんなに使いにくいの?そもそも有料だし。あんなもんマニアしか入ってないよ。それは私。あんなもんに課金してる母親なんて見たことないよ。それは私。

つまりシンカリオンとタカラトミーは2018年初頭の合体おもちゃ商戦の「つかみ」に大成功した。合体おもちゃは最初にコアとなる部分を買わせれば「勝ち」である。細かい部品や追加アイテムを買い足すハードルが格段に低くなるのだ。逆に、最初にコアとなる部分を買わなくてすめば、一年間最後までスルーできる。買い足す壁は非常に高くなる。毎年変わる戦隊モノのおもちゃは、1年で遊ばなくなって不燃ゴミになる可能性が高い。戦隊のおもちゃを買わなくて済む年があるならば、親としては非常に助かるのだ。1年で2種類以上の合体ロボットおもちゃを買ってもらえる家は、そう多くあるまい。「どちらかにしろ」と言われるに決まっている。そしてその「2018年最初の一体」にシンカリオンは選ばれたのだ。タイミング的にも商品の魅力的にも、2018年初頭のタカラトミーの戦略はすべてにおいてうまくはまったと思う。

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対するバンダイが年始に行った商戦は、あまり賢いものではなかった。まず、商品が出なかった。なぜか知らんが合体ロボットおもちゃの箱の発売が遅かった。なりきり変身おもちゃである「VSチェンジャー+ルパンレッドのセット」、「VSチェンジャー+パトレン1号のセット」、各メンバーのビークル単品は放送開始直後の2月から出たが、合体ロボットのセット箱の発売はなぜか3月にずれ込んだ。3月といえばすでに合体メカ好き男児の家庭にシンカリオンE7はやぶさが入庫しきったあとである。完全に出遅れている。

しかも、VSチェンジャーなりきりセットを2月に買っている場合、合体ロボの箱を買うと必ず赤のマシンがかぶる。これはあまりに不親切な仕様であり、私も大いに混乱した。

私はハロヲタなので、放送開始当初から工藤になりきる気満々だった。VSチェンジャーとイエローダイヤルファイターを手に入れればいい、ということはわかったが、どれを買えばいいのかわからない。「イエローのマシン単品」と「VSチェンジャーの単品」があればよかったのだが、VSチェンジャーの単品販売はなかった。さらに長男はブルーダイヤルファイターを欲しがり、次男はパトレン1号に変身したがった。彼らは絶対におもちゃを取り合って兄弟げんかするので、VSチェンジャーは2つあったほうがよい。そうなるとハロヲタの私は「どうせなら全部合体ロボを買おう!これも工藤のためだ!」という結論に至り、合体ロボの箱が発売されるまで待つことにした。3月になってようやく合体ロボの箱が発売、私は喜び勇んでおもちゃ売り場に向かったのだが、どれを買えばいいのかわからない。いつも売ってるいわゆる「全部乗せ合体ロボットの箱」が存在しなかったのだ。とりあえず一箱でコンプリートできる商品が以前はあったよな?あれ?どうなってんだ?

ルパンレンジャーのロボの箱とパトレンジャーのロボの箱が別々にあって、両方買うと、中心コア部分のおもちゃ(グッドクルカイザー)がかぶってしまう。

番組当初おもちゃ屋店頭にあったPOP(さっぱりわからん)

(今思うと、商品ラインナップをルパとパトの2つに完全に分けたのはあまりよくなかったと思う)

金を使うのはいっこうに構わないが、おもちゃが無駄にダブるのは嫌だぞ。さあどうしよう。困ったな。

・・・・・・この私が!いったんおもちゃ屋から撤退してしっかり検索し直さないと、何を買えばいいのかわからなかった。おもちゃがかぶらないように、かつセットの方が安いならできるだけセットで購入するには一体どうすればいいか、わからなかったのだ。多くのご家庭の場合、ここで購入への道は完全に絶たれる。勝負はおもちゃ屋の中の一瞬で決まるのだ。「手ぶらでおもちゃ屋を出たらおしまいだ、お母さんは二度と買ってくれない」ということを、子供たちは直感で知っている。「あとで買ってあげる」などという約束は、決して守られることはない。おもちゃ屋から出てしまったら二度と買ってもらえない。どこの家の子供も知っている宇宙の真理だ。私のように、ネットを調べつくして意地でも推しメンに金を落とす執念を持った母親などどこにもいないのだ。

検索の結果、「どのおもちゃを購入すればいいか」をわかりやすく図示してくれていたのは「我が軍」ことハロヲタの女性であった。ありがとう!見知らぬ工藤ヲタさん!我々は仲間だ!ていうかバンダイ公式か東映公式がこれを出してくれよ!!

