いよいよパンデミックがあける ※2023年3月に書いた記事です。
※一定期間たったら、執筆時の時系列に記事を移動させます。
都営大江戸線の六本木駅で抱きしめて
君を深く深く深く深く深く深く深く深く深く愛しているのよ
都営大江戸線の六本木駅は深い。たくさんの地下鉄がすでに掘られた後に作った路線だから、奥深くにならざるをえなかったのだろう。
地の果てまで続きそうなエスカレータをひたすら降りて、そのあとひたすら登る。六本木駅は金色だ。黒の縁取りとまっキンキンの壁。都営大江戸線は駅によってデザインテーマがあり、壁の装飾が違う。当時の都知事である石原慎太郎氏の趣味なのだろうか?ねじ子の好きな大江戸線の過剰装飾は飯田橋駅の営団地下鉄への乗り換え階段の天井に巻き付いている緑色のパイプです。地下に無限に広がっていく竹の地下茎を思わせる造形。不気味で好き。
さて、六本木という縁遠い土地まで来た理由はこれである。
23年前のASAYAN放送時からずっと好きだった太陽とシスコムーンを、初めて生で見ることができた。感無量だ。コロナ禍の私の唯一の娯楽は、ハロプロの過去動画をくりかえし見ることだった。太陽とシスコムーンの楽曲は暗闇の中でつねに輝く光だった。小さいライブハウスで行われたであろう太シス10周年ライブを、私はくりかえし見ていた。次に太シスのライブがあるならば、必ず見に行こう。コロナが終わって次の機会がもしあるなら、万難を排して駆けつけよう。ずっとそう思っていた。だから信田さんの50歳のお誕生日記念ライブが行われると聞き、必死でチケットを取った。
期せずして、これは新型コロナパンデミック収束後私にとって初めての「声出し」可能現場になった。ハロプロのライブはまだ観客が声を出すことを解禁してない。
公式Twitterの告知を見たときから私は緊張していた。どんな現場になるんだろう?本当に声を出していいのか?いや、観客はマスクしているし、大丈夫だってことはわかってるよ。私自身は絶対にマスクを外さないつもりだし、この日のために防御率が高いけど見た目がいかつくないマスク(KN95)も用意した。周囲の医者には「N95つけて行ったら?」と勧められたんだけど、六本木のライブハウスにN95で参戦する勇気はない。さすがに浮く。そんな状況で私は本当に音楽を楽しめるのか?いろいろ考えて躊躇しちゃわない?そもそも私は声を、コールを出せるのか?
ワンドリンク制、食事一品オーダー義務。六本木クラップスさんは食事もドリンクもおいしくてリーズナブル、音響もよかった。さすが親愛なる歴戦のハロヲタの皆様は全員しっかりルールを守っており、一切不安を感じることなくライブを楽しむことができた。
私自身はこの三年の間にコール&レスポンスがすっかり体から抜けていて、『月と太陽』も『赤い日記帳』も『生まれたてのBabyLove』にも咄嗟に反応できなかった。それは周りのハロヲタも同じだったようだ。どう見ても歴戦の戦士たちばかりなのに、なかなか声が出ない。『Be My Love』でコミさんが丁寧に指示してくれたおかげでみんなようやく喉から声が出るようになって、アンコールの「Taiyo&Ciscomoon Let’s Start!」でやっといつものリズムに体が戻った感じ。ハロプロでコールが解禁になったら、昔の動画を見てコールを復習しなくちゃね。
女性アイドルの50歳のお誕生をファンのみんなでお祝いできるって、本当に素晴らしい。ぜひ還暦もお祝いさせてほしい。「還暦祝いのドレスコードは赤!」らしいので、私も赤い服を準備して待っています。以下、箇条書きの感想。
・全員歌唱力が高くハモリがきれい
・しのぴーもあっちゃんもいまだにめっちゃ踊れる
・熟練の大人三人のMCがまぁ面白い、とくにコミさんの進行が上手い
・あっちゃんが通るたびにいい匂いがする
・楽曲が素晴らしい、今さら私が言うまでもない
・本物のしのぴーがいる『赤い日記帳』が22年越しに聴けたよ!
・メロン記念日の村田めぐみさんがケーキを持って登場。みんなでハッピーバースデーを歌う
・村田さんの手を取り、熱く抱擁しながらプルシアンブルーの肖像のサビ「離さない」を熱唱するしのぴー。とまどう村田さん。場内爆笑
・生田えりぽんと石田あゆみんがVTRで出演。信田さんから「この二人は体が強い、ちょっと動けてもその後体が痛くなる子もいるけどこの二人は体が強い」とお褒めのコメント
・撮影可能タイムがある!やったーーー!自慢の一枚貼っちゃうよ!
