今回のテーマは胃管挿入と胃洗浄。よーするに鼻または口から、胃までの管を入れることです。毒をいっぱい 食べちゃった人・吐血した人・経口でものが食べられない人の栄養補給など、様々な用途で使われます。今回はその中でも大量服薬したときに行う胃洗浄につい て御紹介します。
国試には毎回とってもマニアックな「これ飲んだ時どうする」問題が出ますネ。解けませんネ。はっきり言いましょう。臨床においては解けなくていい んです!!個々のケースはとても覚えきられるもんじゃありません。困ったときは中毒の本を調べるか中毒センターにお電話しましょう。救急外来には、自殺目 的で色々なものを飲んだ猛者たちが現れます。洗剤・大量の薬剤・漂白剤・農薬・絵の具・体温計の水銀まで。「これ、飲んだら体に悪いだろうなぁ」と思うご 家庭の中のモノは、大抵において大丈夫です。精神科系の薬剤の多くは致死量は5万錠いっぺんに内服だったりしますし。実は、誤飲しても何の処置も必要ない 事がほとんどだったりします。
意識のある患者さんにとって、胃管挿入はまさに鼻の中に蛇を突っ込まれるようなもの。苦しいです。でも、麻酔をすると意識レベルが落ちます。ただでさえ睡眠薬の大量服薬だったりする患者さんの意識レベルをこれ以上下げたくはありません。肺への誤嚥の危険も増えるし。というわけで、たとえ苦しくてもそのまま胃洗浄するのが現状となります。
これが胃管だ!
何事も、まず、下準備から
胃管挿入
意識のある人で失敗することは、ほとんどありません。でもでも。意識のない人は非常に入りにくい。麻酔下の挿管された人や、意識の全くない薬中など。これはひとえに「ごっくん」ができないからです。
胃洗浄
さらに大量のオクスリやら農薬やらの「毒」を飲んでいるときは、それらが吸収されないようにするため、
①活性炭 → 胃の中に残っている毒を吸収してくれる(炊飯器に活性炭入れて炊くとおいしくなるのと基本的には同じ原理。)
②下剤 → 胃よりも進んでしまった毒を、吸収される前にさっさと下してくれる
の二つのカクテルジュースを入れます。真っ黒でジャリジャリしてすげぇマズいです。口から飲める人には飲んでもらってもいいのですが、ま、大抵の人は無理なので、胃管から入れます。
※ 催吐 について
国試において、催吐と言えば「意識障害時は禁忌」だの「強アルカリと強酸となんかとなんかが禁忌…あぁ思いだせん」だの皆様途方に暮れているでしょ うが、実際には、ねじ子、やったことありません!!誤飲の際、ご家庭では最もやる方法でしょうが(ねじ子も幼少のみぎりに漂白剤を誤飲し、母親にやられま した)病院ではあまりやらないのが実情です。その原因は
①日本には催吐剤が発売されていない
②よって舌圧子突っ込んだり非常に原始的で乱暴な方法しなくちゃいけない
③禁忌が多くて怖いし、禁忌じゃないときは、むしろ胃洗浄の方が効果的
④ご自宅でやっている
⑤そしてご自宅で吐けない時に病院に来る
などでしょうか。
華やかな手術の後に待っている朝の行事、それは包帯交換。略して「包交」。ホーコーです。手術後はもちろんのこと、リストカットしちまった縫い傷、火傷の あと、腐っちゃった足、果ては褥創(床ずれ)まで。キズというキズには包帯交換がつきまといます。綺麗に治ってゆく傷は見ていて気持ちがよいものです。逆 にぐちゃぐちゃになって異臭を放つ褥創などは目を覆いたくなります。でもでもそんなものも、きちんと処置していれば、ゆっくりと綺麗になってゆくのです。 そんな外科系の毎朝のお仕事、包交。最近は「毎日の消毒と包交はかえって創傷の治癒を遅らす」なんて報告が次々と出ておりますが、それでもまだまだ、根強 く残る儀式です。
これが外科系の命!包交車だ!!
ホーコーシャと呼びます。科や病院によって乗っているものが違います。「そこの科/外来/病棟で必要なもの」がすべて乗っています。いろんな道具が いっぺんに詰まっていて、病室まで運べて、とっても便利です。いちいちナースステーションまで取りに行くのは大変ですから。ねじ子は包交車を全速で暴走さ せ通路のカーブでドリフトしてケツ振って楽しんでま~す。
乗ってるもの・代表
これが清潔操作だ!