そして私はVSチェンジャー(レッドダイヤルファイター付属)とVSチェンジャー(パトレン1号のビークル付属)とグットクルカイザー単品と青と黄と緑と桃のロボ単品を購入することになった。これで兄弟でVSごっこができる。ロボットも作れる。めでたしめでたし。でもなー!購入までのハードルが高すぎるんだよー!私が執念深いハロヲタだからこのハードルをなんとか超えられただけで、一般の善良な親御さんにはとても無理だ。ロボット購入まで至れない。購入へのモチベーションが一年で最も高い「つかみ」の時期にこれをやられてしまったら、合体ロボの「最初の一台」となるきっかけは完全に失われてしまう。年の最初に戦隊のおもちゃを買わないですんだならば、一年間買わないですむ。親としてはヨッシャラッキー!なんだよ。今の適齢期児童の親の多くは氷河期世代で、金がないんだよ。

私はある日、トイザらスである家族を見た。財布の紐がゆるゆるのおじいちゃんと、母と、5歳程度の息子の三人組だ。おじいちゃんはどうやら、孫に戦隊のDX玩具をすべて買ってあげるつもりらしい。孫も買ってもらう気満々である。母は、あまり高いものや無駄なおもちゃは購入したくないという気持ちをうっすらと持ちあわせておもちゃ屋に来ている、健全で教育的な心を持った一般的な母親のようだった。私のように工藤のためなら財布の紐がガバガバのガバな母親ではない。

彼らはルパパトのおもちゃコーナーの前で30分ほど困惑していた。「どれが欲しい?どれを買えばいいの?」と母親が息子に聞くが、当然子供には答えられない。わからないのだ。じいさんは「何でも買ってやるぞ。で、どれだ?」と言っている。ルパンの合体ロボの箱とパトレンのロボの箱を左右に持った母親が、息子に「ルパンレンジャー?パトレンジャー?どっちが好きなの?どっちがいいの?」と大声で聞いている。しかし息子は答えられない。彼はわかっているのだ、ここで無理矢理どちらかを答えてしまったら、片方の箱しか買ってもらえないことを。そしてそれでは足りないことを。私は心の中で叫んだ。「そんな無体なこと選ばせないであげて!わかる、わかるよ。どっちも好きなんだろ!?わかるよ、私もそうだよ、うちの保育園男子もそうだよ。『こくさいけいさつのけんげんにおいてじつりょくをこうしする!』と叫んで戦った後、『あでゅー』って言いながら廊下に走り去っていくもん!ルパレンもパトレンもどっちも好きなんだよ。選ばさないであげて!」と。「こんにちは!わたし通りすがりのルパンイエロー推しのおばちゃん!ルパパトのおもちゃ、どれを買えばいいかわからなくて困っているんだね!?VSチェンジャーは今、トイザらス限定ルパレン&パトレンセット(そんなものも後から出た)しかないから、まずこれね!ルパンの青と黄色は単品で買おうね。あ、合体ロボもいる?でも箱で買うとどっちも赤がかぶっちゃうよね、困ったなぁ。じゃあ単品で緑と桃とグッティも買おうね、これでいいかな?あ、礼はいらないよ、むしろこちらこそありがとう、ルパパトを好きでいていくれて、おもちゃを欲しいって言ってくれて、本当にありがとう。これからも初美花ちゃんをよろしくね!」という助け舟を出したくてしかたなかったよ。ぐっとこらえるのが大変だった。結局一家は店員さんを呼び、15分ほどアドバイスをもらった後、私の思った通りに全てのおもちゃを買って帰っていた。めでたしめでたし。しかし、これは人員に余裕がある店舗の空いている時間帯だったからこそ許されることであり、祝日やクリスマス前はこうはいかない。全国の小売店で小さな悲劇が繰り返され、機会が損失されたことは容易に想像できる。くり返しになるが、そもそも子どもはルパもパトもどっちも大好きで、両方と仲良しなノエルも大好きなので、おもちゃを分ける必要はなかったと思う。