・物販にメンバーがいて頭が真っ白になっちゃった。アイドル物販での接触とか、いつぶりだろうか。そんなことあると思ってなかったから、話すことぜんぜん用意してなくて頭が真っ白になっちゃったよ。ふわぁ~。まともな言葉を発せずアワアワした。私の口からとっさに出てきた言葉は「Endless Loveが大好きなんです!次のライブでぜひ歌ってください!」であった。もっとしっかり「ASAYANの『再起にかける芸能人』オーディションのときから見てました!」とか「体操女子日本代表のオリンピック中継見てました!」とか言えばよかった。反省。そして、こんな脳内反省会ができるのも幾年ぶりだろうか。感慨深いよ。
そしてその翌々日、私はJuice=Juice武道館振替公演へ行った。おとといは40代50代女性のファンクミュージック、今日は10代20代女性のファンクミュージックだ。こちらはまだ声出しが解禁されていないので、静かに座って観戦する。
この公演は、第8波でメンバーの大半がCOVID-19に感染し延期になってしまった2022年11月29日武道館の振替公演だった。ニュースを見て私は「あれだけ感染対策していたハロプロでさえも、大箱の公演が前日中止になってしまうのか…」という絶望感にさいなまれた。メンバー全員が揃った状態でいっぱいの客席で振替公演ができて、本当によかった。メンバーもファンもきちんと待ててよかった。当日、会場に行くまで本当にヒヤヒヤするよ。誰かメンバーが欠けるんじゃないとか、私自身も熱が出ちゃうんじゃないとか、家族が熱を出して行けなくなるんじゃないか、とか。いろいろ考えちゃう。
私は朋子のおたくなので『イジ抱き』のイントロが流れた瞬間に思わず息をのんだ。そこからの「私はローズクォーツ」三連発は里愛ちゃんで、これが本当に素晴らしかった。ソロフェス!で里愛ちゃんを心配になった朋子が、わざわざ近くまで来てモニター越しに鋭い目を送っていた、あの美しい横顔を思い出す。あれから3年近くがたち朋子は引退し、堂々と里愛ちゃんが「私はローズクォーツ」と歌っている。私の知らないところで素晴らしい引き継ぎが粛々と行われているんだなぁ。Juice=Juiceはこうやって続いていくグループになった。それを実感して私は泣いていた。うぅ。セトリの前半(6曲目)だし、そんなポイントで泣いているのは私だけであった。マスクの換えを持ってくるんだった。(2023/3/2執筆、2024/09/19up)
2022年 ねじ子の楽曲ランキング ※今さら2022年の記事です。新型感染症流行に免じて許してほしい。
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1位 KICK BACK / 米津玄師
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アニメ『チェンソーマン』オープニング曲。モーニング娘。往年の名曲『そうだ!We’re ALIVE』からの引用フレーズ「努力 未来 A BEAUTIFUL STAR」が多用されている。
チェンソーマン第一部は、モーニング娘。黄金期の1999年頃の物語である。モー娘。が流行している華やかな世相をよそに、貧乏から抜け出すためだけに戦っている少年のやけくそじみた焦燥感がよく表れている。ごろつき状態で生きるためだけにデビルハンターになった何もない少年・デンジの乾いた孤独感がむき出しで、すごくいい。米津さんが自ら描いたジャケットの絵も最高。
当時を知るハロヲタとしても、このオマージュには大満足だ。満足しかない。しやわせになりたい。ハッピー。ラッキー。こんにちはベイベー。良い子でいたい。そりゃつまらない。努力、未来、A BEAUTIFUL STAR。なんかすごいいい感じ。めっちゃハロプロだ。ハロプロへのオマージュを強く感じる。「しあわせ」を「しやわせ」と歌うのがつんくさんなのだ。「幸せ」はひらがなで「しあわせ」と書くけれど、口に出すとき確かに我々は「しやわせ」と発音している。そんなの考えたこともなかったけど、つんくさんだけは歌に乗せるときにそういうことを考えている。 そして米津さんはそれをきちんと踏襲する。米津さんの「原作理解度の高さ」はこんなところにも現れている。
本家の『そうだ!We’re ALIVE』は「幸せになりたい あなたを守ってあげたい 平凡な私にだってできるはず」と続く。等身大の女子が自分の平凡さを自覚しながらも、幸福に生きる方法を模索する素晴らしい歌詞だ。でも『KICK BACK』では「幸せになりたい 楽して生きてたい 全部めちゃくちゃにしたい 何もかも消し去りたい あなたのその胸の中」になってしまう。とてもデンジくんっぽい。
男子中高生の子ども達は「努力 未来 A BEAUTIFUL STAR」と歌いながらゲームをし、オンライン通話をしていた。これを見るのは私にとって無情の喜びだった。つんく♂さんの珠玉のリリックが当代最高のミュージシャンによって加工され、蘇り、焦燥感あふれる若者達がくりかえし叫ぶネットミームになっている。こんなに嬉しいことはない。元ネタの歌詞が「努力 前進 A BEAUTIFUL STAR」「努力 平和 A BEAUTIFUL STAR」だから、デンジくんが「なんか忘れちゃって」んのは、前進と平和だろうか?