閑話休題・ガーゼのしくみ。
包帯の巻き方
多くの一般病院では包交などの処置をする時に看護師さんがついてくれますが、大学病院ではついてくれません(断言)。学生が道具出しのお手伝いをする機会も多いのではないでしょうか。そんな時のために、包交車とは仲良くなっておきましょう。
今回は初心に戻って、採血の巻です。どんなに「学生には何もやらせん!!」という大学であっても、さすがにこれぐらいはやらせてもらえるんじゃないでしょ うか。そんな、医療手技の基本であり、最も身近な検査であるところの採血。実際は、民間病院においては看護師さんや検査技師さんがザクザクと連日連夜採っ てますので、はっきりいって医者よりも格段に上手です。逆に大学病院では研修医が採血義務だったりするので、病院で一番採血が上手いのは、教授よりもナースよりもオーベンよりも、熟練の研修医だったりします。
駆血帯の締め方
皆さんゴムタイプ使ったことありますか?ワンタッチタイプしか知らなかったねじ子は、研修で某民間病院に派遣された際、ただのヒモでしかない駆血帯をどうにもできず、思わず蝶結びしてしまいました。その後2ヶ月間ナースステーションでのもの笑いの種にされていたそうでしゅ。トホ。
血はどのくらい採ればいいの?
我が施設での採取料はこんなもんです(大人)
血算(2ml)
生化学(3~6ml)
感染症(3~6ml)
凝固(2ml)
血沈(1ml)
血液型(7ml)
スピッツの頭の色によって、どれが何か見分けましょう。施設によって全く違うので、とりあえず自分の施設のことだけ覚えればOKです。必要量も書いてあります。足し算しましょう。ちなみにねじ子は宇宙の風に乗って空も飛べるはずなスピッツの大ファンです。
※TERUMOさんの針の色が変わりました。世界的なカラーコードであるISO規格に準じるようになりました。現在の針の色は上の表から一部、以下のように変更しています。
19G…クリーム色
24G…紫
25G…オレンジ
26G…濃茶
いろんな針
直針と翼状針、どちらかを使うことが多いです。真空採血なんていう変わり種もあります。
何事も前準備
これまでの完璧手技でも散々言っているように、まずなによりも下準備が大切!特に下手くそなうちはネ!
採血は多くの場合、誰も手を貸してくれず、一人でやります。全てを手の届くところに準備してからやりましょう。
血管選び
大抵は、ちゅうか(肘の内側)に良い血管が見つかります。でも最初はどれが良い血管なのかもよくわからないよネ!「さわって触れる」のが良い血管です。決して「紫に浮いて見えるもの」ではありません。勿論ベストは「さわって触れて、かつ色が付いている」血管ですが、実際はそう上手くは行かないのが現実。血管選びは採血や点滴がサクっとはいるための最も重要な要素なので、じっくり時間をかけて選びましょう。
手技はいたって簡単。
ちく。すすめる。逆血が来た。ちゅーーーーーー。これだけ。
しかしこれが難しいのよね、最初のうちは。
固定が大切
最初は上手く血が引けてたのに、途中から手がぶれちゃって、突然血が引けなくなること、ありますよね。 どこか一点を支点にすると、手のブレや震えがなくなります。逆に宙に浮かした状態で持っていると、自分では絶対に動かしたつもりもなく、どんなに力をかけていても、必ず動きます。それはどんな手技でも格闘技でもゲーセンのジョイスティックでも同じです。
失敗の典型
・血管に逃げられた!! → 皮膚にテンションをかけることが大事。
・血管破っちゃった!! → 針を入れすぎですな。大抵腫れてきちゃうので、あきらめてもう一回やり直し
・引いても引けない・・・ →
1途中で針先がずれた(一点で支えるテクを身につけましょう)
2実は血管内がすげぇ脱水(駆血帯を結びなおしたり、患者さんの手を揉んでみたり、あきらめて別の所から採り直したりしましょう)
3時間かけすぎて凝血した(これまた初心者にありがちな失敗。やり直しましょう)
ビギナーほど「一発で決めなきゃ!患者さんに悪いし!!」とか思って焦ってしまいますが、実際は、一発で取れなくてもいいんです。採血は最も副作用が少ない手技なんですから。友人同士でも良いから、いっぱい失敗して、上手になりましょう。