第二に、DX玩具に遊び甲斐がない商品が多かった。

● DXダイヤルファイター各種

まずルパン側のメイン合体おもちゃであるダイヤルファイター。音が鳴らない、光らない。ただのプラスチックである。それでも、ダイヤルファイターは敵(に扮した親)の体に押し当てて金庫を開ける(ふりをする)ごっこ遊びもできるし、ダイヤル部分をカチャカチャ回すのが楽しいし、そこそこ大胆に変形してくれるから、まだいい。

● DXトリガーマシン各種

警察側のビークルは可動の喜びがさらに少ない。変形も少なく(多少パーツが伸びるだけ)転がし走行ができるだけ。音も鳴らない、光らない。VSチェンジャーに入れた後にやれることが少ない。敵の金庫に絡んだごっこ遊びもできない。これに1500円は高い。同じ1500円で、ジオウのDXライドウォッチは回転するし、光るし、過去の有名ライダーの変身音を出してくれるんだよ。同じ値段なのにあまりにプレイバリューが低すぎる。なんでパトランプを光らせてくれなかったのさ!簡単にできるだろ!

グッドクルカイザーVSX

作中で最も多くのマシンが合体したロボットであるVSXは、両足がすぐに外れてしまうという致命的な構造欠陥がある。手に持ってブンドドドドドドドドドドがしにくい、というかできない。飾っている間はいいのだが、手に持って動かしたり空を飛ばそうとすると、両足の下駄部分がボトッと簡単に落ちてしまうのだ。これはいけない。この構造で企画を通したのは制作側の怠慢だと私は思う。子供が遊べないのだから。

手に持って動かそうとするとここがすぐ外れる

あと、ダイヤルファイター&トリガーマシンをぜんぶコンプリートしても全合体ができず、パーツが大量に余ってしまうのも地味にきつい。コンプ欲がわかない。

● DXルパンソード

メイン武器もプレイバリューが高くない。まずはルパン側の武器。鳴らないし光らない。頼むから電池を入れさせてくれ。これではただのプラスチックの塊だ。そして可動はマジックハンド機能があるのみ。写真の範囲だけしか動かない。

これではマルカやプレックスが毎年出しているファミレスの入口にぶら下がったミニプラスチックおもちゃと一緒になってしまう。適正価格は800円といったところか。ちなみに箱は最高にかっこいい。世界一美麗な箱だと思う。

よって定価の2800円を出すためには2000円の価値を箱に見出さなければならない。

マジックハンドとしては病院の売店でよく売っている「らくらくハンド」の方がずっと性能がいいです。これ、ベッドに乗ったまま床に落ちたものを拾うのに便利なのよね。妊娠中や手術後や入院患者さんへの差し入れにまじオススメ。

● DXパトメガボー

警察側の最初の武器、パトメガボー。こちらは鳴る。でも、鳴るだけ。光らない。なんでパトランプを光らせてくれなかったのさ(2度目)!劇中でもあまり使われない。収録音声はサイレン音と声優不明の「こちら警察戦隊パトレンジャーです!」「そこの君、止まりなさい!」「無駄な抵抗はやめなさい!」「撃退!」「ダメ!ゼッタイ斬り!」のみ。……なぜそのセリフにした?本編で聞いたことないんだけど?「国際警察の権限において実力を行使する!」をなぜ入れない?朝加圭一郎がそれ言ってくれたら売上が100倍違ったと思うよ?セリフが固まってないなら、せめてジム・カーターの声がよかったなぁ。そしてなぜ本編のように拡声機能をつけてくれなかったの?「拡声器」をつけて声を大きくする機能があったなら、「国゛際゛警゛察゛の゛権゛限゛に゛お゛い゛て゛実力゛を゛行゛使゛す゛る゛!゛」って濁点をつけて叫ぶ「朝加圭一郎ごっこ」がみんなで楽しくできたのに!!