米津さん自ら出演するMVもおもしろかった。思わせぶりで考察しがいのあるMVだ。なぜギャグみたいな肉じゅばんを着てムキムキになってるんだ?そしてすぐ脱ぐんかい!?なんで車にひかれる?東映特撮で頻繁に使われる「例の海沿いのコンテナヤード」でパルクールが突然始まるのはなぜ?「いつもの採石場」こと埼玉県寄居町の大英興業を通って、あれこれ岩舟山だよね?なんで徒競走始まってんの?岩舟山で大運動会するのって、確かに日本の特撮で育った男子共通のロマンなのかもしれないが。ロケハン中の米津さんが突然乱入して先頭走者を突き飛ばし、一位をとった!見事勝利!なんで?すげぇ面白いけど、なんで???そして急にトレーニングジムに戻る。あれ、ここまですべて幻想だった?一緒に体を鍛えていた友人すら消えるってことは、あれイマジナリーフレンドだった?すべてが謎。金と手間がかかっていて、思わせぶりで、勢いがあって、演者も楽しそう。何度見ても満足感がある。
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コロナ禍に無料でオンライン中継されたライブもすごくいい。チェンソーマンのモブ敵(悪魔)みたいなダンサーさんたちの群舞が最高です。
2位 Don’t Boo! ドンブラザーズ / 森崎ウィン
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「暴太郎戦隊ドンブラザーズ」のエンディング主題歌。森崎ウィン氏、歌うめー。田村芽実ちゃんのウェスト・サイド・ストーリーのときはハロオタがうるさくてすいませんでした。
さて、私は井上敏樹氏の脚本が好きだ。私がニチアサを見るようになったのは井上御大のおかげである。
私と井上脚本との出会いは深夜の大人の女性特撮テレビドラマ『キューティーハニー THE LIVE』であった。ハロプロのカラオケ番組『歌ドキッ!』のあとに実況しながらついでに見ていた『キューティーハニー THE LIVE』が非常に面白かった。キューティーハニー THE LIVE最終回、番組が終わってしまったことをハロオタが集まる匿名掲示板上で残念がっていたら、「だったら同じ井上脚本の仮面ライダーキバを見たら」と教えてもらったのだ。ありがとう、あのときの見知らぬハロオタの御方。ミュージカル・テニスの王子様で三代目菊丸をやっていた瀬戸康史君(当時は瀬戸丸と呼ばれていた)が主役ということもあり、「じゃあ仮面ライダーキバを見てみるか!」と思ったのが私のニチアサ視聴のきっかけである。だから私はキバが大好きだし、キバにやたらとしゃしゃり出てくる電王という一個上の先輩のことを疎ましく思っていた(その後きちんと電王も見て、電王も大好きになった)。
『暴太郎戦隊ドンブラザーズ』で久々に井上敏樹先生が帰ってきた。井上先生が通年でシリーズ脚本をするのはキバ以来である。子ども達は井上脚本を知らない。正確に言うとジオウのマンホールしか知らない。井上脚本の登場人物のキャラ立ちの早さ、繰り返される情報伝達不足からのすれ違い、精一杯生きる人間同士が対立する群像劇。ふんだんに盛り込まれるキザったらしい台詞。毎週のように浴びせられる、むせかえるほどの井上節。おいしそうな料理と食事シーン。「このあとどうなるんだよ!?」と毎週思う強い引き。だんだんと恋に落ち、だんだんと引かれあう登場人物たち。対立する中でも少しずつ共闘する理由が描かれ、最後は納得する落ちを迎えること。ヒーローであっても人を殺したものは罰を受け、怪物であっても人を殺していないものは生きのびて市井で暮らす、勧善懲悪のさじ加減。子ども達はすべて初めて見るのだ。きちんと毎週見ていたし、はまっていた。ロボがとにかく巨大で、ロボ戦になっても誰が乗ってるかわかりやすいのもよかった。
ただ、大人である私が見ると納得がいかない点も多かった。キャラ立ちの上手さとキザったらしいポエムはもう100点満点の井上脚本だ。大満足だ。大満足なんだけど、夏美とみほちゃんはまったくの別人だよね?それでいいの雉野?犬塚の人生もそんなんでいいのか?それほんとにハッピーエンド?設定を細かく考えることを放棄しているかのようなドンキラーキラーやムラサメまわりの適当さなど、ところどころ唐突な展開に見えてしまった。過去の井上脚本にある「後半になるにつれて前半の謎が晴れ、だんだん辻褄があっていく気持ちよい爽快感」や「後半になるにつれて決裂が決定的になっていく仲のよい二人の絶望感」が足りなかった。私の中の井上脚本特撮基準で採点すると、キューティーハニー THE LIVEが200点、ゴーカイジャーのジェットマン回が150点、仮面ライダーキバが140点、仮面ライダー555が120点、ドンブラザーズは80点。近年のスーパー戦隊シリーズとしては文句なしで100点満点なんだけど、井上敏樹脚本としては私の中で80点。贅沢を言っていることはわかってる。忘れてくれ。
さて、このエンディング曲は物語の最後に、ドラマにかぶせるように流れはじめる。「どんぶらこ どんぶらこ どんぶらゆらり揺れて 目指すはどんなハッピーエンド?」という歌詞が、どうなるかわからないトンチキな引きにかぶさって毎週流れるのだ。それが非常によかった。確かに毎週、いい意味でも悪い意味でもドラマは大きく揺れていた。どんな絶望的な展開でも「ハッピーエンドを目指す」と明言された歌詞が流れるのは非常に心地よく、来週まで待つための希望になった。すべての登場人物が、自分にとって精一杯のハッピーエンドを目指す。それぞれのキャラが生きているって結局そういうことだと思う。キャラクターが書き割りではなく、物語のための駒でもなく、それぞれに「生きている」ならばそれぞれ幸福を目指すのは当然のことなのだ。
井上敏樹先生はSPAのインタビューで「正義とはなにか」という質問に「あえていうなら、それぞれが一生懸命生きるってことじゃないかな」と答えた という。そうだ、それがヒーローだ。仮面ライダーオーズ続編で「主人公を殺す」というオチ──おそらく上層部によってあらかじめ決められたゴミみたいな落ち──のためだけに、ヒーローであったはずの登場人物が全員、最善を尽くさない無気力で無能な人間に改悪されたことにひどく気付いた私の心に、井上先生の言葉は深く染みわたった。