比較商品(1445円):スマイルキッズ 拡声器 ハンドメガホン ミニ AHM-103

こちらの武器も定価2800円だが、適正価格は1000円くらいだと思う。そして番組放送中11月段階でどちらもすでに駿河屋で新品800円になっている。残念ながら当然だと思う。このプレイバリューに2800円は出せない。大人でも、よほどのコンプリート欲が強いおたく以外は買うまい(それは私)。

もちろん、プレイバリューの高かった素晴らしいDX玩具もある。

● DXエックスチェンジャー

追加戦士Xの武器。こちらはロボにもなり変身もできる。音もなる。光らないのだけは残念だけど、分解・合体・連結のメカニズムは複雑で最高だ。変身なりきりおもちゃとしても使えるし、ビークルを2つ買い足せば合体変形ロボにもなる。VSチェンジャーにも付けられる。一人三役ができるおもちゃだ。「これだよ!これ!ようやくまともなプレイバリューのあるおもちゃが来たよ!」と、ねじ子は歓喜した。ルパパトの玩具に欠けていた要素のうち「変形がかっこいい、一箱で完成する、わかりやすい」は回収できた。もちろん、この玩具はよく売れた。そりゃそうだ。玩具系Youtuberのレオンチャンネルさんも2018年ナンバーワンにDXエックスチェンジャーをあげ「数年に一度レベルの傑作玩具」と言ってました。私もそう思います。

確かにノエルは子供に人気がある。ネットではよく「ノエルは子供人気があるから、ノエルの玩具がよく売れた」と分析されている。でもそれは少し違う。「ノエルが登場するまで、ろくなDX玩具が出ていなかった」が正しい。私はそう実感している。

● DXルパンマグナム

ルパパトの物語の根幹は、主役・ルパンレッドのエディプス・コンプレックスとその克服にある。父ではなく兄だけれど。精神世界での「兄殺し」の描写もきちんとある。その「兄殺し」の儀式によって得られたのがルパンマグナムであり、劇中最高の強さを見せる。しびれる設定だ。ルパンレッドの直接のコンプレックスの対象である兄は現在(自分のせいで)消えており、兄によく似たパトレン1号(もうひとりの主役)との関わりによってコンプレックスを克服していく、という展開は目を見張るものがあった。

おもちゃも楽しい。一台で合体変形、ロボにも武器にもなる、VSチェンジャーにも使える。バンダイも後半はプレイバリューの高いおもちゃを出してくれたなぁ。きっとみんな頑張ったんだよね。

● DXジャックポッドストライカー

映画限定で出た合体おもちゃの新しいコア部分。

これまでは合体変形のコア部分がグッドストライカー1体しかなく、VSと銘打ってるにもかかわらずロボット同士のバトルができなかった。両戦隊のロボが並び立って一緒に戦うこともできなかった。並び立つことができないということは、どちらかの戦隊は結果的にその間「見てるだけ」になる。おもちゃの見せ場も減ってしまう。

ジャックポッドストライカーが登場して玩具好きの大人たちは色めきだった。ようやくロボが並び立つぞ!いよいよロボでもVSだ!と。音声もなく、光りもしないのは残念だったけど(頼むから電池を入れさせてくれ(2回目))とにかくデザインが最高にいい。赤と金の配色がいい。金の冠もいい。両肩に翼が生えるのもいい。ルパンレックスの赤・青・黄・金の配色も美しく夜空に映える。黄金の羽が生えて、黄金の剣を持てるのもいい。最高に見栄えがいい。黒とオレンジのグットクルカイザーよりも正直ずっとかっこいい。(ていうか、グッティは根幹アイテムであるにもかかわらず、何がモチーフなのかさっぱりわからなかった。人参?と思っていたら、終盤のギャグ回でキツツキであることが判明。まじかよ。ぜんぜん子供に人気のモチーフじゃないじゃん……。グッティの外見をジャックポッドにしていれば売上も変わったのでは……)

ジャックポッドストライカーは映画限定おもちゃであり、登場も今のところ映画だけ、販売も映画期間のみであった。生産数も非常に少なくあっという間に売り切れ、8月の終わりにはもうAmazonでプレミアが付いている。ねじ子も近所中探し回って小さいおもちゃ屋で最後の一個を確保した。クリスマス商戦で復活させてくれればよかったのに……。サンタさんが困ってたよ……。なんで需要があるDX玩具は品切れなんだよ……。売り方が下手すぎる……。ハロプロの事務所みたいだ……。

第三に、食玩やガチャガチャで買える商品にプレイバリューがなかった。

食玩やガチャガチャでたくさん売られていたのは「VSビークルライト」という商品である。VSビークルの小型版だ。VSチェンジャーをもってないと、まったく遊ぶ方法がない。単独で音が鳴ることもなく、変形もない。劇中にも出てこないためなりきり遊びもできない。残念なことに、多くのVSビークルライトはDX版と音声がかぶっている(まったく同じ音が出る)ため、DX玩具を持っているなら買う必要がない。しかもVSビークルライトはサイズが小さすぎて、ダイヤルを回して音を鳴らすセンサー部位までおもちゃが届かないのだ。これで完全な音声を聞くためには、ここ(下図参照)のボタンをわざわざ指で三回押さなければならない。うーん、いまひとつ。これでは熱心なコレクターですら買うまい。ねじ子も、VSビークルライト限定の特別な音声が出るものしか買わなかった(上の写真に載ってるやつ)。食玩とガチャガチャの売上不振は深刻なレベルだったと予想する。

ダイヤルファイターであればここを指で3回押すと暗証番号の音声が鳴る。警察のビークルでは何も起こらない(ここでも警察側の玩具のギミックが少ない。これだけ搭載ギミックの量に差をつけながら「快盗に比べて警察の玩具が売れない」などと言われても困る)

もちろん食玩やガチャガチャで人気になった商品もある。そういうのに限って、あっという間に売り切れて放送中からプレミアが付いている。

● サウンドロップ

俳優たちの声が聞けるドロップ。ガチャガチャに入っているのを見たことがない。あっという間に売り切れたようだ。仕方ないので、中野ブロードウェイでイエローだけ手に入れましたよ。高かった。800円もした。本当は全員分欲しかったんだけど、とにかく高い。プレミアが付いてしまっている。新品のガチャがあったら鬼回しするのに、どこにも置いてなかった。子どもたちが買うチャンスは全くなかったと予想する。
※12月頃になってようやく価格が落ち着いたので、通販で全部セットを買いました。終盤になったいま聴くと、魁利くんも透真も圭一郎も声が高くて、ほほえましいです。

・スイング01弾

大泉東映の映画館(東映のお膝元)と東京ドームシティGロッソ(これまた戦隊ショーのお膝元)でしかガチャガチャを見たことがない。Amazonに全部セットはあるが、プレミアが付いてすでに3000円以上の値段が付いている。高い。Gロッソでガチャを鬼回しして、何とかルパンレンジャー全員分を確保。パトレンはもう諦めた。
※その後、お金の力でなんとか揃えました。駿河屋で。

・勇動 第一弾


唯一商品化されている人型可動フィギュア。キャンディ・トイ、つまりお菓子のおまけだ。安い割にクオリティが高い。すぐに売り切れ、店頭ではどこにも売っていなかった。特に一番人気のパトレン1号はすぐに売り切れてお目にかかったことがない。一体持ってるけど、もう一体手に入れてスーパーパトレン1号を自作したいんですが……。そういう人が多いから売り切れるのか……。バンダイのキャンディ・トイ部門のブログが、本編のテコ入れ(おそらくボーイズ・トイ部門主導)に屈しない想像合体想像装備をやりまくっていたのもよかった。その心意気、私たちにはきちんと伝わったよ。

● リポビタンDキッズ ルパパトボトル

どこに売ってるのまじで。Amazonや楽天ではプレミアつきまくってるよ。近所の薬局回りまくったけど、まじどこに売ってるの。コンプリートなんて絶対にできないわ、これ。