3位 俺こそオンリーワン / 森崎ウィン
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上に同じ、暴太郎戦隊ドンブラザーズ主題歌。これはオープニングの方。歌詞が聴き取りやすい。男子一人でも歌える。大声で番組タイトルを叫び、終始テンションが高いオープニング主題歌。最高だ。特撮主題歌として必要な条件をすべてかね備えている。文句なし。「どんどんどんどんどんどんどん!いぇぇぇぇえええええええええい!」と力いっぱい叫んで踊りたくなる勢いが、この曲にはある。
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OP映像はキャストによるダンスがついている。ドラマに使える時間を確保するためにエンディングの時間を節約して、オープニングにダンスを入れるという手法は『ゼンカイジャー』で確立した。子どもはダンス主題歌が大好きだからとてもありがたい。毎年きちんと踊ってほしいし、毎週きちんと踊ってほしい。レクチャー動画が無料でYoutubeで見られるのも嬉しい。
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4位 戦闘!カシオペア / 『ポケットモンスタースカーレット・バイオレット』より
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久方ぶりのポケモン本編『ポケットモンスタースカーレット・バイオレット』は素晴らしかった。なんといってもストーリーがいい。なんとシナリオ三本同時進行である。オープンワールドで自由度が高く、ある程度好きなやり方で進めるシナリオが三本あり、同時平行で進む。どこからはじめてもいい。三つの物語にはそれぞれ中心人物がいて、友達になる。物語は最後に一つにまとまって、主人公(私)と友達三人が集まり、全員で未踏の奥地に進みラスボスを倒す。オープンワールド・ゲームなのによく練られた物語構成で、素晴らしかった。
ポケモンはここ何作か「ポケモンらしい物語」と「時代に追いついた最新のゲーム性=オープンワールド」をどう両立するか、を模索していたと思う。『ソード・シールド』では「ワイルドエリア」というごく一部の地域だけをオープンワールドにすることで対応した。『ダイヤモンド・パール』のリメイクではオープンワールドをあきらめ、旧作をそのまま3Dリメイクした『ブリリアントダイヤモンド・ダイヤモンドパール』と、完全新作オープンワールドの『ポケモンレジェンヅアルセウス』のふたつにゲームを分けた(結果、『ブリリアントダイヤモンド・ダイヤモンドパール』は旧来のファンから非常に不評であった)。
そして最新作『ポケットモンスタースカーレット・バイオレット』において、おもしろい物語とオープンワールドが見事に両立した。しかも三本の本筋(①ジムバトルからチャンピオンになる・②秘伝技を手に入れつつ伝説のポケモンを探す・③悪の組織を倒す)の並列。最後に三つが収束して世界の謎が明かされる。すばらしいと思う。ここまで物語が練れているのなら、オープンワールドのグラフィックがガタガタでも許す。全部許す。ミライドンが壁に埋まっているくらいご愛敬である。
『戦闘!カシオペア』は三つの物語の中の③いわゆる「悪の組織」のラスボス曲だ。ジャンルはハードコアテクノ。曲全体で響く低音のリズムはガバキックというらしい。勉強になる。
ポケモンの戦闘曲って、考えてもいなかったジャンルの曲が突然飛びこんでくるんだよね。おそらく敵のキャラクターに合わせて、いろんなジャンルの楽曲を意図的に持ってくるようにしてるんだと思う。私はそれを聴くのがすごく好き。いろんなジャンルの勢いのいい楽曲が流れてくるから、聴いていて楽しい。飽きない。戦っていて楽しいし、やる気が出る。歌詞のないリフレイン構造なので作業用BGMにもぴったりだ。
この曲がハードコアテクノというジャンルなことも、キャラに合っている。「学校に反抗したいじめられっ子」のボス・カシオペアの性質がよく表れているのだ。機械に詳しくて、コミニケーションが苦手で、引きこもりがちだけど内なる攻撃性を秘めていて、趣味はめっちゃファンシーで、ぬいぐるみみたいなリュック背負ってて、出すポケモンはブイズ統一。可愛いものが大好きな引きこもり病み系女子で赤髪丸眼鏡でBGMはハードコアテクノ。最高じゃね?好きだ。
5位 戦闘!ゼロラボ / Toby Fox
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上と同じ、ポケモン本編の戦闘曲。『UNDERTALE』で『MEGALOVANIA』を作ったToby Fox氏の曲である。Tobyさんがポケモンにたくさん曲を提供してくれて嬉しい。これはラストバトルの曲である。チャンピオン戦の後も物語が続くのはこれまでのポケモンの常識をくつがえしており、新鮮だった。ライバル達と雑談しながら力を合わせて未知の世界を探索するのも遠足みたいで楽しかった。『龍が如く7』のサブクエストみたいでワクワクした。重要なネタバレになるのでどこまで書くか悩ましいけれど、世界を作った人物とその子どもの成長物語が最後に見られたのも、とてもよかった。
6位 クマさんからのおねがい / 『スプラトゥーン3』より
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Nintendo Switchのシューティングゲーム『スプラトゥーン3』ストーリーモード最後の一曲。
『スプラトゥーン3』のストーリーは、なんと『スプラトゥーン2』の途中から加わったミニゲーム「クマさん商店」の謎のバイトの正体が解明される話であった。驚いた。当時、「なんで突然木彫りのクマに命令されるの?」「哺乳類は絶滅したはずだから、木彫りのクマに意志だけが残った状態なのか?」という疑問は確かにあった。でも、それはそれ。「ゲームなんだから面白ければよかろう。細かいことは気にしない」と思っていた点が、すべて解明されたのだ。