なんとか確保したぶん。味は子供たちに好評。

● ルパンレンジャーvsパトレンジャーチョコ


CMで「見つけたらすぐに食べてみよう!」と煽っているくせに、ぜんぜん見つからない。美味しいし、スペシャルな音声が鳴るダイヤルファイターが欲しいから、当たりが出るまで買い占める気まんまんなのに、どこにも売ってなかった。なんでだよ。もうGoogleで「ルパンレンジャー チョコ」と入れるとサジェストで「売ってない」と出てくるくらい、売ってない。どうして?私自身も、ものすごい田舎のコンビニとものすごい遠くのスーパーの食品売り場で見たことがあるだけである。夏までに計2回しか遭遇せず。新しいコンビニに入店するたびにお菓子コーナーを探しているのに、いくら探しても売ってない。ネット店舗ですら、ろくに扱ってない。まじでどこにあるの?箱買いさせてくれよ!スペシャルダイヤルファイター&ビークルセットが欲しいんだよ!ついでに工藤に貢ぎたいんだよ!


※イオンまで遠征したら、箱買いできるくらいたくさんありました。スペシャルも当たりました。やったあ!

第四に、「欲しい」と思うアイテムが商品化されなかった。

● ルパンコレクション

東映公式

どうしてルパンコレクションを商品化してくれなかったんだろう。小さいサイズでガチャガチャで出してくれたら、私はそれが全何種であってもコンプしたのに。VSビークルライトではなく「ルパンコレクション」を廉価のコレクションアイテムとして商品化してほしかった。ルパンコレクションの総数はいくつで、コンプリート特典が何なのかは結局最終回まで明かされそうにないけれど、それでも私はルパンコレクションを地道に集めてコンプを目指し近所のすべてのスーパーの食玩の棚をさらっていたと思う。過去の戦隊に出てくる武器をモチーフにしたデザインと、往年の洋楽の曲名をモチーフにした名称はとてもおしゃれで気が利いていた。もったいないよね。ねじ子は医者なので《医者医者/Docteur,docteur》と《世界を癒そう/Gueris le monde》が欲しいな。

● 金庫


ルパンコレクションが小型のコレクションアイテムであったならば、当然それを収納する箱が必要になる。レンジャーキーを入れる宝箱や、フルボトルを入れるパンドラボックス、オーメダルホルダーのように。というわけでルパンコレクションを入れるのは当然ギャングラーの金庫である。普通の金庫でも金色金庫でもドグラニオ公園でもいいから商品化してほしかった。ダイヤルファイターをかざしたら何かが起こると、なお楽しい。解錠音声が鳴るのがベストだが、まぁそこまで贅沢は言うまい。

● バックル


全員のベルトに付いているバックル。ルパンレンジャー側は逃亡するときバックルからワイヤーを出して高く飛ぶ。パトレンジャーは警察手帳として、容疑者確保や名乗り前に提示している。ノエルはバックルでダイヤルを解錠する。つまり劇中で三者三様に活用している。真似したい。それなのに商品として出ない。なぜだ。全員分の警察手帳が欲しかった。しょぼくてもいいからワイヤーが欲しかった。「アデュー、おまわりさん」って言いたかった。写真は食玩で出たバックルの警察手帳なんだけど、店頭で見たことがない。Youtubeで商品を見る限り、ペラペラで何かが違う。DX玩具で出してほしい。

● 劇中歌ほか


名曲揃いの劇中歌。でもあまり使われなかった。繰り返し使われる曲はOPの男女掛け合いの曲だけだ。OPはいい曲だけど、あまりに難易度が高すぎる。歌詞がよく聞き取れないし、覚えやすいメロディが「予告する~」と「もんがいふしゅーつのこーれくしょーん」だけだし。そもそも男児一人では歌えない。初めて聴いたときは正直、不協和音かと思ってしまった。そのくらい難しい。「つんくの『超HAPPY SONG』ってすごくよくできた曲だったんだな」とねじ子は実感した。
エンディングのダンスがないのも残念だった。せっかく工藤なのに!工藤ならばマジレンジャーから「黄色の腰」を引き継ぐダンスができたはずなのに!どうしてビシバシ体操をEDにしなかったんだろう?みんなでダンスするための曲じゃないの?EDで使わないにしても、劇中のどこかで使って、圭ちゃん一人でも踊る動画を作ってYoutubeに上げていれば抜群の再生数を獲得したであろうに。まさか一回も流れないとは思わなかった。エアロビの曲もすごくいいのに、エアロビにしか使われなかった。まぁこれはエアロビ用に無駄に気合が入った制作陣の鼻息が伝わってくるからいいんだけど。