バイトのミニゲームは面白かったし、ゲーム内ミニゲームが追加コンテンツとして加わることはマンネリを防ぐ意味でもよかった。つまりは大歓迎だった。伏線が仕込まれてるなんて思ってもいなかった。いやあ、そうきたか。私はテンタクルズの謎(敵対していたタコであるイイダさんの紆余曲折)が解明されると思っていたんだけど、まさかクマさんとは。びっくりした。すごくよかった!もちろん、テンタクルズのその後が見られるであろう追加コンテンツも楽しみにしています。
クマさんがだんだん壊れていく不協和音が最高です。敵にガンガン攻撃されながら聴くと、生命の危機を感じながら宇宙空間を飛んでいる浮遊感と恐怖を味わえます。100年後の人類ならば日常的に感じる不安感なのかしら。未来を疑似体験。
7位 蛮殻ミックスモダン / すりみ連合 スプラトゥーン3
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スプラトゥーン1のメイン・パーソナリティはイカの女の子二人組のシオカラーズであった。スプラトゥーン2はのイカ女とタコ女の二人組テンタクルズ。そして今回、スプラトゥーン3はサメ使いのタコ女とウツボ使いのイカ女とマンタ男の三人組・すりみ連合である。サメもエイもウツボも「すり身」の原料だからすりみ連合なんだね。なるほど。いや次は男子入るよな。「男子二人組だとスプラのイントロ特有のハイテンション感がなくなっちゃうかな、どうなるかな」と思っていたのだが、女子二人・男子一人の三人組か。なるほどいいね。私の好みは京都弁だけど上品というよりはヤカラっぽいフウカちゃんです。
この曲はフェス中に広場でわんさか流れる。三台の大きな山車が出て、音楽に合わせてすり身連合の三人がそれぞれの山車の上でソロで歌い舞い踊る。京都女フウカは和風、ウツホちゃんは中東風、マンタローはサンバ風、と時間帯にあわせてアレンジも変わる。フェス後半の2日目は、3人が一台の神輿に乗ってEDMミックスされた曲(マンタローがミックスしたという設定)を歌い上げる。とても凝っている。もともとの曲調自体も多国籍で、混沌が支配するバンカラシティにふさわしい。
ライブも最高。下の動画の35:00 から
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スプラ3戦闘曲の中では「張拳(ハリケーン)ゴーアヘッド」が一番好き。この動画で6:27から。ゲーム・ミュージックなのに、しかもバトル中の曲なのに、メロディアスなサビをもつ曲を私は結局一番好きになっちゃうんだなぁ。J-POPで育った人間なのでしかたない。
7位 CHAINSAW BLOOD / Vaundy
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アニメ『チェンソーマン』のエンディング曲。チェンソーマンのエンディングは一話ごとに変わる超!ぜいたくな仕様であった。曲も映像も変わる。豪華。豪華すぎる。しかもどれも名だたる歌手が力を入れて作った名曲で、チェンソーマンの物語展開と曲のコンセプトが完全一致しているのだ。すごい。ソニーの本気を感じる。アニメタイアップをつけることがいまや最も日本中、いや世界中に歌を聴いてもらうために有効な方法である。アニメは世界中で再生される。そのついでに曲も流れる。そして一定数の耳に届く。これだけ音楽コンテンツがあふれている昨今、新しい楽曲をなんとしてもリスナーの耳に、くりかえし流し込む方法として、最も効果的なのはアニメの前後に毎回曲を流すことなのだ。実はここで最も重要なのは「くりかえし」である。そう、くりかえし。
チェンソーマンの一回で終わっちゃうエンディングはこの「くりかえし」がない。一回限りで変わっちゃうから。チェンソーマン第二話を見た私の感想は「えっVaundyさんじゃないの!?」であった。Vaundyさんが聴きたいんだよ。くりかえし、何度も、毎回ききたいんだよ。映像コンテンツのエンディング曲は、凄惨な物語から現実の日常に帰るための「儀式」としての役割がある。Vaundyさんの「CHAINSAW BLOOD」は、グロテスクな物語から日常へ戻るためのスイッチとして、一話の時点ですでに私の中に組み込まれていた。同じ曲が同じように流れるという反復は、「物語はめちゃくちゃで思いもよらない方向に進んでいくけれど、私の世界はいつもと変わらない」「この物語を見終えた私はいつもの日常に帰っていく」という気持ちの切り替えポイントなのだ。だから同じものが同じように流れる必要がある。その時間にトイレにだって行けるし、お茶を入れに立つこともできる。エンディングで毎回違うものが流れたら、気が抜けない。日常からの変異がまだまだ続いていると脳がとらえてしまう。結果として、耳に曲が残るまで至らない。物語と曲が一体化して、曲とともにアニメ視聴当時の思い出がよみがえってくる、という「タイアップ曲だけが持てる魔法」も薄れてしまう。もっとCHAINSAW BLOODが聴きたかった。残念だ。毎回CHAINSAW BLOODでよかった。もちろん「ちゅ、多様性」も好きだしマキシムザホルモンさんの曲も好きだ。どれも単品で好き。これだけ名曲のストックがあるなら、この後も続くであろうチェンソーマン映画や二期にまわしたってよかったと思う。もったいない。
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6位 M八七 / 米津玄師
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映画『シン・ウルトラマン』主題歌。もう完璧。
『シン・ウルトラマン』の映画自体は、『シン・ゴジラ』にくらべると一見さんに伝わりにくい内容だったと思う。いや私はウルトラマンの初代TVシリーズをすでに全話見てしまっているので「なるほど!メフィラスはこう処理したか!さすがだ!」「ゼットンはこうきたかーなるほどー」といちいち全肯定のうなりをあげることが多かったのだが、ウルトラマンまったく知らない人たちは果たしてどうだったんだろう。大丈夫なのか?理解できたのか?なんだこれ?のオンパレードにならなかったか?ゼットンってなに?え、ウルトラマン死ぬの?ゾフィーって誰だよ?唐突じゃね?と首をかしげるばかりにならなかっただろうか。不安である。