そして、よく売れる商品はどこにも売ってなかった(3回目)。

● Gロッソ素顔の戦士公演のチケット

全公演全席、瞬時に売り切れ。転売屋が購入しているのはもちろんのこと、Twitterを見ると大きいお友達も申し込み可能枠ギリギリまで大量購入して、友人同士で交換し、できるかぎり毎公演通っている状態のようだ。もしそのお金がDX玩具に回っていたら、どんなにかよかったのに(仮定法過去完了)。チケット1枚分でVSチェンジャー1個買えるし、ビークルなら2台買えるし、駿河屋タイムセール中ならバイカー800円だから4台買えるけど、……でもそうはならなかった。

● ぬいぐるみ


Gロッソとテレビ朝日ショップとアニメイトと一部ネットショップでの限定発売。もちろんあっという間に売り切れ。ねじ子はイエローの中身とガワだけをなんとか確保しました。一番人気の圭一郎はもちろんあっという間に売り切れ。ていうか圭一郎の中の人グッズはどれもこれもあっという間に売り切れ、プレミアがつき、メルカリには転売ヤーが湧きまくっている。すげぇな。

● FSK

フィギュアスタンドキーホルダー、略してFSK。ハロプロでも「#ご飯ととるのがいいと聞きました」でおなじみである。軽くて持ち運びしやすく、何よりSNS映えがいい写真が撮れるので、おたくたちに大人気の商品だ。リリウムの工藤のFSKと比べるとこんな感じ。ハロプロのFSK(1000円)より一回り大きく、2本も入ってお値段1380円。とても良心的だ。ハロプロに慣れていると何もかもが安く感じる!こちらはGロッソにて現在も購入できる模様。

他にもよい商品はいっぱいあったのに、とにかく金の使い道がなかった。5月頃、特にそれは顕著だった。おもちゃもガチャガチャも何も出ない。お布施すらできないんだよ。「欲しいものがない」「買えるものがない」と言っていた大きなお友達の資金はおそらく全額ブルーレイ・ディスクとGロッソ本人公演に流れた。

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「ルパパトのおもちゃは売れなかった、とくに前半の売上がひどかった。だから東映とバンダイはなんとかテコ入れをしようとした」それはわかる。「ストーリーの矛盾も辞さない路線変更を行う」これもよくあることだ、知ってる。でも、「ルパン側に比べるとパト側の玩具が売れてない、だから秋以降の強化玩具はすべてルパン側に寄せた」これはわからない。なんでだよ。

番組下半期におもちゃ屋店頭に置かれていたバンダイ製作のPOP。パトレンジャーを完全に切っている。迷ったらコレだ!じゃあないんだよ。ため息が出る……。

三谷幸喜が絶賛した脚本を、テレビブロスも絶賛した脚本を変えるなんて、芸術の神様への冒涜ではないのか。私は大きいお友達として、どうしてもそれを受け入れられなかった。戦隊もライダーも、スポンサーによって物語が大きく左右されることは知っている。ゲキレンジャーの理央メレも好きだったしゴーバスターズも好きだった。ライオブラスターを苦々しい思いで見た記憶もちゃんとある。響鬼の署名騒ぎもディケイドの脚本家更迭も、終わらなかったカブトもヒロインがいなくなった電王も知っている。それでも、つらい。

テコ入れへの抗議の意味で、私はサイレンストライカーを長い間購入しなかった。サイレンパトカイザーとスーパーパトレン1号を見届けるまで、私は決してサイレンを購入しない。そう決めた。息子たちは欲しがっていたけれど、これはわたしの大きなお友達としての意地である。ゴーバスターズの時も私は放送開始直後からDXなりきりおもちゃ全部セットを買っていたのに、路線変更で素晴らしいストーリーとロボット戦を台無しにされた。OPまで変わった。またあの苦しみを味わうのか!もういやだよ!あの時も私はライオブラスターとタテガミライオーを絶対に買わなかったんだ!