しかしそんな不安を全部吹っ飛ばすのが、『M八七』米津玄師。さすだがだよ。ぜんぶぶっ飛んだもん。ゼットンが来るの唐突じゃね?とか山ちゃんボイスのゾフィーって何?とかそもそも斎藤工なんでウルトラマンになってるの?みたいな疑問やモヤモヤや唐突な終わり(すべて原作ママ)を全部ふっとばす歌声とメロディ。圧倒的説得力。ぶつ切りのように突然エンディングが流れ始めたら、ぶつ切りのように突然だったはずなのに「そっか、ウルトラマンってば人間を大好きになっちゃったんだね。じゃあしかたないね」「地球を守ったんだね、身を挺して人間を守ったんだね、BIG LOVEだね」という感情がなぜかこみ上げてきちゃうんだもん。こんな私でも泣けてきちゃうんだからすごい。説明不足(原作ママ)などどうでもいいと思わせる、すべてを吹っ飛ばす歌声であった。この曲を十全に味わうために映画を2時間見たと言ってもいい。
ちなみにサブスクに降りてきてから子どもと一緒にもう一度『シン・ウルトラマン』を見た。長男(中学生・ウルトラマンゼロ世代)の感想は「面白かった」、次男(小学校低学年・ウルトラマンZ世代)の感想は「いつ終わるのこれ。長いよー」であった。是非もなし。
来年に続く。ようやく時代に追いつけそうだ!やったね。PRODUCE 101 JAPAN THE GIRLSの曲をハロプロ楽曲に入れようか入れまいか、ちょっと悩んでいます。うーん、入れない方がいいんだろうな。(2024/06/11)
2022年ハロプロ楽曲ランキング ※今さら2022年の記事です。新型感染症流行に免じて許してほしい。
※一定期間たったら、執筆時の時系列に記事を移動させます。
2022年はハロプロから少し遠ざかった一年になった。理由は四つ。
一つ目。 私は自由恋愛でクビになるメンバーが出ると、ハロプロという組織への関心が途端に落ちる。歌が好き(声質や歌唱力が好き)なメンバーでそれをやられると、さらに萎える。私がなぜハロプロを見続けているかって、「歌が聴きたい」からだ。「上手な生歌が聴きたい」という絶大な欲求の前には、メンバーの恋愛事情などささいなことである。それなのに、後者のせいで前者がつぶれる状況を見ると応援する気が失せる。
二つ目。 新型コロナウィルス感染症流行のせいで自分自身の予定が立たない。チケットの転売がオリンピックによって規制され、東京都内で1000~2000人規模のコンサートができる箱が減り、ソーシャル・ディスタンスの確保や座席数制限のために公式のチケット数も少なくなった。すいている公演に当日ふらっと入ることもできなくなった。
そのかわり、オンラインサービスが格段によくなった。コンサートやイベントの配信も増え、時間を気にせずお茶の間で消費できるコンテンツが増えた。結果として、映画館のライブビューイングや配信でコンサートを見る機会が多くなった。
三つ目。 コロナのせいで新曲が出るペースが落ち、新しい曲があまり出なかった。これはもうしかたのないことだ。つんくさん♂の提供楽曲も少なかった。もっとくれ。毎年これを書いてる気がするけど、つんくさんの曲はなんぼあってもいいですからね。たぶんこれからも言い続ける。
四つ目。 一番好きだった金澤朋子ちゃんが引退し、二番目に好きだった高木紗友希ちゃんは理不尽に更迭され、三番目に好きだった佐藤優樹ちゃんが娘。から卒業した今、どうやってモチベーションを保てばいいのかわからない。これは非常に個人的で普遍性がなく、でもアイドルを応援するには一番要なモチベーションの問題である。
2022正月ハロコン の記事で私は「2022年は一推しを探す行程の旅路になる」 と書いた。その通りだった。私はいま「推してるメンバー」略して「推しメン」がいない。いわゆるDD、誰でも大好き である。今の私のペンライトは、卒業コンサートでは卒業メンバーの色になり、そのときステージ上でMCしてるメンバーの色になり、そのとき「いいな」と思ったメンバーの色になる。ゆるやかに地元のスポーツチームを応援しているような、おだやかで凪た心持ちだ。感情に凹凸がない。心が揺れない。「チケットが取れたら、空いた時間にふらっと試合(コンサート)を見に行こうかな。会場近くでついでにおいしい定食でも食べよう」くらいの感覚だ。
以上四つにより、2022年の私は多くの時間を「お茶の間」のオタクとしてすごした。OCHA NORMAのオタクでもあるけれど、お茶の間のオタク。こたつに入ってモニターの前でお茶を飲みながら、または布団の中でスマホ片手にニヤニヤしている、それが私だ。私はすっかりゆるやかに過ごしている。
新型コロナウィルス感染症はこれからきっと、ありふれた一般的な病気になっていくだろう。コンサートもだんだん元のかたちに戻っていく。そんな中で、医療従事者である私がコンサート現場に戻ることはできるのだろうか?マスクなしの狭い会場で、たくさんの人に囲まれた状態で全力でコールできるのだろうか?声出し可のコンサートを、心から安心して楽しむことができるのだろうか?未来のことはわからない。わからないなりに、これからも私はおだやかにハロプロ好きとして過ごしていこうと思う。
1位 Hello! 生まれた意味がきっとある / HELLO KITTY
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つんく♂さん最高。キティちゃん最高。さすが世界のアイドル・ハローキティだ。50年近くも「かわいい」で世界を背負って立ってるだけある。ハロプロの尻の青い十代の小娘たちが、キティさんにかなうはずもない。年季の入ったアイドル性をきらきらと周囲にまき散らしている。あまりにも華やか、あまりにも堂々としている。
しかもキティちゃんってば、めっちゃ歌がうまい。リズムも完璧、音程も完璧。その上でしっかりキティちゃんを演じる声。それをハロプロ歌唱でやってのけてる!ハロプロ独特の語尾上げやしゃくりが、随所に埋め込まれているぞ!なんだこれ。林原めぐみさんまじですごい!
そして、この曲はなんと言っても歌詞である。歌詞だよ。まじでつんく♂そのものの、ハロプロそのものの歌詞なんだよ。
タイトルは『Hello! 生まれた意味がきっとある』。重い。やたら重い。私の隣で聴いていた息子(中学生)はタイトルを見てすぐに「重いな」と言い、「生まれた意味が『きっと』あるって、これ、現状では生まれた意味を感じてないってことだよね……?」とつぶやいていた。うーん、そうなっちゃうよね。私もそう思う。
楽曲を聴いている間にも彼は「きっと?きっと?」「転んでも再チャレンジ?恨んでもしょうがない?いや、重いよこの歌」とつぶやいていた。私は笑顔でこう返した。
「え?なに言ってんの?めっちゃくちゃ明るくてかわいい希望に満ちたアイドルソングじゃないか。ほら見てよ!キティちゃんだよ!世界一かわいい!世界一輝いてる!フレッシュな十代女子たちを後ろに従えて、堂々とセンターで踊ってるじゃん。『かわいい』しかない世界だよ?明るく何回も『いえーい!』って叫んでるし!ほら、つんく♂さんのラーナーノーツ 見て!『キティちゃんといっしょに歌ってくれるちびっ子のみんなもお父さんもお母さんも一つになれるようなそんな曲をイメージして作りました。 』って書いてあるよ!」
「いやいやいや。『生まれたからは そう“きっと” 意味があるんだよ』って、いま生きてる意味を失ってる人からしか出てこない言葉だよね……?」
「いやだなぁ、気のせいだよ!深読みしすぎじゃない?」
「いやいやいや」
「……本当のこと言うと、この重さこそがつんく♂さんなんだと思う」という会話をした。
その後Youtubeが勝手に続けて再生した『ザ・ピース!』キティちゃんバージョンにも、彼は「いやこの曲もちょいちょい重いな」とつぶやいていた。ばれたか。
ザ☆ピ~ス! / HELLO KITTY
VIDEO
つんく♂さんのライナーノーツ
※キティちゃんの中の人の声が変わってしまって悲しい。キティちゃんさんの『LOVEマシーン』『ザ・ピース!』歌ってみた動画も非公開になっていた。悲しい。これからの若い観客がこれを聴くことができないなんて大いなる文化的損失だ。
2位 プラトニック・プラネット / Juice=Juice(Ultimete Juice Version)
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2019年の代々木コンサートで初披露された名曲。なかなか音源化されず、ファンはずっとやきもきしていた。その間に多くのメンバーがグループを去っていった。この曲の輝きはもう失われてしまうのだろうかと危惧していたが、なんと!Ultimete Juice Versionという名義でほぼ初期と同じパート割でアルバムに収録されることになった。よかった。やはりこの曲は佳林ちゃんのクリスタルボイスの「ちょっぴりいい感じなんじゃないの?」がないと始まらないよ。あと落ちサビの朋子「絶対あなたじゃなきゃヤだよ」→ 紗友希「飛び出してプラトニック・プラネット」も不可欠だね!
当時のJuice=Juiceのメンバーが揃った歌割が聴けて私はすっかり恵比寿顔である。嬉しい。こういうところに、アップフロントがアイドル事務所ではなく音楽事務所であるという強い矜持を感じる。音楽という芸術の前には、しがらみなど簡単に捨てる。人間関係のもつれやプライドを軽く投げ捨てて、「いい音楽を作る」ことに真摯であり続けている。その姿勢が好きだ。佳林も紗友希も朋子も声の使用を許諾してくれてありがとう。
「プラトニック・プラネット」や「銀色のテレパシー」のアレンジは宇宙感が強い。この二曲をライブで聴いていると、コンサート会場が宇宙空間のように思えてくる。ペンライトは暗闇に浮かぶ無数の星だ。中野サンプラザや武道館にいるはずなのに、真空でまっくらな宇宙の中に放り出されたような浮遊感に引き込まれていく。おそらくこの没入感は彼女たちの歌唱力の高さによって引き出されたものであり、当時のJuice=Juiceのライブでしか感じることのできなかった魅惑的空間であった。
3位 よしよししてほしいの / モーニング娘。’21
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リリース自体は2021年末の楽曲。佐藤優樹ちゃんによく似合う歌詞とメロディとリズムの曲だ。一番の「本音を話すとみんな眉をひそめて問題児扱いするじゃん」「今夜の終わりが来たなら眠る 今夜の終わりがいつだかわからない」という歌詞がいい。まさに佐藤優樹の歌詞。二番の導入の「笑顔が私の防御ですから 返事がいいのも防御ですから 優等生なのも防御ですから みんなそれぞれに防御があるんでしょうが」もいい。まさに小田さくらの歌詞。最高だ。間奏で広がる宇宙感が強いアレンジもいい。これぞつんく♂さん、これぞ大久保薫さんだ。
今のモーニング娘。には変化が少なすぎる。退屈だ。退屈すぎて涅槃像よ~(たけちゃんが肘をついて寝転がりながら)。
2022年末、リーダーであるふくちゃんの卒業発表があった。しかしその内容から、2023年の一年間は体制に何の変化もないことが示唆されてしまった。2023年はふくちゃん卒業一色の一年になると、2022年のうちにほぼ決まってしまったのだ。これは長い。さすがに長い。ふくちゃんとさくらのことは大好きだが、あまりに変化を感じない。最近その二人も音程や歌の入りが安定しなくなってきてしまった。それも悲しい。新しい声が聴きたい。新しい歌割が見たい。せめてアンジュルムやJuice=Juiceのように、既存の歌割であってもツアーごとに容赦なく変えていってほしかった。新人にどんどん歌割をあたえていってほしかった。私がモーニング娘。に求めているのは常に変化と成長なのだ。
4位 ノクチルカ / Juice=Juice