快盗と警察の最終強化ロボ。ここに来て初めて、警察のほうがデザインがかっこいい、かつ可動の多いおもちゃが来た。圭一郎の制服の色に合わせた配色も素晴らしい。まぁ、ノエルが使ってるけど……。

 

ビクトリーストライカーは機首パーツが固定されずちょっとした振動ですぐにパカパカと開いてしまう致命的な構造欠陥がある(2回目)。さらに劇中ではグッディの上に乗せて羽をはやして飛ぶ「飛行モード」があったが、玩具で再現ができない。なんかもうヤケクソ?なのかな?魁利くんの快盗衣装そのままの色合いとデザインは素晴らしい。

スーパールパンXの肩アーマーのグリップはみんなで引くためにあるんだろ?戦隊みんなで支えるためにあるんだろ?支え合って戦うのが戦隊であり、仮面ライダーとの決定的な違いだろ?「ノエルってばどうしてそんな引きにくい位置にグリップ付けたの?とんでもなく持ちにくくない?」と思っていた自分がひどく悲しい。「あ、これ本当は1号につけるアーマーだ。2号と3号が握って引くためにあるんだ」と気付いてしまった瞬間、私は世界に絶望した。

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おもちゃが売れなかった原因はここにあげた以外にもいろいろあるだろう。でも、それら細かい理由は時が経てば忘れられてしまう。誰かの都合がいいように記憶は改変されてしまう。そしてただ、数字だけが残る。数字はわかりやすい武器になるから、ルパパトの評価を必要以上に下げたい意図で使われてしまうことも将来的にあるだろう。それならば私は、ルパパトという作品のために、工藤のために今できることをする。

私は東映の事情もバンダイの事情も知らない。ただ、ど真ん中の消費者だった。「ルパパトはあんなに面白かったのに、どうしておもちゃが売れなかったのか」その理由を、私はど真ん中の消費者の立場から、自分の思いつく限り誠実に書いて、今後の歴史のために残そうと思う。これからの子供達はAmazonプライムで(ほぼ無料で)過去の戦隊を見続ける。どんなに古いものでも、さかのぼって見る。すべて見る。おもちゃは今年一年で売り場から消えていき、物置の奥へしまわれ、不燃ゴミとして捨てられていくけど、映像作品は未来永劫残って歴史の洗礼を受けつづける。スマホやタブレットの中にある最も手近な娯楽として、未来の子供達が再生しつづけるのだ。彼らに「なんでこんなことになったんだ?」と思ってほしくない。大きなお友達にもそう思ってほしくない。

もちろんここまで書いて、このあとラストの脚本がボロボロになったら、それはそれで仕方ない。どっちらけの展開になるのかもしれない。その危険はまだまだある。よき終わりを迎えるといいなぁ。今からドキドキしている。うー。こんなに毎週ドキドキする日曜日は仮面ライダーオーズ以来だよ!初美花ああああああああ!生きて!しほちんと幸せになって!咲也さんはいい人だけど、お母さんはまだまだ交際は許しませんからね!魁利くんはいいや、どうせ圭一郎が何とかしてくれるでしょ。圭ちゃんが魁利くんのことほっとくはずないもんね。生きてても死んでても行方不明になっても、快盗を続けてても続けてなくても、闇落ちしてても闇落ちしてなくても、生きてる限り地の果てまで魁利くんのこと追いかけてくるでしょ、圭ちゃんは。最終回はニチアサの伝統にのっとって、透真と彩さんの結婚式だってわたし信じてるから!警察も快盗もノエルも大切な人たちも全員参列するって信じてるから!あ、仮面ライダービルドも最終回はグリスとみーたんの結婚式だって信じてた!ほら私ドルヲタだし!「推しと結婚してハッピーエンド、最っ高でしょ!」と思ってた。実際は推しに看取られながら死んでたけど!もちろんビルドみたいに「全部なかったことになるエンド」でも別にいいよ!時間が戻ったり、みんなの記憶がなくなったとしても、不思議な力が働いて魁利と圭ちゃんはお互いのことに気が付くし、咲也は初美花に一目惚れするでしょ。それがニチアサのルールだ。なんでもいい、そこに幸福があるならば。最終回を楽しみにしている。(2019/2/6 最終回4日前、バンダイの3Q決算発表前)