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金澤朋子卒業後すぐ、植村あかりリーダー体勢にて発売されたサードアルバム『terzo』収録の一曲。東京女子流でおなじみの松井寛さんの作曲・編曲。まさに松井さんの得意とする、都会的でおしゃれなハロプロファンクだ。ああー大好き!最高!『terzo』収録曲の『ノクチルカ』と『G・O・A・T』が素晴らしかったから、私はJuice=Juiceのファンを続けられている。かなともとさゆきがいなくなったあとも。
この二曲を聴くために稲場まなかんの卒業コンサートのライブビューイングにも行った。とてもいい、予定通りの、秩序だった卒業コンサートだった。まなかんがソロで『もしも…』を歌ってくれたことで「カントリー・ガールズのまなかん」と当時きちんとお別れできなかったことの困惑と悲しみが、私の中で浄化されたように思う。『もしも…』の間はまなかんコールがしたくてしたくて、たまらなかったよ。全力でコールしたかった。武道館のオタクの皆さんはよく我慢したと思う。偉い。マジで偉いよ。
もう少し、もう少しのはずだから、武道館で全力でコールができるその日までなんとか生きのびていこう。ハロヲタの皆さん。もちろん私も。
さてここからは極めて個人的なお話である。ハロオタの皆さんは読まないでいいです。
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まなかん卒業ライブビューイングを見たのは、某仮面ライダーオーズの忌まわしき続編映画(もう作品名すら口に出したくないほど嫌い)を3か月前に見た映画館であった。コンサート中のなんでもない時間に、何の前ぶれもなく突然、血の気が引いた。「あの映画」を見た後の怒りと悲しみとやるせなさが突如私を襲ったのだ。2月中旬の乾いた空気、上映直後の観客のため息、泣き声、じっと動かずただ前方を呆然と見ている隣の席の女性客、席にうずくまって動けないでいる人、文句を言いながら出口に向かうカップルの姿が、私の中に瞬時に蘇ってきた。血の気が引いた。
これはいわゆる「フラッシュバック」である。
「オーケー、わかってる。これはフラッシュバックだ。いま私がいるのは、まなかんのコンサートだ。彼女は予定通り、みんなに祝福されながら卒業する。予定外のことなど一切おこらない。スクリーン画面から卑劣なふいうちを受けることはない。誰も不幸になったりしない、不幸な出来事は一切おこらない。あれは過去だ。今の私を脅かすことはない。」私は自分にそう言いきかせ、周囲の落ち着いたハロヲタを見渡した。流れる良質な音楽にひたって深呼吸することで、私は自分を取り戻し「いま」の時間に帰ってくることができた。
それ以来私はその映画館のチケットを取るのをやめた。
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5位 素肌は熱帯夜 / OCHA NORMA
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2022年11月30日、私はひとり池袋サンシャインにいた。OCHA NORMA(オチャノーマとよむ)という新人女子アイドルグループを見るためである。コロナ禍により画面越しでしか見ることができなかった彼女たちを、初めて生で、とても近くで見られるチャンスだ。やった!よっしゃいくぞ池袋!まだ声出しはできないけれど、よっしゃいくぞー!
池袋サンシャインに久しぶりにハロプロが帰ってきた。嬉しい。池袋サンシャイン噴水広場は改修工事があり、しばらくイベントができなかった。そうこうしているうちに新型コロナウィルスが大流行してしまった。だからハロプロの噴水広場でのリリースイベント自体が、とても久しぶりなのだ。
ちなみにその前の月(2022年10月27日)にはこちらへ参加したよ。好きな女が池袋に来てくれるっていうんだから、そりゃ会いに行くよね!池袋を過ぎたってこの愛は永遠!小片さんも元気そうでよかった。
リリースイベントはすいていた。それはそうだろう。平日だし、まだコロナは猛威を振るっているし、東京都外のオタクが来るのは無理だろうし、イベント自体の告知もそこまで大がかりではなかった。リリースイベントを開催できただけでも御の字だ。おかげさまで私はゆっくりと快適に視界をさえぎられることなくイベントを眺めることができた。n年ぶりに生のアイドルに直接ペンライトを振ることができて、嬉しかった。以前と変わらぬファンが、同じ場所に集まっている。ハロヲタのみんなも元気に生きてる!よかった!以前と変わらぬ日常が存在していることを実感できて嬉しかった。
そのリリースイベントのセットリストの中で、一番いいな!と思った曲がこの『素顔は熱帯夜』である。ろこちゃん!かわいい!ももも!最高!『Hello!生きている意味がきっとある』も歌ってくれて生歌最高だったけど、すでに一位に書いたので割愛します。
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『お祭りデビューだぜ!』の最後のハモりも非常によかった。『お祭りデビューだぜ!』は歌詞と曲調がハロプロの「いつもの手癖」のお祭りソングであることに落胆していたが、ライブで見たら一気に好きになった。ろこちゃん低音、まどぴ高音で「デビューは祭りだっぜ~!」と叫ぶようにハモリを重ねるラストが好き。ようやくデビューできたリーダーのまどぴが力の限り歌い上げるのが好き。魂の叫びだ。その隣でろこちゃんが年齢にそぐわぬ落ち着きで低音を支えているのも好き。このパートのためだけにライブ会場に行く価値があると思う。今しか使えない歌詞に見えるが、何食わぬ顔で末長くやり続けてほしいな。
以上です。2023年に続く。(文筆2023/02/28、アップロード2024/01/26)
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